バツイチが語る 離婚の真実
はじめに
この書籍を読んでくださる、すべての方に、感謝いたします。ありがとうございます。
私は、離婚経験のある、バツイチ32歳の女性です。離婚経験者の方、そして、離婚を考えている方、シングルの方、すべての方にとって、私の経験談が何らかの形でお役に立てることを、心から望んでいます。
結婚した時、パートナーと共に生きて支え合っていくことを決意しました。もちろんその時は、別れることなど微塵も考えてはいませんでした。でなきゃ結婚なんてしませんよね。一生その人を愛すると、たくさんの人の前で誓ったのです。
けれど、人生とは上手くいかないものですね。私は結局、離婚という決断をしました。そのとき、ひどい罪悪感に襲われたものです。それもそのはず。私は、人生での大きな大きな約束事を、破ってしまったのですから。
『離婚』と聞いてまず思い浮かぶのは、みじめで悲しい、大変そう、結婚に失敗した、そんな印象ではないでしょうか。
離婚経験者の方。
大変でしたね。私もあなたと同じ、経験者です。私には子供がいませんが、お子さんがいる方は、もっと複雑だろうと想像します。
ですが、子供がいようといなかろうと、離婚によって失われる一番大きなものは、『自分自身に対する自信』ではないでしょうか。
離婚直後は、たくさんの時間とエネルギーをそれに取られるので、他のことに対する気力が落ちてしまうのも、無理はありません。とてもつらい時期です。
ですが、その時期こそが、私たちを強くしてくれるのです。
『自信のなさ』は、常に謙虚でいる姿勢にもさせてくれます。
私たちは、前向きに、胸を張って生きていくべきなのです。必ず親切な人がいて、あなたを良い方向へと導いてくれます。大切なのは、私たちがそこでどうするか。いじけて腐っている必要はないのです。
『離婚』という大きな試練を乗り越えたことによって、より幸せになる権利があるのです。
離婚を考えている方。
このままでいいのか。離婚したほうが良いのではないか。そう思っているなら、まずリアルにしっかりと『離婚』を想像してみてはいかがでしょうか。
結婚生活は幸せではない。だから離婚したい。しかしながら、実際はそんな単純なものでも、甘いものでもありません。
お金のこと、お子さんのこと、結婚によって縁があった多くの人たち(特に相手のご家族と親戚)。すべての事情をよくよく考えた上で、それでも離婚したいのでしょうか。
離婚を切り出すのが、あなたなのであれば、その前に、死ぬほど考える必要があります。生半可な気持ちで口にして、相手を深く傷つけてしまってからでは、後戻りはできません。
相手は全くの他人なのですから、一度口にしたことというのは、一生忘れられない傷になる可能性があるのです。
思いとどまって幸せになれるのなら、それが一番ではないのでしょうか。
そこにまだ、あなたの幸せがあるのなら。
1ミリも、いや、1ミクロもない!と断言できるのなら、あなたの幸せのために、離婚してはどうでしょうか?そんな選択肢もあるのだと、少し楽な気持ちになるかもしれません。
シングルの方。
あなたはなんてラッキーなのでしょう。
これからどんな道も可能であり、結婚というものに純粋な夢を持っていられるのです。
実際には、結婚というのは、人生のゴールでも、恋人たちの終着点でも何でもありません。
それは我慢と妥協の始まりかもしれませんし、退屈極まりない毎日の幕開けかもしれません。
・・・もしくは、結婚は、毎日幸せで仕方ないもの。「もう幸せすぎて怖い!誰か助けて!」ってなものかもしれません。(・・・)
結婚は義務でもなく、今この時代、しなきゃしないで良いでしょう。どうぞフィーリングに従って、楽しい人生を送っていただきたいです。
ただ、もし、あなたの周りに、最近離婚した人がいる場合は、どうか親切にしてあげてください。彼らはあなたの知らない、人生の機微を噛みしめているのです。過度に親切にする必要はありません。ごく自然に、さりげなく親切にしてください。
よろしくお願いいたします。
第一章 決断
30歳の春、私は離婚しました。
5年間の結婚生活は、周囲からは問題ないように見えていたようですが、実際離婚を決めてからの日々は大変で、ほとんどのエネルギーを費やさなければなりませんでした。それは考えていた以上のエネルギーの消費だったのです。
・円満離婚
そもそも、家族以外の他人と生活するというのは簡単なことではないのです。お互いの努力と妥協によって、かろうじて成り立っているのが結婚ではないでしょうか。
その努力もむなしく、私は5年間共にした他人から、もう一緒にはいられないと決断されました。離婚を提案したのは私だったのですが、2人の結婚生活はすでに破綻しており、二人とも同意の円満離婚でした。
「子供がいなくて良かったじゃないか。」
「まだまだ若いんだから、いくらでもやり直せるさ。」
周囲は私を励まそうと色々な言葉をかけてくれました。そのどれもが、私の心の中を上滑りしていき、私は作り笑いを浮かべて言いました。
「本当に感謝しています。励ましてくれる人がいるおかげで元気でいられます。」
そんなことはちっとも思っていなかったけれど、そう言ったのを覚えています。
人に会うたびに非常に疲れ、バイト先に頭を下げてシフトを増やしてもらい、謝罪しながら苗字の変更を告げて回るのも骨が折れました。その時の私は夢中だったので気がついていなかったのですが、あの頃の私が傷ついていたのは、離婚した、という紛れもない事実だったのです。
私は、子どもがなかなか出来なかったので、不妊治療をしていました。最初は、お金はかかるけれど、きっとこれで子どもが出来る、と信じていました。けれど、時間が経つにつれ、体は消耗し、毎月の落胆と通院が苦痛になってきました。ある朝、わけもなく涙が止まらくなり、やめる決心をしました。
