236.あまりの活気に圧倒されて
「ここがセリオス・ステーション」
頭上を行きかう大型のエアカー。
その下を大勢の人が押し合うように歩き、通路は人で埋め尽くされている。
いや、正確には通路の両端に露店のようなものが立ち並び、遺跡から発掘されたであろう品物がこれでもかと並んでいる。
その中には明らかに違う物も並んでいるのだが、それを指摘するような様子はない。
「どうです、凄い活気でしょう」
「まさかこれほどまでとは思わなかった。っていうか、通れるのかここ」
「ここを通らないとノクティルカのあるハンガーまで移動できません。頑張りましょう」
つまりこの人ゴミを抜けなければ目的地まではたどり着けないと。
これまでそれなりにコロニーを旅してきたつもりだけど、これほどの人がいるコロニーは初めてかもしれない。
遺跡から運ばれて来たもののせいか空気は乾燥し、更にはゴミが含まれているのか口元を覆いたくなってしまうぐらいにかすんでいる。
それを気にせず歩き回るのは観光客かはたまた遺跡のブツを狙ったバイヤーか。
それ以外もたくさんいそうな感じだなぁ。
「あ!あそこにドローンが売ってるわよ」
「あちらは工業用のパーツでしょうか、どう見ても何かからはぎ取った感じですね」
「何でもありだな。コロニーの管理者は何も言わないのか?」
「この雑多な雰囲気こそセリオス・ステーションの売りですから。もちろん盗品等はご法度ですけど、黙認している感じはあるでしょうね。因みにこの中から本物の遺跡物を見つけられるようになれば一人前、それをもって遺跡管理事務所に行くことでその他の品物を買うオークションに参加できるようになるそうです」
「なんだよその条件、厳しすぎるだろ」
「遺跡物を購入できれば他所でいくらでも稼げますからね、誰にでも売るわけにはいかないのでしょう」
だとしても本物をこの中から見つけろってのはどうなんだ?
それなら別にどこぞで買い付けたやつを持って行ってもバレなさそうな感じだが・・・いや、もしかすると今日は何を売り出しているのか向こうで把握しているのかもしれない。
つまり最低限の目利きすらできないやつには要はない、そういう事なのだろうか。
「その目を鍛えるために人が人を呼び、物が集まり、結果こうなったと?」
「この乾燥した空気も地上の遺跡を意識してわざと管理しているという噂もあります。そのおかげでお酒がよく売れるのだとか」
「すべてはコロニーが仕組んだ罠ってか?やることがえぐい」
「まぁまぁそのおかげで私達の懐が温かくなるんだからいいじゃない。ほら、さっさと行かないといつまでも進まないわよ」
テネスが目の前の人を強引に押しのけながら大通りを横断、路地裏をうまく使いながら何とか六番ハンガーへと到着した。
「って、ここもすごいな」
「なんせお酒がかかっていますから、皆さん必死なのでしょう」
到着した六番ハンガーもまたすごい活気に包まれている。
大型の搬出用ドローンがあちこちを飛び回り、用意されたエアカーに載せられては空高く飛び上がりコロニーのあちらこちらへと運ばれていく。
人が多いという事はもめごとも起きるという事、特にこれだけ活気にあふれていればなおさらだろう。
「ほな!次のコンテナ出るで!」
「それでは、次のコンテナは・・・42番!27番の方!」
「うぉぉぉ俺だぁぁぁぁ!」
「代金お支払いはあっち、しっかり払ってってや!」
「こちらでおねがいしま~す」
集まったのは時間にうるさい屈強な男達、にも拘らずその圧にも負けずミニマさん達が巧みに場を盛り上げながら荷物の搬入を続けていた。
場を指揮しているのはミニマさん、盛り上げているのはイブさん、そして代金の回収はローラさん。
なるほど、搬出時に代金を回収しているからとりっぱぐれもないわけか。
支払えない人は後回し、文句を言おうにも次の業者が待っているからそれも出来ないんだろう。
世の中には後払いを希望する業者もいるけれど、そういう所は資金繰りがやばかったりするのでとっぱぐれない為にはなかなかにいい作戦だと思う。
「みんなお疲れ、どんな調子だ?」
「ちょうどええとこに!キャプテン、手伝ってや!」
「俺が!?」
「キャプテンはドローン使うの上手いやろ?私一人じゃどないもならんし、イブさんも手一杯なんや。はよやらんといつまでも遺跡巡りできひんで?」
「はいは~い、これからドローンもう一機追加するからジャンジャン行くわよ!支払いの準備できてるんでしょうね!」
「良いから早くしやが・・・なんでもないです」
ねぎらいの言葉をかけようと思っていただけなのに、あっという間にドローン作業員をさせられることになってしまった。
まるで用意していたかのようにヘッドセットを渡され、待機していた搬出用ドローンを操りノクティルカ内のコンテナを搬出していく。
二馬力になったことで搬出速度は上がったものの、流石にイブさんだけでは捌けないのでテネスとアリスも参戦して次々と客を回していく。
例え文句を言われてもイブさんの鋭い眼光一つで黙らせてしまうあたりさすがだ。
俺はと言うと目の前のコンテナを無心になって動かすだけ、抱き合わせ商法のせいで手前から順にというわけにもいかず、ノクティルカ内で色々と動かさなければならないけれどもそこはミニマさんがしっかりフォローしてくれたので何とかなった。
広いノクティルカだからこそできる大型ドローン二機を使った一斉搬出、全員総出で当たったこともあり二時間程ですべての荷物を搬出、引き渡しが完了した。
「あぁぁぁぁ、疲れた」
「お疲れ様でしたマスター、素晴らしい操縦技術でしたよ」
「そりゃどうも。しっかし、ミニマさんはすごいな」
「何が?」
「アレだけの連中に言い寄られたらビビってしまいそうなもんだが、怖くなかったのか?」
別に女性に偏見を持っているつもりはないが、普通あれだけ男たちに文句を言われたら萎縮してしまうもんじゃないだろうか。
体格も勢いも明らかに相手の方が上、にも拘らず一切ビビることもなく堂々と指示を出し、時には文句を言ってくる相手を黙らせる。
正直これは予想外だった。
「メンテの仕事してたらあれぐらい言われるの当たり前やったからなぁ。それにあぁいう人ほど口は荒いけど中身はそうでもないし、話せばわかる人ばっかりやで。そりゃいう事聞かん人もおるけど、無視しとけば周りの人がどうにかしてくれるから放っといたらええねん」
「なるほど」
「かっこよかったですよ、ミニマちゃん」
「はぁぁぁ!!ありがとうございますお姉様!」
お俺に褒められても別に、っていう感じだったのにイブさんに褒められた瞬間これだもんなぁ。
別にそれが悪いとは言わないけど・・・いや、何も言うまい。
「ま、一番褒めてもらいたい人に褒めてもらえて何よりだ」
「で、これからどうするの?やることはやっちゃったわけでしょ?」
「後片付けは必要ですが、まぁこれは後でもできますしね。どうしますか、マスターがご希望でしたらすぐにでも遺跡物を探しに行けますが・・・」
「もう無理、休む」
「よろしいのですか?」
「っていうかこのテンションと体力であの人ゴミを歩くのは無理だ」
二人がかりで作業に当たったとはいえかなりの体力を使った。
このままあの人ゴミに突撃し、さらには一つ一つ露店を見ていくのは流石に無理がある。
別に焦る必要はない、まずはゆっくりと英気を養ってからお楽しみの時間を過ごそうじゃないか。
セリオス・ステーション。
国の中でも一二を争う活気にあふれるコロニー、その洗礼を受けてしまったのだった。




