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エピソード12 人間兵器の恐怖

<一貴ターン>


GW明け初日 13時25分、大雄山 山間の材木工房裏。

ミニウージーの奏でる毎分950発のリズムが、人気ひとけの無い杉林を 切り裂く様にこだまする。



蟋蟀こおろぎNo13:「何だよ、コイツ…」

蟋蟀No5:「穴 開かないねぇ…」


文華、一貴をかばい 防爆毛布に包まって9x19mmパラベラム弾の銃撃を凌ぐ


でも、



文華:「痛い…、」


一貴、恐怖に震えながら自分を護り抱きしめる 愛しい女の息づかいを感じ取る。

…顔を濡らす彼女の涙に、正気を呼び戻す。



一貴:「フミ…、」


でも直ぐには動けない…、




文華、防爆マントが かなりの衝撃を緩和してくれているとは言え、一貴をかばって銃弾を浴び続ける その華奢な背中は…そろそろ我慢の限界。


やがて、馬鹿の一つ覚えみたいに連射し続ける 蟋蟀No7のミニウージーは50発の弾薬を撃ち尽くす。



蟋蟀No7:「弾、無くなっちゃった。」

蟋蟀No6:「今度はみんなで一斉に撃ってみようか!」




文華:「一貴、しっかりしなさい!」

文華:「一貴、お願い!」

文華:「一貴、助けてよぉ…」



ミニウージーの安全装置を解除する 蟋蟀s、


その足下を目掛けて!

いきなり、毛布の中から現れる 一貴!


…極超低空、地面すれすれ・超高速での掃腿そうたい=足払い!



スッ転ぶ 蟋蟀No7?



蟋蟀No4:「あれっ?」

蟋蟀No2:「あっ、出てきた!」


一貴、間髪容かんぱついれず 起き上がり!

その身のこなしの流れのままに 蟋蟀No12をクロスフェイス・チキンウィング!

背後に回り込んで、No12を盾に取る…、


処が…容赦なく蟋蟀No12ごと撃って来る 蟋蟀s!



一貴:「こいつら〜!」


一貴、蜂の巣になった 蟋蟀No12を破棄し、飛び込み前転して弾幕を避ける!

それでも、避けきれず…左腕に 二三発喰らう、



一斉射撃で 一貴を狙う 蟋蟀s、幸いな事に 射撃の腕は今ひとつらしい…


一貴、転がりながら、蟋蟀No12から奪ったミニウージーで 蟋蟀sを射撃する!


…あっけなく倒される 蟋蟀No13とNo14。



一貴:「何だよコイツ、滅茶苦茶 命中精度悪い!」


蟋蟀No4:「逃げろ〜!」

蟋蟀No2:「きゃ〜!!」


クモの子を散らす様に工房から逃げ出す 蟋蟀s…

一貴、更に数発銃弾を喰らう…、 今度は腹。



しかし、そんな事を意に介している余裕は無い!

文華の元に掛け戻り、 いきなり毛布を引っぺがす!



