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もうすぐ結衣お姉ちゃんの誕生日だ。プレゼントは何にしよう。付き合ってない男からアクセサリーとか貰うのって嫌だよね。雑貨とか?結衣お姉ちゃんは結構ホビーとかも好きだ。でも出来れば毎日持ってもらえる物の方が良いな。腕時計とか?でも今使ってるやつを気に入ってたら有難迷惑だろうし。結衣お姉ちゃんの死角。そう言えばパスケースは飾り気のないビニールのてろてろのやつだったな。微妙に100均の匂いがする。多分パスケースは気を使ってない。オレから贈ったら使ってくれるかもしれない。

ふむ。ブランドは結衣お姉ちゃんが気に入ってる所があればいいんだけど、そんな話は聞かない。多分そんなにブランドにこだわりはなさそう。携帯カバーとお揃いのブランドにしようかな。自分で持ってるくらいだから少なくとも嫌いという訳ではないだろう。



ゴシック御用達のブランドの入ってる店舗に足を踏み入れた。うん。オレ浮いてる。慣れない場所で買い物って結構緊張するなあ。

結衣お姉ちゃんにはどんなパスケースが似合うかな。このブランドのカラーは黒とか紫とか多いけど、普段の結衣お姉ちゃんはそんなにゴシックに傾いてないからなあ。オールマイティーに使えるやつが良いな。

あ、これ可愛い。

こっちもいいかも。

これは無しだな。

うーん。

色々悩んだ末候補が二つに絞られた。ブルボンローズを型押ししたピンクのパスケースか、蝶を型押ししたシャンパンカラーのパスケースか。どっちも同じくらい可愛いけど…

値段はブルボンローズの方がちょっとだけ高い。結衣お姉ちゃんは他人に貢がれて喜ぶタイプじゃないから、あんまり高価なものだと値段を気にして喜ばないかもしれない。

安い方にしておくか。9700円。結衣お姉ちゃんの金銭感覚から言って1万以下ならぎりぎり許容範囲と思われる。

オレは蝶を型押ししたシャンパンカラーのパスケースを購入した。上品な色合いでとても可愛い。



前日。クッキーを焼くことにした。結衣お姉ちゃんの事だから小学生の分際であの価格帯のプレゼントなら絶対気を使うと思う。自分以外の人物にもあの価格帯のプレゼントを贈っているのか気にするんじゃないかな?オレは友達なら千円ちょい。月姉や桃姉には手作りクッキーを贈っている。月姉や桃姉に手作りクッキーを贈っていると知ったら、きっと意外がると思う。話の流れによっては「食べてみたい」と言われるかもしれない。そうしたらクッキーも作っていったらサプライズ的には満点じゃない?

マーガリンを練って砂糖を加える。牛乳とバニラエッセンスを混ぜて小麦粉をふるい入れてよく混ぜる。オーブンは180度余熱。生地を冷蔵庫で寝かせて、取りだしたら打粉を振るって平たく伸ばす。星型で型を抜いて15分焼く。

月姉と桃姉の誕生日にも作ったので手順は慣れている。

結衣お姉ちゃんはお菓子作り上手みたいだから、こんなシンプルなクッキーじゃあんまり喜んでくれないかもしれないけど…

それから、かねてから打診されてた心変わりの件、話してみようかな?でもノートに心変わりを記入されて心変わりしたとしたら、その気持ちって本物?オレは今の時点でこんなに好きなんだから本物だと思えるけど、結衣お姉ちゃんが偽物だと思っていたら、億が一にもオレにはチャンスが無い事になる。それじゃあ意味がない。結衣お姉ちゃんがどう思ってるか確かめないと記入には賛成できない。

結衣お姉ちゃんにはお誕生日を祝いたい旨メールしたら、ちょっとやりとりして帰宅時間帯頃に結衣お姉ちゃんの家の前で待ち合わせ、ということになった。



少し不安な夜を過ごして眠たい朝。とりあえず学校へ行って真面目に授業を受ける。帰ったら急いで準備して向かわないと…


「ねー、七瀬君。今日一緒に帰らない?」

「私も私も。」


如月派の女子に話しかけられた。


「オレ急いでるからムリ。」

「この前もそう言って断ったじゃーん。今日こそ。ねっ?」

「無理なもんは無理。鬱陶しい。」


如月派の女子たちはしょんぼりしながらも「クールな七瀬君素敵」とか言ってる。クールねえ?

