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日曜日。結衣お姉ちゃんと森林公園に行った。季節が季節なだけに暑い暑い。太陽がギラギラ輝いている。結衣お姉ちゃんの白磁のような白い肌が焼けないか心配。結衣お姉ちゃんに言ったら「ちゃんと日焼け止め塗ってるよ。それに赤くはなるけどめったに焼けない」と言っていた。赤くなるのも痛そうで心配なんだけど。

噴水が水飛沫を飛ばしている。こんなに暑いんじゃ噴水くらいしか涼みようがないからね。オレ達はふらふら噴水の元へ吸い寄せられた。


「暑いね~」

「結衣お姉ちゃん、ちゃんと水分摂らないとだめだよ?」

「うん。」


結衣お姉ちゃんが鞄からペットボトルを出してごくごく飲む。オレもペットボトルの麦茶を飲むが、ものすごくぬるい。炭酸とかじゃないのがまだ救いか。


「イベントの方どう?」


結衣お姉ちゃんが聞いてくる。

桃姉と二人で調理中、包丁で指切って手当てしてもらうやつとか、従姉妹が来て二人でお父さん役とお母さん役をするやつとかな。

起こしたくなくてもボコボコ起きる。


「順調に起きちゃってる。」

「じゃあ好感度も?」

「残念ながら…」


桃姉可愛いんだよ。それに優しい。

これ以上好きになりたくないのにどんどん好きになる。深みに嵌まるのが怖い。自分の心のブレーキを自分でかけられたらいいのに。


「まあ、桃姉だけ好きになってるわけじゃないんだけどね。」


桃姉を好きになっているのと同時に結衣お姉ちゃんへの気持ちも日々膨らんでいる。毎日の電話に心揺らされて、たまに会う日の可愛さに目を奪われる。会う度「こんなに可愛かったっけ?」と思う心は天井知らずだ。今日も総レースのチュニックワンピが似合ってて最高に可愛い。


「どういう意味?」

「そのうち教えてあげるよ。どう転んだとしても。」


結衣お姉ちゃんの事を好きになって告白するか、もしくは「好きになりかけてた」と笑い話にするかは分からないけど。

それから最近やった失敗の話とかを聞いた。結衣お姉ちゃんはちょっとボケてる所が可愛いと思う。こんな話の中にも可愛さを見出してしまうとはな。

会話を続けていたら、ふと気がつくと暗い雲が出てきている。


「なんか変な雲出てきたね?」

「うん。降るかな?」

「早めに退散した方が…」


ポツ…ポツ…

言葉の途中で雨粒が落ちてきた。


「もう遅いな。結衣お姉ちゃんこっち。」


結衣お姉ちゃんを引っ張って木の下に避難する。避難が完了した途端ザーッと雨が降りだしてきた。間一髪だな。この木は葉が沢山生い茂っているので木のギリギリまで中心に寄ればそこまで濡れないはず。結衣お姉ちゃんが濡れなければいい。オレは中心から少し離れた。オレが中心に寄ってしまうと近すぎて結衣お姉ちゃんが緊張してしまうかもしれないから。まさか全く緊張されないくらい男として見られてないとは思いたくない。


「雪夜君、濡れるよ。もっと寄って。」


結衣お姉ちゃんがオレの手を引っ張った。


「でも…」


中心に寄ったら困るのは結衣お姉ちゃんじゃ?


「風邪引くよ。」


ぐいっと結衣お姉ちゃんに引きよせられた。木の中心でオレ達自身が密着する体勢になる。結衣お姉ちゃんが近い。シャンプーの香りかな?ふわっといい香りがする。結衣お姉ちゃんの方に顔を向けると明らかに緊張してドキドキしてるのが丸わかりな表情をしている。だから言ったのに。

まあ、緊張はほぐさなきゃね。ドキドキしてくれるのはありがたいけど。


「いざ引き寄せてみたら近すぎてドキドキしているところ?」


ふふっと笑う。ホントはオレもドキドキしてるんだけど気付いてるかな?だって抱きしめられそうな距離なんだよ?抱きしめようと動かなかった俺の腕を褒めてあげたい。

結衣お姉ちゃんの緊張が解けた。多分ちょっとした意地悪を言われてるんだとでも思ってるんだろう。結衣お姉ちゃんは引きよせていた手をさりげなく離そうとしていたので反対にぎゅっと握ってみた。凄く柔らかい手だ。女の子の手って柔らかいな。


「ゆ、雪夜君…」

「そんな困った顔しないで。いじめたくなる。」


困った顔も可愛い。眉毛がハの字になってるよ。

極限まで困ったのか目が潤んでいる。駄目だな、これ以上いじめてると理性が持ちそうにない。パッと手を離した。


「嫌われたくないから離してあげる。」

「嫌いにはならないけど…」


そういう事言うと都合よく解釈しちゃうんだよ?手を繋いだりいじめたくらいじゃ嫌いにはならない程度には好かれてるって。

ふと手を見る。柔らかかった。本音を言えばもっと繋いでいたかった。ならもっと繋いでいられるように努力すればいい。


「まずは慣れてもらおうかな。」


呟いた声は雨音にかき消された。

結構濡れてしまったが、しばらくすると雨はやんだ。やんでみると雨が降っていたとは思えないくらいの青空が広がった。


「通り雨だったみたいだね。」

「あっ、虹!」


結衣お姉ちゃんが指さす先には大きな虹がかかっている。


「綺麗だね。」

「うんっ」


2人で大きな虹を見上げた。

結衣お姉ちゃんはオズの魔法使いのあの歌を鼻歌した。



オレは結衣お姉ちゃんと手を繋ぐ状態が自然になるよう頻繁に手を繋ぐことにした。今は照れてすぐ離したそうな顔をするけど、いつかはそれが日常で、手を繋ぐ事こそ自然な状態なのだと錯覚させるくらいに。結衣お姉ちゃんはオレがからかってるんだと思ってるらしく、意固地になって手を離さない。好都合なことこの上ない。


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