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エピソード7 一時の休戦(箸休め)

<仁美ターン>


GWこどもの日

都内とは言えさびれた街の 駅前商店街だから、何時いつもにも増して人通りも客足も少ない。


今は父親も商店街の集まりで出かけているから、私は一人で店番していた。 本来私の暇つぶし相手になるべきペットが居ないのが悪い。 ちょっと怪我したくらいで休まないで欲しい。 と言うか、むしろ私に看病させろって事だ。


仁美:「退屈だぁ〜」



店内には客が一人、しかもとっくに食べ終わっているにも関わらず、ずっと居座って漫画雑誌を読んでいる。 しかも新しい号から順々にさかのぼって読んでいる。


この変な客、どう言う職業なのか知らないけれど、ここ一週間、毎日通って来ては ヒガラこうしてダラダラ漫画雑誌を読んで時間をつぶしている。 まあ、うちも同様暇だからテーブル席の一つや二つ占領されたからってイチイチ文句を言ったりはしないけれど。



仁美:もしかして、訳あり?


やっぱり毎日は怪しすぎる。 余程お好み焼きが好きなのか? そう言えばこのおじさん、毎日メニューを端から一つずつ選んで行っている。 今日は8つ目だから、ミックスモダンと言う具合だ。


勿論、私もお好み焼きは大好物なのだが、だからって毎日食べたいとは思わない。



仁美:もしかして大阪人なのかな?


よく見ると、禿げて小さい眼鏡をかけたお笑い芸人に似ていない事も無い。 と言うか、親戚に違いないくらい似ていると言っても過言ではない。


実は私は大阪に行った事が無い。 何だか怖そうな人達が集まっている街だと噂には聞いた。 でも、根は人懐っこくて優しいらしい。 そう言えば、この人も毎日帰り際に「ごちそうさま」と挨拶して帰って行く。 最近「チェック!」とか「ビル!」とか西洋かぶれな中年が増えてるから、そんな素朴な一言で余計に良い人感が漂ってしまう。



仁美:きっと、大阪人なんだ…


歳の頃は、30代後半? 40?

5月なのにトレンチコートを羽織っているお陰で、メタボなのかガリガリなのかも分からない。 店内だと言うのに色付きの丸眼鏡を外さないから、一体何処を見ているのかも分からない。


結構年上も嫌いではない私に取ってはギリギリストライクゾーンと言えない事も無い。 まあ、殆ど五分刈りみたいな禿頭のお陰で、妙な乙女心を発動しないで済んでいる。



仁美:もしかして、私に気が有るとか…??





突然…

店の扉が開いて、珍しい客が到来した。


背の頃は130cm、華奢で中性的な肢体。 傷一つ無い端正な小顔は透き通る様に白く、長い睫毛に大きくて深い瞳、ウェーブした艶やかな髪は腰まで届く豊かな長髪、 そして潤った唇。 まるで造り物の様に一点の欠陥も無い美少女。 自称年齢15歳、推定年齢8歳、


春日夜さんの直子ちゃんだ。


近くで見るとやっぱり可愛い。



仁美:「いらっしゃい直子ちゃん。 珍しいわね。

…直人は良くなったの?」


直子:「あの、うちのお兄ちゃんを下の名前で呼び捨てにしないでくれます?」


そうだ、…私はこの子に嫌われているのだった。

ウルトラ極度のブラコンである直子ちゃんにとって、私はお兄ちゃんに手を出す「悪い虫」という設定になっているらしい。



仁美:「ごめんごめん、ついね

…どうしたの、何時も見たいな「切れ」が感じられないぞ?」


何時もなら、もっとギスギス棘の尖った攻撃的な視線と台詞を叩き付けてくる筈なのに…お姉さんはチョット寂しい、、



直子:「私だって、落ち込む事が有るんです。」

仁美:「お姉さんが相談に乗ってあげようか?」


美少女は、チラリと私の胸元にまで目をらす。

落ち込んでる美少女…良い!可愛い!



