たまねぎ苗の育成悲喜こもごも②
「おーっ、いい苗だあ」
親戚が苗の引き取りに来て、嬉しそうにそう言う。頼まれていた貯蔵用たまねぎ、ネオアースの苗だ。褒められると素直にうれしい。
10月半ば、自分の家と親戚の家の分を育て始めたたまねぎ苗は、比較的穏やかな晴れに恵まれた今年の天候のおかげで、大半はちゃんとした苗になった。
太さは鉛筆よりは少し細い程度、葉っぱが長すぎず短すぎず10センチほど。霜にも当たらないよう細心の注意を払ったので、どこも枯れずに青々としている。良いやつは良かったのだ。良かったのだが……。
「あーん、サラダたまねぎの苗、これ大丈夫〜?」
「すみません、すみません、やっぱりまくのが遅かった……ごめんなさい……」
真っ白で、少し扁平な形に育つ辛味の少ないサラダ用玉ねぎは、残念なことに種まきが遅すぎたのだ。実に細くて頼りない。シャーペンの芯みたいだ。物の本によるとサラダたまねぎは9月半ばには種をまかねばならないそうで。10月に入っての育苗では遅すぎたのだ。私の失策だ。
「代わりにと言ってはなんですが、泉州たまねぎの苗……セルトレー1枚で144本ぶん、つけます。これだと葉タマネギで食ってもいいですし、早めに収穫した分はサラダでもいけます」
「ありがと。でも、白いたまねぎサラダで食べたかったの〜」
「すみません……ほんとに申し訳ない」
そうだよなあ。それ信じて9月の頭には苗頼んできたのに。俺と来たら稲刈りを言い訳にして育苗を後回しにしたのだ。そうしたら稲刈り機械が壊れてさらにズルズルと延び……結局10月17日までたまねぎに関しては何も動いていなかったのだ。
ああ、俺のバカ野郎が……。後悔先にたたず。もはやどうしようもない。
白いサラダ用たまねぎはこのままいけば、冬は越えられるだろうが、多分大きくはなれない。卵より少し大きいくらいで終わりか。1個100g弱じゃあ春の新たまねぎのサラダを満喫するには不足だ。甘味も乗りきらない。クッソォ……。来年は絶対にうまくやる。がっかりする親戚を前に肝に銘じる。生食用たまねぎは9月半ばにはまくぞ。来年は絶対がっかりさせない。
うまくいかなかったのはサラダ用たまねぎだけではない。
「なんかそっちのもよくないね?」
ネオアースをたくさん注文してくれた親戚が指差す先。サラダたまねぎとよく似た貧弱な苗がある。
「そうなんス。O.P黄がこんなに悪いの初めてで……」
病気に強いO.P黄という品種のたまねぎは、ふつうはネオアースなみに強い苗になるのだ。それがどうだ、ことしは全然大きくもならないまま。何が悪かったのかこちらは全然分からない。
風が強い晩秋ではあった、と父は言うが、たまねぎは風に吹かれたくらいでヘソを曲げる植物ではない。そのはずなのだ。
「うまくいかないねぇ……全部がうまくいくなんてことないんだけど、さ」
サラダたまねぎをご所望だった叔母様がしみじみ言う。甘えたことを言っていいのなら、確かにそれはある。
育てている人間には見えないがやっぱり何かの要素が欠けていたり、環境が良くなかったり。そういうのはつきもので、大抵そういう原因の見えない不調に百姓は勝てない。百姓の仕事はヨットのようだ。向かい風でも右往左往しつつ前へ進めないことはないが、考えるまでもなく追い風が吹くときほど順調にはいかない。
かくして、親戚一同に苗を分けて、今年のたまねぎ育苗は終わった。よかった部分もあるし失敗もした。さて我が家も畑へこのたまねぎ苗を植えに行かなければ。手を降って見送る親戚の車の向こう。山の峰はすでに真っ白な雪が積もっていた。冬は近い。
たまねぎ育苗が終わったので一本書いた。
クッソほんと心底サラダたまねぎ失敗したの悔しい……来年リベンジせねば
書き方がなんだかくどいような気がして何度か推敲したがまだ違和感がある。なんだろう……後で読み返す。原因が分かったら書き直す予定。




