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バレンタインだ。なんと結衣に『チョコ受け取ってくれる?』とメールを貰ってしまった。『もちろん』と返した。オレが結衣から貰うチョコを嫌がるはずなんてない。意味合いとしては儀礼的なチョコっぽいけど。でも多分結衣はオレのこと好きだと思うんだけどなー。自意識過剰かな?

オレは上機嫌で学校へ行き、「バレンタイン。貰いたいチョコがあるから、それ以外のチョコ、及びプレゼントは、今年は断る」と宣言した。

女子から悲鳴が上がった。


「お、おい、雪夜貰いたいチョコって何だよ!聞いてねーぞ!」


亮太が肩を掴んでがくがく揺する。

なんでお前に言わにゃならんのだ。


「あんな宣言して本命にすら貰えない…なんて悲惨なことになるかもしれねーぞ?」


正哉が言う。


「本命からは貰える確約済み。」

「マジか!落としたのか!?」


正哉がくわっと目を見開く。


「落ちてない。儀礼的な意味合い。」

「ギレイってなんだ?」

「バカはすっこんでろ。」


亮太をどかす。


「へー。まあ良かったじゃん。意味はともかく貰えるならそれで。」

「そ。オレは嬉しい。それならそれで良い。」

「健気だねえ。あの雪夜がよ。」

「あのって何だよ。」


正哉とじゃれあう。



バレンタイン当日。


「七瀬君、チョコ受け取って!」

「だーかーらー、本命以外からは受け取らないの。」


このやり取り何回したっけ?いい加減覚えてない。下駄箱とか机に突っ込んであったやつはまとめて落とし物入れに入れといた。


「雪夜、お前いつか女に刺されるぞ。キヒヒ。」


亮太がにやにやしている。


「他人事だと思って…」

「いいだろ。こちとら今年のチョコは母ちゃんと妹からのみだぜ。今んとこ。」

「今んとこ?」

「最後まで希望は捨てない!放課後1組の奥田麻由美ちゃんが頬を赤らめて俺の事呼び出して、チョコをくれるね!多分。」

「1組の奥田ならさっきオレにチョコ渡しに来たぞ?断ったけど。」


可愛いらしいな。オレはそうでもないと思ったけど。


「…訂正。雪夜、お前男から刺される。」

「まあ痴情のもつれには気をつけろよ。雪夜、巻き込まれそうだから。」


正哉がオレの肩を叩く。


「気をつける。正哉もな?」

「一応。」


あいつも結構モテるからな。


「正哉はチョコいくつ貰ったんだよ?」


亮太が絡む。


「12個だな。半分以上義理だけど。」

「義理も貰えない俺に喧嘩売ってんのか。」


亮太がブーブーブーイングを飛ばす。



学校が終わってから女子を振りきって家に帰った。鏡の前で入念に衣服や髪の乱れを直してから結衣の家へ向かう。

いつも通り結衣の家の前で待ち合わせだが、どうも家の中に人がいるっぽい。結衣の家に来て、今まで家人がいた事無かったから完全に気を抜いてた。自分の衣服をチェック。ご家族に悪印象をもたれるようなところはあるかな?無いと思うけど…うーん…。オレが恋人にしたい人のご家族とかってどういう態度をとればいいんだろう。きちんと挨拶しないとまずいよな。あくまで礼儀正しく!しかしご家族的に4歳年下の彼氏はあり?なし?それ以前に結衣は紹介するつもりなかったりして。あり得る…

結構早く来てたけど、悩んでるうちに大分時間が立ったようだ。結衣が帰ってきた。


「お待たせ。」

「そんなに待ってないよ。」


結構待ってたけど、そんなことはどうでもいいのだ。悩んでたから思いのほか時間が立つのが早く感じたし。


「今日はね、家族が家に居るの。ちょっと騒がしいかもしれないけどいいかな?」

「勿論いいよ。家族がいるのにお邪魔しちゃってゴメンね?失敗したなー。手土産でも持ってくればよかった。」


手土産、初回のメイド服撮影会の時は持ってきてたんだけど、それ以降お邪魔する際には持ってきてない。気の利かないヤツだとか思われたりするだろうか。寧ろ待ってる間に何か買ってきた方が良かったか?結衣は「気にしないでいいよ」と言ってるが。

