241皆に相談することにして
「というわけだ。個人的には引き受けてもいいと思っている、ここで恩を売っておけば今後色々と便宜を図ってもらえそうだし、何より金になる。急ぐ旅でもないし、ここで買い物をしながら仕事をこなして金を貯めてもいいと思うんだが・・・どう思う?」
輸送ギルドで合流したテネスと共に先方の依頼を聞き、その場では回答を避けて一度船に持ち替えることにした。
正直悪い話じゃなかったし、輸送ギルドの立場を考えればやっておいたほうが色々とプラスになるんじゃないかという内容だった。
巨大なコロニーだからこそ色々と問題はあるようで、特に遺跡側とのやり取りではパワーバランスのズレが問題になっているのだとか。
そういう小難しいことは正直俺達には関係ないのでどうでもいい話なのだが、それが金になるのであれば話は別だ。
「マスターが引き受けるというのであれば止めませんが・・・間違いなくめんどくさい事に巻き込まれますよ?」
「それは分かってる。輸送ギルドは俺達を使って大量の食糧を手に入れ、それを使ってコロニーの運営に輸送料の値上げや待遇改善などの交渉するつもりなんだろう。金にならず誰もやりたがらなかったことを俺達がやることで結果として運営に目を付けられるのは間違いない。どういう圧力をかけて来るかはわからないが、少なくともメリットはないだろう。だが、このまま働いたところで惑星に降りるチャンスは手に入らない、となれば可能性に賭けるしかないだろ」
「ですが傭兵ギルドでも同じような依頼があると教えてもらったのでは?」
「あくまでもあるという話だけで、絶対に紹介するというわけじゃない。それに物資の届ける仕事こそ輸送ギルドの仕事、わざわざ傭兵ギルドを経由するもんじゃない」
俺だってできればこんな仕事引き受けたくないが、惑星に降りるという目標を達成するにはある程度の無茶は必要だろう。
底意さえ行けば目標は達成したも同然、それ以降コロニーを離れることになってもそれは仕方のないことだ。
「一応マスターなりには考えているようですね」
「みたいよ?あそこでもかなり言葉を選んでいたみたいだし。まぁすぐに受けずに適当な仕事をこなしながら情報収集するのが一番だと思うけどね」
「私もテネスさんに賛成です。バッルローグさんでしたか、あの人はどうも信じられません」
「イブさんがそう言うなんてよっぽどですね」
「そもそも自分達の不満を他の人で晴らそうという考えが気に入りません。文句があるのなら自分の口でそれを伝え、そのうえで交渉すればいいのにトウマさんを使って無理やりそれをやろうだなんて・・・ちょっと虫が良すぎませんか?」
「ですが、それをしてでもマスターはあの子を遺跡に連れていきたい、という事ですね」
アリスの言葉に全員の視線が彼女に向けられる。
ソルアレスのコックピット、その端に静かにたたずむ一体のヒューマノイド。
本来であればセリオス・ステーションに到着次第降ろされるはずだったのだが、色々あって彼女はまだ船の中にいた。
なぜ俺が遺跡に固執するのか・・・すべては彼女の為だ。
「あんなものを見せられたら当然だろ」
「てっきりここから乗り込んだ・・・と思っていたのに、まさか遺跡にいたとは思いませんでしたね」
「ここじゃないって言いだした時はどうしたもんかと思ったが、ローラさんが気づいてくれて助かった」
「あの画像を見た時にどうしても違和感があったんです。コロニーと言う割には人工物が少なくて、もしかしてって思っただけですよ」
そう、あの時彼女を連れていくときに見た画像だがよく見ればコロニーの中ではなく遺跡そのものであることに気が付いた。
よく考えればノクティルカは遺跡調査船、もちろんセリオス・ステーションにも立ち寄っただろうけど本来は遺跡のある惑星で仕事をしていたはず、だから彼女はコロニーについてもここじゃないとはっきり言ったんだろう。
あの悲しそうな顔、ヒューマノイドがあんな表情をできるのかと二度見してしまうぐらいに悲しそうな顔をしてコロニーを見つめていた。
自分の帰る場所はここじゃない。
となると彼女がいたのは遺跡しかないわけだ。
もっとも、現地に行くことは出来ないと聞いたときはどうしようかとも思ったんだが、こうして別ルートで行く方法があるのならそれに乗っかるしかない。
わざわざ金を払ってまで連れてきたんだ、正しい所に連れて行ってやりたいじゃないか。
「今の所遺跡のある惑星に降下する方法は二つ、一つは輸送ギルドの仕事である物資の搬入出。そして二つ目は遺跡調査団の休暇に合わせた帰還支援業務。前者は毎週行われていますのでタイミングが合えばすぐにでも行えそうですが、部外者である我々に仕事を回してもらうには運営に嫌われなければなりません。そうなれば前回のように早期での着艦や仕入れた荷物の販売にも影響が出るでしょう。彼女を遺跡に降ろしたらすぐにここを離れる、それであれば問題ありませんがここである程度稼ぐというのであればすぐに引き受けるのは得策ではありません」
「じゃあ二つ目はどうなん?」
「これは遺跡で活動している調査団が月に一回コロニーに戻るのを支援する業務です。こちらはコロニー運営が行っており、大量の物資と一緒に調査団員をコロニーへと連れて帰ります。ただ連れて帰るだけでなく最初に膨大な量の物資を運びこまければならないので、行える船が少ないのが問題ですね。特に今回は物資の量が多いらしく船の募集をかけていますが該当する船が見つからず苦慮しているようです」
「ん?」
「それは大きければ大きい方がいいんですか?」
「そうですね、最低でも大型可能であれば超大型の輸送船であることが望ましいそうです」
ちょっと待て、そんな話は聞いてないぞ。
一体どういうことだ?
「アリス?」
「マスターがギルドへ挨拶に行かれている間に発見いたしました。いや、お伝えしていませんでしたか?」
「聞いていたらこんなに悩むはずないだろうが」
「私はてっきりここから早く撤退する言い訳が欲しかったのかと。ですが次の帰還は今月末、まだまだ時間はありますのですぐにというわけにはまいりません。それでもよろしいですか?」
「別に急ぐ旅でもないし、彼女も戻れるのなら文句はないだろう。はぁ、こんな方法があるならあそこであんなに悩むんじゃなかった」
「先に言っとくけど私も知らされてなかったからね?そりゃ調べている最中にそれらしいのは見つけたけど、アンタがどうしても依頼を受けたい空気だったから・・・」
「大丈夫ですよテネスちゃん、トウマさんは怒っていませんから」
そう、テネスは何も悪くない。
悪いのはすぐに情報共有しなかったアリスであり、彼女は俺の為に必死に働いてくれた。
「それで、どうしますか?」
「どうもこうもそれが一番安全な仕事だろ。ただし、すぐには引き受けるなよ?向こうからアクションがあるまで待機、出来るだけ依頼料を引き上げろ」
「もちろんです。それと、輸送ギルドの依頼ですが私は引き受けるべきだと思います」
ん?
輸送ギルドの依頼を引き受けると立場が悪くなるから引き受けるべきじゃない、そういう話じゃなかったか?
だがアリスの自信満々の顔は絶対何か企んでいる。
うちの悪徳ヒューマノイドが一体何をやらかそうとしているのか、聞かせてもらおうじゃないか。




