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35歳バツイチオッサン、アーティファクト(美少女)と共に宇宙(ソラ)を放浪する   作者: エルリア


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30.ここでも良くない話を聞かされて

「確かに確認しました」


「荷物は船から出して倉庫に運んでおくからあとで回収してくれ」


 これで一社目終了、ただ目録を渡して保管場所を伝えるだけなのでそこまで大変ではない。


 おそらく今頃はディジーがオークション形式で残った物資を売りさばいているところだろう。


 生憎とそういう派手な感じは慣れていないので、ディジーがいてくれたのが非常に助かっている。


 彼女自身も助けてもらっている以上自分に何かできないかと考えていたみたいだし、こっちもそういう役割が出来る人が居るとこうやって自由に動けるのでありがたい。


 本当はアリスがその役目を引き受ける筈なんだけど、キャラが若干違うんだよなぁ。


「さて、お次はこっちか」


 二件目は大通りから少し離れた古いビルの一室、表通りはラインに負けないぐらいなのに、一本中道に入るとコロニーの古さというか汚い部分が見えてくる。


 前に居たコロニーもそうだったけど、結局きれいなのは外側だけで中はボロボロなんだよなあ。


 薄汚れた階段を上がって二階へ、すぐ横にある扉に依頼主と同じ社名が書かれていたのでその戸をノックした。


 しばらくすると戸が開き、小柄なオッサンが何者かと睨みつけて来る。


「輸送ギルドの依頼でラインから品物を運んできた、確認してくれ」


「・・・ちょっと待ってろ」


 オッサンは書類をひったくるようにして受け取るとそのまま戸を閉めてしまった。


 俺も十分オッサンだけど、あっちの方がより年季の入った・・・いや、若いのから見たらどれも同じか。


 扉の前で待たされること数分、再び扉が開きオッサンが戻ってきた。


 さっきと同じく不機嫌そうな感じだが心なしか機嫌がよくなっている気がする。


「荷物は」


「船から出して近くの倉庫に入れてあるからもう一枚の書類を見せて回収してくれ。」


「わかった」


「受領書にサインを頼む、次が待ってるんだ」


「すぐに出航するのか?」


「そうだな、空荷なのは勿体ないからいい感じの荷物を仕入れてラインに戻るつもりだ」


 本当はアリス良い感じのネタを探してもらうつもりだったんだが、まだ麻薬関係の調査が終わっていないのかそっちの情報は一切回ってこない。


 とはいえなにも積まないで買えるのはもったいないので、自分で何かネタを探して船へと戻るつもりだったんだがそっち関係は何も考えてなかった。


「カーゴが開いてるならいい仕事があるぞ」


「仕事?」


「うちの荷物をラインに持って帰って今回みたいに倉庫に置くだけでいい。報酬は一つにつき5万ヴェロス空っぽならそこそこ入るだろ?」


「は?五万?」


「無理言って運んでもらうんだそれぐらい出すさ。どうする、やるのかやらないのか?」


 サインの入った受領書を手渡しながらさっきの不機嫌な感じのまま語気を強めて問いかけて来る。


 運ぶだけで五万は美味しい、だがそんなうまい話が世の中にあるはずがない。


 確証はないけどこれは絶対にヤバい、俺の勘がそう言ってる。


「マスター少しよろしいですか?」


「っと、すまん仲間からだ」


「やらないならさっさと帰れ」


 突然腕時計型のデバイスにアリスからの着信が入り、それを受けようとするとバタン!と勢いよく扉を閉められてしまった。


 何ならそのまま鍵までかけられたんだが、もう少しぐらい返事を待ってくれてもいいと思うんだが?


