233.致し方なく連れていくことにして
「で、連れてきたの?」
事前にアリスから情報が言っていたんだろう、ソルアレスに帰ると入り口前でテネスが呆れた顔で俺を見てきた。
それとは対照的に後ろのイブさんとローラさんは笑顔のまま、まるで俺ならやりかねないみたいな感じなのだろうか。
「仕方ないだろ、放っておけなかったんだから」
「放っておけなかったって、それ拾ってどうするのよ」
「・・・わからん」
「わからんってアンタねぇ」
俺だって持ち帰ることになるとは思わなかったんだから仕方ないじゃないか。
おいて帰ろうにも勝手についてくるし、ただの壊れたヒューマノイドのように同じことを言い続けるし・・・って、実際壊れてるわけだけど。
「まぁまぁテネスさん、『主人を亡くしたヒューマノイド』まるでホロムービーみたいじゃないですか」
「まぁ主人が死んでってのはよくある話だけどな」
「でもそれとは違うんですよね?」
「どうにもそうらしい。アリスの話によると製造年月日は数十年前でそもそもマスター登録された人物はいないそうだ。物販用のヒューマノイドかとも思ったんだがどうもそうじゃないらしい」
「と言いますと?」
「おそらくセリオス・ステーションから何中の理由で運ばれてきて放置されたのではないでしょうか。もしくは誤ってここまで運ばれて来たか。プログラムを深く解析していないので何とも言えませんが、この子自身が強引にプログラムを書き換えて先程の状態になったと考えられます」
ヒューマノイドが勝手にプログラムを書き換えるなんて、そんなアリスみたいなこと・・・と最初は思ったのだがどうやら無いわけではないらしい。
基本的にヒューマノイドは固定のプログラムで動いている。
決められたこと以上はしないし、ちゃんとヒューマノイド憲章に則って行動している。
だからこそ人間と共に生活しここまでこれたわけだけど・・・、面白いことにエラーが起き続けるとそれが正しくないという事を学習し、それを改善しようとすることがあるそうだ。
アリス曰くヒューマノイドがある種の自我を保つために行うごく自然な動きらしいけど、それが結果として今の彼女を作り出しているのだとか。
「つまりセリオス・ステーションに戻る方法として、遺跡に興味のある人間を探し出していたってことですか?」
「そういう事らしい。俺にはよくわからないけど・・・テネスはどう思う?」
「そういわれると無い話じゃないわね。私自身ある種そういう部分はあるし、この子がコロニーに戻るために関係者らしき人物に声をかけていたのであれば納得できる部分もあるわ。でもそれを裏付ける証拠はあるの?」
「あります」
「あるんですか!?」
「先日マスターのお母様を追跡したことがありましたね、あの時遺跡関係の映像を漁っていましたがその中に彼女らしき姿が映っています」
俺は全く覚えていないんだがアリスが言うのならば間違いないんだろう。
とりあえずソルアレスの中に入りコックピットへ移動、当の本人はよくわかっていない感じだが・・・まぁいいだろう。
「ではまずこちらの画像をご覧ください」
「・・・いるな」
「間違いあらへんね」
「そして次はこちら、ここにも彼女の姿があります」
「あ~!遺跡だぁ!あの黒い船も!」
「わかりますか?」
「だから言ったでしょ、この船は遺跡から来たって」
どうやら画面に映し出される自分ではなく遺跡の方に目が行っているようだ。
しかしなぜ何十年も前の画像に彼女が映っていて、そしてアステラル・ディスティラリーに来てしまったのか。
その辺は追いかけていけばある程度は追及できるだろうけど、元々主人もいないらしいのでそれを調べたところで彼女を探している人はいない。
だが、何もわからずここにきてしまったのならば。
プログラムを書き換えてまで戻りたいと願うのならば。
送って行ってやるのもまた一興だろう。
この機を逃せば彼女は壊れるまでここにいることになる、そして壊れて廃棄されてしまうだろう。
ただでさえ何十年と稼働しているんだスキャンした結果今すぐに壊れてもおかしくはない状況らしい。
どうせ壊れて捨てられるのならば連れて行ってしまって何の問題があるだろうか。
いや、無い・・・よな?
「はぁ、相変わらず変なことに巻き込まれるわねアンタって」
「別に巻き込まれたいわけじゃないんだが?」
「それにこれは人助けですし」
「人というかヒューマノイドというか、でもそういうのがトウマさんらしいですよね」
「それはつまり面倒ごとに巻き込まれるってことだよな、ローラさん」
「違います!そんなつもりじゃ!」
「あはは、冗談だって。どうせ行く場所は同じなんだ、連れて行ってやればいいじゃないか。法律的にも問題ないんだろ?」
そういう流れだけど一応確認の為アリスの方を向いたのだが、どうも様子がおかしい。
なんでそっぽ向くんだよ。
連れて行こうっていう話じゃなかったのか?
「アリス?」
「問題はありません・・・よ?」
「いや、流石にそれは苦しいだろ。テネス、実際はどうなんだ?」
「んー、問題ないとはいえなさそうね。所有者のないヒューマノイドだけど、一応コロニーが管理者になってるからその了解は取る必要があるみたい」
「了解を得る、具体的には?」
「コロニーに所有者として登録をしてお金を払えばいいだけよ。そうね・・・100万ヴェイルぐらいかしら」
「100万!?高すぎだろ!」
いやいや、10万ぐらいならまぁ・・・とか思っていたけど、流石に三桁は躊躇する。
そりゃ自分達の酒にそれぐらいつぎ込んでるけど、ただ乗っけていくだけにその金額は・・・なぁ。
「不当にヒューマノイドをコロニー外に出さないために必要な処置です。理由があれば減額できますのでご安心を」
「そういう事は先に言ってくれ」
「私の手にかかれば何の手続きもなく連れ出すことが出来ますが?」
「流石にそれはまずいだろ。管理されているからこそあの管制の女性が注意してくれたわけだし、いきなりいなくあったら驚くんじゃないか?」
「マスターならそう仰ると思っていました」
いや、だからそういう試すようなことは辞めろっての。
ひとまず全員一致で彼女をセリオス・ステーションに連れていくことは決定。
すぐにアリスがコロニーに連絡を入れ、彼女がセリオス・ステーションから来たことを例の画像をもって証明して見せた。
どうやらコロニー側も対応に困っていたようで二つ返事で了承、一応1万ヴェイルという事務手数料は必要になったけどこのぐらいなら何の問題もない。
そんなわけで予定時刻になり出港準備が整った俺達は出航の順番を待っていた。
「こちらアステラル・ディスティラリーコントロール、ソルアレス応答願います」
「こちらソルアレス、どうしましたか?」
「私が言うのもなんだけど、あの子を見つけてくれてありがとう」
連絡してきたのは例の管制官、わざわざ連絡してくるあたりこの人はこの人なりに彼女のことが心配だったんだろう。
「なに、元々向こうに行く予定があったしついでだ」
「そう言ってくれる人に見つけてもらってよかった」
「この子は私達が責任をもってセリオス・ステーションへお連れします、どうかご安心を」
「よろしくお願いします。こちらアステラル・ディスティラリーコントロール、ソルアレスの出航を許可します。飲酒運転には気を付けて!」
「ありがとうアステラル・ディスティラリーコントロール。ソルアレス、出港します」
とんだ寄り道になってしまったがとりあえずは丸く収まったと言っていいだろう。
さぁ次はやっと目的地だ。
初めての生遺跡、一体何が見れるのやら。