学校が終わったら急いで家に帰った。朝セットしたけど、ちょっとだらけてきてるから入念に髪をセットし直した。時間を見計らって荷物を持って家を出た。

結衣お姉ちゃんの家の前で待機。結構早めに来てしまったから時間が余ってる。オレは今日の段取りを頭の中で組み立てる。

いい誕生日に出来るように。

しばらくすると結衣お姉ちゃんが帰ってきた。


「待った?」


心配そうに尋ねる。


「そんなに待ってないよ」


にこりと笑う。本当は結構待ってるけどそんな事はどうでもいい。ああ、結衣お姉ちゃん今日も可愛い。私服も可愛いけど制服もまた…


「良かった。どうぞ上がって」


結衣お姉ちゃんが鍵を使って玄関の扉を開ける。

その鍵についてるキーリング…前回結衣お姉ちゃんを自宅に送ってきた時は付いてなかったよね。しかも高校生くらいなら誰もが憧れる有名なブランド物。


「このキーリングね、今日誕生日に貰ったの。」


オレの視線に気づいたのだろう。問われる前に答えてきた。

貰った?誰に?あんな高級品。


「あの有名なブランドのやつだよね…?」


ちょっと見ただけだがハートのタグにブランド名が彫り込まれている。


「うん。身分不相応だよね?」

「そんなことないよ。ただ…誰に貰ったの?」


それはオレのライバルだったりする?


「二宗君だよ。」

「また二宗か。」


オレは渋い顔になった。

夏祭りで手を繋ぐだけじゃ飽き足らず誕生日までブランド物を贈るとか。しかもキーリングなら毎日持ち歩いてもらえるもの。考えたな。オレは二宗のプレゼントチョイスに舌を巻く。救いは高価格すぎて結衣お姉ちゃんが遠慮してるかもしれないことだけど。

二宗は結衣お姉ちゃんに気があるんじゃないだろうか。同い年で同じクラスというアドバンテージは大きい。くそっ!絶対に譲りたくない。


「とりあえず、キーリングはいいから入って。」


結衣お姉ちゃんはオレの内心には気付いていないようだ。


「お邪魔します」


丁寧に断って中に入った。


「私の部屋でいいかな?」


おお!結衣お姉ちゃんの自室!自室に通してもらえるくらいの好感度は積み重なったらしいな。他の男も自室にあげてたら嫌だな。


「どんな部屋なのか興味あるな。」


うっすら西日のさしてきた廊下を渡りながら言う。どんな部屋だろう?今まで結衣お姉ちゃんは自室の内装についてはいつもはぐらかして教えてくれなかったから。真面目そうな結衣お姉ちゃんの事だし、月姉みたいに実用的な部屋かな?綺麗に掃除してありそうだけど。


「期待しないでね?」


ムリムリ。期待度マックス。

階段を上がって一番奥の部屋が結衣お姉ちゃんの部屋らしい。結衣お姉ちゃんが『YUI』という札の下がった扉を開ける。中を覗く。

家具はアンティーク調の白い物。カーペットはふわふわのライトグリーン。カーテンは白いバルーンボイルの物と白い刺繍の入ったライトグリーンの遮光カーテンの二重。ベッドは優美な曲線を描く華奢な物で、色は白。白いアンティークなローキャビネットの上には薄型液晶テレビが置いてある。ライトはミニシャンデリアになっている。テーブルライトはローズスタンドだ。

