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0-1「第二人生の始まり」

新たな作品になります。異世界転生もので、かなりの自信作です。

もし良ければ高評価とコメント、ブックマークしてください。

 俺は真っ白な空間に立ち尽くしていた。どこを見渡しても物は見当たらない空間が広がる。まるで“無”が広がった世界のようだ。


「こ、ここは……?」


 心臓の鼓動や感覚がない。それを真っ先に実感した。これは何か奇妙な出来事の始まりなのか疑問である。


 すると、周辺の光景が一変する。いきなり巨木の下に場所が移り変わった。そして俺の前に現れた少年が一人。


『やぁ? ようこそ【転生の間】へ。君は僕が受け持つ大事な客人だから丁寧に説明していくね』

「うわっ⁉︎ だ、誰……?」

『あはは。驚いたよね? 僕は大賢者リアス。女神の代理人を務めし者。君を転生に導く役割を授かった』


 その時、リアスは【転生】と口にした。それは俺がずっと憧れていたシチュエーションだ。まさか現実になるとは思ってもみなかった。


 だが、実際に転生は未経験だから不安が微かに残る。それを拭い去れない現状で本当に転生は望むべきまのなのか疑問だ。けれど、ここで【第二人生】を送るのは逃れられない宿命だろう。ならば、受け入れるしかなかった。


「お、俺が転生する世界って【魔法】とか【剣】を駆使して生き抜くような世界観だったりしますか? 俺、昔から【英雄】になりたくて!」

『ふむ。君の生前は知り尽くしているよ。本当に【英雄】を目指したいとなれば、それなりに努力する必要がある。それは君次第で左右されるものさ。頑張りたまえ』


 リアスが近づき、俺の胸に手を当てる。そして一言だけ唱えた。


『この者に新たなる生命と新たなる人生を与えなさい。我が呼び掛けに応じて彼を転生‼︎』


 急に手から光が溢れ出した。大いなる力が及んでいるのが見て分かる。眩しい光に包まれ、突如俺は意識が途切れた。


 やけに重たいものが上に乗っているような感じがする。何かに密着された感覚が柔らかさを味わっていた。思わず目を開けてみたら、少女が俺の口を塞いでいる。


「んんっ⁉︎」

「ふえ? やっと起きたのね。ちょっとお口を借りていたの。凄く不味かったけど、これで一段と大人になれたはずだわ」

「は、はぁ……?」


 目覚めた瞬間に馬乗り状態でキスされていた。しかも思いっきり初キスである。黙って奪われるとは思ってもいない展開だ。


 すぐ彼女は上から退いてくれた。名をルノア・ラクサスと名付けられた少女は薄着で乗っかって来ていたみたいだ。相変わらず目つきが悪いところは可愛げのギャップを効いていた。


「な、何で起きて早々キスされてたんだよ⁉︎ 意味が分からな過ぎて困るんだけど⁉︎」

「いや、ちょっと興味を惹かれちゃってさ。大人はみんな交わして当たり前なのよ。だったら、私だってするでしょ」


 何を言い出すのかも思いきやますます分からなくなって来た。最近のルノアは“大人の女性”に憧れているらしい。王都で買った雑誌を読んで興味が湧いてしまったとか言い出して困った。


「次から雑誌は買わない方が良いかも。依存しまくってゴミの山になる」

「バカ。ルノアが頑張って鍛錬を積んでいるんだ。少しは夢ぐらい見せてやれ。それにお前だって嬉しいんだろ?」

「あ、あのなぁ……。寝てる間にされるのはぎこちなくて嫌いだ。どうせなら正面からしたい」


 もじもじしながら師匠に本音を告げる。それを見た師匠エリエル・ネバーサインは呆れた顔で返事した。それは少し情けないと思った様子が窺える。


「もう少しルシアを見習え。自主訓練を欠かさないルシアはどんどん強なって来ている。それをお前だけがサボってしまうのは勿体ないだろ」

「わ、分かってるよ。今日は少し外に出てみる」

「よし。じゃあ、これからも頑張りなさい」


 エリエルが頭を撫でて目の前から立ち去る。真っ先に外出してしまう。自分だけが自主訓練していないと指摘されたのは不服だった。けど、本当は密かに鍛えているんだ。それを二人は知らなかった。


 俺の名前はアイザ・レザリオン。諸事情で両親がいないため、師匠に育てられた。師匠は産んでもない赤子だったけれど、意外に可愛くて成長する姿が好きだと語ってくれる。しかし、最近は可愛げのない男になりつつある俺を若干煙たがっていた。


