239.ギルドへ挨拶に行って
「ようこそ傭兵ギルドへ、歓迎いたしますキャプテントウマ」
コロニーに到着後、納品だ買い物だと色々と忙しくしていたのだが、ふとした空き時間ができたのでイブさんと共に傭兵ギルドへと向かった。
珍しくミニマさんは留守番、なんでもノクティルカのメンテナンスが終わらないのだとか。
何かがあったとはテネスから報告されていないので喧嘩したとかそういうのではないのだろう。
「よろしく頼む。っというかライセンスも出してないのによくわかったな」
「それはもう、キャプテンとソルアレスは傭兵の中では有名ですから」
「具体的には?」
「『巨大輸送船を囮に宙賊を誘き出し船ごと鹵獲する』と」
「それ、絶対プラスな噂じゃないよな」
「勿論数多の功績も語り草ですよ。豪華客船の救出に宇宙軍との宙賊基地襲撃、コロニーを襲う正体不明の宙賊から身を挺して守ったなんていう話も聞き及んでいます。その様な素晴らしい傭兵に滞在していただけるとは、こちらとしても嬉しい限りです」
珍しく・・・というか初めてというか、傭兵ギルドの受付をしていたその男性は滑らかな口調で俺の功績を語り出す。
確かにどれも俺がやったことに間違いないが、幾つも宙域を飛び越えての話なのによく知ってるなぁ。
もしかすると傭兵のリストにそういうのが載っているのかもしれないけれど、それでもここまでスラスラいうのは難しいだろう。
「よくご存知ですね」
「勿論貴女様の事も存じています。ソルアレスに乗る戦場の戦乙女、宙賊に死を運ぶ美しき死神。ご本人にお会いできるなんて光栄です」
「だってさ、むしろ功績のほとんどがイブさんのおかげだけどな」
「そんな事ないですよ、私なんて半分ぐらいです」
半分の自覚はあるんだなと心の中で思わずつっこんでしまったが、まぁ事実なので何もいうまい。
しかし美しき死神か、宙賊からはそんなふうに思われているのか、ピッタリじゃないか。
「それで、本日はどうされましたか?」
「ここに来るまでに撃破した宙賊の報奨金をもらいにきた。これが撃破履歴だ、確認してくれ」
「拝見します」
データチップを彼に渡すとキリッとした表情に戻りものすごい速度でタイピングを始める。
よく見ると手は義体化している様で、タイピング用にカスタマイズされた細い指が素早くデータを解析していく。
そこそこのイケメンが集中してさらにイケメンになっているわけだが、周りを見ると女性傭兵の姿はあるけれど特にそれを気にする様子はない。
なんだろう他の傭兵ギルドでは主に男達が喜ぶように素敵な受付『嬢』が当たり前だったわけだけども、イケメンなのにそっちで攻めないというのはなんとも不思議な感覚になるなぁ。
「お待たせしました。討伐履歴を確認、報奨金は210万ヴェイルになります」
「まぁそんなもんか」
「お小遣いにはなりましたね」
「中々の大金だと思うんですが、お二人にとってはお小遣いと同じですか」
「まぁ今まで稼いできた金額を考えるとどうしてもな」
「流石、私もそんなこと言ってみたいものです」
今回の報酬は全部で210万、そのうち半分を俺が頂戴し残りを女性陣で分ける感じになるのか。
アリスとテネスは除外されるので5:4:1でイブさん、ローラさん、ミニマさんで分けることになる。
計算は・・・めんどくさいからいいや。
半分ももらった俺はと言うと、そのうちの半分を共同資金に回して残りを自分の分として貯蓄する。
惑星を買うとなればまだまだ足りないので引き続き稼がせてもらうとしよう。
「とりあえず今後もここで活動するつもりだからよろしく頼む。とりあえずこの辺の宙賊情報と、出没ポイントの共有を頼めるか?それから懸賞金のリストと、弾薬の補充をする業者の紹介を頼みたい。あとは・・・って、聞いてるのか?」
「え?」
「大丈夫ですか?」
「すみません、目の前にお二人がいると思うと舞い上がってしまって」
「舞い上がる?」
