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35歳バツイチオッサン、アーティファクト(美少女)と共に宇宙(ソラ)を放浪する   作者: エルリア


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96.落とし物をみつけて

 コロニーでしこたま荷物を積み込んだ後はまた次のコロニーへ、幸い宙賊に襲われることもなく安定した荷運びと販売を続けられている。


 稼ぎは少なくとも安定感は半端ない、これが傭兵ともなると宙賊を探して飛び回らなければならないし時に危険な目にも合うことだろう。


 だが今の仕事であれば奴らが襲ってこない限り自分から危険に飛び込むことはない。


 ただごろごろダラダラ・・・はさすがにできないので、ホロムービーを見たりトレーニングをしながら次の場所へと移動する日々。


 現時点で目的の辺境領域へは十分の一というところだろうか、あまりにも遠すぎて笑いたくなってしまうが進んでいる事に間違いはないのであえて気にしないでおこう。


「うーむ、まさか空荷で移動することになるとは」


「そういうときもありますよ。その代わり通常よりも高い値段で販売できたわけですしトータルで見れば空荷でも問題はありません」


 さっきのコロニーでもしこたま荷物を仕入れて次の場所へ・・・と思っていたのだが、偶然物資不足を起こしていたらしく持ってきた荷物は相場よりも高値で売り払うことができた。


 代わりに仕入れるものもなく、致し方なく空っぽのまま次のコロニーへ、プラスだとわかっていても空っぽのカーゴを見ると寂しいというか不安というか、どうしてもネガティブな感情が出てしまう。


 イブさん的にはトレーニングする場所が広くなるので悪いことばかりではないようだ。


 最近はローラさんも交じって三人でトレーニングを行っているものの、先生があまりにもすごすぎてついていくだけでやっと

 なのは変わっていない。


「まぁ次の場所は比較的近いし、燃料ロスもそこまでないか」


「燃費性能の良さがソルアレスの売りですので」


「ちなみに今の燃料は?」


「もちろん満タンです」


 予定では二日後にコロニーへ到着、途中デブリ帯を通過することになるけれどもそこまで問題にはならないだろう。


 なんでも巨大恒星の重力圏がかぶっているらしくそこにデブリが集まってしまうのだとか。


 定期的に掃除は行われているらしいのでよほどのことがない限り邪魔になるようなものはないはずだ。


 コロニーを出発して19時間後、二度目の仮眠を終えアリスとくだらない話をしながらコックピットで漆黒の宇宙を眺めていると、メインモニターに白いものが見えてきた。


「あれがデブリ帯か」


「ですね、星間ネットワーク上の清掃履歴を確認すると前回行われたのが二か月前。次回は七日後ですから今が一番多いようです」


「問題なさそうか?」


「モニターにはそこまで大きなデブリは確認できません、仮に飛んできたとしてもシールドで消し飛びますのでご安心を」


「大昔の人は苦労したらしいが、便利なもんだな」


 昔は親指程度のデブリに突っ込まれて船が穴だらけになった、なんてこともあったらしい。


 大きいデブリはともかく小さいものは中々回収できないだけに、それにおびえて惑星の外に出れなくなったそうだ。


 だがシールド技術が発明されたことによって事態は好転、安心安全に飛行できるようになり今に至るんだとか。


 余りにも昔の話過ぎて本当かどうかわからないけれど、昔の人は大変だったんだなぁ。


「どうしますか?不安でしたら迂回しますが」


「大丈夫だと言っているのにわざわざ迂回する必要もないだろ。とはいえ別のにぶつかって故障しましたってのは勘弁してくれよ」


「さすがにそれは・・・おや?」


「なんだよ」


「デブリ帯に大きいのが落ちていますね。これは・・・コンテナ?」


「ゴミにしてはデカすぎないか?」


「少々お待ちください、スキャンしてみます」


 ソルアレス正面のカメラが右上にフォーカスすると確かに白い帯の中に黒いものを発見、拡大していくと普段使っている見慣れたコンテナが映し出された。


 放棄されたコンテナならまぁわかる、中身を回収して捨てたとかありえそうな話だ。


 でもそうじゃなかったら?