不妊治療をやめ、その後パートを始めるとともに、少しずつ結婚生活に疑問を持つようになっていきました。
それでも私は、子どもだけが全てではないと信じていたし、私の母もそう言って私を励ましてくれました。母に文句を言うのは筋違いだと、十分分かっていたけれど、「子どもが2人もいるお母さんに、私の気持ちなんて分かるわけない」などと、やつあたりをすることもありました。
なんてひどいことを言ってしまったのでしょう。母はさぞ傷ついただろうと思い、最近になって「あの時はごめんね。」と謝ったのですが、母は全く覚えていませんでした。それならそれで、いいのですが。
離婚してから、ほとんどの時間は苦しみだったように思います。
まずは将来への不安、経済的なことが大きく頭をもたげました。お金がないというのは、本当に大きな不安でした。
私は実家に戻り、昼も夜もバイトをして、あまり物事を考える時間がないようにしました。家族が心配して見守ってくれたことは、本当にありがたかったことです。
その一方で、家族ではない他人と生活をし、その結果嫌われてしまったという事実に、人知れず打ちのめされていたようにも思います。今思えば、被害妄想のようなところもあったのでしょうが、「血が繋がっていない人は、私をいつか嫌いになる」とまで思い詰めることも多かったのです
私は友達に会うことにしました。結婚していた5年間は、友達と気軽に飲みに行くこともなかったので、純粋に、それをやってみたかったのです。
友達は離婚の理由を知りたがりました。なぜ相談してくれなかったのか、とも言いました。相談。そんなことは一度も考えたことはなかったので、若干面喰いました。
「相談していれば、離婚を食い止められた・・・?」
いいえ。そんなことは決してありません。深い悩みほど、人には打ち明けられないものなのですから。ましてや男女の間のこと。他の誰にも、心から理解できることなど一つもありません。
私はなぜか友達にこう言いました。
「離婚して、今が幸せだから、これで良かった!今のほうがずっと幸せ」と。
それは半分嘘でした。虚栄心から、本当はお金や将来への不安、孤独感でいっぱいなのを隠していたのです。
確かに、時間を気にする必要もなく、遠慮しないで出かけられるのは楽しいことでした。けれど、その代償として、大きな不安が押し寄せました。今まで夫に甘えていた分、私はより孤独になりました。けれど、その孤独を人に話すことは、結局ありませんでした。友達は、「カナは強いから、大丈夫!」と言い、私もその瞬間はそう思いました。そして次の日になり、すっかり酔いがさめてから、いや、私は強くなんてない、と思うのでした。
それでも離婚を後悔したわけではありませんでした。何しろ、掛け持ちのアルバイトで、そんな暇なんてなかったのです。
花屋とカフェと岩盤浴。朝から深夜まで毎日働き、丸一日の休みなど取らずに働きました。岩盤浴のバイトが夕方から深夜までだったので、一日の疲れがどっと出て、岩盤室内でよくふらつきかけていました。そんな時は、掃除用のホースで水を頭からかぶり、復活していました。高校時代の部活動よりも、ストイックだったと思います。
今となって、私は思うのです。
あの頃はそれで良かったのだと。普通の正社員の仕事を持っていたとして、夕方帰ってきて何をするのでしょう?悶々と将来を不安がっただけだったろうと思います。両親はまだ、娘の離婚に落胆していたし、心配していました。私が家にいるのは眠っている5時間程度だけ。テレビなど見る暇もないので、主婦の頃見ていた朝ドラや昼ドラは、すっかり分からなくなってしまいました。
「あれ、どうなったの?」と母親にあらすじを尋ねながら、何週間か前には主婦としてそれを見ていたことを、まるで他の人の人生のようにも感じました。数週間で、人生が音を立てて変わった事実に、変な話ですが、とても興味深く感じました。
さて、どうしよう。
私には何もない。これからどうなるんだろう。
私はその時思ったのです。
「私は、どうしたいんだろう。」
私を一番不安にさせたのは、離婚して、これから自分はどうしたいのか、自分でも分からないということだったのです。
・次々にやってきた請求書
元夫の扶養に入っていた私は、社会人として当然の義務や常識に、疎かったのだと思います。
がむしゃらにアルバイトに明け暮れている毎日に、私宛の郵便が送られてきました。
市民税、車の保険、年金、携帯電話などの請求書でした。それらはすべて、結婚していた間、夫が払っていたものでした。満身創痍の身体は、それらを見たとき、さらにどっと疲れました。
けれど、払うべきものは、払わなければなりません。それらを支払い、小市民として生きていくのすら大変な、私の現在の状況を、把握しました。
離婚届も、もちろん気が重いものでした。あの紙きれは、おそらく婚姻届よりも存在感を放ち、そして負のオーラを発しています。秤にかけたら、実際、普通の紙よりも重いのではないかと思うくらいです。
ところが、この請求書たちと言ったら、はるかにダメージ力を持っていて、なおかつ現実的なのです。私が甘いと言えばそうなのだけれど、こうもよってたかって来るものなのかと、愕然としました。
請求書たちは私に教えてくれました。
「自分がどんなに甘えていたか、気が付いたかい?そう。君はもはや、自分のことは、自分で責任を取る必要かあるんだよ。」
しなければいけなかったのは、このようなことです。
・国民健康保険や年金等の変更・加入
・住民票の変更
・免許証の氏名変更
・郵便局や銀行などの各名義変更
・車の保険の加入し直し
なるほど。
私は甘えていたのです。元夫にお金のことはすべて任せ、世間知らずでも、それでも困りはしなかったのです。それが今、こうした形で私に教えてくれているのだと思いました。
了解。認めましょう。
私はこれから、一人で生きていかなければならないのです。社会の一員としての義務を、把握しなければならないのです。