お姫様仕様か…

綺麗に整理整頓されてて好感が持てる。それになにより可愛い。


「イメージと違ったけどお洒落な部屋だね」


失礼かも?と思いつつ物珍しそうに中を見回してしまう。


「そうかな。どんなのイメージしてた?」

「もっとシンプルで実用的かなと思ってた。」


正直に話す。結衣お姉ちゃんがおずおずと上目遣いになる。


「がっかりした?」

「ううん。ギャップがすごく可愛い。」


すごく女の子らしい部屋で可愛い。生真面目そうな見た目の内側にこんな可愛い趣味を秘めてたのかと思うとたまらない。ギャップ萌えって言葉こういう時使うんだろうね。

結衣お姉ちゃんは照れているようだ。ソファを勧められたので有り難く座らせてもらう。


「今ケーキ持ってくるね」

「結衣お姉ちゃんのケーキ楽しみだな。それにしても静かだね?」

「今家に私達しかいないから」

「…そうなんだ?」


完璧な二人っきり。結衣お姉ちゃんの自室で二人っきり。違うと分かってるけど、そういうのって普通手出しOKの相手にしかしないと思うよ。オレはちょっと照れた。正直言えば食べちゃいたい。暴動を起こしそうな気持ちを理性でセーブする。

結衣お姉ちゃんこの調子で他の男連れ込んだり…しないよね?メイド服撮影会の時にちゃんと約束したし。

しばらく待ってると結衣お姉ちゃんが上がってきた。切り分けたケーキを持ってくるのかと思いきやワンホール持ってきた。


「期待されるほどじゃないんだけど洋梨のシャルロットだよ」


表面には薄く切られた洋梨がずらっと並べられている。シャルロットっていうのがどういうケーキか知らないが非常に美味しそうである。


「わ、旨そう。と、その前にプレゼント渡していいかな?はい。誕生日おめでとう。」


あらかじめ段取りは決めておいた。

結衣お姉ちゃんにパスケースの入った包みを渡す。


「ありがとう。開けるよ。」


結衣お姉ちゃんはわくわくした顔で包みを開いている。

中身を取り出して眺める。


「パスケース?」

「結衣お姉ちゃんのパスケースってあんまり装飾ないから。気に入らなかった?」


ドキドキである。「今使ってるのが気に入ってるから、ゴメン…」とか言われたら目も当てられない。


「ううん。すごく気に入った。大事にするね」


早速鞄からSuicaを取り出して、パスケースに移し替えている。良かった。気に入ってもらえたみたい。


「それにその定期が結衣お姉ちゃんをオレの所に運んでくれるんだものね?大切にしたい。」


結衣お姉ちゃんがオレに会いに来てくれるの、ホントに楽しみにしてるんだよ?