マジで緊張してきた。心臓バクバクしてる。

そんなオレの心境を知らない結衣は、ドアに手をかけ思いっきり開く。


「ただいま~」

「おかえり~」


家の奥から声がする。

結衣に促されて玄関に入る。


「お邪魔します」


いつもより少し大きめの声で丁寧に断った。


「誰?」


奥から結衣と顔がそっくりの女の子がやってきた。髪はロングだけど。多分妹さんだな。聞いてた通りだ。


「七瀬雪夜と申します。麻衣さんでしょうか?お姉さんにはいつもお世話になっております。本日は突然お邪魔して申し訳ありません。お姉さんとお約束があったものですから。手土産も無く恐縮ですが、どうぞよろしくお願い致します。」


丁寧にお辞儀する。麻衣さんを見てみるとちょっとポカンとした後、ハッと我に返って頭を下げてきた。


「朝比奈麻衣です。お姉ちゃんがいつもお世話になってます?えっと。なんもないですがゆっくりしていってください。」


大分戸惑っているようだな。まあ普通小学生男児と女子高生の友達関係とか思い浮かばないよね。しかも今日、バレンタインにお呼ばれしてるし。


「お母さんー、お父さんー、お客さんキター!」


麻衣さんの呼び声を聞いて緊張が走る。遂にご両親対面か。

結衣のお父さんとお母さんは奥からわらわら出てきた。


「あら、結衣のお友達?」

「雪夜君、こちら、父の和郎と母の敏子と妹の麻衣です。みんな、この人、私がすっごくお世話になってるお友達の七瀬雪夜君だよ。5月に皆はいなかったけど、手土産にゼリー置いてってくれたお客さんがいたの覚えてる?あれも雪夜君だよ。」


結衣が紹介してくれた。


「まあまあ、あれとっても美味しかったわ。有難うね?お構いもできないけど、どうぞゆっくりしていってくださいな。」

「恐縮です。ご迷惑かとは存じますが、少しの間お邪魔させていただきます。」


緊張がばれないようににっこり笑って丁寧にお辞儀する。


「結衣、麻衣、雪夜君に迷惑かけるんじゃないぞ。」

「「はーい。」」

「ささ、玄関は冷えますから早く中に入ってくださいね。」

「お母さん、私の部屋にお通しするからね。」

「わかったわ。」


敏子さんの先導で中に入る。結衣はすぐに結衣の部屋に通してくれたので緊張状態は長くは続かなかった。


「あー、緊張した。」


結衣の部屋に入った瞬間脱力した。

緊張してピリピリしてたのが自分でもわかる。何とか平静を装ったつもりだけど。


「全くそうは見えなかったけど?」

「緊張するに決まってるじゃん。結衣のご両親だよ?オレにとっても滅茶苦茶大切な人だから。」


もし、もし…結婚とかしたりしたら…お義父さんとお義母さんになるわけだよね?

今の内に好感度上げときたい人物ではある。

結衣はオレからコートとマフラーを受け取ってハンガーにかけた。自分のコートも脱いでハンガーにかけて暖房を入れる。まだ空気が温まってないので結構寒い。


「じゃあ座って待っててくれる?」

「うん。」


いつも通りソファに腰掛けると結衣は部屋を出て行った。多分お茶とチョコの用意だろう。

結衣はどんなチョコ用意してくれたんだろう。ものすごく楽しみだ。義理チョコだけど結衣の事だから多分手作りだろうし。手作りするからには手を抜かないのが結衣だからな。

しばらく待っていると結衣がチョコとお茶を持って部屋に入ってきた。


「お待たせ。ハッピーバレンタイン!いつもお世話になってるお礼チョコだよ。」


『お礼チョコ』という部分は気にせずにチョコの鑑賞に入る。チョコムースの上にはスライスされた苺と薔薇の花が乗っている。質感的に見てこの薔薇は食材で作られているものだろう。凄く綺麗だ。思った通り気合入ってるな。平たい箱の方は中が見えない。