「どうだ?」


「中に何かあるようですね」


「・・・マジか」


「ですがご安心を、少なくとも救護ポッドのようなものではなさそうです。ここからでは詳細がわかりませんので近づいてみたいのですが構いませんか?」


「非合法なものだったら放置するからな」


 ひとまずイブさんみたいな感じじゃないことに安堵しつつも、別の可能性を思い浮かべてしまう。


 こういう場所にゴミに紛れて麻薬なんかの非合法の物を隠すのは宙賊の十八番、依然公安に目をつけられているのでわざわざまた目を付けられるようなものを積んで移動する理由もない。


 船はゆっくりとコンテナに近づき、改めて精密スキャンを開始。


 おかしなものでない場合はそのままカーゴに積み込むので、イブさんにはコックピットに戻ってきてもらった。


「どうだ、わかったか?」


「ひとまずコンテナの製造番号から工業コロニーにあるとあるシップメーカーの物だということは分かりました。この宙域を飛行中に宙賊の襲撃に会い紛失したとの報告が上がっています。おそらく逃げ出すために積み荷を放棄、その時に回収されなかった残りか何かでしょう」


「ということは工業製品なのか?」


「一応コンテナに登録はあるんですが中身が申請と違うんですよねぇ」


「どういうことですか?」


「申請では衣類ということになっているのですが、実際スキャンすると明らかに工業製品なんです。しかも材料などではなく完璧な製品、わざわざ偽ってまでいったい何を運んでいたんでしょうか」


 うーんそういう情報は聞きたくなかった。


 とはいえこのまま放置するのもあれなので、とりあえず回収だけして扱いについては後で考えよう。


 カーゴが満載だったら放置しか選択肢がなかっただけに先のコロニーで買い付け出来なかったのはこのためなのかもしれないとか思ってしまった。


 カーゴのど真ん中に鎮座する真っ黒いコンテナ。


 うーん、思っていたよりもでかいぞ。


「さて、どうするよ」


「持ち主がわかっているのなら返したらいいんじゃないですか?」


「もちろんそれも選択肢ですが、放棄された荷物の所有権は我々にありますのでこのまま回収しても問題はありません。どうするかは中身次第というところでしょうか」


「金になるのなら回収、そうでないのなら持ち込んで報酬をゲットってのもアリと言えばアリか」


「そういうことです」


「それじゃあまずは開けてみてからですね」


「死体が入ってるとかないよな?」


 スキャンしているから流石にそれはないだろうと思いながらも、一応聞いておこうと思い訪ねたのだが明確な返事は帰ってこず、代わりに意味深な笑みを浮かべるアリス。


 そのままコンテナ横のボタンを押すとわずかな振動の後正面上部からがゆっくりと開き始める。


 ホロムービーなんかではよく白い煙が一緒に出てきたりするけれど、そんな演出があるわけもなく中から出てきたのは衣服でも死体でもない、箱と同じ黒い物体。


 いや、機械?


「なんだこれ」


「少々お待ちください、今データを照合中です」


「どう見ても普通の機械っぽくないですよね、この辺とか完全に」


「これは俗にいう見ちゃいけない・・・ってやつか?」


「おそらくは」


 コンテナの中から姿を現したのはどこからどう見ても兵器にしか見えない金属製の何か。


 推進用の小型ジェットの他にも、6連のミサイルポットとマシンガン的な射出口がばっちり見える。


 人が乗るには小さすぎるがドローンにしてはかなり大きめ。


 無人機的な感じなんだろうけど、コンテナを登録しているとあるシップメーカーってのが気になるところだ。


 宇宙で見つけた思わぬ落とし物、果たしてこれは何なんだろうか。

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やったねアリス!ボディができたね!
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