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カレー地獄がやってきた。ペルセウス座流星群を見る為に学校にお泊まり会するらしい。そのお泊まり会で食事を作る係の一人に任命されたそうだ。メニューはカレー。という訳でここしばらく家ではカレー地獄が繰り広げられている。カレーには色んなものを混ぜたりする人がいるがチョコチップを混ぜた時にはさすがに義母さんが桃姉に注意した。ええ。ザクザクチョコチップカレーでしたよ。たんまり蜂蜜も入ってたし。勘弁してくれ。色んなアレンジを経て最終的にはちゃんと一人でまともなカレーを作れるようになった桃姉。わくわくで準備して出掛けて行った。



夕方、携帯にメールと写メが届いた。結衣お姉ちゃんからだ。『ペルセウス座流星群を見るぞ的な合宿中です。今夜だよ。雪夜君も見るのかな?夕食はカレーです。七瀬さんと私が作ったよ。こっちは私作。』桃姉が行く合宿、結衣お姉ちゃんも参加してたんだ。写メはすごく美味しそうなカレーの写メだった。何だろう。色が赤っぽい。普通のカレールウ使ったやつじゃないっぽいな。良いな。おいしそう。食べてみたい。因みにカレー地獄から解放されて、今日の夕食は素麺だ。さっぱりして旨い。でもこのカレーは食べてみたい。『すごくおいしそう。いいなー。ペルセウス座流星群見てみるよ。でも今日はお泊りか。結衣お姉ちゃんと電話できないね。声が聞けなくてちょっと寂しいよ。』と返信。オレも同い年だったらきっと参加できたんだろうな。悔しい。『そうだね。明日は帰ってくるからお話ししようね。』とメールが返ってきた。糖分多めでコメントしたはずなんだけどレスがナチュラルだな。オレ意識されてない…全然されてない…ちょっと凹んだ。

まあいいか。明日の夜にはきっと今日あった事を沢山話してくれるんだろう。



ベランダに出て星を見る。簡易テーブルとレジャー椅子をセットだ。暗闇に煌々と煌めく星々。あ、流れた。綺麗だな。結衣お姉ちゃんも今頃この空を見てるのかな?メールが届いた。結衣お姉ちゃんだ。『八木沢教師はセクハラ教師。セクハラはいけないことだとおもいます。』

……八木沢、何やった。

ああ、電話したい。声が聞きたい。いや、むしろ今すぐ会いたい。

駄目だ。嵌まってる。抜け出せない。『今すぐ会いたい』のメールの文字は一度だけ打ってみて、消去した。

まだ、だめ。

結衣お姉ちゃんにとってオレはそんなに大きな存在じゃない。

まだ。


「なーに、溜息ついちゃってるの?」


気配には気付いてた。月姉だ。伏せてしまってた頭をあげるとソーダアイスバーを齧る月姉が見えた。


「今頃どうしてるのかなって。」

「誰が?」

「…桃姉。」


うそ。結衣お姉ちゃん。


「さー。人数多いみたいだしパーっとやってるんじゃない?わくわくよねー。みんなで食事に天体観測。枕投げにガールズトーク。若いって良いわね~」

「月姉オバサンっぽい。」

「ぬぁんですって!」


片腕で首を締めあげられた。逆に締め上げるのは簡単だけど大人しく締めあげられとく。早々にギブサインを出した。


「ふん!将来はユキの彼女とガールズトークしちゃうんだから!ユキのあんな事やそんな事を聞きだしてやるんだからね!」

「…変な事嗾けないでね?」


非常に不安だな。(未来の)彼女と月姉のコラボレーション。月姉妙に女子から人望厚いし発言力あるからなー…

ジーっと月姉を見てると月姉の探るような目とぶつかった。

月姉はアイスバーを食べ終わるといったん引っこんでグラスとベイリーズとカルーアと牛乳を持ってもっぺん来た。


「ユキ。今夜は飲みましょう!」


月姉に勧められるまま杯を重ねる。月姉は酔わせてオレの本命や本心を聞きだそうとしていたみたいだが、月姉の好むような甘ったるいリキュールじゃいまひとつ酔えなかった。2人でカルーア1瓶とベイリーズ2瓶空けた。


「ゆきはなになやんれるのよ~。いつもみたくがんがんおしてけばいいじゃない~」


毎晩電話してるから、誰とは言ってないけど桃姉以外に気になっている相手がいることが月姉にはバレている。月姉はオレがその子に恐れずアタックすればよいと思っているようだ。


「んー。もうちょっと悩んどく。」


オレはちょっと苦笑いだ。


「ゆきはいいおとこなんらから、どうどうおせばなびかないおんななんていないのよ」

「だといいねえ。」


月姉は真剣みたいだったが、まだオレは自分の心情を誰かに吐露出来る段階にない。ごめん、月姉。


「あ~ながれぼしきれい~」


月姉が空をぼんやり眺める。


「そうだね。月姉はそろそろお酒やめといた方が良いんじゃない?」

「まだのむ!」


若干舌ったらずになってきてるけど大丈夫なんだろうか?

最終的には月姉が簡易テーブルに突っ伏して寝てしまったため、背負って月姉のベッドまで運んだ。

多分オレの本心を聞きだそうとしてるのはオレをからかいのもあるだろうけど、心配してるから。不器用な月姉にちょっと笑った。

ありがとね。月姉。

オレはそっと月姉の髪を撫でて部屋を出た。



軽い酩酊感があってその夜は良く眠れた。


お酒は二十歳になってから!

この小説は法律違反を推奨するものではありません|ω・)

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