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二宗勉強会の不完全燃焼の話を聞いた。

『“二人っきりの”勉強会』という文章になっていなかった為イレギュラーが生まれ、思うように好感度が上がっていなかったようだという。文章の穴をついた訳だな。それは結構美味しい情報かもしれない。イベントに存在しないイレギュラーをぶち込めば好感度の上がり幅は下がるかもしれない。たとえば家庭内イベントでは月姉とかを引きずりこめばいい訳だな。

もうこれ以上桃姉を好きになりたくない。


「とりあえず月姉を巻き込めるよう努力してみるよ。」


携帯越しに伝えてみる。


「うん。月絵先輩が一緒ならそんなに甘い雰囲気になったりしないよね。」


甘いソプラノが耳を擽る。

結衣お姉ちゃんの声凄く好きだ…なんだろう色っぽい?鳴かせてみたくなる声っていうのかな。……あんまり不謹慎な事考えないようにしよう。でももうちょっと喋る声を聞いていたい。


「今回のテストどうだったの?」

「うーん。物理が85点とちょっとヤバめだった。数学は88点。他は大丈夫かな。でも順位は11位だったよ。何とか一桁に乗りたいと思って一生懸命頑張ってたけどあと一歩って感じ。二宗君にも色々教えてもらったのにな。」


二宗という名前が出てちょっとイラッとした。


「でも11位すごいよ。一学年240人近くいるんでしょう?」

「うん。そう言えば雪夜君ってノートでは近接格闘の事は熱心に書きこまれてるけど勉強の事は全然書いてないね。成績良い方?」

「悪くは無いね。」


学校の先生には私立の偏差値高い中学を勧められてる。近いから公立行く気満々だけど。遠いんだよ私立。電車で40分とか通う気なくなるね。一応高校から本気出して進学校選択する予定。


「へー。顔良くて運動できておまけに成績良いとか格好良いね。」


結衣お姉ちゃんがそんな外面的要素に惚れてくれるなら何にも悩まずに努力だけしてれば良かったんだけどね。

でも結衣お姉ちゃんは違う。恋愛拒否モードを解除できる相手じゃないと好きになってはくれないだろう。解除するには原因が何か探らなくちゃならない。でもそんな深くまで突っ込んで聞いて嫌われたら元も子もない。自然に話してくれる状況に持ち込むしかない。舵取りが難しいな。長期戦になるのは必須。


「ありがと。ねえ、もっと何か話して?」

「え?」

「結衣お姉ちゃんの声が聞きたい。」

「……。」


照れてるな。絶対。こういう所カワイイよ、ホント。


「結衣お姉ちゃんの声って何か甘い。」

「…春日さんにも言われた。自分じゃちょっとよくわからないんだけど。」

「その声好きだな。」

「そ、そう?……私も雪夜君の声好き。」

「どの辺が?」

「耳触りが柔らかくて落ち着いた感じのするところかな。」

「ありがと。声変わりしちゃったら変わっちゃうだろうけどね。」

「雪夜君ならきっと格好良い声になると思うよ!」

「だといいけど。」


そこまで設定されてないからね。精通来てるし、下もうっすら生えてるけど、声変わりはまだ。髭ももちろんまだ。

それから家庭科の授業でハーフパンツ作った話とか聞いた。自分で作っておいてなんだけど、趣味じゃないので捨てようとしたら、結衣お姉ちゃんのお母さんがもったいないって履いてるらしい。結衣お姉ちゃんのお父さんは和郎という名前の会社員。甘いものは概ね苦手でお煎餅が好物だそうだ。お母さんは敏子という名前で料理上手なんだって。得意料理はチキンのパプリカソース煮と筑前煮らしい。チキンのパプリカソース煮はトマトを加えてアレンジしてあって、オレが好きそうな味だって言ってた。食べてみたいな。


「雪夜君っていつ頃から七瀬さんのこと好きだったの?」


おずおず結衣お姉ちゃんが聞いてきた。桃姉を好きになったのは…


「んー…実は血が繋がってないって打ち明けられてちょっと経った頃かな。6歳くらい。打ち明けられてすぐは凄い荒れた。凄く家族が好きだったから。義母さんに『なんでオレを生んでくれなかったの!』とか当たり散らしたりして。その頃から家族と言っても壁一枚隔てたような感覚が付きまとって、気が付いたら桃姉に惚れてた。」

「……ごめんね。」

「もう謝らないで。複雑だけど今幸せだから。」


血が繋がって無くても自分の家族が大好きだ。義父さんも義母さんも実子と分け隔てなく育ててくれてるし、オレは恵まれてると思う。


「私ね、雪夜君に凄く申し訳ないことしたと思ってる。だから雪夜君をもっと幸せにしたい。」

「…うん。」


結衣お姉ちゃんにそう思ってもらえるだけで報われた気持ちになるんだけどね。


「私に何が出来るかな?」

「結衣お姉ちゃんが自分の幸せを見つける事を努力してみて。そうしたらオレももっと幸せになれるかもしれない。」


欲を言えば恋を拒否せず、オレの手を取って欲しい。そんなこと現段階じゃとても言えないけどね。


「私の幸せが雪夜君の幸せ?」


結衣お姉ちゃんがオレの手を取って幸せを感じてくれればオレも幸せ。WINWINな関係だね。オレ以外の人間を選んだとしても結衣お姉ちゃんが幸せになってくれれば…やっぱヤだな。オレもまだまだ人間が練れてないねえ。そっと溜息をついた。


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