文華:「キャぁーーーー!!」

一貴:「大丈夫か?!」


泣き顔の文華…



文華:「怖かったよぉ~!」


文華、一貴にすがり付く、半分、腰が抜けている…

一貴、アドレナリンが引いて、思い出した激痛に 左腹を押さえる。



一貴:「イチッ!」


足の甲も、

…ミドルカットのメレルモアブに穴が開いている。



一貴:「結構お気に入りだったのにな…、」


そして、不安そうに見つめる文華を… 優しく抱きしめる。



一貴:「大丈夫だよ、」



一貴、防弾毛布をマント代わりにして文華に被せる。

…自分が殺した蟋蟀達の亡骸をしげしげと見つめる…



一貴:「こいつら、一体 何者なんだ?」


同じ顔、同じ姿、格好の「男の娘」、

しかも、死ぬ事を全く恐れず、味方を犠牲にする事にも一切 躊躇ちゅうちょしない…



一貴、割れた窓から外の様子を伺う。


一貴:「まだ、5、6人は居そうだな…」



倒れた蟋蟀達のミニウージーから残っている弾丸を回収する。



一貴:「此処は危険だ、また爆弾を投げ込まれたら逃げ様が無い…」


文華:「脱出口から逃げる?」


床下に、…焼き討ちに有った際に文華と竜二が脱出した地下通路が隠されている。



一貴:「いや、多分…罠が仕掛けられてるだろう。」



一貴、一瞬で辺りを物色する。

しかし、使い物になりそうな獲物は…残っていない。


幸い… 車は工房の直ぐ傍に横付けされている!



一貴:「車迄走るよ!」


文華、無言でうなずき…

一貴、文華を抱えて入り口を突破する!



同時に窓から投げ込まれる手榴弾!

…炸裂!


手榴弾:「………!」



再び強烈な爆発音と共に殺傷力を持った金属片が四散する!

爆風で横滑りする117クーペ

爆煙に叩き付けられながら、…車の手前迄吹き飛ばされる一貴と文華!



一貴、鍍金メッキのドアハンドルに仕掛けられた指紋認証ロックを解除!

運転席側から文華を強引に車内へ押し込む!



シャフトの通った太いセンタートンネルの上でつかえてる文華のお尻を思いきり押して、



文華:「やだ! 変なとこ触んないで!」

一貴:「仕方ないだろ!」


文華、何故か顔が真っ赤?



文華:「一貴の指がお尻の穴に刺さった!!」

一貴:「悪い…」



一貴、自分も何とか潜り込む、



ボンネットの上に転がってくる手榴弾!

…炸裂!


手榴弾:「………!」




三度、鼓膜を破裂させる様な轟音!

鍍金メッキのフェンダーミラーが憐れにも吹飛ぶ!


フロントガラスは、

…一応防弾仕様だが、かなり粉々に砕けてる。



一貴:「このやろう〜、よくも!」


巻上った爆煙の外から…ミニウージーの弾丸がリズミカルに鉄板を跳ねる!

特殊な防弾フィルムを施された車体は凹みながらも 辛うじて弾丸を跳ね返す!



一貴、ダッシュボードを開けて、

…中から出てきた「ボタン」の列を操作する!


途端! 断続的に鳴動する 異様な「音」? 超低周波の「叫び声!」

直接 内耳に作用して、平衡感覚を奪う…音響兵器。



文華:「何なの〜? …この音?」

一貴:「コレを耳に詰めて。」


一昔前のイヤフォン? 補聴器?の様なモノを、有無を言わさず文華の耳の穴に詰め込む。 装着すると、…途端に 耳の中にナニやら液体の様な物が流れ込んで来る。



文華:「ツメタ…」


何だか、耳の中に 妙な圧力を感じる?



一貴:「特定の周波数の音をキャンセルするイヤフォンだ。」


まるで、カズキの声がプールの中で聞いている様な、そんな風に聞こえる。



鳥達が、一斉に飛び立って行く

…森が、ざわついている



文華:「ナニが、起きているの?」


眩暈めまい、吐き気を起こす、特定の周波数が車外半径500mに響き渡っている。


それでも、…相変わらず銃撃は止まない。

…ドアのガラスが、ビシビシと ひび割れて行く。



一貴、運転席を目一杯 倒して、後部シートを開き、

…ボンネットの中から 収納されていた「獲物」を引っ張り出す。


総合格闘技用のグローブ?

ヘッドギヤ? いや、ガスマスク。


慣れた手つきで テキパキと装着して行く。



文華:「何するの?」

一貴:「やり返す!」



一貴、ダッシュボードの中の別の「ボタン」を押す!


一貴:「ポチっとな!」



突然!