「マスター」


「調査終ったのか?」


「全体像ではありませんが少なくともラインの通信履歴を全て調べてある程度は把握しました」


「は?全部調べた?」


「あまりにも膨大な量でしたので時間がかかってしまいましたがなんとか。因みにマスターが今いるそこも麻薬関係の事務所の様です、荷物を運べとか依頼されませんでした?」


「されたところだが断られた。はぁ、やばいとは思ってたけどここもかよ」


 何かやばい物でも運ばされるのかと思っていたのだが、まさかそれが麻薬とは。


 階段を下りてビルを離れつつ、ふと後ろを振り返るとカーテンの閉められた窓の隙間からさっきの男が睨んでいるような気がした。


 よし、やばい事に巻き込まれる前にとんずらするとしよう。


 そのままアリスの報告を受けながらソルアレスへの道を急いで戻ったわけだが、一般人の俺が聞いてはいけないような内容のオンパレードで後半は聞きたくなかったってのは内緒だ。


 ディジー関係の情報も発見できたようで、一応これを提出すれば彼女の無実は証明できるんだとか。


 問題はそれをどこで見つけたんだとか色々と聞かれることと、本物か証明するのが難しいという事。


 それならばいっそ現場を押さえさせて相手を捕まえる方が確実とアリスは判断したようだ。


 まったく、ただの運び屋になにさせるつもりだよ。


「ただいま」


「あ!おかえりなさい」


「やれやれやっとついた、こっちはどうなった?」


「ハインツさんが残りを全部買って帰りました、相場の2倍ですよ!ちょっとは役に立てましたよね?」


「アリスなら2.5倍はいけたか?」


「そうですね、3倍は無理ですけど2.7ぐらいは行けたかと」


「・・・頑張ったのに」


「まぁまぁ、ディジーさんは頑張ったんですから」


 ソルアレスに戻るとアリスとディジー達が楽しそうに談笑していた。


 得意げに2倍で売ったというので現実を教えてやったのだが、少しぐらいは褒めてやるべきだったか。


 イブさんに慰められているディジー、いつの間にかかなり仲良くなっているのは年が近いからだろうか。


「で、次の動きなんだがどうする?」


「先ほどマスターが提案を受けたようにこのコロニーでも麻薬は流通しています、それを持ち帰ることもできますが公安に目をつけられている以上あらぬ嫌疑をかけられるのは間違いないでしょう。とはいえ正規の手段を用いて正規のルートで運び、正規の報酬を貰っていれば流石の公安も文句は言えないはずですからその線から尻尾を掴んでもらえば後は勝手に解決してくれるかと」


「正規ルート?」


「先ほどマスターが提案された荷物を輸送ギルドの依頼で運べばいいのです。そうすれば我々は依頼を受けたものをただ運ぶだけですし中身について責任を負わされることはありません。依頼主の荷物を開けるなど輸送者のご法度、監視カメラもついていますから我々が搬入後カーゴに入っていないと証明すればいいだけです」


 アリスがいう事はまぁわかる。


 ギルドを経由した輸送依頼でコンテナの中身を知らされることは殆ど無いし、俺達は何も知らない善意の輸送者で中身が何かなんてのは関係のない話で、文句があるのなら依頼を受けた輸送ギルドに言うべきでそれを運び屋にいうのはお門違いだ。


 もっとも、それが叶うとは到底思えない。


「で、でもそんな危ない物を正規の手段で運びます?依頼ってことは依頼人の登録もいりますし、わざわざ足の着くようなことはしないと思うんですけど」


「もちろん普通はしないでしょう。なので輸送ギルド依頼はこちらで作り私達はそれを引き受けます。ただし荷物は所定の位置まで自分達で運ばせなければなりません。でもさっきの感じだとそれも出来そうだと思いませんか?」


「さっき?」


「麻薬の入った荷物を運ばないかと依頼されたんだ。でも待てよ、その方法を使うと報酬はどうなるんだ?」


「我々の仕事は荷物をラインへ運ぶこと、仮にそれが違法な物だとしても知らなかった場合は報酬はちゃんと支払われます。もちろん私たちはライン荷物を運ぶという彼らの仕事を達成したわけですからその報酬も貰っていいですよね?」


 こいつ、まったく知らないふりして依頼料の両取りを画策してやがる。


 出来れば非合法な品とかは取り扱いたくないんだが、それを知らなかったのならばカウントされないわけで・・・。


 はぁ、マジでどうしよう。



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