仁美:「ところで、その手、どうしたの?」


何故だか、美少女の両手は包帯でグルグル巻きになっていた。



直子:「ちょっと、ナイフで切っちゃって…、何でも無い。」


あんまり、触れられたく無いらしい。



仁美:「何か食べる? おごってあげるよ。」


少女は物言いたげに…黙り込む、



仁美:「アイス食べない? 私も食べるから…。」


美少女が 上目遣いに私を見つめる。 そうして、物憂げに溜息、、



仁美:やっぱり可愛い〜、食べちゃいたい〜

(作者注、「」無しは心の声、)


学校には、このの事を狙っている「上級生女子」が両手両足で納まりきらないくらい沢山居る。 何とかして「お近づき」になろうとするも、この美少女には「お兄ちゃん」以外全く見えていないので 取りつく島も無く大苦戦している。 そんなレアな獲物ターゲットが…今、私の目の前 手を伸ばせば届きそうな所に居るのだ。


私は平静を装いつつ、

美少女が何も返事しない事を良い様に解釈して、肩に手を添えて隅のテーブルへとエスコートする。


厨房の業務用冷蔵庫からバニラアイスのパックを取り出し、グラスに山盛り掻き込んで、上からキャラメルシロップを掛ける。 後、缶詰入りのサクランボを一つずつ、



仁美:「はい、お待たせ…」


自分も向かいの席に腰を下ろす。



仁美:「それで、何か用があって来たんでしょ?」


ようやく、美少女が重い口を開く…



直子:「あの、まず、…当分お兄ちゃん来れないみたい。」


仁美:「全く仕様が無いわね、犬に噛まれたって言ってたっけ?

…そんなに酷いの?」


直子:「いえ、何かそれから色々あって、

…今の処 絶対安静状態。」


仁美:「また、何かやらかしたの? 飽きないヒトだね。」


私もペットが居ないのは寂しい。

それに、この前の続きをキッチリやらせないといけない。



仁美:「分かったわ、無期限休暇って事で…元気になってから来れば良いわよ。

…帰って来たら、その分色々やってもらうから。」


直子:「それで…、」


美少女がモジモジしている。

此処からが どうやら本題らしい。


女の私が見てもホーっとする位可愛い。 まあ、一つ屋根の下というか同じ部屋で寝泊まりしている直人が間違いを犯しても、仕方ないかな…と ついつい納得してしまう。



仁美:「なあに?」


直子:「…お兄ちゃんが、あんまり迷惑かけるとイケナイから、

…私が代わりに働けないか…って、」



私は、思わず、自分の耳を疑った…


何、今なんて言った?

このお人形さんみたいな美少女が、うちで働く??

言ったよね!?

私、妄想しちゃうよ? 良いの???

お姉さんと妹の禁断のなにがしとか、秘蜜ひみつ彼此あれこれとか、


許されるって事? だよね!



仁美:「じゃあ、今日からね。

…決まり。」


直子:「ええっ? そこは、…「良いよ」とか、「気にしないで」とか…」

仁美:「気にしないで、…私の事本当のお姉さんだと思って頼ってくれていいからね!」


直子:「うそ〜?」


何だか、困った顔の美少女も、…萌える!!!



仁美:「私、直子ちゃんみたいな妹欲しかったんだぁ〜」

直子:「妹じゃない! アルバイトぉ!!」


仁美:「大丈夫大丈夫、どうせうち暇だから。

…直子ちゃんはなんにもしなくて、お店に来てくれるだけで良いからね。」


なんだか、顔が真っ赤になっている。



仁美:触っても良いかな! ぎゅっとしても良いかな!

(作者注、「」無しは心の声、)


知らぬ間に口が緩む、涎が垂れる。



直子:「何もする事が無いなら、私 お店に来ません。」


仁美:「駄目だよ。

…直人の代わりでしょ、直人は、店の掃除くらいしか役に立たなかったけど、直子ちゃんが看板娘になってくれれば、きっとお客さん増えると思うのよね。」


仁美:「そうだ! 後で商店街の皆に紹介して回んなきゃね。」


直子:「ええっ、いいです、そんな、私はキッチンでお好み焼いてるだけで良いです。」


仁美:「駄目よ、

…アルバイトらしい服に着替えなきゃね。 メイド服? それともナース服がいいかな?」


直子:「一体なんの、仕事なんですか?」


仁美:「そうだ! どうせ今、直人 家に居ないんでしょ!」

仁美:「じゃあ、うちに泊まって行きなさい!

…女の子が一人で夜中に行き来するのは危ないし、野良犬が出るんでしょ。」


一度釣り針に掛かったコノ獲物! 絶対にリリースしてなるモノか!