 食事後。すぐ家を抜け出して森に向かった。持ち物は魔剣のみ。これだけあれば訓練は行えてしまう。


 走って森を駆け抜けると訓練拠点に指定した場所に辿り着いた。そこで俺はエリエルから教わっている秘伝技を練習する。


 それは【変身魔法】の一種であり、最高練度を極めてやっと行き着く神域【高度変身魔法】の習得に入った。


 本来、俺が極めたかった【高度変身魔法】は根源となる異種族の力を引き出す魔法だ。これを成すために俺は【白炎牙狼】と契約している。こいつは元々俺の住む森から離れた場所に生息する魔獣だった。


 自身に契約済みの魔獣から肉体情報を借りて変身する。借りた肉体情報と自身が備えた肉体情報を掛け合わせることで強化された戦士を誕生させる魔法だ。


「よし! 今度は上手く変身してみせる!」


 毎日必死に習得しようと励んでいた。けど、何故か上手く変身できない。そもそも魔法は個人で適性度が異なり、習得した魔法はバラつく場合が多かった。


 実際に俺は変身魔法が不向きだと言われている。それを覆したくて習得に励んで来た。けれど、人生はそんな甘くない。


「くそっ! こんなの有りかよ!」


 結局は失敗に終わった。ケモ耳だけが生えて来た程度で身体機能は大して上昇した様子は窺えない。これでは変身した意味がなかった。


「くそっ! 何で上手くいかないんだよ!」

『それは不適性だからかもね』

「……えっ⁉︎ だ、誰だ⁉︎」


 緩やかな風が吹き抜ける。さっきまで風一つなかったはずの森にもたらされて心地良かった。だが、それより声の正体を知りたい。


「出て来い! 何者なんだよ!」


 スタッと俺の前に舞い降りる。いきなり現れた少女につい素っ頓狂な声を上げてしまった。


「うわっ⁉︎ び、びっくりしたぁ⁉︎」

「うふふ。どうやら驚かせちゃったみたい。でも、良い反応だったと思うけどなぁ」

「だ、だだだ、誰ぇ⁉︎ ここらでは見掛けない顔じゃないか……?」


 少女は一本角が生えている。何かしらの傷跡が額にあった。綺麗な顔立ちなのに傷跡を負っているのは勿体なく思う。ただ、少女が微笑みながら語り出した。


「変身魔法とは、難易度Sに属する魔法だね。それも扱える人は珍しいかも。だから、使えなくても問題ない」


 確か師匠も同じことを言っていた。けど、俺は変身魔法を使ってみせたい。師匠と同じ【聖獣剣士】の名を馳せるためだった。それを目標に掲げて頑張って来たんだ。きちんと目標は果たしたかった。


