第四話:刻印
古本屋に来てからどのくらいの時間がすぎたのだろう、もともと人があんまり来ないが今日は特別に静かな時間が流れているように感じていた。
薄暗い棚と棚の間や窓からは一筋の光が射していた。
先程の背中の痛みが気になっていた一にとってはその静けさは逆に背中の痛みがまだ残ってるみたいにと錯覚させる。
剛の叫びでその静けさが破られた。
「お兄ちゃん!これ見て!リースディローズについていっぱい載ってる!」一は剛の側へと走った。
「本当だ!これ買おう!」
二人はおじさんが座っているレジへと足を運んだ。
さきの出来事でおじさんはさらに不機嫌な顔で本を受け取った。
ギロっと二人を睨み付け言った。
「この本…どこで見つけたのかね?」「地理・歴史の棚にありました!」
と剛は元気よく答えた。
おじさんは片眉を上げまた不機嫌に言った
「はて?こんな本あったかのぅ?まぁええ。買うのかい?借りるのかい?」
「買います!!いくらですか?」
二人は大声でぴったりとハモリながら言ったのがおじさんを怒らせてしまった。
「わしはちゃんと聞こえておる!静かにせんかい。この本五百円じゃ!」
「はい。五百円!袋いらないよ、おじさん。早く行こう!剛!」
バタバタとまたもや走って出ていく二人のうしろ姿を見ながらおじさんはあきれ顔でまた静かになった古本屋でいつものように居眠りをはじめた。
一と剛は早く本の続きが気になり、とても家まで待てなかった。
二人は坂の途中にある一のあのお気に入りの場所で読むことにした。
展望台には人影はなく、兄弟二人だけだった。
呼吸を調えさっそく本を広げた瞬間に一の背中が再び熱くなり痛みだし耐えられなくなった一は苦痛の表情を浮かべ、弟に訴えた。
「つ、剛!背中が、せっ…背中を見てくれ…ッ。おかしい!いッ痛い!」
剛は兄のただならぬ雰囲気に驚き、恐る恐る兄が着ていた服を捲り上げた。
その瞬間剛は兄の背中の異変を目のあたりにししばらく言葉を発することができなかった。
一の背中には大きくリースディローズ王国の象徴の家紋が赤く浮かびあがっていた。
はっきりとまるで今書かれたかのように見えた。
「お、お兄ちゃん?あのー、そのー…。背中に見える。あっ!じゃなくってリースディローズ王国の家紋が!お兄ちゃんの背中に!魔法陣みたいに赤くあるんだよ!」
混乱してる様子の剛に一は理解できず不安を覚えた。
「え!?何?僕の背中にリースディローズ王国の家紋があるって?!」
頷く剛を横目に一は先程買ったあの本を広げた。
《本が持つべき者があらわれるまで我は眠る。我が目覚める時世界は再びリースディローズ王国を中心に栄え又は滅びるであろう。刻印された選ばれしリースディローズの…》
「え?続きがない!?なんで?」
背中の痛みは和らいでいた。剛はボーっと兄の背中を見つめ一言。
「刻印…」
深くなって来ましたね!今回は少し長めになりました。普段が短すぎるんですかね?まあ自分としてはあんまり長く書けない?からこのままがベストですo(^-^)oではまた!