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第4話

 翌日の朝、部屋の掃除を終え、洗濯物も学園の召使いの人と一緒に洗濯し終わり、暇になったのでちょうど授業中という事もあったので校舎内を探索することにした……のはいいんだけどあまりの広さに五分も経たずに迷ってしまった。

 一階へ降りることはできるんだけど契約精霊が集まる広場に繋がる扉が見つからず、右往左往していたらいつの間にか見たことも無い場所に出てしまった。


「ん~……迷った」

 エリンさんの研究室に行こうかと思い、三階に足を運んだのはいいが研究室があり過ぎていったいどれがエリンさんの部屋か分からず、結局一階に戻ってきてしまった。

 食堂に行こうにも場所が分からないし、広場に行こうにも場所が分からないし……はぁ。どこか暇つぶしが出来るところを探しておけばよかった。

 そんなことを考えながら曲がり角を曲がった時、廊下に黒いローブを纏っている連中が見え、なんとなく柱の陰に身を隠した。


「もうすぐだな」

「あぁ。もうすぐ精霊会がある」

「女王陛下も来られる……最高評価を頂ければもう人生は決まったも同然だ」

 ふ~ん。なるほど。契約精霊同士でやる何かの大会みたいなものが近々開催されるってわけか。となるとそこに俺も出場しなきゃいけないんだよな。

 少しでも体を鍛えておくか。


「あぁ、早く開催日にならねえかな」

「まあそう焦るなって……そういや、あの噂聞いたか」

「噂? あぁ、リイザが人間と契約したってやつだろ」

 ほほぅ。早速俺の噂が学園中に広がっているのか……通りで昨日、視線がやたらと向けられていた訳だ。まぁ、人間と精霊契約を結ぶのは前例があるみたいだけどほとんどないみたいなんだな。


「あいつも不運だよな」

「そうだな。失敗作(ミスバース)の上に人間と契約したなんてもう評価最悪だろ」

「あいつの優勝は無いな」

「それどころか出場すら危ういんじゃねえの?」


 男子どもは下卑た笑顔を浮かべながらそんな話をするとどこかへと歩き去っていく。

 ……ミスバースってあだ名はあいつらの表情を見る限り、あまり良い評価のあだ名じゃないみたいだな……それになんで人間と契約したからって評価が最悪なんだ。

 まるで自分のことをバカにされているような感じがして怒りが湧いてくる。


「よっ」

「ひぅあぁ!? び、びっくりした」

「はっはっは。驚き過ぎだよ」


 後ろから急に肩を叩かれ、驚きながら後ろを振り返ってみると白いローブに身を包んでいるエリンさんが俺の驚き様を笑いながら立っていた。

 誰でも後ろから急に肩叩かれたら驚くだろ。


「いつまでも剣を生身の状態で持っているのも辛かろうと思って鞘を作ってきたよ」

「あ、ありがとうございます」

 鞘というかどちらかというと背中に背負うタイプの入れ物に近い。ギリギリ腰に携えることが出来るけど動くときに揺れ動いて邪魔になりそうだから背中で背負うか。

 タスキをかけるように斜めに傾けた状態で紐を結び、そこに剣を入れる。


「ちなみにその鞘も剣と同じ鉱物で出来ているから二本目の剣として使えるよ」

「へぇ……あ、そういえば精霊会って何なんですか?」

「精霊契約を終えた生徒たちによるお祭りのようなものだ。まあ、簡単に言えば自慢大会だ。自分はこんな強い精霊と契約したんだぞって言うね。そこでは種族・容姿・強さの三つの観点から評価がなされる。もちろん評価をするのは教師たちだ。契約の儀式での評価の高さが将来の自分の進路を決めるといっても過言じゃないからね。それにこの行事は女王陛下も参加される一大行事さ。この時期になると陛下は忙しなく国中を回っておられる。ちなみにうちの学園は最後だ」


 なるほど。あいつらが優勝だのなんだのって言っていたのはこの事か。まあ、そりゃ女王陛下から一番いい評価を頂けたら将来の進路はもう決まったも同然なくらいの影響力はあるよな。

 となると俺もそこそこの評価は貰わないといけないわけだ……ていうか何やるんだ?


「それで何やるんですか? バトッちゃいます?」

「バ、バトる?」

「あ、えっと……戦闘とかやるんですかね」

「うむ。基本的に契約精霊同士の戦闘は禁じられていてね。見るのは潜在的なものさ」

 つまり雰囲気で決めるってことか……難しいな。

「ま、そんなに気張ることはないよ」

「はぁ……そうですか」

「ところで何故、君がここにいるんだね?」

「へ?」

「契約精霊は広場にいるぞ?」

 あぁ、そんなルールあったな……まぁ、全部の契約精霊が俺みたいな人型じゃないし、大きさだってバラバラだから広場に集めるのも仕方ないか。

「迷いました」

「なるほど。ここは五階建てなうえに広いからな。迷ったら外へ飛び込めばいい」


 いや、何満面の笑顔でサムズアップしながら怖いこと言ってるんですか。ここが一階だからいいけどこの人まさか三階から飛び降りろとか言わないよな……言わないよな?

 試しに近くの窓を開けて外を覗きこんでみると少し先に赤いヘビの尻尾が見えた。


「あぁ、なるほど。近かったんすね」

「まあな。では、また会おう」

「うっす」




――――――☆――――――――



 その日の晩、リイザの部屋にやってきた俺は何故か冷たくてかたい床に正座させられていた。

 ちょっと思い出そうか……昨日と同じように晩飯食べ終わったら魔法陣が出てきたからその上に乗ったら部屋に到着した。

 でもなぜか、こいつに正座しろと言われた。うん、回想終了。


「明日、精霊会なの」

「おう、知ってるぞ。確か自慢大会だろ」

「まあ、大体あってるんだけど……で、その自慢大会なんだけど……私は辞退することにしたわ」

「は? なんで。これから先の進路には必要なんだろ?」


 確か精霊会には女王様もやってくるって言っていたし、そこで良い評価を貰えたらその先の進路だってもう決まったも同然なはずなのになんでそれをこいつは降りるなんて言い出すんだよ。

 そんなことを思うがふと、他の奴らがこいつのことをミスバースと言っていたことを思い出すとともにこいつの契約精霊が俺であることを思い出す。

 つまりこいつは俺と契約してしまったから……。


「別に評価なんてこれから作っていけばいいんだから」

「……本当にそれでいいのかよ」

「良いの。こんなところで出来損ないなんて言う評価を頂いたらそれこそ人生終わったもんよ。でも辞退すること自体は何もおかしいことじゃないもの」

「……まあ、お前がそれでいいのなら」

「良いわ。じゃ、おやすみ。明日は一日、特訓するわよ」

「おう」


 リイザが横になったところで俺も床に敷かれた布団に横になる。

 ……もしもあの時、俺がこいつを助けていなかったらあいつは俺なんかとは契約せずにあの赤いドラゴンと契約していたんだろうか……もしそうだとしたら俺はこいつの人生をぶち壊したことになる……これが有難迷惑ってやつか。やっぱりあの女の言っていることは間違いだらけだ。

 その時、後ろの方から鼻を啜る音が聞こえ、あいつにばれない様にベッドの傍に行ってみてみると顔は見えなかったけどあいつの肩が少し震えているのが分かった。

 …………決めた。俺は強くなる……こいつの人生をぶち壊した責任以上に……こいつの契約精霊として俺は強くなる……。

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