「おおー。バラだ。凄い。こんなの作れるんだ?」

「飾りだけどね。一応食べられるよ。」

「こっちの箱も開けていい?」

「勿論。」


箱を開けるとココアのかかったクリームが挟みこまれたマカロンが並んでいた。茶色いマカロン生地の上には白いレースの模様が描かれている。結衣らしい繊細なデザインだ。文句なしに可愛い。


「なんて言うか、可愛いね?」


オレの為に作られたチョコをじっくり鑑賞する。


「食べてみてくれる?」

「うん。頂きます。」


マカロンをつまんで齧ってみた。ゆっくり咀嚼して飲み込む。コーヒー風味。クリームはチーズかな?結衣はやっぱりオレの好きな味分かってるな。


「おいしい。」


そう言うと結衣も安心したようで、自分の作ったマカロンを頬張った。


「そう言えば七瀬さんって誰かにチョコレートあげた?」


ノートの通りならバレンタインに手作りチョコレートをあげてホワイトデーに告白されて結ばれたなら“一生離れる事はない”はずなんだよね。オレも心配で一応よく観察したけど、作ってる様子は無かった。それどころか買ってる様子もなかった。


「オレが知る限り誰にもあげてないね。作ってる様子も無かったし、買いに行った様子も無かったよ。まあ、当日買って渡すとかだったらどうなってるか分からないけど。」


多分それは無いだろうけど。結衣の恋愛拒否モードは解除されたけど、桃姉の恋愛拒否モードは解除されていないから。正直桃姉にはどうやって恋愛拒否モードを解除してあげればいいのか分からない。結衣の時と同じ手順を踏むの?でも結衣の恋愛拒否モードが解除された背景には俺への好感度があったからだと思うんだよね。その前提が無い桃姉には効果あるかどうか。

コーヒーに口をつける。おいしい。

スプーンを使って薔薇を掬って齧る。


「ん~甘い。」


この風味はホワイトチョコかな?


「ゴメン。苦手だった?」

「ううん。おいしいよ。バレンタインならではの味って感じだね。」


薔薇は飾りだろうから味にはそんなに期待してなかったけど、思ったより美味しかった。

ムース部分にスプーンを入れる。ムースはスプーンの重みだけで沈み込みそうなほど柔らかくて、スプーンで掬うとふわっと揺れる。


「わ。ふわふわ。」


口に含む。

チョコレートの良い風味。味はほろ苦め。舌の上で蕩けるように滑らかで、実に美味しい。


「おいしい。ありがとう。結衣。」


スプーンを置くと結衣の頭を撫でた。

結衣は髪とか頭とか撫でられるのが結構好きだ。今も嬉しそうにしている。


「結局七瀬さんがどうしたいのか分からなかったね。雨竜君は七瀬さんが好きっぽいけど。」

「桃姉ね…。ちょっと結衣と似てる感じするな。」

「私と?」


結衣がきょとんとする。

似てるって言うか同じ。


「結衣って言ってもちょっと前までの結衣ね。恋愛を拒んでる感じが似てる。桃姉は今年に入って一見アクティブに恋愛行動してたけど、実情そんなに心動いてなかったんじゃないかな。オレからすればそう見える。」