バツイチの32歳として。
そこに他の選択肢はないのだから。
・謝り疲れ
離婚したことを、謝らなければならない人たちがいました。夫の両親です。
私は、彼らにとても良くしてもらっていました。いい距離を保っていてくれたし、よくご馳走もしてくれ、プレゼントももらいました。それはひとえに、自分の息子を支えてくれる、嫁であったからなのです。
その日、ちょくちょく訪れていた夫の実家が、まるで、魔法にかけられたダークな城のように思えました。謝罪のために訪れたあの日のことは、今思い出しても、緊張と恐怖のオンパレードだったと思います。
私はひたすら謝り、それを彼らは冷静に受け止めてくれました。
「とても残念だけれど、二人がそれぞれ別の道を歩んでいっても、人生は続いていく。きちんと仕事をして、まっとうに生きていくことを願っているよ。」
と、彼の父親は言いました。
元姑はというと、ずっとキッチンにいて、最後に一言、「本当に残念。」とつぶやいたのでした。
私は彼ら両方の言葉を受け、また罪悪感でいっぱいになりました。二人とも私に対して、いつも優しかったし、それは最後まで変わることがなかったのです。
けれど、生活していたのは、恋愛を経たただの男女。もう、お互いにどうやっても無理なのは、私たちが一番分かっていたし、こうして謝る過程は避けられないと、十分知っていました。
彼の両親に謝りながら、今までありがとうというような感謝の気持ちを伝えるのは、不謹慎なような気がして、私はただ、うつむくことしかできませんでした。
全力で誰かに対して謝るという行為が、こんなにも疲れることなのかと、私はそこで知りました。私に残っていた精神的なエネルギーは、根こそぎ持って行かれたような気がしました。
その反面、それが終わると気分はいくらか楽になっていたのも事実です。もう一番大きな波は超えた。そんな風に思いました。
実際、謝って割り切れないことを、謝って済まそうとしたのだから、困難に感じて当然だったのです。
結婚して、彼らの一番の宝物を大切にする、という約束を、守れなかったわけなのですから。
けれど、もう仕方がないのです。だったら、誠実に謝るしか道はない。そう自分に言い聞かせていました。
・自身の離婚から思うこと
離婚直後に受けたダメージというのは、私の想像を、はるかに超えるものでした。
離婚のデメリットは、経済的なことと、精神的なことと、2種類あります。
女性の場合は特に、お金に対する不安、離婚後の就職や、年金、保険の手続きなどの問題があります。
お子さんがいらっしゃる場合は、どちらが親権者になるかという問題があり、双方とも子供の親権を希望するなら、親権者と監護者に分ける必要があります。
さらに、子供にとって、両親が離婚すると言うのは、非常に酷なことです。養育費についても、二人でよく話し合って、決める必要があります。
これらのことを、いっぺんにやるのは大変なことであり、また、不可能であるとも言えます。面倒な手続きや書類関係のことは、離婚してからも、しばらくの間続きます。
精神的なことでは、離婚したことにより、消耗し、自信を失います。
私自身の経験談でも書いたように、さまざまな人へのお詫びが必要にもなり、それによって、さらに疲労します。人にもよりますが、たいていそのストレスは、身体的にも影響を及ぼし、軽いことでは激やせや激太り、深刻になると、うつ病やその他の精神病にかかることもあります。
とはいえ、実際、離婚経験者たちに話を聞くと、みんな口をそろえて「離婚して良かった」と言います。たしかに、例外なく、離婚直後は大変なものですが、過ぎ去ってしまえば、それも修行のようなもので、その後の人生の役に立っているのです。
結婚生活で無理をしていた、または我慢していたすべてのことは、可能になります。毎日の時間は自分のものになり、好きなことにも没頭できます。
また、子供にしてみても、両親が別れることになったとしても、幸せな顔をしている方が良いに決まっているのです。
第二章 それぞれの離婚
・協議離婚
離婚する人の90%は、協議離婚が占めており、夫婦での話し合いにより決めるものです。
合意ができれば離婚届を提出するだけで離婚が成立します。
まずは、しっかりと離婚を想像した上で、準備と話し合いを持ちます。
この時点で、離婚したくない場合は、家庭裁判所に、夫婦関係円満調整の調停を申し立てることができます。
まず、離婚の理由について、相手にどのように説明するか、というのがポイントになってきます。
夫婦によっては、もはや会話もほとんどなく、お互いに「離婚した方が良いのでは」と思っているケースも多くあります。これは非常に話が早いです。
かくいう私もこのケースでした。切り出したのは私でしたが、今思えば、彼の方も、『待ってました』と言わんばかりだったように思います。それはそれで、複雑だったのですが。
ここで大切なのは、決して感情的にならないこと!
ただの夫婦喧嘩ではないのですから、冷静に、これからのことを話す『会議』くらいのつもりで、落ち着いて取り組まなければなりません。
離婚の意思を伝えること、これからのことをどう考えているか、ということ明確にする必要があるのです。
・調停離婚、裁判離婚
離婚する人の9%は調停離婚です。夫婦での話し合いで離婚が成立しない場合、 家庭裁判所に間に入ってもらい、調停を利用して離婚を成立させるものになります。
離婚調停を起こすには、『夫婦関係調停申立書』に必要書類を添付して提出します。
家庭裁判所内の家事相談コーナーに問い合わせれば、無料で相談に乗ってくれます。
審判離婚は極めて少ないケースです。
調停での離婚が成立しなかった場合、 家庭裁判所が離婚をした方が良いと審判をすることがあります。
審判に不服のある場合は2週間以内に異議を申し立てれば効果はなくなります。
