242.やることが決まって
うーむ、さっきの話だと輸送ギルドの仕事は受けないっていう話だったのだが、またよからぬ事考えてるんだろう。
「というと?」
「コロニー内で食料が不足しているのは間違いありません。事実、現地の調査隊が必要以上の食料を求めており運営もそれにこたえている事が食糧不足の原因のようです。なぜそんな事になっているかは現在調査中ですが、足りない物を売ることに何の罪があるでしょうか。要は集めすぎなければいいのです。輸送ギルドの依頼を半分引き受けつつ、ギルドが交渉できない程度の絶妙なバランスを維持しながらお金を稼ぐ。足りない時が一番儲かりますからね、我々はそれに乗っかるだけです」
相変わらずやることがえぐい。
需要と供給のバランスが崩れている時こそ儲けのチャンス、適度に食料を仕入れて売りさばきつつ時間を稼ぎ、運営と輸送ギルドどちらにもいい顔をして最大の利益とチャンスを得ようというわけか。
コロニー運営にノクティルカの存在を知らしめれば確実にコンタクトを取ってくる。
だが俺達は他の仕事が忙しいという理由をつけてそれを引き受けず、ギリギリの所まで持っていく。
加えて少しずつ食料が増えていく輸送ギルドは虎視眈々とタイミング伺おうとするけれど、結局俺達が惑星降下の仕事を引き受ける事で交渉するタイミングを逃してしまうというわけだ。
「つまり、それぞれからギリギリまで金を搾り取って俺達は俺達でしっかり目的を達成すると」
「そういう事です。おそらく運営としては食料不足の責任を輸送ギルドに押し付ける事で世間の目を遺跡や自分達に向けないようにしているのでしょう。ですが、食料がある程度潤滑に流通ようになればその不満もなくなり、輸送ギルドも文句を言うタイミングを失います。誰も傷つかず私達だけが儲かり、更に遺跡に降り立つチャンスが来る。われながら完璧の作戦です」
ドヤ顔をするアリスを見ていると何だかイラっとしてくるけれども、それでもこれが一番儲かりさらには俺達が目を付けられることもなくなる。
加えて、大量の物資を運べばまた宙賊が襲ってくるからそっちでも金を稼げるというわけだ。
「と、いう事らしいんだけど・・・みんなはそれでいいの?」
「トウマさんがそれでいいのなら」
「私もそれに従います。困っているのは事実みたいですし、それで私達も儲かるのならだれも傷つかないですよね?」
「でも、両方にいい顔して怒られへんの?」
「それは大丈夫でしょう。運営は運営、ギルドはギルド、やろうとしていることに我々が適していたそれだけですから」
「ならええけど・・・」
ミニマさんはまだ不安そうだが、イブさんとローラさんは特に気にしていないようだ。
まぁここに来るまでにこんなやり取りを何度もしてきているだけに、もう慣れてしまったんだろうなぁ。
「イブさんもローラさんも確実に染まっていってるわね」
「その悪に染まっているみたいな言い方はどうかと思うぞ。合理的と言ってくれ」
「はいはい、そういう事にしておいてあげる」
「では輸送ギルドの方はマスターにお任せします。空荷でコロニーを出るのは勿体ないので私は遺跡物の搬出依頼を探します。テネスは買い付ける食料とアルコールの手配を、ミニマさんは搬入準備をお願いします」
「了解やで」
「それじゃあ私も手伝います」
「お姉様も!?」
「一人では大変ですからね」
なんだかんだ面倒見のいいイブさん、妹感覚なのかそれともペット感覚なのかはわからないけれど自主的に動いてくれることで早くミニマさんが船になじむようにしてくれているんだろう。
なんにせよ遺跡に降りる可能性が出てきたのはいいことだ。
個人的にはもう少し遺跡物を見つけたいのでコロニーに喧嘩を売りたくなかったというのが本音、それを叶えつつ金儲けもできるというのならば文句はない。
