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8.厄介な落とし物を拾って

 真っ白に光るモニター。


 レーザーより発せられた膨大な熱量がソルアレスの装甲に直撃・・・することはなく、少し離れた空間上の何かに当り霧散していく。


「マジか、シールドまで積んでるのかよ」


「現在の規格に当てはめればこれぐらいの自衛は当然のことです。少々燃料を食いますが、それは目の前に浮いていますから使った分は補給すればいいだけです。」


「高級品とまではいわないけど普通のショップシップにはついてないもんだぞ」


「普通の船はそうでしょうけど、この子は私と同じく特別ですから」


 シールド兵器、空間に力場を発生させることで飛来するエネルギー体や物体の侵入を防ぐ防御装置。


 軍隊の他、最近では中型以上の船には装着されているけれど非常に高価なため小型船に搭載しているのは傭兵や冒険者ぐらいなもんだろう。


 もちろんどんな攻撃でも防ぐということは出来ないけれど、それでも奴らが撃ち込んでくるレーザー程度じゃびくともしない安心感はある。


 レーザーは次第に細くなり、消失してしまった。


「くそ!お前ら何者だ!俺達に何の恨みがあってこんなことしやがる!」


「こちらはやられたからやり返しただけです。先に攻撃したのはそちら、なら今度はこちらの番ですね」


「おい!こんなヤバい奴らと戦ってられるか、逃げるぞ!」


 攻撃するだけ攻撃して勝てないと思ったらさっさととんずら、まったく自分勝手にもほどがある。


 一般人の俺からすれば宙賊なんてさっさとどこかに行ってほしいのだが、そうすると燃料を補充できないわけで。


「このままだと燃料が逃げるぞ、どうするんだ?」


「スキャンした際にメインシステムへのアクセス方法は見つけてありますから、後はここをこうしてっと・・・」


「容赦ないなぁ」


「宙賊を生かしておく理由がありません。その世界に足を踏み込んだ時点で彼らの運命は決まったようなもの、これまで彼らが行ってきたことを考えれば当然の報いかと」


 確かにこれまでに何度も略奪をしてきたんだろうし、アリスがいなかったら俺も殺されていたことだろう。


 女はともかく男を生かしておく意味がない、生かして無駄に酸素と燃料を消費するぐらいならさっさと殺した方が効率が良いからな。


 残った女は慰み者にされるか、はたまた売られるか。


 どちらにせよ生かしておく理由は一つもない、それが宙賊という存在だ。


「はぁ、人の命って安いんだなぁ」


「それは違います」


「ん?」


「安いのは彼らだけです、ですので今後彼らが何を言っても耳を貸す必要はありませんし、なんなら無視していただいても大丈夫です。」


「あ、そ」


 一般人の俺でも宙賊に対する感情は良くない、だから殺していいのかと聞かれると思う所はあるけれど生かしておいたところで百害あって一利なし。


 それに、生け捕りにしたところで酸素と食料を消費するのであればこの場で殺してしまうほうが効率が良いのは同じことだ。


「くそ!エンジンが止まった!」


「おい、空気抜けてるぞ!ハッチだ、ハッチが開いてる!早く閉める!」


「今やってる!くそ、お前ら何しやがった!」


「死にたくねぇ、しにたくねぇよぉ!」


 船に残された三人が発する断末魔、それはもう聞くに堪えないものだったがアリスの言うようひたすらに聞き流す。


 その後バトルシップ船内の酸素は全て失われ、強制的に送られていた通信も静かになった。


 この短時間に八人もの命が失われたわけなのだが、アリスの言葉を聞いているからか不思議と罪悪感を感じることはなかった。


 宙賊達の処理はアリスに一任して全て終わってから奴らの船へと乗り込んでいく。


 船内は想像通りの状態、よくまぁこれだけ汚せたもんだ。


 船内に転がるゴミを避けながらアリスと共にコックピットを目指す。


「こちらが入手したカーゴ内の物資目録です、後でご確認をお願いします」


「根こそぎ持って行くのか?」


「持ち主のいない物資ですから我々がしっかり有効活用致します。ありがたいことにトラクタービームも搭載してありましたので、この船を曳航して向こうで売却すればそれなりの金額になるでしょう。その他、内部サーバーに隠されていたキャッシュデータは回収して口座に移し替えてあります。お喜びください退職金が戻ってきましたよマスター」


「喜んでいいのかわからないんだが」


「所詮はデータ、混ざってしまえば何かはわかりません。私はカーゴ内の物資を移動させておきますので、マスターは船内の捜索お願いします。お金になりそうなものを残しておく必要はありません、全てやっちゃってください」


「やれやれ、これじゃどっちが宙賊かわかったもんじゃないな」


 数日前までの当り前がいとも簡単に崩れていくのが分かる。


 宇宙は自由で夢のある場所、そう思っていいのは子供だけで実際にはこういう事をしていかなければ生きていけない場所だった。


 奪うなら奪われる覚悟を持ってやれ、ふと何かで読んだセリフが頭の中に浮かんでくる。


 綺麗事だけで生きていける世界じゃない、向こうが奪いに来たんだからこっちも奪うのは当然の事。


 アリスから送ってもらった船内地図をタブレットに送信してもらい、それを手に各部屋の棚や机を開けまくり隠された現金を含め金になりそうなものを根こそぎ袋に詰めていく。


 星間ネットワークのデータがあればどんなものでも一応の相場はわかるらしく、放り込んでおけば後で勝手に仕分けをしてくれるらしいので今は何も考えずそれに没頭するとしよう。


 たまに心をえぐるような写真なんかを見つけてしまうが、見なかったことにして必要な物だけを回収していく。


 奴らは宙賊だった、それだけだ。


 小さな船とはいえ中々の量、全てを詰め終わる頃にはフラフラになっていた。


「お疲れ様でした」


「お疲れ、そっちはどうだ?」


「燃料補給とカーゴ内物資の移送は完了、後はマスターが回収してくださった其れを積み込めば終わりです。それと、彼らですがわずかながら賞金が出ていましたのでラインに到着しましたら傭兵ギルドで懸賞金を回収しましょう」


「死してなお金になるか」


「彼らの死は無駄にはしません。ただ、一つだけ問題が」


「ん?」


「ちょっとカーゴまで来ていただけますか?」


 ここにきて問題発生、いったい何があったっていうのだろうか。


 何も言わないアリスに連れられてソルアレスのカーゴへ移動、ついさっきまでガラガラだったのに今では山のような物資であふれかえっている。


 これをすべて売ればそれなりの収入になることだろう。


「これ、もしかしなくても救命ポッドだよな?」


「その通りです。カーゴの奥から発見しましたので回収いたしました」


「まったく、なんでまたこんな厄介なものを回収・・・ん?内部電源が生きてる?」


「さすがマスター、どうやら中に誰かが入っているようです」


 宙賊の船から回収された救命ポッド、普通なら脱出用で起動しているはずがないのにこいつは確かに動いている。


 つまりはどこからか脱出したものを彼らが拾って保管をしていたと考えるべきだろう。


 面倒ごとを嫌う彼らがわざわざこれを残していた理由は何なのか、やれやれ面倒なことにならないといいけど。

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