2週間を過ぎると審判は確定し審判離婚が成立します。
家庭裁判所で離婚の調停が成立しなかった場合、 夫婦のどちらかが地方裁判所に離婚の訴訟を起こし、離婚を認める判決を得られれば離婚が成立します。
ただし、判決に納得のいかない場合は高等裁判所→最高裁判所へと争うことができます。けれども、このケースはごく稀です。
・慰謝料は何を基準に決められるのか
離婚したら、必ず慰謝料がもらえるわけではありません。
慰謝料は、相手の行為によって受けた精神的苦痛に対する損害賠償のことです。
ちなみに、財産分与というのは、協議離婚の場合、離婚時に財産を折半することです。
慰謝料は、離婚当事者の個々の事情によって決まりますが、算定の際に考慮される要因としては、次のようなものがあります。
・財産分与の額が大きければ一般的には慰謝料の額は低くなる。
・精神的な苦痛の度合いが大きければ高くなる。
・有責性の度合い。請求側にも有責性があれば減額される。
・当事者の経済状態。資力が十分であれば高くなる。
・その他 ・・ 離婚に至る経過、婚姻期間、別居期間、当事者の年齢、性別、職業、社会的地位、結婚期間中の夫婦の協力の度合い、子どもの有無、結婚生活の実態、財産分与の額、親権、監護権の帰属、養育費の額、離婚後の扶養の必要性など。
それぞれのケースに応じて、慰謝料を請求できるかできないかということが決まります。一般的には、結婚生活の中で相手が浮気をしたとか、DVをしたという不法行為があった場合、請求が可能になります。
しかしながら、私自身も含め、離婚理由として最も多いであろう「性格の不一致」は、慰謝料の対象にはなりません。
・扶養的慰謝料
夫婦のどちらかに生活能力がない場合には、離婚することによってすぐに生活苦に陥ってしまうことも考えられます。このような場合には、生活力のある配偶者が離婚の責任がなくても、生活力のない配偶者に扶養的な意味を含めた一時金が支払われることがあります。(扶養的財産分与)
また、慰謝料を確実に受け取るためには、一括払いにすることです。分割払いにするときは、初回の支払額をできるだけ多く設定するようにします。離婚後になると、相手が出すのを渋ったり、気が変わったりすることもあるからです。お金のことは、離婚の際、最も重要なことだと認識し、真剣に考えましょう。
支払の期間、支払金額、支払方法について具体的に決めておく必要があります。
お金の問題は、離婚問題の中で、もっとも頭の痛いところではありますが、とにかく避けたいのは、感情的になって判断を誤ることです。
冷静になって、自分のこれからのために、必要な請求であったり、子供の養育費であったりとのことは、しっかりと考慮してから判断しましょう。
・DVを受けた場合
DVを受けている場合、離婚を切り出したとたんに、暴力がエスカレートすることがあります。そこで、離婚を切り出す前に、警察や、配偶者配偶者暴力相談支援センター、女性相談センターなどに相談することをおすすめします。
また、DVと見なされる暴力には、次のようなものがあります。
・身体的暴力
・精神的暴力
・社会的暴力
・経済的暴力
・性的暴力
また、慰謝料を請求するには証拠をそろえておく必要があります。
・暴力をふるわれてケガをしたときの診断書
・暴力を受けた日時、場所、具体的な様子などをメモしておきます。
・自分が受けた精神的、肉体的な苦痛を記録した日記も証拠になります。
いったん離婚が成立した後には、相手方がなかなか慰謝料の話合いに応じず、応じたとしても額を低く値切られることがありますので、慰謝料を請求するのであれば、離婚が成立する前に請求するべきです。
慰謝料は、損害賠償金またはそれに類するもので心身に加えられた損害などに起因して取得されるものとして所得税法では非課税とされています。
・セックスレス
私自身もそうでしたが、夫婦の関係うまくいかなくなると、セックスレスに陥ります。身体的なふれあいによって、愛情やコミュニケーションをとっていることは、みな同じです。その欠如というのは実は深刻なサインだと言えます。
私たちは、自分たちが考えている以上に、言葉以外のものでコミュニケーションをとっているのです。
目配せだったり、手をつなぐことや、軽く触れること、そして恋人同士や夫婦間でのセックスです。
夫婦になると、その愛情は、恋愛ではないものに変化していくかもしれません。けれど、触れ合うこと、セックスすることで、つまらない口論などは避けられるという研究結果もあります。
ちなみに、離婚する夫婦の60パーセント以上は、結婚して5年未満というデータがあります。なかなか子供ができない、または、子供が出来てから相手を、父親、母親としてしか見られなくなった、そのような理由によるものです。
不妊治療していた時に、読んでいた本の中に、不妊治療している期間中の夫の浮気は意外と多い、というものがありました。
排卵期を狙ってのセックスに、夫の性的な興奮が萎えてしまう、ということがあるそうです。確かに、そういうこともあるかもしれません。
ただ、不妊治療の経験もある私の意見を言うのであれば、どんなつらい思いをして、その日のために準備してきたのか、ということになるのですが。
不妊治療というのは、女性にとって、心身ともに、かなり過酷なものでした。
セックスレスが、どちらか一方の原因だった場合、損害賠償を請求できることもあります。
その際有力な証拠として、日記などに、いつからセックスをしていないか、拒まれた時のことなどを記しておく必要があります。
・世界の離婚
私は、離婚後イギリスに留学しました。仲の良い友達ができると、私の離婚の経験談なども話したものですが、彼らの反応は極めて普通のものでした。
日本では、まだまだ珍しいように感じる離婚ですが、実際のところはどうなのでしょうか?