 金色に輝く艶やかな髪とケモ耳、さらに勇ましい立ち姿に憧れている。まさに“聖なる剣士”だと言えるような人だった。


「お、お前は誰なんだ? 名前を教えてくれないか?」

「私の名前はニフィア・アルパトラ。見た感じは“鬼っぽい”けど、実は人間なんだよ。色んな事情があったりしてね。よろしく!」

「よ、よろしく。俺はアイザ・レザリオンだ」


 可愛らしい同じ年頃の少女と出会い、にわかにぎこちなかった。


 すると、ニフィアは黙って手を差し出す。どうやら握手して欲しいみたいだ。恐る恐る俺はニフィアと握手してみる。柔らかい手の感触と触れた先から体温を味わった。


 その後、ニフィアから魔法を見せてもらう。ニフィアが披露したのは【光魔法】だった。


「この種の魔法はとても珍しいんだよ。本来なら光魔法なんて習得した者が確認されていない次元だからね。それを理由に隠して来た」


 ニフィアの掌で光玉が光る。それはぶつけることも出来た。直接ぶつければ破損させるレベルだよ」

「へー? 何だか不思議だなぁ」


 ニフィアは興味津々だった俺を見てとある提案をして来た。それは試しに魔物を狩ってみせると言った提案だ。ぜひ、光魔法を直接見てみたかった俺は彼女についていく。


 到着した先には森から抜ける道がひっそり続いていた。そこを通った先で程よい魔物が出現するらしい。そこで見せてくれると言い出した。


「ここら辺だよ。もしかしたら【一角蛇】が現れるかも知れない。ちょっと探してみるね?」


 そしたら、ニフィアが瞳を瞑る。瞳を閉じた瞬間、ニフィアの体中が発光し始めた。すると、ニフィアはパッと瞳を開き、人差し指で魔物がいる方角を指す。


「あっちだよ! あそこに【一角蛇】がいる!」


 俺たちは急いで駆け出した。しばらく走った先には【一角蛇】の姿が窺える。ただ、すぐ近くで誰かが交戦中だった。


「この悪しき魔族め! 私が焼き払ってくれる!」

「随分と生意気な人間だな! だったら、焼き払ってみろ!」


 偶然、魔族と交戦している人たちに出くわした。そこには女性がたった一人で魔族を相手している。傍に怪我した箇所を押さえながらしゃがみ込む男性の姿まで窺えた。


「あれってピンチじゃないか?」

「でも、私は相手できない。どうしても魔族は怖いから……」

「そっか。なら、俺が助けて来る……!」

「あっ! 待って!」


 俺は迷わず飛び出した。魔族と交戦している女性に駆け寄り、遠距離から炎魔法を発動する。


「食らえ! 火炎豪弾ぅうう……!」


 炎が一つの塊として収束。それを魔族に解き放った。後ろからの不意打ちで発動した炎魔法は女性を横切って魔族に着弾する。


「ぐわぁああああ⁉︎ な、何だぁ⁉︎」

「え? な、何⁉︎」

「今だ、アミリス! 追加攻撃でトドメを刺せ!」

「……はっ!」


 アミリスと呼ばれた女性が男性の一声で即座に行動する。魔族が隙だらけだと気付いた女性は追加攻撃を繰り出した。


「何だか訳わかんないけど、本当にありがとうございまーす!」


 今度は女性が持っていた杖を魔族に向ける。杖から多大なる魔力が集中し始めた。杖の先端に集まった漆黒の炎が俺より高火力の魔法を撃ち出す。


「黒破炎烈弾ぅうううう!」


 解き放たれた炎魔法で追撃が決まる。着弾した漆黒の炎から成る弾丸が魔族を容赦なく燃やし尽くした。


 最終的に燃え尽きた魔族は武器を落として消滅する。どうやら灰となって消えてしまったようだ。


「ふわぁ〜! 助かったぁ! マジで危なかったんだけど」

「本当に有り難い援護だったよ」


 俺は目の前で見た炎魔法に腰を抜かした。黒く変色した炎は滅多に習得不可能だと言われる高度技術だったからだ。


 すぐ女性が駆けつけ、感謝の言葉を告げて来た。彼女は左腕の服が破け、大火傷を負って酷い有様である。


「本当にありがとう! 君は何て言う名前なの?」

「え、えーと。俺はアイザ・レザリオン。すぐ近くの森で暮らしているんだ。それより左腕は大丈夫?」

「あ、これ? すっごい痛むかなぁ? でも、後から来る治癒魔法師に治してもらえば大丈夫だよ。それより君は一人みたいだね?」


 女性が指摘してからニフィアがいないことに気づく。確か光魔法が扱えることを知られたくないとか言っていたから隠れてしまったんだろう。取り敢えず後で落ち合おうと心に決めた。


 すると、背後から再び“アミリス”と言う名前を呼ぶ声が響く。振り返ってみると、数台の馬車を引き連れた人たちがこちらに向かって来た。


「例の魔族はどうだった? まさか二人で倒せちゃったとか⁉︎」

「いや、実はアイザくんが援護してくれたお陰で倒せたんだよ。本当にお手柄だったんだから!」

「へー? この子が援護してくれたんだ? 今回はありがとうね、坊や!」

「い、いえ。大したことありません。それより男性が酷い怪我です。助けてあげてください」


 俺が先ほどから傷を押さえている男性を指差した。そこには少し笑顔を浮かべながら痛みに耐える男性がいる。


 真っ先に駆けつけた女性は怪我した男性を確認すると、慌ててそっちに向かって走った。


「全く! 君はアミリス一人に魔族を相手させたのかい? 本当に実力足らずだなぁ!」

「あははっ。マジですまん。俺が不甲斐ないばかりに……」

「ったく、アンタは旦那さんでしょうが! しっかりしないと先に死なれちゃうからね!」


 すぐ後から来た女性が二人を治癒する。見事に酷かったはずの傷は完治して二人ともピンピンだった。


 そして俺は謝礼だけ受け取って家に帰る。本当ならニフィアを探すつもりだったが、時間的に帰らないと怒られる故に帰宅を優先した。


 家に到着すると、カンカンに怒ったルノアが仁王立ちで待ち構えている。


 何か嫌な予感がしてならなかった。その予感は後ですぐに的中してしまう。

読んで頂きありがとうございます。

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