車の床下から四方八方に噴出される煙、

結構な勢いで、数十メートル四方の視界を奪って行く。


主成分は、オレオレジン・カプシカム、

…通称OCガス。




一貴:「頼みが有る。 1分ごとに、この3つ目のボタンを押すんだ。…良いね。」


文華:「ちょっと!」


文華の制止を振り切って、 一貴、飛び出す。







蟋蟀s、降り注ぐ唐辛子ガスの霧の中で、しかも内耳を揺らされてフラフラ嘔吐しまくっている… 咳き込み、視界を奪われ、射撃どころでは無い。



一貴、怯んだ敵に急接近!

車の床下に隠し持っていた 「2mの金属棒」で 蟋蟀No9の頭部を強打する!



一貴:「一人!」


異様な打撃音に、怯みながらも 闇雲に乱射を再開する蟋蟀s!

しかし、やけっぱち射撃が当たる訳が無い。


一貴、霧に紛れて 咳き込む蟋蟀No8に接近!

…強襲!


鈍い音と共に、更に一名 戦線離脱…



一貴:「次は! どいつだ!!」


溜まらず逃げようとする 蟋蟀No6を…後ろから「ぼくっ」!



一貴:「117の敵!」


少しずつ煙が晴れて来て、臨戦態勢を取り戻しつつある蟋蟀s。



鈍い音= 蟋蟀No2:「ゴンっ!」

一貴:「4人目!」




散開した蟋蟀達が、再びパラパラと…射撃音を響かせる、

手榴弾が飛んでくる…



一貴:「何の!」


アイアンの要領で打ち返す、一貴!

手榴弾…見事蟋蟀に命中!



蟋蟀No5:「あいた!」


…花火の様な音で炸裂!


手榴弾:「………!」



一貴:「5つ!!」


それでも鳴り止まない銃撃、

それどころか、その数が増えて来ている…



一貴:「まだ居るのか?」


360度 全周包囲で 射撃されている!

一貴、ゆらゆらと弾幕を避けながら、…カウントダウン。



一貴:「…2、1、ゼロ!」


いきなり! 大音圧の「不快轟音」が辺りに鳴り響く!


不快轟音:「………………!」




蟋蟀s:「うううううぅ…」


一瞬 怯む蟋蟀s、


一貴、すかさず蟋蟀sに向かって距離を詰める!

…片端から「重さ4kgの金属棍棒」で、蟋蟀達をぶっ叩く!!



一貴:「6つ!(No7)、 7つ!(No4)」


次々に戦闘不能に陥り、地面に這いつくばる蟋蟀達。

…生き残った連中も、いよいよ退却体勢に入る、



蟋蟀:「逃げろぉ!」


…に向かって 一貴、掌サイズなラグビーボール型の金属錐を飛ばす!



一貴:「逃がすか!!」


この金属錐、重さ約1.5kg、直径0.4mm ×長さ20m の超高強度カーボンナノファイバ製の紐に括り付けられている。


…要するに「流星錘」!

紐の反対端はカズキが装着したグローブに取り付けられていた。



流星錘、蟋蟀No15の後頭部を直撃、陥没!

…引き戻しざま、逆方向へ逃げた蟋蟀No10を強打、沈黙!



一貴:「九つ!」


二人は、二日酔い状態の頭を抱えてふらふらしながら射程外に逃れる。

思いっきり流星錘を引き戻して、逃げる 蟋蟀No1の足を絡め取る。


そのまま、巻きついて、引き戻す0.4mmの紐が…スパッと足を切り落とす!



一貴:「…2、1、ゼロ!」


再度、鳴り響く 断末魔の叫び声!!



不快轟音:「………………!」



反対側に逃げた最期の 蟋蟀No11も、…ゲロ吐きながら、とうとううずくまる。



一貴、ボタン一つで流星錘を高速巻き戻し



一貴:「いちっ!」


銃弾に打ち抜かれた足の甲が痛む…

もしかすると、唐辛子ガスが沁みている?