厚生労働省が2015年1月1日に発表した『人口動態統計の年間推計』によれば、日本の離婚率は「1.77」です。これは人口1000人当たりの離婚件数です。
では、世界各国の「離婚率」はどうなっているのでしょうか。
世界主要国の離婚率を見てみましょう。
■世界主要国の離婚率
第1位 ロシア 4.5
第2位 アメリカ 3.6
第3位 ドイツ 2.19
第4位 イギリス 2.05
第5位 フランス 1.97
第6位 日本 1.77
第7位 イタリア 0.91
G8各国のうち、7カ国の離婚率ランキングはこうなっています(カナダは下記の国連のデータにありません)。
ロシアがダントツで多いですが、イタリアの離婚率の低さにも驚きです。イタリアでは、人口1000人当たりの離婚が1件に満たないのです。これは、宗教観が大きく影響しているといえます。
イタリアでは、キリスト教信者が多く、離婚というのは、非常に稀なことと言えるでしょう。実際、私がイギリスの語学学校で出会ったイタリア人は、私が離婚したという事実に、非常に驚いていました。
対して、イギリスでは、離婚件数が多く、離婚は珍しいものではありません。けれど、イギリス人女性というのは元来気が強く、意見を押し通します。離婚の際、根こそぎ財産を絞り取られるというイメージから、結婚したがらない男性が多いのが実際のところです。離婚も非常に面倒で、まず離婚するために8万円ほど必要です。書類を申請してから、何ヶ月も待たされるということもあり、多くのイギリス人は、書類上の離婚を後回しにして、新しいパートナーと生活を始めます。
では、婚姻率はどうなのでしょうか。
日本とアメリカの「婚姻率」と「離婚率」の比較を見てみましょう。
●アメリカ
婚姻率:6・8 離婚率:3.60
●日本
婚姻率:5.2 離婚率:1.77
アメリカでは、人口1000人当たりの結婚6.8件ですが、離婚3.60件。
6・8件結婚しても3.60件の離婚が発生するわけで、つまり「結婚した2組のうち1組は別れる」ということが分かります。あくまでも、データ上のことですが。
また、このデータを見る限り「1組以上別れる」傾向があることが分かります。
同じように考えると、日本の場合「2.9組に1組」が別れるといえるのでは? という状況なのが分かります。約3組に1組は、離婚しているということです。
日本での離婚率は、残念ながら、年々上昇しているのが現状です。世界的に見るとまだまだとはいえ、アメリカと比べても分かるように、それは大きな開きではありません。
離婚したカップルが多くなっているのに対して、人々の離婚へのイメージというのは、まだまだその現実に追いついていないような気もします。
・離婚を考えるカップルたち
・離婚したくてもできない
一概して、離婚経験者というのは、前向きな人が多いものです。私が離婚経験者で、色眼鏡をかけているからではありません。事実、離婚経験者は、前向きで、タフなのです。これは、『離婚直後のいざこざ』という最悪の状況を脱したという安堵感、そして、「あの時に比べれば、こんなことはたいしたことではない」という考えが、ある種のおおらかさを醸し出しているからでしょう。
一見この人たちと近いように見えて、真逆の位置にいるのが、『離婚を考えている人』です。
もちろん、私だって、その日に思い立って、その日のうちに離婚したわけではありません。何年も疑問を抱え、愛情というのは戻ってくるのかもしれないと期待し、それでもうまく行かず、最終的に『離婚』という決断をしたのです。
実は、私の場合は、離婚を思い悩んでいた頃の方が大変でした。本当に離婚して後悔しないのか、そのことに自信がありませんでした。
離婚してから、離婚経験者が湧いて出てきた、と書きましたが、離婚したがっている人から、興味を持たれて、相談を受ける、ということも多々ありました。
女性が離婚したい場合、そしてその女性が主婦であった場合、離婚したくてもできないという人が多くいます。
相談を受けた、友達のRさんは、20歳の時に結婚。そして現在28歳、子供が2人います。夫のことはもう好きではないし、セックスはもう2年以上していません。子どもの世話に追われ、時々パートに出るけれど、とくに資格をもっているわけでもありません。
Rさんは、時々離婚したい思いを強く抱きます。夫のことは愛していないし、自分の子供のことは大切だけど、この人生が自分にとって幸せだとは、まったく思わない。もし子供を取られてしまっても、それでも良いような気がする、と。
私は、結婚生活にも利点はあるだろうと説得しました。必死で働く必要はなく、旦那さんの給料でやっていけるし、パートで稼いだ分は、自分のお小遣いとして使うことができます。
彼女は言いました。
「確かにそのことは幸せなことかもしれない。それに、もし離婚したとして、何もできない自分が、子持ちで就職活動をしても、良い結果になるとも思えない。だから離婚はしたいけれど、毎日、楽しくないけど、仕方がないと思って生きている。」
そう言うのです。
そのことは、私も考えたことだったので、よく分かりました。彼女は私のことを、「離婚できて、うらやましい」とも言ったけれど、それは少し違うのではないか、と思いました。
彼女の言うとおりの部分はあります。子供がいて、28歳で就職する、というのは大変なことかもしれません。たとえ運よく職が見つかったとしても、働いていく中で、子供が熱を出したりして、早退しなければならなくなることも考えられます。会社側としては、そういったリスクのある人を雇いたくないのが本心でしょう。
おそらく、離婚直後は、生活のために、アルバイトの掛け持ちになるでしょう。
私は、留学前と、留学後、3つのアルバイトを掛け持ちしました。身体的にはかなりキツイですが、これの良いところは、雇われ先が分散しているので、それぞれの上司に事情を説明し、できるようなら、その都度シフトを増やしてもらったり、減らしてもらったりするのです。その間、正社員のことも頭に置きながら、就職先を探しても良いと思います。
当然、年下のバイト仲間に叱られたり、頭を下げなければいけないこともあるでしょう。けれど、それをぐっと耐えて頑張れれば、それなりに安定して、毎月給料を得ることができます。
結婚生活で、経済的に安定した生活をしていたとしても、離婚するなら、それはいったん忘れなければならないでしょう。
ゼロからスタートする覚悟がなければ、無理なのです。
・不貞による離婚
相手の浮気により、離婚を考えるというケースも多いです。既婚者である以上、それはどんな場合であっても裏切りであり、言い訳は通用しません。
