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3.「ジャンル変更」の意味について(1)

 「ジャンル変更のお知らせ(http://syosetu.com/teaser/genre/)」なるものが、2015年12月21日に運営の側から発表されました。

 詳細はURLを見ていただければはっきりするのですが、大まかにまとめると「①今まであった16のジャンルは再編され、5個の大ジャンルに仕切られた19の小ジャンルへと変貌すること」、「②『異世界転生/転移』キーワードが設定された作品は、それ専用のランキングにおいて集計されること」という二つの変更点が、おそらく今回のジャンル変更の醍醐味だと思われます。


 筆者の知るかぎり、この「ジャンル変更」は、書き手からはおおむね好意的に受け止められているような印象を受けます。とりわけ「異世界転生/転移」モノ以外の作品を書いている書き手の方は、「自分の作品に対する注目度が上がるのではないか」といった期待をされているのではないかと思います。


 しかし本当に上手く行くでしょうか。「2.質は横にも並べることができない」で結論づけたとおり、「質を区別することは便宜上の問題にすぎず、人々の時代ごとの価値観・文化に大きく依存」します。これはもっと言ってしまえば、「ジャンルについてどのように解釈するかは、個人の裁量に委ねられる」ということを意味しています。


「『異世界転生/転移』モノであるにもかかわらず、必須キーワードに登録されなかった場合は処分対象になる」旨が書かれていますが、どの程度の効果があるでしょうか。

「この作品はいかにも『異世界転生/転移』モノに見えるかもしれないが、実は違う。たしかに地球からやってきた人物が登場するが、そもそも彼が異世界にやってきたのは異世界の住民である霊媒師が彼を呼び寄せた挙げ句、自我を地球からの人物と融合させてしまったためであり、つまり地球からやってきた人物の人格はあくまで霊媒師の一属性であるから、主人公は霊媒師であり、あくまで異世界の住民である。だからハイ・ファンタジーだ!」

 とかいう、書いている筆者自身もよく分からない理屈をこねくり回す人は出てくるでしょうし、


「この作品はいかにも『異世界転生/転移』モノに見えるかもしれないが、実は違う。たしかに地球からやってきた人物が登場するが、じつはこの異世界というのは銀河の果てにある別の惑星であり、最終的に主人公はシャトルを利用して地球へ戻る算段になっている。だから『転生』も『転移』もしていなければ『異世界』ですらないスペオペだ!」

 とか、


「この作品はいかにも『異世界転生/転移』モノに見えるかもしれないが、実は違う。たしかに魔法が出てきたり、エルフとかが出てきたりするが、実はこれはヴァーチャルリアリティであり、記憶喪失だった主人公は物語の最終盤でそのことを思い出す筋書きになっている。だから『転生』も『転移』もしていなければ『異世界』ですらないサイエンス・フィクションだ!」

とかいう書き手はぜったいに出現すると思います。


 あるいは「異世界転生/転移」のキーワードを序盤はあえて無視し、ジャンル別のランキングで注目を浴びた後、運営から何かしらの警告をされた段階で「あ、うっかりしてました(もしくは「“ジャンル変更”の意味がまだ良く分かってなくて……」)」という理由でコロッと態度を変える、といったことをするだろう人もいると思います。


 このようなことをするかもしれない人たちについては、あえて評価しません。ただ、もし運営が「『異世界転生/転移』モノであるにもかかわらず、必須キーワードに登録されなかった場合は処分対象になる」という行動を考えているのならば、「『異世界転生/転移』モノ」をまず定義しなくてはならなくなります。


 しかし「定義する」ということは、ウラを返せば「例外を認める」ことに繫がります。完璧な定義ができれば話は別ですが、もし抜け道が発見された場合、「『異世界転生/転移』モノであるにもかかわらず、必須キーワードに登録されなかった場合は処分対象になる」という言葉は虚しい言葉になります。


 完璧な定義をしてしまった場合、別の問題も生じます。息苦しさを感じて退会する人も出るのではないでしょうか。それがいいことなのか悪いことなのか(ユーザの側としては)分かりませんが、運営の側としては退会者が増えるのは困ると思います。というか、死活的な問題です。


 「なぜ死活的なのか?」というと、人が絶えず流入して作品を作ってくれないと、「小説家になろう」のモデルそのものが、危機に瀕するためです。これは「作品を掲載したら、広告料が獲得できるから」といった単純な問題だけでなく、大量の作品が頻繁に投稿される中で、ブックマークの多い作品が残ってもらわないと困るためです。人の流入が途絶えると、ブックマークをつける人も、作品を投稿する人もいなくなります。そうなると必然的にブックマークの総量は減少し、潜在的にブックマークを獲得しうる作品が埋もれてゆきます。この影響は目に見えづらいですが、かなり威力があります。ほとんど自転車操業のようなものといってもいいかもしれません。

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