こずえから、…鳥がばさばさと落ちてくる。



一貴:「取り敢えず、…片付いたか。」



一貴、倒れている 蟋蟀No11に近づいていく…



途端に!

爆発する 蟋蟀No11!!



…吹き飛ぶ手足! 破裂する下腹部!

そこから噴出す毒ガス!!



他の蟋蟀達も、一斉に、同時多発的に、…自爆!


コレでは…捕獲して 話を聞き出すどころの騒ぎではない。




一貴:「全く、…やってられないな。」


車に戻り、トランクを開ける、

中から解毒用の泡状のスプレーを取り出して頭からぶっ掛ける。



それから、泡だらけのままで運転席に乗り込み、

ガスマスク付きフェイスガードを外す…



一貴:「うっ…! 眼ぇ しみる…」


したたか、車内にもOCガスが充満している…



文華:「……、」


文華、真っ赤に眼を腫らしながら、

…行き場の無い怒りをナニにぶつければ良いのか、拳を握りしめている。



一貴:「取り敢えず、…温泉でも行く?」


ヒビだらけになったウィンドウシールドのまま、

117クーペが 緩緩ゆるゆると発進する…













<富士本ターン>


GW明け初日、14時25分 

多摩川河川敷、「黒組」の研究所 跡地


警察が張った立ち入り禁止シールの奥、電気の消えた暗い倉庫のど真ん中に、…加茂理夜が立っていた。


両手を大の字に拡げた格好で、

…良く見ると、その両手首には 細いピアノ線が巻かれて、天井から吊り下げられている。



蟷螂カマキリ:「あんまり暴れると、手首が落ちるぞ…、」


加茂理夜の足下には、ギスギスに痩せた丸坊主の女アサシンが体育座りしていた。



加茂理夜:「退屈なのです…。」


加茂理夜、溜息を一つ…

蟷螂、倉庫の入口に眼を凝らして、ゆっくりと立ち上がる…



蟷螂:「お早いお着きだな、…タイムリミットまで後 5分 残ってる。」



小さな天井の窓から差し込む陽の光が、

…美しい女の姿を浮かび上がらせる。



富士本:「何のつもりか知らないけれど、…教えておいてあげる。」

富士本:「加茂理夜が私をメールで呼び出すなんて事は、ありえない。」


直人を教授の所に連れて行った後、

富士本は「加茂理夜の携帯」から一通のメールを受け取っていた。



富士本:「おびき出して奇襲を掛けるつもりだったとしたら、お生憎様だったわね。」


富士本、両手にトンファを構えている。

戦闘準備…完了済み。



蟷螂:「あれは、相方が書いたんだ、俺の趣味じゃない。」

蟋蟀こおろぎ:「はいはーい!」


蟋蟀、加茂理夜の後ろでひらひらと手を振ってみせる。



蟷螂:「別に俺は奇襲とか、裏をかくとか、そんな事は考えちゃ居ねえ。」


蟷螂:「こないだは、結構コケにしてくれただろ。

…その仕返しが出来れば、それで良いって訳だ。」


蟷螂の手には、刃渡り1mは有ろうかという長剣が握られている。



蟷螂:「20分だ、

…20分、立って居られたら、お前の勝ちにしてやる。」


蟷螂:「武器は、好きに使えばいい。

…但し、逃げたら、こいつを二目と見られない惨めな姿に作り変える。」


蟷螂、剣先を加茂理夜の頬に当てる。



富士本:「凄い自信ね、…この前、負けたばかりなのに。」


長い黒髪のグラマラス美女、殺意を秘めた視線で 蟷螂を睨みつける。



蟷螂:「今日は邪魔が居ないからな、「黒子」も、「大道具」もな、」


丸坊主のガリガリ女、瞳孔の怪しい冷めた目で 宙を見つめてる。



蟋蟀:「はーい、「結界屋」さんは 此処に居ますよ〜!」


「男の娘」が 懐中電灯で照らした先に、

…竜二が、ドラム缶の中から顔だけ出している。


さっき迄蟷螂が咥えさせられていた「猿轡さるぐつわ」をされている。


蟋蟀:「コンクリって…固まると、結構苦しいみたいね。」




富士本、静かに…呼吸を整える。



蟷螂:「…遊ぼうか!」



蟷螂が、抜き身の刀を腰に構えた。 …それは、少し居合いにも似ている。

左手の指で歯を強く摘み、渾身の右手の振りを…溜める。


ゆっくりと歩きながら 富士本に向かって間合いを詰め…



最後の一投足で!