恋愛拒否モードのまま恋愛フラグを建てまくるカオスな建築士だったよ。


「なんでだろ?」

「さあ。そこまでは分からないよ。」


桃姉の前世が結衣と同一のものであるなら多分理由は結衣と同じだと思うけどね。それは言わない。

昔から桃姉が恋愛拒否ってるのは分かってた。それがなんでかわからなかった。でもどうしても本人には聞けなかった。

結衣の顔には『案外冷たい』と書いてある。


「今、冷たいって思った?」


結衣は図星、という顔をした。

わかりやすいんだから。


「桃姉、一見大らかで天真爛漫に見えるけど、一部分においてはちょっと人を立ち入らせないようなところあるよ。恋愛方面もその部分。昔っから貝のように口を噤んでたよ。」


今なら結衣が話してくれたからその理由も何となくわかったけど。


「だから桃姉には聞けなかった。どうして恋愛拒否ってんのか。姉弟なのにね。そこはどうしても遠慮しちゃうんだ。…オレも拒否られるんじゃないかって怖かったから…」


オレは桃姉が好きだったんだ。だから臆病になった。影に踏み込んで完全に拒否されるのが怖かったんだ。子供だよね。今なら『その影を自然に吐き出せるような環境を作ればいいし、包みこめる度量を持てばいい』と思えるけど。幼いオレはそんな器用な真似できなかったから。今思えば覚悟も全然足りてなかった。小さい頃から『桃姉を守る!』って思ってたけどオレがいったい何を守れたっていうんだろう。バカでガキだ。

自嘲してると結衣の辛そうな顔が目に入った。

あ!気を使わせてしまった!これじゃあまるで結衣を責めてるみたいじゃないか。


「ああ、そんな辛そうな顔しないでよ。やっぱり遠慮はするけど、もう全然怖くないから。ゴメン。オレ余計な事言ったね。」


オレが素直に頭を下げると結衣がぶんぶん首を左右に振った。


「とんでもない。無神経な事言ってごめん。」

「良いよ。大丈夫。ところでご家族、オレについてなんか言ってなかった?」


この話題は流そう。オレは話題の転換を試みた。聞きたい事でもあったし。

結衣はきょとんとした。

あー…意外だった?オレがその情報知りたがるの。


「雪夜君について?あれからお母さんとお父さんには会ってないけど麻衣には会ったよ。なんか雪夜君の年齢聞かれたり、今日のチョコは雪夜君の為に作ったの?って聞かれたよ。」

「やっぱりか。年齢がなー…」


麻衣さんは結衣がショタではないかという疑いを持っていると思うな。たかが4歳差だけど、オレ小学生だもんね。まだランドセル背負ってるんだぜ?成人してからなら大した年齢差じゃないとは思うんだけど。うーん…ご家族に好意的に受け止めてもらうにはどうしたらいいのか悩む。



オレの悩みはさておき、結衣お手製のチョコのお菓子を食べながらソファで寛ぐ。2人っきりでまったり。


「二宗君がね、」

「うん?」


耳を傾ける体勢に入る。二宗がなんだって?


「私に振り向いてもらえるような男になるんだって。ああいう人好きになれたら良かったのにな…」

「えっ!ダメ!」

「えっ?」

「あ、ゴメン。何でもない。忘れて。」


吃驚して光の速さで否定してしまった。今深く追求されても困る。まだ覚悟できてない。でも二宗に振り向かれたら困る。『ああいう人』と言うだけであって二宗と限定しているわけではないけど。二宗みたいな人が好みだとしたらオレは一生振り向いてもらえないよ。


「結衣の理想の彼氏ってどんなの?」


居住まいを正して質問する。

現時点でも結衣は多分オレのこと好きだと思うけど、オレは結衣の理想の彼氏になりたい。なれるよう努力するのも吝かではない。


「え?えー?考えた事無いよ。」

「何にも?」


食い下がってみる。

何にもないならそれでもいいけど、指針は欲しい。

結衣はしばらく考えてえから口を開いた。


「優しい人が良いな。自分勝手でない人。包容力があるタイプに憧れる。あと話が合う人。聞き上手だとなお良い。それに頼れる人ってすごく良いな。顔は意外と面食いかも。身長は自分より高いといいな。それで私の作ったお菓子を美味しそうに食べてくれるともっといい。それから私を一番大切にしてくれる人が良いかも。欲張りかな?」


うーん。オレは結衣に限定で優しい。自分勝手は自重しよう。包容力は多分まあまあ。話は合う。聞き上手は多分OK。頼れる人…多分結衣はオレを頼りにしてくれてるはず。顔は恐らく大丈夫。身長……足りてねー。お菓子は文句なしに美味しい。結衣を一番大切にするのは自信ある。総合。身長かな…

この基準で言うと春日さんが近い気がする。ああいう人を目指すのか。でも結衣、春日さんに惚れないでね?

