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お正月だ。義父さんも義母さんもかなりお年玉を弾んでくれてホクホクだ。お雑煮とおせちをたらふく食べた。うちの雑煮は醤油味だ。ちょっとだがお屠蘇もいただいた。元日の今日は義父さんと義母さんと一緒に初詣に出かけることにした。月姉と桃姉はそれぞれの友達と行くらしい。場所は近場で、夏祭りのあった神社。ホワイトのニットに黒のピーコートにカーキのカーゴパンツ。首には結衣お姉ちゃん手編みのマフラーをした。家を出る準備を整えると義母さんが目敏く聞いてきた。
「あら、そのマフラーってもしかして手編み?」
「えっ。まあ…」
「凄くよく出来てるわねえ…これはかなり上手よ。誰かに貰ったの?」
「ナイショ!」
「ふふっ。雪夜もお年頃ねえ。」
突っ込んで聞かれなかったが、恐らく結衣に貰ったものだとバレているだろう。
両親と一緒に神社へ向かう。手水舎で手を洗い、口をすすぎ、社殿の列に並ぼうとすると聞き慣れた声が聞こえた。
「次は二礼二拍手一礼ね。」
囀るような甘いソプラノ。結衣だ。
「賽銭と鈴ってどのタイミング?」
里穂子お姉ちゃんも一緒にいる。よく見ると男子も3人いる。そのうち一人は二宗だった。
「最初に軽く会釈してお賽銭、鈴、で、二礼二拍手一礼だよ。」
お参りのマナーを教えているようだった。後ろから声をかける。
「へーえ。詳しいね?結衣。」
振り返った結衣の顔が輝いた。嬉しそうだ。
ねぇ、それってオレに会えて嬉しいの?それとも知り合いに会えた時はいつもその顔?
前者だと良いな。
「雪夜君。典子さんと伸一さんも。あけましておめでとうございます。」
「「あけましておめでとう」」
義父さんも義母さんも思いもかけず結衣に会えて嬉しそうだった。ニコニコだ。
新年早々幸先いいね。
「あけましておめでとう。結衣。今年もよろしくね。」
「宜しく。マフラーしてくれたんだね?」
「うん。あったかいよ。ありがとうね?」
「へへ。」
お礼を言うと結衣は可愛くはにかんだ。まだ呼び名に慣れてないのかもしれない。照れ照れしている。
「里穂子お姉ちゃんも明けましておめでとう。」
「お、おめでとう…ご両親?」
里穂子お姉ちゃんは戸惑っているようだ。まあそうだろうね。オレが結衣の事結衣って呼んでる上に、両親、マフラーのコンボだ。思わぬ親密さを見せつけられて戸惑っているのだろう。
「うん。」
「あけましておめでとうございます。七瀬さんにはいつもお世話になってます。ほらっ、みんな、この人達七瀬さんのご家族だよ。」
里穂子お姉ちゃんに促されて男子3人がそれぞれ挨拶する。二宗は複雑そうな顔だ。オレと結衣が親密そうなのを戸惑っているのと気に入らないの半々くらいだろう。結衣は全く気付いてなさそうだが。
「結衣達はみんなで初詣?仲が良いね?」
「うん。今のクラスでは一番仲いいメンバーだよ。今日は七瀬さんと月絵先輩は?」
「それぞれの友達と初詣。家族で来たのは俺達三人だけだよ。」
「そっかあ。月絵先輩にもご挨拶したかったな。」
「伝えとく。多分すっごい喜ぶよ。」
それはもう。狂喜乱舞すると思うよ。世間話していると順番が回って来た。
「お賽銭って相場いくらかな?」
里穂子お姉ちゃんが結衣に聞いている。
「ネットで見たのは100円が一番多かったけどね。私は45円で始終ご縁がありますようにとか、25円で二重にご縁がありますようにとか、15円で十分ご縁がありますようにとか掛けてるよ。」
ふーん。語呂合わせか。オレは財布から百円を取り出した。こういう所でお札を入れるという人はどういう階級層の人なんだろう?一条辺りは万札突っ込みそうな気はする。
「じゃあ私5円とかないから100円にしようっと。」
「林田は15円で良いよな?」
「おう。いくらでも良いぜ!」
林田というやつは金を持ってきていないらしい。というか服がよれよれだ。寝坊組か?
金を貸している男子がまるで保護者のようだった。
「一応返せよ?」
「私は細かいのが無いから500円にしよう。」
二宗は500円玉を取り出している。
結衣達が先にお参りを済ませ、その後に並んでいたオレ達もお参りを済ませた。
「何かお願いした?」
結衣がわくわくの顔で聞いてきた。
実はノートを差しおいて『結衣と両想いになれますように』と祈ってきた。というか両想いになれるよう自分で頑張るつもりだけどね。努力は惜しまないよ。
「ナイショ!あ、結衣のは聞かなくても分かるからいいよ。」
多分ノートに関する事だろう。目下結衣の悩みの種だからね。わかりやすい結衣にちょっと笑う。
「ちぇっ。やっぱわかるよねー。あ、私里穂子ちゃん達と甘酒飲みに行くから、またねっ。」
「うん。ばいばい。また連絡する。」
駄目押しでさりげなくいつも連絡している事を匂わせた。二宗をちらっと見る。目があったが逸らされた。相当オレの事意識してるな。絶対に譲らないけど。
結衣達が去った後、義母さんがのほほんと発言した。
「やっぱりそのマフラー結衣ちゃんに貰ったものだったのねえ。」
「まあね。」
もうバレてしまったのであっさり認める。
「結衣ちゃんお菓子作りだけじゃなくて編み物も上手なのね。」
「本人は得意だとは思っていないみたいだったけどね。」
「そうなの?こんなに上手なのにね?あんな可愛い子が雪夜のお嫁さんに来たら母さん喜んじゃうな~」
そりゃオレも喜ぶけど。
「正月早々結衣さんに会えるとは、良い年になりそうだな、雪夜。」
義父さんがオレの頭をぽんぽんと撫でた。




