243.オークションに参加して
あの後、無事に遺跡物を発見した俺達は許可を得てコロニー外に遺跡物を売りに行き、その帰りに大量の食料とアルコールを買付けてセリオス・ステーションへと帰還。
予定通りというか予想通りというか、しっかりと宙賊の襲撃を受けたので返り討ちにしている。
ともかくこれで一回目の買い付けは無事に終了、輸送ギルドへの食料の搬入も終えたのでひとまずやる気があるところは見せられただろう。
後は細々と食料を買付けつつ、ここの遺跡物を売りに出るだけだ。
「しかし、まさかあんなに高値で売れるとはなぁ」
「偽物が多数で回る中、確実に本物だとわかる物を買えるのは珍しい事ですから」
「とはいえ仕入れ値の倍、物によっては三倍だぞ?コロニーが自分達で売った方が儲かるだろうになんでわざわざ払い下げるんだ?」
「あくまでも学術調査だからじゃない?営利目的でやっているわけじゃないから、規定以上の儲けを出せないのかもね」
「なるほどなぁ」
確かにその考えには説得力がある。
もし仮に営利目的で発掘が行われているのなら、金目当ての企業がここぞとばかりに開発に乗り出して市場に遺跡物が出回るようになるだろう。
そうなれば価値も下がるし、必要以上に偽物が出回ることにもなる。
そうならない為にあくまでも学術目的でないと発掘が出来ない、そういう事になっているのかもしれない。
確かハムレット社長に見せてもらった遺跡物もテラフォーミング時に発見されたもので、発見後は工事を止めて一時的に学術調査を行わなければならないらしい。
そうなれば工期が延びてしまうので企業側としては遺跡が見つかるのは望ましくないみたいだけど、依頼主がそれを目当てにテラフォーミングの内容を変えることもあるそうなので、そうなれば儲けは増えるらしい。
なんにせよ遺跡物が高く売れるという事はよくわかった、後はこれを繰り返せばかなりの儲けになるのは間違いないわけだが・・・。
「マスター、運営から連絡が来ました」
「お!例の奴か?」
「いえ、今回の収益について報告を求められていますね」
「どういうことだ?」
「・・・なるほど。申し訳ありませんマスター、これは私の不手際です」
「詳しく説明してくれ」
アリスが間違いを犯すなんて珍しいこともあるものだ。
まぁ、いくら彼女が万能のヒューマノイドだったとしても完ぺきではない、なので間違いがあることはさほど気にしていないのだが・・・。
「なるほどな、あの安値で卸す理由はそういう事か」
「申し訳ありません、確認をしていたはずがこの部分だけ見落としていたようです」
「まぁ終わった話だし、別に損をしたわけじゃないんだからいいじゃないか。それで俺はより良い遺跡物を手に入れられるわけだし、それをよそで高く売ってもそれは報告しなくていいんだろ?」
「はい、オークション品に関しては特に規制はないようです」
「ならより良い物を手に入れればいいだけだ」
アリス曰く格安で卸された遺跡物についてはどこでいくらで販売したかを報告する義務があるらしい。
加えて、遺跡物オークションへ強制的に参加。
恐らくは高く転売した利益をそこで回収して、高価な遺跡物を買わせようという魂胆なんだろう。
もちろん物としては悪くないんだろうけどやり方がアコギと言うかなんというか。
まぁ見落としていたのはこっちなのでそれに関しては文句はないし、俺が遺跡物を集めたいのである意味好都合ではある。
でも興味のない人とかなら怒るだろうなぁ。
「では行ってまいります」
「行ってらっしゃいませ」
「楽しんできてくださいね」
イブさんとローラさんに見送られながらソルアレスを後にする。
お付きの面々はアリスとテネス、ミニマさんはノクティルカのメンテナンスで忙しいようだ。
てっきりローラさんもついてくるのかと思ったのだが、今回は遠慮するらしい。
まぁそれは別に構わないんだが・・・ま、いいか。
「会場は?」
「大通りを抜けた運営の事務局だそうです」
「非合法じゃないんだし、おひざ元でしっかりと管理って感じか」
「因みに何が出るかは非公開、行ったものの欲しい物が何もなかったなんてのもよくある話みたいよ」
「それでいて収益の半分以上は使用するように義務付けられていますので、致し方なく不要な物を買ったなんていう書き込みも発見しました」
「それに関してはなんとも言えないが・・・まぁ、行くだけ行ってみてから今後について考えればいいだろう」
なんで遺跡物があんなに簡単に仕入れられたのか疑問だったのだが、どうやらこういうからくりがあるかららしい。
知っている業者はめんどくさくて買い付けを行わず、俺達みたいな新参者が被害にあっているのだろう。
今回は運営に顔を売っておきたい事情もあるのでこの件がなかったとしてもオークションには参加していただろうけどな。
そんな感じで会場まで移動、中はそれなりに広く更には予想以上に多くの参加者が集まっていた。
利益を回収するためのオークションと聞いていたのだが・・・どうも様子が違うみたいだな。
「アリス、どういうことだ?」
「わかりませんが、おそらく参加するにふさわしい品物が出品されるのではないでしょうか」
「何が出るかは秘密なんだろ?」
「そんなの建前に決まってるじゃない。前に遺跡内ですごいのが見つかったっていううわさも出てたし、それ目当ての人がいるんじゃない?」
そういえばローラさんと遺跡物を探している時に、ヒューマノイドが見つかっただのなんだのと言う話があったな。
確か隠し部屋がどうのこうのっていう話だったけど、もしかするとその噂につられて参加者が増えたのかもしれない。
参加者が少なければ競り合う事もないのでそんなに高い買い物をしなくても済むなと安心していたのだが、どうやらそういうわけにはいかないようだ。
「俺達はっと、ここだな」
「随分端の方ね、見える?」
「見えるのは見えるが・・・まぁ新参者の扱いなんてこんなもんだろ」
「開始後に電子パンフレットに出品物の詳細が出るようですからそれを確認致しましょう」
半円形の会場には早くも半数以上の人が座っている。
前に参加したオークションは半分非合法みたいなものだったから、参加している面々もなかなかのものだったけど今回はどこを見回しても普通な感じ。
流石にこの中に宙賊はいないだろう。
「皆様お待たせいたしました、これよりオークションを開催いたします。今回は想定よりも多くの参加者がおられるため予定を変更しまして出品物を追加しております。それにより一部進行の遅れが出る事をご理解ください。もちろんそれを裏切らないだけの品物を用意しております、どうぞふるってご参加ください」
しばらくして中央の壇上に司会者が登場、なるほど参加者に合わせて出品数も増やすのか。
そりゃありがたい限りだ。
その後、端末にオークション事務局から出品物のリストが送られてきたわけだが、それを見た瞬間会場中からどよめきが聞こえてきた。
「マジかよ」
「これをオークションに?正直信じられません」
目録の一番下、一番盛り上がるであろうクライマックスの品を見て驚かない人がいるだろうか。
『ヒューマノイド』
たった一行の文字に誰もが目を奪われていた。