相手の不貞によって、離婚を申し立てる場合には、その浮気が一度限りではなく、継続的に行われていたという証拠が必要です。
疑わしい行動、例えば、帰りが遅くなった、家で入浴しなくなった、スキンシップが減ったなどの兆候が見られたら、証拠を押さえておくことで、離婚の理由として十分といえるでしょう。
慰謝料を相手に請求して、離婚するつもりなら、優位に立つための準備が必要です。
ただし、相手のプライベートを探ることになるので、くれぐれも慎重に。調査会社に依頼する時には、しっかりとした会社を選びましょう。
事実が明らかになるしつれて、離婚するにしろ、しないにしろ、きちんと相手と向き合わなければ、あとをひく問題です。
私の知り合いのKさんは、2年ほどの不妊治療の末、やっと赤ちゃんを授かりました。喜びに湧いたKさんでしたが、対して夫の方は、反応も薄く、あまり喜んでいないようでした。しばらくして、夫がキャバクラ嬢に入れあげていることが発覚。しかもその浮気相手に本気になってしまったので別れたい、と言われたそうです。
Kさんはショックのあまり、大きくなったおなかを抱えて実家に帰り、泣き暮れていました。それを見た彼女の両親、とりわけ父親が激怒し、「今すぐ離婚しろ。慰謝料などいらん」とKさんに言い、実際彼女は離婚しました。Kさんの実家が比較的裕福であったことは確かですが、いかに憤慨する事情であったとしても、この場合は慰謝料の請求をした方が賢明だったのではないかと思います。
Kさんの場合、子供が生まれてくるわけですし、一時の感情で慰謝料を逃してしまうのは、もったいないことです。Kさんと母親は、離婚して何年かたち、「やはり慰謝料はもらっておくべきだった」と、若干後悔しているのでした。
しかしながら、どの父親でもKさんの父親と同じことを言いたくなるのではないでしょうか。
不貞(浮気)によって傷つけられる側の気持ちというのは、本当にみじめで、悲しいものなのです。その浮気は本気だろうとそうでなかろうと、関係なく、人を深く傷つけたという行為には変わりありません。
夫が浮気した、というケースはもちろん、妻が浮気をした、という事例も増えてきています。ところが、妻側が浮気をする、というのは、男性のそれとは比べ物にならないほど周りの目は厳しいのです。
日本だけでなく、世界的に、男性というのは不貞をする生き物です。それによって歴史が変わったり、破滅の道への始まりだったり、さまざまな例が掃いて捨てるほどあります。
数の問題で、女性の浮気は少数派であり、本能として、生理的に、『女性は浮気をする必要がない』という、観念があります。また、社会的な常識から言っても、「女性の浮気」は、男性のより、許されづらく、深刻であると言えるでしょう。
女性が浮気をするときは、男性以上に、離婚は避けられないと腹をくくった方が良さそうです。また、稼いでいる女性であれば、慰謝料を高額請求されることも覚悟しましょう。
・義母との同居
結婚生活の初期の頃は、小さなアパートで二人きりの生活を始め、お金はないけれど、ほっこりしてとても幸せなものです。
ところが、意外と夫婦が険悪になってくるのは、子供もできて、昇進して給料も上がり、「さて、そろそろ家を買おうか」となってきた時期なのです。
私は、結婚していた頃、奥さんたちの井戸端会議というものが本当に苦手でした。逃げられるときは上手く逃げていましたが、社宅だったため、草むしりや引っ越しの手伝いなどで、どうしても逃げられない時というのがありました。
「家を買う」そうなった時、夫婦はかなり険悪になる。これは幾度とない主婦たちの会話を聞いていて、自信を持って言えることです。
まず、家をどこに建てるかという問題があります。夫の実家の近くなのか、それとも妻の実家の近くなのか。子供がいれば、彼らにとっては孫なのですから、少しでも近所に住んでほしいという思いがあるでしょう。
これはよくある話なのですが、例えば、夫か妻の両親が地主であったり、田舎に広大な敷地を持っているとか、余っている土地が彼らの家の敷地内にすでにあるという場合です。「土地があるから、あそこに家を建てなさい」と夫の両親に言われたとします。家のローンだけですむのは有難いけれど、妻としては、これから先、ことあるごとに夫の両親に口出しされたり、今以上にしょっちゅう訪ねてくるのではないか、と不安になります。
「同居しましょう」と言ってくる両親もいるでしょう。若い夫婦にとっては、何より経済的に助かるし、一緒に暮らすのが自分の両親であれば、居心地も良いでしょう。
ところが、義理の両親と暮らすというのは、並々ならぬストレスです。はっきりと言いましょう。どんなに良い性格で、出来た人間であろうと、義理の両親と暮らすというのはストレス以外の何物でもありません。
夫の両親と同居している妻が、いつもにこやかで、義理の両親からも好かれ、幸せそうにしていても、うちに秘めている不満というのは溢れるほどあるのです。
そのことを察して、ねぎらってくれ、感謝を伝えてくれる夫であれば、妻はいくらか救われます。ところが、「君は僕の両親と上手くやっているから、いっそ同居しよう」などと軽い感じで言われ、「この人、何を言っているの?」ということになると、お互いの価値観の違いは否めません。
同居することになったり、どちらかの両親に偏って身近な生活を送っていると、やがて、それによってストレスを強いられた側が、「こんなことは最初から嫌だった」「離婚したい」と考えるようになるのです。
また、最初は問題なくても、相手の親族と同居すれば、必ず問題が出てきます。同居の事情はいろいろですが、別居できるなら問題は最小限に抑えられるでしょう。同居が避けられないのであれば、せめて親に干渉しないよう忠告するとか、できるだけプライベートな空間を作るなど、意識してストレスを軽減することが必要です。
離婚を覚悟するほど別居したいのであれば、自分のストレスがいかほどなるものなのかを相手に説明し、別居を申し立ててみるのも良いでしょう。相手がそれでどう出るか、それから離婚を考えても良いと思います。
ただ、その際は、生活費を請求し、子供がいるなら必ず連れて出ましょう。
いざ離婚になった際、親権を取られてしまう恐れがあるからです。
・熟年離婚
実は、ここ10年でもっとも増えたのが熟年離婚、結婚生活20年以上で離婚するカップルなのです。
家族を大切にして、波風立てずにきた人生、子供たちも巣立ち、ふと自分の人生を振り返ったとき、「私は自分のやりたいことができていない」そう気づいて、自分の残りの人生を謳歌するべく、離婚という決断をするのです。
熟年離婚が増えた理由としては、年金分割制度の施行があります。離婚しても、年金を受け取ることができるようになったのです。
