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今日は学校の男友達と一緒に夏祭りに出掛ける。服も至って簡素にTシャツにカーゴパンツ。カーゴのポケットに財布と携帯とハンカチ、ティッシュだけ入れてる。友達と会うだけなので結衣お姉ちゃんと一緒に出掛ける時ほど見た目に力は入れてない。

待ち合わせ場所に行くと何人かの友達は既に着いていた。友達の亮太ががしっと肩を組む。やめい!暑苦しい。


「うっす。雪夜、今日もスカしてんな。」

「うっせーし。普通だろ。」


服に気を使ったり、髪型整えたり、女子にそっけないのでよくスカしてると言われる。見た目整えんのは趣味だ。女子は好きな相手以外は割とどうでもいい。


「3組の三枝に告られたんだろ?」

「ありえねー。あんなブスww」


敦士が嘲笑う。

おめーはそんなブスに相手にしてもらえんのかよ?

小学校高学年男子というのは微妙なお年頃だ。色気づいてる奴とそうで無い奴が入り混じっている。そうで無い奴には結構アンチ女子派がいたりする。女子は殆どの奴が色気づいてるけど。男女の精神年齢差がね。


「あんま人の噂すんな。自分が言われたら嫌だろ?」


オレは人の恋愛事面白がって触れまわる奴はあんまり好きじゃない。


「オレ告白とかしねーし。」


敦士が嘯く。

パーだな。お前は一生誰にも告白しないつもりか。

30越えて魔法使いになってしまえ。

溜息をつく。


「それより雪夜、こないだ貸したゲームどうよ?」


友達の中でも比較的仲の良い正哉がオレの向かいに来た。


「割と面白い。CG綺麗だし。ボス戦が長いのはウザいけど。途中で切って寝ようかと思った。」

「あーあれはしょうがねーよ。ボスが弱かったら話になんねーだろ。」


まあな。

話しているうちに全員揃ってぞろぞろ移動し始めた。

じゃがバター、あんず飴、ケバブ、大判焼き、かき氷、色々食ってみる。

遊ぶ方も型ぬき、くじ引き、ダーツ、射的、色々遊ぶ。

型抜きとくじ引きはがっかりな結果だったがダーツと射的はまあまあの成果を上げた。プラモを射的で取ったが、オレの趣味じゃないので欲しい友達にあげてしまった。ダーツではエアガンを貰った。別に使わないけど見た目がまあまあいいので部屋に飾ろうかな。オレの部屋は結構収集品とかで飾られてる。何故か友達の評判はいまひとつだけど。正哉は「薄暗いカクテルバーに一見さんで入ったらきっとこんな気持ち。落ちつかねー」と言っていた。カクテルバーなんて入った事ないだろ。

イカ焼きを購入して食べながら歩いていると見た事のある浴衣が目に入った。


「結衣お姉ちゃん?」


声をかけると結衣お姉ちゃんがパッと振り返った。

なんで?今日は里穂子お姉ちゃんと夏祭りだって聞いてたのになんで男と居んの?


「雪夜君も来てたんだ?」

「…まあね。結衣お姉ちゃんは…デート?」


思わず低い声が出た。

オレに内緒でデートしてたわけ?里穂子お姉ちゃんと来るっていう嘘までついて。


「デートじゃないよ。ちょっと訳有って一緒に周ってるだけ。」


結衣お姉ちゃんは男の手を取っている。手つなぎ運動の効果が出て手を繋いでも離したそうな顔されないって喜んでたら、他の男にも効果あるわけね。イラッとした。

オレが見てる事に気付いて結衣お姉ちゃんはぱっと手を離した。オレに見られて離すくらいなら最初から繋がないでほしい。

訳有って一緒に周ってるだけね。


「ふうん?」

「雪夜、誰それ?雪夜のねーちゃん?」


亮太が首を突っ込んでくる。月姉と桃姉は結構オレの学年で有名だと思ったけど知らなかったのか。

というかやっぱり姉弟に見えるか。結衣お姉ちゃんの隣の男をチラリと見る。見た事のある顔だ。結衣お姉ちゃんが体育祭で二人三脚した相手だ。背が高い。むかつく事に実物は写真よりも数段イケメンだ。浴衣を着ていてお似合いに見える。


「違うけど教えない。」


亮太にそっけなく返す。

駄目だ。頭に血が上ってうまく思考できない。


「ちぇっ。なんだよ。早くいこーぜ、みんな呼んでるからよ」

「うん…」

「雪夜君。またね?」


結衣お姉ちゃんは困ったように笑っていた。

離れて友達と歩き始めてから結衣お姉ちゃんにメールを打った。『どういう“訳”なのか説明するように。』

惨めだ。自分以外の男と居たからって説明を求めるとか。オレは馬鹿か。結衣お姉ちゃんは別にオレのものじゃないし懇切丁寧に説明する義理なんてない。

なんだよ。突然不機嫌になって結衣お姉ちゃんに当たって。まるきり子供だ。自分が嫌になる。


「雪夜ぁ~、機嫌悪ぃな?どしたよ?」

「別に。」


心配している正哉にもそっけなく返してしまう。

こんな自分じゃ結衣お姉ちゃんには相応しくない。頭を冷やして冷静にならなければ。結衣お姉ちゃんとあの男の脇にはもう一人小学生くらいの女の子がいた。子連れデートとかないだろ。本当になんかの訳が有って一緒に居るだけなんだと思う。ただオレが考えられないくらい逆上しているだけで。ああ、あと4年早く生まれていたら「雪夜のねーちゃん?」とか聞かれないで済んだだろうな。結衣お姉ちゃん、なんでオレの事小学生に設定したの?


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