直子:「だから、夕方に働きます。 明るいうちに帰りますぅ。」


仁美:「良いじゃない、帰って一人でご飯食べるの寂しいよ。

…家で食べて行きなさいね。」







そして、アレやコレなし崩し的に夜の10時、私は可愛い妹の分も魚を焼いていた。


和室では、親父と直子ちゃんが話をしている。

全く、良い年したオヤジが鼻の下伸ばしてミットモナイったらありゃしない。



仁美:「はい、出来たわよ。」


焼き物の皿をちゃぶ台に並べる。



仁美:「アンタ、ぼさっと座ってないでチョット位 手伝いなさいよ。」


直子:「あっ、ごめんなさい!」


仁美:「いいの、直ちゃんは良いのよ、座ってて。

…アンタよ、アンタ、」


店長:「親に向かってアンタとはなんだ全く、どうしてこんなガサツな女に育っちまったのかね。 少しは直子ちゃんを見習えって言うんだ。」


私はお盆の裏で父親の頭を叩く。



仁美:「うっさい!」

店長:「人間、やはり苦労しないといかんのだなぁ〜」

仁美:「私は、アンタのお陰様で気苦労が絶えないんですけど、」


仁美:「ほら、運ぶの手伝って!」

直子:「やっぱり、私もお手伝いします。」



私は客用のお茶碗と箸を下ろし、

湯気の立つ白いご飯をヨソって、最後に味噌汁を仕上げる。


仁美:「悪いけど、これ運んでくれるかな。」

直子:「はい。」



それから私は、お盆に「お母さんの分」を取り分けて、二階に上がる。

奥の部屋の襖障子を開けると、

…電気は消えたままで雨戸の閉め切った部屋は暗い。



仁美:「お母さん 夕飯、此処に置くね。」


その人は、

気配もなく其処にたたずんでいる。

じっと床に就いたまま、

無表情に、無感動に、涙がこぼれ無い様に我慢している。

あれから、もう10年は経っただろうか


この人の時間は、あの時からずっと停まったままだ。

ずっと、


私は、ただ、待ち続けている。

何時かこの人が泣き出すのを、そうして再び一緒に歩き出すのを。


多分、父も同じだ。



何時迄でも、待ってるから。

ゆっくりで良いよ、

お母さん。


私は、そっと襖障子の扉を閉める。







どうやら直ちゃんは極度の照れ屋らしい事が判明した。

一緒に入ろうと言ったお風呂をかたくなに拒み、

一緒のベッドで寝る事も遠慮している。


私は、仕方なくベッドの直ぐ下に布団を敷いた。



仁美:「本当にベッドでなくていいの? 私が床で構わないのに。」

直子:「良いですって、本当に気を使わないで下さい。」


仁美:「えっ、気を遣わないで良いの? じゃあ、一緒の布団で寝ても良い?」

直子:「駄目です。 チョットは気を使って下さい。」


私は甘えた猫の様に、ちっちゃい美少女ににじり寄る。



仁美:「ねえ、抱っこしても良い?」

直子:「なんなんですか貴方は? 私はなつきませんよ、そんな事しても、」

仁美:「直子ちゃんって可愛いよね、食べちゃいたい。」

直子:「駄目です! お兄ちゃん以外には食べさせません。」



仁美:「もう、恥ずかしがり屋さんなんだから。」


美少女が枕で私の顔面を押さえつける…





仁美:「ところで直ちゃん、幽霊見えるって本当?」

直子:「正確には幽霊じゃなくって幻覚らしいです。 どうして見えるのか、どういう意味があるのかは分かんないんですけどね。」


仁美:「この家にも居るの? その幻覚、」


直子:「居ますね。

…先輩の後ろに、小さな男の子。 それから、天井からぶら下がってる女の人。 お店の隅の方に、痩せたおじいさん。 他にも、何人か歩き回ってます。」


思わずモゾモゾっと悪寒おかんが走る。



仁美:「フーン、でも、幻覚って事は、本当の幽霊じゃ無いのよね。」


改めて、確認しないでは居られない。




仁美:「そういや、今頃、直人どうしてるかな?」


言った途端、美少女の目が遠くなる。



直子:「いいんです。 お兄ちゃんなんか…」

仁美:「もしかして、直人に酷い事されたの?」


直子:「違います。違います。

…私は、お兄ちゃんにナニされても全然平気です。」


仁美:「あらそう、浮気されても?」


咄嗟に 美少女の目が涙で膨張する。

カマカケタつもりだったが、図星だったらしい…



直子:「それはチョット、…でも、お兄ちゃんがそれで幸せなら、」

仁美:「直ちゃんって本当ほんと健気よね。

…じゃあ、私が直人とイチャイチャしてても許してくれる?」


直子:「駄目です!