ところが、夫の支給年金の2分の1がもらえるというわけではなく、妻の取り分というのは、婚姻期間中の厚生年金などの部分が対象となるので、気を付けましょう。
熟年離婚の場合も、相手がすんなり同意すれば協議離婚も可能です。ところが、女性よりも男性の方が、定年退職後に何もすることがなく、落ち込むことも多いと聞きます。相手の性格、時期、そして体調などを考慮したうえで、離婚を切り出した方が良いでしょう。
また、20年以上連れ添っていて、「なぜ今さら」という疑問が相手を襲うでしょう。自分の意思が固く、きちんとした理由があるなら、相手を説得するだけの材料が必要です。
人によっては、夫婦ニ人三脚でやってきたと信じていただけに、「離婚したい」と言いだされて憤慨するかもしれません。くれぐれも、早急に結論を出さず、別居する道や、説得する方法を考えましょう。
「残りの人生を謳歌する」という夢があるのなら、そしてそこに離婚が必要不可欠なのであれば、年金や法律についてきちんと調べ、その後の人生で困らないようにしなければなりません。そのくらいの行動力・事前準備がなければ、離婚して、人生を謳歌するなんてことはできないでしょう。
第4章 離婚後にやるべきこと
・変更手続きや届け出
離婚届を提出した後は、さまざまな変更、手続きが必要になります。
とくに、役所関係の届け出は速やかに済ませておく方が良いでしょう。
・住民票の世帯主変更
・住民票の転出および転入・転居
・健康保険の変更、加入
・印鑑登録の廃止・新登録
子どもに関する手続き
・子どもの氏の変更
・子どもの戸籍の移動
・転入学
・健康保険の変更
・子ども手当の支給先変更
・医療助成制度の申請
・児童扶養手当・児童育成手当の申請
・ひとり親家庭への優遇制度
その他日常生活で使用しているすべてのサービスにも、変更手続きが必要です。
・郵便物の移送依頼届
・運転免許証、パスポート、クレジットカード、通帳などの氏名、住所変更
・生命保険の名義、住所変更
・借家、賃貸物件などの契約名義変更
・水道、ガス、電気の名義変更
・携帯電話の名義変更
離婚後は、これらのやるべきことに手をとられ、忙しい日々になります。自分の精神的余裕が出てくるのはもう少し先と考え、変更すべきものは、すみやかに変更しておきましょう。受けられるサービスも、届け出をしていなかったために受けられなかった、という例もあるので、漏れのないように気をつけましょう。
・忘れがちな、周りへの配慮
とにかくエネルギーをとられてしまう離婚。自分のことで精いっぱいで、周りへの配慮が、ついないがしろになってしまいます。
帰れる実家があると、金銭的にも、精神的にも良いですが、自分の親には、やつあたりをしてしまうこともあるでしょう。私自身も、そうでした。
親はやはり、子どものことがいつまでも心配なものなのですから、それを受け入れることです。アドバイスとして言っているのに、離婚直後のこちらからしたら、非難されているように感じたり、「どうせ出戻りだから」と勝手に卑屈になったりします。
周りは、「きっと難しい時期なのだろう」と温かい目で見守ってくれることも多いですが、後々考えると、被害妄想というのは、百害あって一利なしです。
卑屈にならず、できるだけ周りの人の言葉を、そのままの意味で受け取りましょう。
被害妄想は、自分への自信のなさから来ているのですから、なにか新しい趣味を始めたり、可能であれば、思いっきり環境を変えてみるのも良いでしょう。
子どもがいる場合、養育費や慰謝料、転校手続きなどのことに気を取られ、子どもの気持ちのケアがおろそかになったりします。
離婚によって傷つくのは本人たちだけではありません。一番の被害者は子どもなのだということを忘れず、きちんと向き合ってケアしてあげましょう。
また、転校するのであれば、子どもの氏を変えるのに良い機会ですし、子どもにとっても、新しい場所で頑張るという前向きな目標もできるはずです。
「大変だけど、絶対に幸せになる!」という共通意識を持って、子どもと一緒に、今まで以上に協力していくことが必要です。
「正直、離婚で疲れていて、誰とも話したくない」そう感じる時もあるかもしれません。私がまさにそうだったので、閉じこもりたくなる気持ちは分かります。
けれど、外に出て、人と話した方が絶対に早く回復します。外に出れば色々な人がいるし、忙しい日常があります。
何かをする気力はなくとも、とにかく町に出てみるのです。雑踏の中に身を置き、自分自身の悩みなど、大したことはないというのを知るのです。
または、子どもはおらず、「結婚生活では我慢の連続で、全く出かけられなかった。とにかく遊びたい!」という意欲のある方は、お金と仕事がある限り、再び訪れた独身生活を、気が済むまで謳歌してみてはいかがでしょうか?あなたが払って遊ぶ分に、誰も文句を言う人はいないのです。そして月末に、遊びすぎてお金がなくなったら、その時に反省して遊びを控えるか、または、もっと稼ぐようになれば良いのです。
・技能や資格を身につけることが望ましい
当面はアルバイトで食いつないだとしても、もちろんそのままでいるわけにはいきません。もうすでに職がある方は、離婚した事情を職場に話し、残業を入れてもらうとか、配慮してもらえることもあるかもしれません。
ところが、これから就職しようとした時に、自分を売り込めるものがなくては、心もとないです。できることなら、勉強して資格を取ったり、技能を身に着けておくと、就職活動もしやすくなります。
技能訓練や訓練のための給付金などを支援する制度もあるので、利用できるものは利用しましょう。
私の場合は、離婚後すぐに留学しました。離婚後に訪れたロンドンで、イギリス英語のカッコよさにハマってしまい、そのまま留学を決意しました。
留学先では若い留学生たちが、夜な夜な遊んでいたけれど、私は勉強していました。日本人はいなかったし、英語を短期間で習得するには向いていました。日本に帰るにしても、なにか英語力の証明になるものをと、『ケンブリッジ英検』という試験を受けました。実際、それがその後さまざまな場面で役に立ちました。
離婚した後は、色々な人が、よかれと思ってアドバイスをくれるものです。それを選ぶのはあなた自身ですが、大切なのは、自分に合った道を選ぶ、ということです。
資格の勉強をするにしても、自分の興味のあるものでなければなりませんし、仕事をする自分を想像して、その自分を好きになれなければいけません。
