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六月 雨のデパート――迷子アナウンス寸前、パパの汗

六月は雨が多い。わずかな晴れ間に公園の代わりに、家族はデパートへ出かけた。

屋上の遊び場を目指して。


エレベーターを降りた瞬間、ここが叫ぶ。

「わあ!アイス!」

フードコートの看板に、視線が吸い込まれている。


「遊んでからね」

いすみが言った、その瞬間。

ここは“うん”と返事をした――のに、くるりと反転して走った。


「あ、ここ!」

しんいちが追う。

角を曲がったところで、ここはぴたりと止まっていた。

理由は簡単。目の前に“試食”があった。


「…あの、ひとくち…」

ここは目で訴える。

しんいちは肩で息をしながら、心の中で叫ぶ。

――走るな!止まるな!試食の前で止まるな!


店員さんがにこにこして差し出す小さなケーキ。

ここが食べて、目を丸くした。


「おいしい…」

「…よかったね」

しんいちは汗をぬぐいながら、人生の教訓を噛みしめる。

“デパートは誘惑の迷宮である”。


その後、屋上の小さな観覧車みたいな乗り物に乗り、帰りに約束どおりアイスを食べた。

ここは満足して、しんいちの手をしっかり握る。


「パパ、さっき、はしってごめんね」

「……おっ」

しんいちは驚いて、いすみを見る。いすみも驚いた顔で笑っている。


「ごめんねって言えたの、すごいぞ」

「だって、パパ、あつかった」

「それは…うん、あつかった」


迷子になりかけて、でも少し大人になった日になった。

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