表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/46

梅雨に入った。髪がしんなりするので雨はあまり好きではない。農作物が心配だから全く降らないってのも困るけどね。梅雨の時期桃姉のイベントは2つだったな。帰りに傘が無くて困っている四月朔日と遭遇して相合傘して帰るイベントと、部活の帰りに雨が降り出してしまって八木沢のBMWで送られるイベントだ。八木沢ドライブイベントはオレには回避できないけど、相合傘の方はタイミングさえ合えば潰せるかもしれない。オレは別に四月朔日には恨みは無いが、純粋にイベントを回避できるかどうかを調べたかった。



朝は晴れてて帰りは雨。ニュースでの降水確率も低い。こんな日なら四月朔日も傘を持って来ないなんて事もあるかもしれない。というかそんな言い訳しないでも今日だと思うんだよね。オレの勘がザワザワ言ってる。こういう勘はめったに外れない。オレは自宅に戻ると自分の分の傘と四月朔日の分の傘を持って家を出た。桃姉はこの時期しっかり毎日折り畳み傘を持ってるのは知っているけど「桃姉傘忘れてると思って持って来たんだ」とか言っておけばいいだろう。

電車に乗り込み光ヶ崎学園を目指す。

突然電車が止まったかと思えば人身事故のアナウンス。現在救出作業中だって。マジか。かなり早めに家を出てきたけど間に合うかな?

結局1時間くらい電車は止まってた。学校に着いて下駄箱を確認する。桃姉確か4組だったな。七瀬桃花…靴は無い。上履きだけになってる。遅かったか…

桃姉に『もう帰っちゃった?』とメールを送る。帰っちゃっただろうなあ。今日が四月朔日イベントの日じゃないと良いけど。


「雪夜君。」


囀るような甘いソプラノ。

振り返ると結衣お姉ちゃんがいた。


「結衣お姉ちゃん。今帰り?」

「うん。実は―――…」


結衣お姉ちゃんもイベント妨害を狙っていたらしい。折り畳み傘を二本持ってストーキングしていたが今日に限って傘が2本ともパクられてたんだそうだ。

どうもタイミングが不自然だ。これはイベントを妨害させないように何らかの力が加わってるんじゃないだろうかと結衣お姉ちゃんは言っていたが、オレも同意見だ。

イベント妨害不可か…苦い顔になる。イベント妨害が不可だとなると桃姉がイベント条件を揃える度に否応なくオレからの好感度が上がってしまうということだ。困る。すごく困る。これ以上好きになんてなりたくないのに。今も桃姉が四月朔日と相合傘してると思うと胸の中がモヤつく。

まだ一例目だけだから今後妨害できる可能性が全くないとも言い切れないけど。


「雪夜君はなんでここにいるの?」

「オレもイベント妨害。」


今日来るに至った理由を話した。


「七瀬さんと四月朔日君もう帰っちゃったよ?」

「知ってる。電車が遅れてたんだ。それで予定してた時間に着けなくて。」


メールにまだ返信は無い。今頃楽しく相合傘している事だろう。

結衣お姉ちゃんは傘二本ともパクられたって言ってたな。じゃあ自分の分もないのかな?


「結衣お姉ちゃんは傘無いんだよね?良ければこれ差して帰って。」


オレは結衣お姉ちゃんに予備の傘を渡した。ワインレッドの地に白の細かいドットの入った傘だ。四月朔日が使うとしたらちょっと可愛すぎるデザインかもしれない。ノートで四月朔日の人物紹介の欄に『儚げで中性的な容貌に反して女性のように扱われる事を酷く嫌う』と書いてあったが。


「いいの?」

「濡れて帰ると風邪引くよ。それにもう使ってもらおうとしてた人物は帰っちゃったみたいだしね。」


もし使ってもらおうとしてた人がまだいたらオレと相合傘してもらうところだけど。


「ありがとう。一緒に帰ろう?」

「うん。」


傘を差す結衣お姉ちゃんはどこか嬉しそうだった。

その笑顔が不思議と心に残った。

結衣お姉ちゃんは八木沢ドライブイベントも妨害を試みるつもりらしい。まあ、同じ学校に通っているなら妨害も可能かもしれない。口実もなく特定の生徒の為に車を出すのも変な話だし。と言ってもイベント日が結衣お姉ちゃんのアルバイトの日とイベントが被らなければね。結衣お姉ちゃんは桃姉にライバル認定されたくないようだけどそのへんどうなのかな?

家に帰ると桃姉はまだ帰って無かった。オレの方が遅く学校を出たのに。相合傘ついでに寄り道か…下校デートですね。分かります。返信はまだない。

家でコーヒーを飲みながら読書をしているとやっと桃姉が帰ってきた。玄関で「ただいま~」と上機嫌な声がした。


「桃姉、メール消しといて。」

「え?メールって?」


居間に入ってきた桃姉はきょとんとして携帯をチェックし始めた。


「これってどういう意味?」

「返信があれば帰りにコンビニでデザート買ってきてもらおうかと思ってただけ。」

「ごめん、携帯見てなかった。」

「別にいいよ。」


しれっと嘘をつく。



エンジン音がしたので家の二階から路地を覗くと黒いBMWが停まっていた。今日が八木沢ドライブイベントか。火曜だな。結衣お姉ちゃんはバイトに行っているはずだ。妨害失敗か。一応『今日が八木沢ドライブイベントだったみたい。今帰ってきた。』とメールを送っておいた。結衣お姉ちゃんストーキング頑張ってたんだろうなあと思うと気の毒。


相合傘できなくて残念!

雪夜君はまだ桃花ちゃんに縛られてます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