結婚生活に不満があって、大変な思いをして離婚したのですから、自分の性格に合った、本当にやりたいことを仕事にするべきなのです。それは収入によって決めても良いでしょうし、創作的なことでも良いでしょう。海外に興味があるならその道で探したり、ボランティアに興味があるなら、そういったサークルから初めてみるのも良いでしょう。
離婚したことにより、経験していない人よりも腹が据わっていることは事実なのです。だからこそ、「なんでもやってやる!」という思いで、何かに打ち込んでみると、自分のこれからの道が見えてくるでしょう。
・心の病気を回避するために
自分では気が付いていなくても、精神的に疲れてしまうことは当然です。普段は気を張っていても、ふとした瞬間に不安に襲われたり、不安定になってしまうことがあるでしょう。
その不安や悲しみは、残念ながら、他の誰にも理解できるものではありません。人の悲しみとは、計れるものではありませんから、どれほどつらいということは、共感し合えないのです。
また、離婚後は、自分の殻に閉じこもってしまいがちです。自分を責めたり、相手を責めたり、そして不安と一人で戦っているうちに、気が付いたら不眠症になっていたりするのです。
その不安をどのように解消するかは、人それぞれだと言えるのですが、私がアドバイスしたいのは、まず、『自分が孤独である』ということを認めることです。
結婚生活の長さに関わらず、結婚したとき、「私たちは2人で人生を生きていく」と決心し、その安心感から、慢性的に幸福感を得ていたのです。
しかしながら、面倒な手続きや、大変な苦痛を味わってまで離婚した現在、その安心感はまさに幻であったのです。
他人同士で生活していくことの難しさ、どうにもならない事情があって、別れてみたら、独身時代よりも深刻な孤独感に襲われてしまった、そんなときはこう考えてみてはいかがでしょう。
よく考えてみれば、人間は誰しも孤独。結婚というのは人生のオマケのようなものだったのです。
ですから、孤独でも楽しめる自分自身というものを見つけなければなりません。それは、もうすでに持っているものかもしれないし、あなたが気が付いていないだけかもしれません。
子どもがいても、いずれ子どもは巣立っていきます。
あなたが孤独を受け入れた上で、幸福だと感じるのはどんな瞬間なのでしょうか?
それを見つけることができれば、誰かによってその幸せが壊されることは、ないのです。
自分の幸せと、夢に責任を持ち、たった一人でも幸せになるという目標を持ちましょう。
もし、なかなか見つからない時には、離婚を含めた自伝を書いてみるのもおすすめです。結婚したときのことも、思い出せる限り書いていくと、「今思うと、私は結婚して、幸せにしてもらおうと思っていた。他力本願だった」など、発見することもあるのです。何が不満で、自分がどうなりたいのか。家から出たくないのであれば、まずはパソコンや紙に向かい、文章にして整理してみましょう。
「自分の離婚」というターニングポイントの、全容が明らかになるかもしれません。
・独立記念日
離婚した日というのは、厳密には離婚届けが受理された日、ということになります。
別居生活が始まった日でもかまいませんが、離婚した日というのは、次の年から『独立記念日』になります。
結婚相手からの独立、主婦生活からの独立、離婚直後はまだ色々なことがゴチャゴチャしていて、そんなこと考えられないかもしれませんが、その後の1年というのは、信じられないほどあっという間に過ぎていきます。
そして、1年経ったとき、「1年前の自分」と比べて、はるかに成長していることに気が付くはずです。
精神的に、経済的に、そして、世の中の機微を知っている、深い人間になっているのです。
離婚を知っているから偉い、というのではありません。
ただ、人生で一番幸せだと思った日と、離婚という結論に至ったことを比べての落胆は、とても大きなギャップです。それなら、初めから結婚なんてしていない方が良かったではないか、と思ってしまったりします。
ところが、そうではありません。
結婚があったから幸せな時間を過ごせたのです。離婚があったから、人生とは思い通りにいかないのだと知ることができたのです。
離婚から立ち直っていくのは楽しいことだし、日々自分が自立していくのを感じることができるはずです。それは、給料明細であったり、子どもが良い子に育っていることであったり、人それぞれでしょう。
しばらくはそんな気になれなくても、また恋愛だってすれば良いと思うのです。
それに、離婚経験者は、ガツガツしておらず、相手に対して寛容であることが多く、全くの独身の人よりも、ミステリアスでモテる、という調査結果もあるそうです。
自分が自分らしく、ありのままでいられる人生。それこそが、離婚後のすべての人に用意された道なのです。
あとがき
最後までこの本を読んでくださり、本当にありがとうございました。
今回、離婚という私の経験をもとに、この本を書かせていただくことができ、感謝の気持ちでいっぱいです。
離婚するカップルの数は、残念ながら年々増えている一方です。時代とともに、考え方や文化が変化してきているのは否めません。
離婚が、以前に比べて珍しいものでなくなったからと言って、社会がそれに順応しているかというと、そうではないのが現状です。
お子さんをお持ちのシングルの方や、そうした女性が生き生きと働く場というのは、まだまだ少ないのではないか、と思います。
また、人によっては、古い考え方を持っていて、離婚するのは、我慢が足りないせいだ、と言う方もいるかもしれません。
我慢というのは、言うまでもなく、不健康なことです。何でもかんでもやりたいようにやる、と言うのではありません。『我慢をする時期』というのは、期間限定でなければならないのです。
例えば、受験勉強の期間は我慢の時期です。けれど、受験の日はもう決まっているから、我慢することができるのです。周りもそうだと分かっているから、応援することができるのです。
けれど、結婚生活というのは違います。
我慢を長い間続けていると、精神が病んでいきます。自分の価値が分からなくなったり、生きていることの喜びを感じることができなくなります。それでは、幸せになるために結婚したはずなのに、まるで逆の道を行くことになるのです。
冒頭でお伝えした通り、離婚は、現実問題として、生半可なものではありません。関係が修復出来るのなら、それに越したことはありません。
ですが、離婚したなら腹をくくって、努力して、また幸せになるべきだと思います。
意地悪な人や、配慮のない人に、心無いことを言われても、いちいち落ち込んだりせず、自分を強く持つのです。
その先には、必ずあなただけが掴み取った幸せがあり、それは、あなただけの、オーダーメイドな幸せの形なのですから。