1話
【はじめに】
本作には暴力行為や未成年の飲酒喫煙の他、法律に反する描写があります。
これらは演出上のものであり、本作はそれらを推奨するものではありません。
絶対に真似しないでください。
「いらっしゃいませ!」
道長は、愛想良くそう挨拶をした花屋の店員を凝視した。
――こいつ知ってる。
自分と同じ16、7歳くらいの少年。
学生らしい髪型。
地毛だろう黒髪。
真面目そうな一重。
下がり気味の眉。
主張しない鼻。
若干厚めの唇。
どちらかと言えばやせ気味で。
すこし小柄。
特にこれといった特徴もないどこにでもありそうな容姿。
髪を金色に染め、ピアスをいくつも開け、長身を生かしてケンカに明け暮れ、小学六年生のころにはすでに暴走族の真似事をやっていた、目つきの悪い自分にこんな知り合いは皆無のはず。
なのにはっきりと記憶にある目の前の少年。
「――…お前…」
数ヶ月前の光景を鮮明に思い出す。きょとんとしていた店員も思い出したらしい。
「あー!あのときの!その節はどうも」
言って店員は満面の笑みを浮かべ深々と頭を下げた。道長もつられてなんとなく返事をする。
思いもよらない再会に、なんだか妙な気分だった。