「トウマさん、私もご一緒していいですか?」
「ん?また埃っぽい所に行くけど大丈夫か?」
「マスクがあるので大丈夫です。それと、買い物もしたくて終わったらお付き合いしていただいても?」
「そういや日用品の買い付けとかまだだったっけ。了解、交渉自体はすぐに終わるだろうから諸々買い付けて戻るとしよう。アリス、後でリストをローラさんに送っといてくれ」
「了解しました、どうぞごゆっくり」
さっき話した通りなのでそこまで交渉には時間はかからないはず、要は向こうが求める総量の二割か三割を準備して納品すれば大喜びすること間違いない。
一度実績を作りつつ、残りは1割ぐらいの小出しにしてゆっくりと時間を稼ぎつつ運営の要請を待つ。
ついでに宙賊を撃墜して報奨金を稼げば遺跡物を買付ける小遣いぐらいにはなるだろう。
「どうぞよろしくお願いします!」
バッルローグさんの見送りを受けながら輸送ギルドを後にする。
交渉は十分で終了、交渉っていうか通達っていうかわざと高めの報酬を要求したのにすんなりと飲む当たりよっぽど切羽詰まっていたんだろうなぁ。
まぁ儲かるのであればこちらとしても文句はない。
予定よりも早く終わったので、買い物の時間をしっかりとれそうだ。
「ローラさんお疲れ様」
「お疲れ様でした。と言っても、私は何もしていませんけど」
「いやいや、あの場に女性がいるだけでも空気が和むってもんだ。特にローラさんみたいに綺麗な人がいると向こうも強気に出れなくなる」
「綺麗だなんてそんな・・・」
「っと、アリスからの通信だ。・・・ん?どういうことだ?」
買い物リストはローラさんの方に送ってくれと言う話だったのだが、何故かこっちに連絡が来た。
何か緊急なのかと思いきやどうもそういうわけではないらしい。
「どうされたんですか?」
「いや、遺跡物を買い付けるにあたり本物の目利きが出来るか証明しなければならないらしい。そういや前にそんなことを言ってた気がするが、あれってオークションじゃなかったのか?」
「でも買い付けには必要なんですよね?」
「という事になる。前の透明な奴はアリスに渡しているけどもう一つ必要なんだとさ。ローラさん、悪いが買い物は中止だ」
「そういう事でしたら仕方ありません」
「と、いうことで引き続き遺跡物の買い付けを行うわけだが・・・ここはローラさんの目利きに期待だな」
「前は見つけられなかったので、今回は頑張ります」
日用品などは遠隔での買い付けが出来るけれども、遺跡物となると現物買い付けが基本。
まさかまた大通りを見て回ることになるとは思わなかったが、ローラさんも俺もそういうのは嫌いじゃないので前回に引き続き一軒一軒露店を見て回る。
前に勉強したからだろうか、明らかに偽物というものがすんなりわかるようになってきた。
もちろん本物か偽物か見分けがつかない物もたくさんあるけれど、少なくとも100%違うというのは自信をもって見分けられる。
「トウマさん、あれなんてどうですか?」
「うーん・・・それらしいと言えばそれらしいか。あっちのはどうだ?」
「あのカップは偽物ですね」
「その心は?」
「縁の作りが100年前に流行ったものと同じです。確か今までにないデザインだって持て囃されたはずなので、遺跡から出てくることは無いかと」
「なるほど、流石だな」
俺にはさっぱりわからないが、香茶を含めたそっち関係の知識はかなりのものだ。
何事も好きであるからこそ知識も増えていく、俺も大開拓時代の物を増やしていく中で少しずつ知識が増えているし、ここでもそれらしいものをいくつか見つけることが出来た。
目的とは違うけど、買い物は買い物。
その後もそれらしいものを探しながら、しばしローラさんとの買い物を楽しんだのだった。