踏み込みながら…左指を離して刃を横一閃に解放! 斬り払う! !!


富士本、半歩退いて刃圏を躱す…、



蟷螂、続いて縦の振りかぶり、

大きく上段に振りかぶった格好で、…同様に後ろ手に回した左手の指で振り下ろしの威力を溜める。


踏み込みに併せて開放! 高速で刃を射出する!!


富士本、半歩右に逸れて剣筋から逸れる…、



余りにもお粗末な、剣術もどき?

そんな「漫画の様な一撃必殺」など、触れなければ どうという事はない…



しかし、この女の「見せ掛けだけのトリッキーな動き」は

…あくまでもフェイント!


「実」は、袖の中に隠し持った小型拳銃の筈。



富士本:拳銃を抜かせる前に、片付ける!



蟷螂の三撃目!

今度は斜め下段に構えた状態から、

…見よう見まねの様な「居合いモドキ」で剣を振り上げる!



富士本、その動きに合わせて、…一瞬で蟷螂の懐に飛び込む!


富士本:「…!」






ところが、信じられない速度で、刃が戻って来ている!

一瞬! 対処が追いつかない!


蟷螂の頭上で一気呵成いっきかせいに切り返された刃は、

…にやけた笑いと共に 既に斬り下ろされている!



富士本:「ちぃっ!」


限界迄腰を沈み込ませ…辛うじて、トンファを振りかぶって振り下ろしの刃を受ける!


そこから更に、地べたに押し付ける様に…剣が重く伸し掛る!



富士本:この斬り返し! 柳生新陰流? …だと?!


しかも、異常な迄に重い…。


この剣は「フェイント」ではない。




蟷螂は、一瞬で執着を捨てて、既に次の剣撃の体勢に移っている。

トンファの上を斬り押しながら滑る刃は、…信じられない重さで 富士本の体勢を後方へ押し戻す。


少しでも体勢を崩す訳には行かない。 崩れたら最後、受ける事も、逃れる事も、攻撃する事も間に合わなくなる! しかも…少しでもトンファの圧力を緩めれば、自由になった剣先が懐に飛び込んでくるのは必至!



富士本:何で! 私が 後手に回っている?


富士本、トンファで刃を支えつつ、姿勢を保ったまま…横への回り込みを試みる、


処が! 蟷螂は再び、驚くほどの諦めの良さで剣圧を抜いて、

…今度は手首の返しだけで刃を振って 富士本を追いかける。



富士本、後方への跳躍!


蟷螂、ここで左袖口から ルガーLCPを出現!

…空中移動中で方向転換の効かない 富士本の どてっぱらを狙う!


銃声!:「…!」



富士本:「くそおっ!」


3発!

内側に着込んだ 防弾コルセットで食い止める!

しかし、その衝撃は 深く富士本の内臓を穿うがつ!



富士本:追撃が…! …来ない? 何故?


富士本、尚も姿勢を保ったまま、…一瞬 息をつく。


蟷螂はニヤニヤと富士本を見下ろしながら、体勢を立て直している。



蟷螂:「そんなに簡単に決着ケリをつけるのは詰まらない。

…もっと、萎靡いびってやる。」



富士本のブラウスの胸元が、先ほどの一閃で切り裂かれ、

…露になった白い乳房から、うっすらと血が滲んでいる。



蟷螂:「良い、…眺めだ。」





こいつの剣の技が素人ではない事は判った。


そして、細身の肢体から繰り出される異常なまでの力、

恐らく、100%筋力を使える様に 脳のリミッタを外されている…



再び、ゆっくりと、近づいてくる蟷螂、

その迂闊な歩き方は、どう見たって素人丸出しだ。


しかし、



そこから、急に転換する!