結衣の理想は届かない範囲ではないと思う。欲張りではないと思うよ。


「そんなことも無いけど、考えた事無い割には具体的だね?」


結衣は照れた。可愛くて胸キュンだ。


「即席で考えてみました。」

「可愛い趣味してるよ。オレは身長要努力だけど。」


身長を伸ばすには…栄養、睡眠、運動だな。食事は義母さんを信じるとして、規則正しい生活を頑張ろう。


「えっ?」

「なんでもなーい。」


軽い調子ではぐらかす。

まだ告白する覚悟、持ててないから。


「雪夜君の理想の恋人は?」

「今好きな人。」


結衣が理想。全力で守ってあげたくなるタイプ。こんなにも理想通りだから簡単に落ちちゃったのかな?


「それってどんな人?」


結衣は興味津々だ。結衣に結衣の事聞かせるのも変な感じだけど、結衣の事だから多分具体的に言っても気付かないだろうな。というかこんな話しても普通に意識されてない事が悲しい。結衣はオレのこと好きだよね…?ちょっと自信が無くなる。


「うーん。鈍いね!あと涙もろい。優しいし気遣いのできる子だよ。心理的にちょっと不安定なとことかもあったりしてそこがまた可愛いんだけど、自分では『自分は強い』って思ってるとこあるかな。こんなオレの事も良く頼ってくれてる。会話も合うし。お洒落で顔は可愛いしスタイルもいいよ。あと料理上手だね。」


強がりで泣き虫の結衣。かわいいかわいい食べちゃいたい。

結衣はオレの理想を聞いて「んん?」って言う顔をしている。多分「鈍い」とかそうゆう所が一般的な魅力的な人に当てはまらないからだろう。


「確かに鈍いけど、敏感すぎてこっちの思惑筒抜け状態よりは好ましいんだ。個人的には。」


『顔に出てたかな?』と言いたげにぺたぺた顔を触っている。わかりやすい…

そういう所も可愛いけど。


「ああ、あと考えてる事が分かりやすい。かな?」


それからも好きな人ならこう!って言うのをシチュエーション別に盛りあがって話した。

此処まで明確に結衣のこと話していても全く自分だと気付かない結衣に笑いがこぼれてしまう。

でも結衣は恋バナとか苦手なタイプだと思ってた。ちょっと意外。でも楽しい。

結衣とまったり話し込みつつムースとマカロン、コーヒーを堪能してから帰った。



帰って部屋に籠っていると月姉が入ってきた。今日はチョコアイスだ。まるで自分の部屋のように自然にベッドに腰掛ける。


「ユキ、今年はチョコいくつ貰った?」

「1人の人から2つ。もう食べちゃったよ。」

「えーーー!あんたの分のチョコ食べようと思ってたのに!!」

「太るよ。」

「太りません。」


月姉はプイッと横向いてチョコアイスを食べ続けてる。


「1人からしか貰わなかったってことは本命よね?朝比奈さん?」

「うん。」


ノートも解決して、オレの心も確定した今、もう隠す意味が無いので教える。一応桃姉に対しては3月14日まで気が抜けないけど。


「脈あるの?」

「多分ね。」

「へー。へー。遂にユキにも彼女かあ。朝比奈さんなら私も嬉しいな。『月絵お義姉さん』とか呼ばれたい!!」


学校で密かに女子に『お姉様』とか呼ばれてるくせに。


「まだ決まった訳じゃないよ。」

「でもバレンタインにチョコくれたんでしょ?」

「『お礼チョコ』だってさ。」


まだ結衣に恋愛の自覚は無い。


「お礼?アンタなんかしてあげたの?」

「まあね。」

「まあ、アンタが脈あると思ってるんならあるんでしょうね。頑張りなさいよ。私の未来の義妹の為に。」


月姉はチョコアイスを食べきって部屋から出て行った。


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