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最近桃姉の様子が変だ。なんだかびくびくしている。それにオレが行ったら慌てて隠したけどノートがびりびりに破かれていた。こういう事態は想定していた。逆ハーレムとか、普通女子からは良く思われないよね。桃姉に恨みを持つ女子が桃姉の事を苛めているのだと思う。誰にでもいい顔をして気を持たせるだけで本命を絞らない桃姉にも問題はある。だからと言って苛められていい訳ではない。月姉はまだ気付いていないようだ。結衣お姉ちゃんに連絡を取って桃姉が苛められているかもしれない旨をメールする。オレの勘違いってこともあるかもしれないし…結衣お姉ちゃんなら苛められてると分かったら解決に動いてくれると思う。場合によってはオレに相談してほしい所だけどどうかな?



数日後結衣お姉ちゃんから連絡があった。


「七瀬さん、やっぱり苛められてたみたい。」

「そっか。ノート使えば解決できる?」


ノートは過去に起こった出来事は変えられないが、未来に起こる出来事はある程度操作できる。


「えっと。もう解決しちゃった。」

「速いね。苛め犯はどうなった?」

「七瀬さんに謝罪したよ。」

「……素直に?」


それも変な話だ。

普通自分が苛めてごめんなさいは中々出てこない言葉だぞ?結衣お姉ちゃん何したんだ?


「ね、根は悪い子たちじゃなかったんだよ。ちょっと嫉妬しちゃっただけで。」

「桃姉は許すって?」

「うん。」


桃姉はああ見えてやられたら倍返しの人なんだけどな?結衣お姉ちゃんノート使って何か操作した?でも突っ込んで聞かれたくなさそうだな。解決したのならそれはそれで良いか。オレは結衣お姉ちゃんにお礼を言って、ついでに世間話した。なんでも最近良いお店をバイト先の麗香先輩に教えてもらったんだとか。とっても変わっていて良いお店だから、今度雪夜君も行こうって。オレは勿論了承した。楽しみだな。



後日お店に案内してもらう。お店の名前は『新里にいさと』というらしかった。住宅地にあって、一般住宅然としている。とても広い日本家屋だ。表札の部分に『新里』と書いてある。看板などは何もない。入口も普通の玄関っぽい。

すりガラスの嵌まったスライド式のドアを結衣お姉ちゃんは躊躇いもなく開けた。和服姿の店員さんがやってくる。


「いらっしゃいませ。何名様ですか?」

「2名です。」

「お席へご案内します。」


接客は普通のお店と変わらないのか。

席は畳張りに座布団。おもいっきり広く取られた窓から日本庭園が見渡せる。計算されつくした美しさ。良い庭だ。隣とは屏風で仕切られている。廊下には簾で中が見えないようになっている。完全個室っぽい。庭に出ている人がいたとしたら、そこからは見えるかもしれないが。


「良いお店だね。」

「気に入った?」

「すごく。静かだし落ち着いてる。」

「味も凄く良いんだよ。」


二人で抹茶パフェと緑茶を注文した。


「桃姉逆ハーレムだってね。」

「うん。みんな七瀬さんに夢中で他の事が目に入らないって感じ。クラスが凄い事になってるよ。」


自分も同じように桃姉に夢中で他の事が目に入らない人間になってたかもしれない…と思うと背筋が寒くなる。


「でも春日さんは変化ないんだよね?」

「うん。どうしてだろ?時々目で追ってるのを見るけど、夢中って感じじゃないね。」


その答えに残念とも安堵ともつかない唸りを漏らす。春日さんの本心は聞いている。そこに揺らぎはないらしい。与えられた盲目の恋以上に高い理性と客観的な思考を持っているってことだろう。オレは密かに春日さんに憧れている。朗らかで社交的、公平な視点、情に深く義理がたい。ああいう大人になりたい。なれるかな?


「いじめ問題解決は有難うね。」

「え?」

「結衣お姉ちゃんが動いてくれたんでしょ?どういう方法かは分からないけど。」

「やっぱりばれてたか。」

「ふふっ。あの状況でばれない方がおかしいよ。」

「隠しててごめんね?」

「いいんだ。別にどんな方法とっても。解決したなら。あ、でも結衣お姉ちゃんが危険にさらされるような方法は止めてね。」

「……うん。」

「今の間何?」

「な、なんでもないよ!」


パフェが来た。もしかして結衣お姉ちゃん今回ちょっと危ない橋渡った?無事ならそれでいいけど、桃姉を助けるために結衣お姉ちゃんが窮地に陥ってたんじゃ意味がない。両方無事じゃないとダメだ。


「ならいいけど…オレは結衣お姉ちゃんが一番大事なんだからね?」


さりげなく告白しておく。


「え?」

「パフェ美味しそうだね。食べようか?」

「う、うん。」


今はまだ答えを貰う時じゃない。恋愛拒否モードを解除しなければ欲しい答えなんて絶対に貰えない。

パフェを口に運ぶ。抹茶の良い風味がする。抹茶ゼリーが思いの外もちもちした歯ごたえで何とも…これは美味しい。しかもボリュームも中々。


「おいしいね!」

「でしょ。私も一発で気に入っちゃった。だから雪夜君に最初に教えたかったんだ。」


……それってどういう意味?

深く追求せずに2人で学校の話とかする。里穂子お姉ちゃんのじれじれの恋の話とか。脈ありそうなんだけど、二人とも奥手でなかなか進展しないそうだ。倉持ってまだ見たことないけど、どんな奴だろ?しっかり者で爽やか系の雰囲気イケメンらしいけど。


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