「有難う。そういえば七瀬さんや月絵先輩の誕生日とかって何あげてるの?」


ハイ、予想通り。

結衣お姉ちゃんの内心が手に取るように分かるな。一人一人にこの価格帯のものあげてたらあっという間にお小遣いが底をつくと思ってるんだろう。


「んー?去年は手作りでクッキーあげたよ。」


結衣お姉ちゃんは意外そうな顔をした。


「雪夜君の手作りクッキー?」


多分作ってる所が想像つかないと思ってるんだろう。


「想像つかない、とか思ってるんでしょう?」


実際普段はあんまり台所に立たないしね。


「ちょっとね。でも雪夜君の作ったクッキー食べてみたいな。」

「と、いうような話の流れになるんじゃないかと思って、作ってきたよ。クッキー。」


面白いくらい予想通りの展開になったな。


「えー、見せて見せて。」


結衣お姉ちゃんがはしゃいだ声を出す。

鞄の中からラッピングしてある袋を出した。


「見るだけじゃなくて、食べてよね?結衣お姉ちゃんのお菓子に比べたらものすごく見劣りすると思うけど。」


ちょっと自信ない。

結衣お姉ちゃんは袋から星型のクッキーを取り出すとじっくり観察した。なんか採点されてる気分だよ。口に入れてゆっくり咀嚼する。


「美味しい。これは卵使ってないね?もしかしてマーガリン使ってる?」

「当たり。流石だね。」


ちょっと食べただけでわかるのか。

結衣お姉ちゃんの緩んでる顔を見て笑った。多分喜んでる。良かった。結衣お姉ちゃんが嬉しいとオレも嬉しい。


「雪夜君も私が作ったケーキ食べてもらえる?」


結衣お姉ちゃんがケーキを切り分けてオレのお皿に乗せた。


「うん。頂くよ。」


フォークでケーキを千切って口に運ぶ。ゆっくり味わう。

ずらっと並べられた洋梨の下は洋梨入りのババロアだ。甘いけど甘すぎず、喉通りがいいのでするっと食べられる。


「おいしいよ。いくらでも食べられそう。」


この味ならお店に出せるんじゃないかな?そこらのケーキ屋のケーキよりよっぽど美味しい。


「良ければおかわりしてね。いっぱいあるから。」


それは嬉しい。

オレはぱくぱくケーキを食べた。

結衣お姉ちゃんはもう一つクッキーを食べているようだ。嬉しそうで何より。

室内の内装が可愛かったからインテリアの話をした。月姉と桃姉の部屋の事も話してあげた。月姉の部屋はいっぺん入ったから知っていると思うが、桃姉はお姫様風だ。結衣お姉ちゃんと違って色はピンクでまとめられている。麻衣さんは黒×ピンクコーデのギャル部屋なんだってさ。

それから今日貰った誕生日プレゼントを紹介してくれた。倉持、良いセンスしてる。してやられたな。

ケーキもおかわりした。

いよいよ心変わりの件について切りだそうと思う。緊張する。


「ねえ、結衣お姉ちゃん」

「なあに?」


結衣お姉ちゃんはにこにこご機嫌だ。この顔を壊すのは憚られるけど…


「もしノートに『桃花に惹かれていたが心変わりする』って書いた場合の事なんだけど。もし心変わりして新しく好きになった人がノートの存在を知ったら、それでも俺の気持ちを信じてくれると思う?」


オレはノートに記入したから結衣お姉ちゃんの事を好きになる訳じゃない。現時点で好きだ。桃姉の事も同じくらい好きなのはノートの効果だと思うけど。

でもオレの気持ちを信じてもらえないんじゃ恋人なんて望めない。心のどこかで『ノートのせいで心変わりしただけ』って思ってると思うから。


「難しいな。心変わりを指示されたから心変わりしちゃったってのはホントの事だしねー。それにノートの事が無くたって七瀬さんの事を好きになってたっていう可能性もあるし。」

「だよね。」


ホントは信じるって言ってほしかった。

オレは肩を落とした。


「オレはその人に信じてもらえないくらいなら『桃花に惹かれていたが心変わりする』って書かない方が良いと思うんだ。」


この気持ちを一生疑われ続けるくらいなら、他の解決法を探したほうがましだ。


「ノートの事秘密にしとけばいいんじゃない?」

「秘密にはできないと思うよ」


オレが好きなのは他の誰でもなく当事者の結衣お姉ちゃんだから。

結衣お姉ちゃんはそんなの全く気付いてないようだ。不思議そうな顔をしている。


「そこまで具体的な事が言えるってことはもう相手がいるってことだよね?厳密に言えば雪夜君もう心変わりしてるんじゃない?」


それは確実。ノートの記述さえなければオレの好きな人は結衣お姉ちゃんだけだと思う。

でも信じてもらえないなら意味はない。


「そうだと思うけど、相手がそれを信じてくれるかが問題なんだよ。今のオレを見て信じられると思う?」


オレの真剣さが伝わったのだろう。結衣お姉ちゃんは姿勢を正して向き直った。


「その人がどう思うかわからないよ。雪夜君が先に心変わりしている現状を知ってる私なら信じられるけど…」


い、今なんて…

『私なら信じられるけど…』って言った?