「だってあのキャプテントウマですよ?数多の武勲を立てながら常に謙虚で女性に優しく、あの宇宙軍のナディア中佐ですら一目置く超有名人。その横に立つのは一人で宙賊基地を壊滅させる実力を持ちながら、キャプテントウマを陰で支えるスーパーウーマンのイブ様。他にも超有能ヒューマノイドや超テクであの船を乗りこなすローラ様まで、オールスター目白押しじゃないですか。そんな人達がこんな辺境の遺跡発掘コロニーに来るなんて・・・って痛い!」
突然イケメンが目を輝かせながらものすごい早口で話し始めたかと思ったら、その後ろから現れた男性がかなりの勢いで彼の後頭部をはたいた。
どのぐらいの勢いかと言うと、頭が前に倒れるとそのままおでこをテーブルにぶつけてしまったぐらい。
中々の音だったが・・・まぁ自業自得だよな。
「こいつにはきつく言い聞かせておきますので、どうか許してもらいたい」
「よろしく頼む」
「あの、大丈夫ですか?」
「こう見えて頑丈なんで大丈夫・・・なはずだ」
そう言いながら追い打ちをかけるように彼の後頭部を押して前頭部を机におしつける。
うーむ、なかなか容赦ないなぁ。
「アンタは?」
「傭兵ギルドを管理しているエドモンドだ。改めてコロニー周辺の治安を守ってもらい感謝してる」
「なに、ここに来るついでに勝手に襲って来たのを倒しただけだ。とはいえまだまだいるみたいだから、少しでも減らせるよう努力するつもりだ」
どうやらこのギルドのトップがわざわざ来てくれたらしい。
残念イケメンは未だ後頭部を押さえつけられ動けないようだが・・・それ、死なないか?大丈夫か?
「あの、そろそろ手を・・・」
「いや、一回ぐらい死んだ方が少しは大人しくなるだろう」
「うちにも似たようなのがいるから気持ちはわかる。とはいえ別に俺達は気にしてないからそろそろ離してやってくれ」
ミニマさんが暴走するとこんな感じだろう、今はまだ他所で迷惑をかけていないけれどいつ暴走するかわかったもんじゃない。
まぁそれを言えばアリスも似たようなところはあるが、少なくとも人に迷惑を・・・いや、あいつの方がやらかしかねないか。
「うぅ、痛いですよエドモンドさん」
「キャプテンがお前を許してくださるそうだ。まったく、この前痛い思いをしたのをもう忘れたのか?」
「何かあったのか?」
「キャプテンほどではないがそれなりに名の通った女傭兵が偶然ここに来たんだが、その時も同じように舞い上がりそのままお持ち帰りされたんだよ。で、身ぐるみはがされてポイってな」
「それはご愁傷様」
「でもすっごく優しくしてくれたんですよ!」
「・・・大変だな」
「そうなんだが、顔だけはいいからなぁこいつ」
つまり顔だけで採用しているというわけか。
少なくともここに女性の傭兵が多いのもそれが理由、黙っていればイケメンっていうやつなんだろう。
そんなのに受付を任せるのはどうかと思うが、なんにせよ挨拶は終わったので後は貰う物貰って引き上げるだけだ。
必要なデータを先程のデータチップに入れてもらい、さぁ戻ろうかという時だった。
「そういやキャプテンは何しにこんなところに来たんだ?」
「商売のついでに遺跡ってのがどんなもんか見に来たんだが、生憎と資格がないと降下出来ないらしいな」
「遺跡を?なんでまたあんな場所に?」
「興味本位さ、それ以上でもそれ以下でもない」
「なるほど。稀に採掘部隊に物資を届ける仕事があるらしいから、もしそういうのが出たら声をかけよう」
「そりゃありがたい!是非よろしく頼む」
思わぬ提案に声が大きくなってしまったが、どうやら惑星に下りられる可能性はゼロじゃないらしい。
せっかくここまで来て遺跡を見ないで帰るのはもったいないからな、後で似たような依頼がないかアリスに紹介してもらうとしよう。
そんなわけで無事に傭兵ギルドへの挨拶も終わり、次は輸送ギルドへと向かう。
ここでもとりあえず挨拶をするだけ・・・だったのだが、どうもそういうわけにはいかないようだ。




