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クリスマスが近い。ルティではサンタコスで給仕しているらしい。それは是非見に行かなければ。結衣お姉ちゃんのサンタか~

木製の重厚な扉を開ける。カランとベルが鳴る。入口付近には品の良い小さなツリーが飾られていた。

「お帰りなさいませ、旦那様。」

結衣お姉ちゃんがすぐにオレに気付いて近寄ってきた。結衣お姉ちゃんのサンタコスは……エロかった。まず上部分は胸に沿ってカットされていて、胸部の形がよくわかる。縁にはふわふわのファーが付いていて可愛い。ワンピースタイプでミニのフレア。きゅっと締まったウエストには黒いベルト。グッと短い裾にはファーが付いている。白の長手袋に、結衣お姉ちゃんは白のニーハイを合わせている。ミニのサンタ服から伸びる細い腿…絶対領域が眩しい。頭にはちょこんとサンタ帽をかぶっている。髪型は文化祭の時につけてたアッシュブラウンのロングウェーブのウィッグだ。目も薄い茶色のカラコンを入れていて雰囲気が甘い。可愛い。可愛いけど…エロい。


「うっ…わ…」


思わず声が漏れた。

結衣お姉ちゃんが欲しい。奪い取って誰の目にも触れないように大事に閉じ込めて可愛がりたい。


「……サンタください。」

「へ?」


結衣お姉ちゃんはきょとんとした。


「サンタください。」


本気で欲しい。


「残念ですが、サンタは売り物ではございません。」

「ほんっとーにカワイイ!何それ、どういうつもりなの!?」


可愛いけど…可愛いけど…無差別誘惑犯だよ!!

犯罪的に可愛い!というか犯罪を誘発しそうに可愛い!

何を考えてこんな可愛い衣装にしたんだ、春日さん!


「どうって制服だけど?…雪夜君サンタ服気に入らなかった?」

「逆。反則。可愛すぎる。」


触りたい。今すぐ抱きしめてキスしたい。こんなの反則だ。なんで喫茶店に来て理性を試されなければならないんだ。


「ふふっ。それなら良かった。お席へご案内します。」


結衣お姉ちゃんは素直に喜んでる。オレの疾しい気持には気付いていない。

席に案内されてメニューを開いてみるも、気もそぞろ。結衣お姉ちゃんの方にばっかり目線が行く。だって可愛いんだもん。


「ご注文はお決まりですか?」


適当に決めよう。目についたメニューを注文する。


「コスタリカとベリー&ベリームースケーキにしようかな。」

「承りました。」


結衣お姉ちゃんは笑顔でオーダーを伝えに行く。

見てると春日さんと何か会話しているようだった。春日さんはサンタ服だ。本音を言うとあんまり似合わない気がする。

それにしても結衣お姉ちゃんカワイイ…こんな衣装を他の野郎共も見ているのかと思うと目玉えぐりたくなる。見るな、減る!

しばらく接客している結衣お姉ちゃんを見ていると注文の品が出来たらしい。手慣れた手つきで運んでくる。


「お待たせしました。ご注文のコスタリカとベリー&ベリームースケーキでございます。」

「ありがと…このお店、撮影禁止で本当に良かった。」


もし撮影禁止じゃ無かったら結衣お姉ちゃん写真撮られまくると思う。こんなエロ可愛い結衣お姉ちゃんの写真他の男が持ってるのを想像すると…イライラどころの話じゃない。


「どうして?」

「こんな可愛い結衣お姉ちゃんの写真、他の奴が持ってると思ったらたまんないよ…」


オカズにされたりしたら最悪だ。妄想の中だとしても穢されたくない。

結衣お姉ちゃんは可愛いと言われて純粋に照れてるみたい。世の中結衣お姉ちゃんみたいに純粋な人たちばっかりじゃないからね?


「雪夜君は写真欲しくなかった?」

「欲しいけど…」


そりゃ欲しい。こんなに可愛いんだから。でもそれ以上に他のヤツが写真持ってる事が嫌。


「じゃあ、私の自宅で撮影会する?」

「いいの?」


それなら他のヤツに写真が渡るという事もないだろうし安心だけど。撮影会という事は二人っきり…オレの理性持つかな?


「うん。特別だよ?」


結衣お姉ちゃんは可愛くはにかんだ。

特別か…良い言葉だ。オレは結衣お姉ちゃんに特別を許される程度には心開かれてるらしい。嬉しい。


「ゆ、結衣ちゃん…俺にもサンタ服の写真を…」


オレの感動を邪魔する声が聞こえた。目を向けると一人の男がいた。年の頃は18.9くらいか?細い目にそばかすの散った顔をしている。厚着しているにもかかわらずガリガリな体型という事が見て取れる。結衣お姉ちゃんのファンか?オレはきつい目で睨む。


「ごめんなさい。写真はNGで。」

「だってその子は…」


オレとお前は違うだろ。お前結衣お姉ちゃんの友達なの?結衣お姉ちゃんの自宅で撮影会だぞ?自宅に上がり込む気なのか?ふざけんな。


「この子は…特別です。」


特別扱いされて素直に嬉しい。

しかし結衣お姉ちゃんは困っているようだ。

うーん、上手い断り方ないかな?


「結衣ちゃんはその子とは個人的に親しくて、個人的な撮影会を開くのよ?それ以上あだうだ言うなら出入り禁止にしますよ。旦那様?」


春日さんがやって来てにっこり微笑む。

やっぱりオーナーは違うな。言い訳なんてしなくても普通に断れる。サンタ服着てるけど格好良いよ。


「春日さん、有難うございます。」

「いいのよーう。こういう仕事してると困ったファンとかも出来ちゃうから気をつけなくっちゃね。坊や、雪夜君だっけ?衣装、どうかしら?」


『困ったファン』とか言っちゃっていいのか?多分聞こえてると思うけど。客失わない?それとも失っても惜しくない客なのか。

衣装の感想ね。素直な感想を述べる。


「可愛いと思います。胸元と裾のモコモコしてるとこが特に。色も生地も安っぽさを感じさせない仕上がりで、上品です。感想を言うなら胸元にボンボンをつけるとか、もうひとアクセントあっても良かったと思います。」


胸元がちょっと寂しいのだ。


「なるほどねえ、参考になるわ。」

「でも結構エロいです。」


結衣お姉ちゃんに聞こえないようにぼそっとつけたした。春日さんはしっかり聞きとったみたいでにんまりしている。


「うふふ、わざとよ、わざと。うちのお店って普段クラシックじゃない?たまにはファンサービスしておかないと。これくらいで妬かないでっかい男になりなさいよ。」

「努力します。」


ぺこりと頭を下げた。

妬かないのって難しいな。でも男の悋気は見苦しいし。いちいち目くじら立ててたら愛想尽かされると思う。

チラと結衣お姉ちゃんを見るとうんうん頷いてこっちにキラキラした瞳を向けている。多分『でっかい男』を身長の事だと思ってるんだろう。呑気なんだから。こっちの気も知らないで。

結衣お姉ちゃんに軽くデコピンした。


「結衣お姉ちゃんは分かってない!」

「え?何を???」

「オレの口から言える訳ないでしょ!」


結衣お姉ちゃんはホントに微塵も気付いてないようだ。いきなりデコピンしてきて酷いくらいにしか思ってないと思う。もうっ。

春日さんは笑ってもろびとこぞりてを鼻歌しながら去って行った。

とりあえず撮影会の日取りを決めて二人で指切りした。周囲の野郎どもには羨ましがられた。特別特権だもんね。


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