「結衣お姉ちゃんなら信じてくれる?」

「?私ならね?ただその相手がどう思うかは保証できない。」


結衣お姉ちゃんが信じてくれれば他の人間なんてどーだっていいんだよ。


「もう一度聞くよ。“結衣お姉ちゃんなら”信じてくれるの?」


希望を込めて聞く。あとから『やっぱりノートのせいで…』とか言い出さない?


「私は信じるって。」

「なら書いて。」


結衣お姉ちゃんが信じてくれるなら問題ない。

桃姉から解放してほしい。


「え?『桃花ちゃんに惹かれていたが心変わりする』って書いちゃっていいの?」

「いいよ。」


あんまりあっさり決めたから不安に思ってるのかもしれない。


「本当はノートの事が無くても七瀬さんのことを好きになってたかもしれないんだよ?」

「それはどうだかオレにも解らないところだけど、今は心変わりしてるって信じてくれるんだよね?結衣お姉ちゃんそう言ったよね?」


今更『やっぱり信じられない』とか言わないよね?


「うん。言ったけど。」

「なら書いて。」


これでじりじり桃姉に焦がれる気持ちから解放されると思うとすっきりする。


「じゃあ、もし七瀬さんの好きな人が雪夜君だったらどうするの?」


ちょっと渋い顔になった。


「多分違うと思うけど、もしそうなら桃姉に諦めてもらうよ。」


確かに桃姉は大切な人だけど、全部桃姉に合わせて人生投げ出す気はない。

大体桃姉からオレにって恋情は感じられないし。


「本当にいいの?」


相当不安がっているようだ。何度も確認してくる。


「いいよ。」


決意を述べると結衣お姉ちゃんはノートを取り出して慎重にボールペンで文字を綴った。

ちらっとオレを窺い見る。


「どう?なんか変わった?」


どうだろう?桃姉を好きだと感じるのは主に会ってる間だからな。今はよくわからない。大切な人だというのは変わってないけど。

結衣お姉ちゃんに対する気持ちは変わってないな。すごく好きだしものすごく可愛い。愛おしい。


「桃姉には会ってみないとわからないみたい。心変わりの相手の方は変わってないけど。」

「変わってないってことは、まだ『心変わりするかも』くらいの感情ってこと?」

「いや、凄く好きってこと。」


オレがそこまで相手の事を好きだとは思っていなかったのだろう。結衣お姉ちゃんはオレに悪いことしたと思ってるみたい。顔に罪悪感がにじみ出てる。


「結衣お姉ちゃんまた罪悪感に苛まれた!みたいな顔してるよ。」


折角オレの事は解決したんだから笑顔でいてほしいのに。


「だってホントに申し訳ないと思ってるんだもん。」


苦笑して結衣お姉ちゃんの頭をそっと撫でる。


「オレはとりあえず解決したはずだからもう気にしなくていいんだよ。あとの10人の事は考えなきゃいけないけど。」


オレだけ解決してても仕方ないからな。逆ハーレム阻止のために動かなくては。

そのためにオレは何が出来るかな?



家に帰って桃姉と対面する。

可愛い。けど、それは容姿が整っているという意味で可愛い。それ以上の愛おしさが湧いてこない事に歓喜する。


「ユキ何じろじろ見てるの?」


桃姉が首を傾げる。


「べーつに。桃姉は今好きな人とかっている?」


ニコニコ笑いながら聞くオレに桃姉が戸惑っている。


「えっと。私はユキと月姉が大好きだよっ」


相変わらずオレをキープしておきたい気持ちが透けて見えるが、以前のような苛立ちは感じない。好きだって言われて悲しくなったりしない。


「ふーん。」


オレは鼻歌を歌いながら自室に戻った。結衣お姉ちゃんに簡素なメールを送る。『桃姉への恋情はなくなった』オレが好きな人は結衣お姉ちゃんだけだ。

結衣お姉ちゃんが好きだ。この世界の誰よりも。


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