…森口先輩は敵ですから。」


仁美:「ふーん、一応ライバルとして認めてくれてるんだ。」


お人形さんみたいなちっちゃい美少女が、布団の上にコロンと転がる。

ウェイブしたボリュームのある長髪が、私を誘惑する。



直子:「先輩は知らないんですよ、

…世の中には、もっと恐ろしい強敵が居るって事を、」


仁美:「何それ? 強敵って、直人を狙ってる女子って事?」

仁美:「まさかぁ、あんなダサダサを狙う物好きなんて、私達くらいなモンじゃないの?」


直子:「先輩、言ってて自分で悲しく無いんですか?

…て言うか、お兄ちゃんは誰よりも魅力的です。 狙われて当然です。」


仁美:「どこが?

…顔は平目だし、背は低いし、メタボ入ってるし、頭良く無いし、運動も音痴だし、

褒めるとこないじゃん。」


直子:「だったら、どうして森口先輩はお兄ちゃんを狙ってるんですか?」


仁美:「うーん、なんか面倒見てやんなきゃいけなさそうな所かな。…タヨン無さそうなとこ。」


直子:「森口先輩って変わってますね。」


仁美:「直ちゃんは? どうして直人の事が好きなの?」


直子:「どうしてって、それは…

…どうしてもです。 お兄ちゃんはお兄ちゃんだから、誰が何と言おうと好きなんです。 愛してます!」



仁美:「そう言えば、貴方達、本当にエッチしたの?」


美少女の顔が、真っ赤になった。


直子:「し、し、…

…良いじゃないですか、そんな事。」


仁美:「フーン、したんだ。

良いなあ、…ねえ、エッチって気持ち良いの?」


直子:「なに聞いてんですか?

…先輩だって、誰か恋人作れば幾らでも出来るじゃないですか。」


仁美:「じゃあ、直人とエッチしても良い?

…妹にOK貰っておけば、あいつも、」


直子:「駄目です! 却下です!

…お兄ちゃんとエッチな事していいのは…」


そこまで言って、口籠ごもる。



仁美:「フーン、

それで、その強敵って誰なの? まさか、あの「リバイヤサン」の「京華」の事? 直人の幼馴染とか言ってたっけ、」


直子:「違います。

もっと、凄いのが世の中には うようよ 居るんです。 私と先輩を足して2で割らなくても全く勝ち目が無い様な魔物が…」


仁美:「魔物、ねぇ…そんなに凄いの?」


直子:「私、私には、どんなにお兄ちゃんの事を愛していても、どんなに頑張っても、出来ない事、してあげられない事が有るんです。」


仁美:「フーン、

…何それ、もしかしてパイズリの事?」



図星だったらしい…

少女は物言わぬ塊りへと石化して…布団の奥に潜んでしまう。



仁美:「ねえねえ、」


私は石化した少女に語りかける。



直子:「放っといてください。」

仁美:「ちょっと、コレ飲んでみない。」


私は店から拝借して部屋に隠しておいた「酎ハイカクテル」の缶を布団に差し入れる。



仁美:「冷えてないけど、結構美味しいよ。

…それに、嫌な事を忘れられる。」


もそもそと、アンティーク人形が顔を出す。



直子:「先輩は不良ですか。

…未成年はお酒を飲んではイケナイんですよ!」


仁美:「大丈夫大丈夫、これノンアルコールだから。

…ほら、ドライバーのヒトが飲む様の奴、、」


…な訳が無い。



仁美:「ほら、出ておいで〜。

…その強敵の事を打ち明けたくって、ワザワザ私んとこに来たんでしょ。」


仁美:「お姉さんが、話聞いてあげるって。」




かくして、不毛なガールズトークは日の出迄続くのであった…

登場人物のおさらい

森口仁美:この物語のヒロイン、の筈、出番少ないけど

朝比奈直子:直人の妹、ちょっと凹み中


〜カメオ出演〜

リバイヤサンの京華:直人の幼馴染、ヘヴィメタバンド「リバイヤサン」のリードギター「京華」、本名 田中幸子 アルタードステイツ エピソード9参照


色付き丸眼鏡の男:本名 海住 マスタースレブ2nd エピソード6参照、飯を食べるのが異様に早い

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