常識では考えられない跳躍距離!

助走の無い状態から一瞬で3mの間合いを潰す!


一直線に突っ込んでくる突き!



富士本、一瞬早く、左に逸れて 右手のトンファで剣をさばく!

左手のトンファで、テイザー針を発射…


富士本:「ぐぅ!」



突いて来ていた筈の剣は

何の前触れも無く、横にぎ払われている!


トンファで捌いた筈の刃が、…力任せに富士本の身体を、吹き飛ばす!



蟷螂:「ふん!」


富士本、吹き飛ばされながらも 床を滑って体勢を保つ!

その富士本を、再度ルガーが追撃する!



銃声!:「…!」




奇跡的に! 顔をガードする形で目の前に突き出したトンファが、弾丸を弾く!


一気に、冷たいモノが背筋から脇腹を流れ落ちて行く…



富士本:疾い!

富士本:疾速すぎて、ついていけない。


こんな速い転換は人間には不可能だ、

つまり、最初っから狙って用意された動きか…、

よほど訓練されて、手足を自動自律的に動かせるようになっているか…、


どちらにしても、



富士本:「厄介だな…」


蟷螂:「今のは、危なかったな。

…もう一寸で、終わってしまうところだった…。」

…勿体ない。 まだ2分も経ってないのに…。」






蟷螂、再び ゆっくりと間合いを詰めてくる。



富士本:「兄さん…、」


こんな時、一貴なら、どうする?


いや、一貴なら、最初から戦わない筈だ。

こんな不利な状況に自ら陥ったりはしない。



富士本:私は、…どうして?

…見くびったのか? …違う!

…冷静でなかったのか? …違う!



富士本:私の、加茂理夜に対する気持ちは、

…そんなものよりもずっと強い!


富士本:理夜の為なら、…こんな命、使い捨ててやる!

…私には、その覚悟がある!



今度は! 富士本が突撃する!


一直線に、明らかに「相打ち」狙い、


富士本:腕の一本を引き換えにしてでも、…一撃を入れる!

富士本:銃弾が私を絶命させるまでの数十秒で、…確実にこいつを仕留める!




超高速で特攻する富士本の目の前に…

蟷螂の剣が…浮いている?



蟷螂は、既に剣を握っていない?


一気に回転半径の縮めた蟷螂は、

…富士本のムエタイの肘撃ちを、驚くほど柔らかに捌き、…懐に潜り込む。


…その素手が、…富士本の首を、刈りに来る!




首が、恐らく かつて経験した事が無いほどに回転した。

とっさに弛緩して衝撃を和らげるも…、

超高速で揺らされた脳は、富士本の平衡感覚を奪う…。



その、突っ込んだ体勢のまま、床に倒れこみ、


数メートル うつぶせの体勢でスライディングして…

0.5秒、意識を飛ばされる…!





蟷螂:「ふん、」


やがて、意識を取り戻した富士本の顔を、

…蟷螂が ティンバーランドの分厚いソールで、踏みにじる。



蟷螂:「綺麗なモノを汚すのと言うのは…本当に 気分の良いものだな。」




登場人物のおさらい

北条一貴:「式神」

北条文華:一貴の嫁、お尻の●が弱点?

蟋蟀s:「黒組」の人間兵器、戦闘員「ひー!!」


加茂理夜:「陰陽師」

富士本佳枝:「巫女」

蟷螂:「黒組」の人間兵器、自在に脳のリミッタを外せる。


香坂竜二:「結界屋」、ドラム缶にコンクリート詰め中

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