213.やられたのでやり返して
新作を投稿しております
初のVRMMO物、よろしければお読みください
サインが完了し借用書とハンガーの権利書がこちらに回ってくる。
それをアリスとテネスが再びチェック、問題ないことを確認した。
「借用書を星間ネットワークへのアップデート中です、しばらくお待ちください」
「いやぁ良い取引が出来た」
「・・・そうだな」
「これでこのハンガーはおっちゃんの物、あの船も無事に抵当を外れて自由の身、よかったな」
「あぁ、肩の荷が下りたよ」
ほっと一安心という感じで息を吐くおっちゃんとは対照的に、苦虫を噛み潰したような顔をする男。
こいつらさえいなければ、そう思っているに違いない。
「でもよかったな、なんせ天下のオルビタル・フロンティア・インダストリーが持っていたハンガーだ、何かあってもまた相談に乗ってくれるだろう。そうだよな?」
「もちろんだ。俺は優しいからな、また何かあれば遠慮なく声をかけてくれ」
「だってさ、よかったなおっちゃん」
これにて支払い関係の話は終了。
アップデートが完了すれば無事にハンガーはおっちゃんの物になり、船も抵当から外れたので安心して譲り受けることが出来る。
気づけばぼろぼろになるまで蹴飛ばされた黒服も立ち上がり、荷物をまとめて帰ろうとしていた。
だが向こうの用事は終わってもこっちの用事はまだあるんだよなぁ。
「取引は終わりだ、失礼する」
「あー、ちょっと待ってくれ」
靴を鳴らして事務所を出ようとしたが男達だが、俺の言葉に歩みが止まる。
「・・・なんだ?」
「今回の契約について一つだけ確認したいことがあるんだが、構わないか?」
「譲渡後はいかなる理由があってもオルビタル・フロンティア・インダストリーは関知しないと書いてあったと思うが?」
「申し訳ありません、借用書のアップデートが完了しておりませんのでまだ譲渡は完了しておりません」
「つまりまだそっちの所有というわけだ」
「・・・仕方がない。だが早くしてもらえないか、次の仕事が待ってるんでね」
こちらを振り返ることもなく返事をする男、なるほど時間がないというのなら簡潔にいこうじゃないか。
「じゃあ聞くが、おっちゃんとは別にこのハンガーの所有者が後38人いることになっている。これはどういう事か説明してもらえないか?」
俺の問いかけに動きを止める男、だがゆっくりと振り返ったその表情は意外にも笑顔だった。
「何のことだかさっぱりわからないな」
「わからない?このハンガーの持ち主はそっちだろ?」
「譲渡後、いかなる理由があってもオルビタル・フロンティア・インダストリーは関知しないという契約だっただろ?」
「生憎とアップデートはまだ終わっておりません、どうやら通信障害が出ているようです」
「何を馬鹿なことを」
「いえ、確かに通信障害が起きているようです」
黒服が即座に反応、自分達の端末を確認している。
慌てて男も自分の端末を触るがもちろん動くはずがない。
「まさかお前達が!」
「言いがかりはよしてくれ、うちだってさっさと契約を終わらせたいのに困っているんだ。とはいえこの問題が解決しない限り契約は不履行、現時点ではまだ所有権はそっちにある。こっちは6000万もの大金を準備しているにもかかわらず、よからぬことをしようとしているのであれば・・・こちらも然るべき方法で対処せざるを得ないだろう。テネス、状況を説明してくれ」
「現在このハンガーの所有者は38人、この契約が成立すれば晴れて39人目という事になるわ。契約上これが成立した時点で誰よりも先にハンガーの所有権を得るけれど、他の38人も一週間後に権利を譲渡されることになっているみたいね。つまり来週には晴れて39人で仲良くこれを共同所有することになるわけだけど、おかしいことにどの契約書も共同所有という記載はないのよ。まさか複数人同時にここを売ったなんてことはないわよね?」
「おい、それは一体どういうことだ?他の誰にも話していない私だけの特別な契約という話じゃなかったのか!?」
さぁ反撃開始だ。
予定とは違ったとはいえ、向こうは6000万もの大金を受け取って帰るつもりだっただろうけどそうはいかない。
ここで返すつもりなんてさらさらないし、なにより折角つかんだ尻尾を逃す手はない。
とはいえまずは目の前の問題を何とかする方が先決だ。
「さて、そのこの件について説明は?」
「何度も言うが見当ともつかない。ここを38人と契約した?その証拠はあるのか?」
「もちろんございます。こちらが38人分の契約書、その写しになります。あぁ、写しと言いましても改竄できないようにコロニーのデジタルキーが付与されていますので間違いはないかと」
「・・・」
「通常電子契約書は二通。ここに一通があるという事はそちらにも分割した方が存在するはずよね。この件は38人全員から言質を取っているから間違いないわよ。みんな驚いていたし怒ってたから、早急にしかるべき対応をした方がいいんじゃない?因みに二日経っても進展がない場合は集団訴訟を起こす予定だから、震えて待ちなさい」
集団訴訟、僅か1日の準備期間でそこまでやってしまうあたりアリスとテネスの情報能力は半端ないよなぁ。
恐らく向こうが持っているもう一つの原本も存在は確認しているんだろうけど、流石にそれを出すとハッキングがばれてしまうのでこっちの原本を全回収するという技を選んだんだろう。
向こうからすれば寝耳に水のはず、流石の男も動揺を隠せないようで目があちらこちらに泳いでいる。
今頃必死になって打開策を考えているんだろうけど、そう簡単にはいかないだろう。
金をせしめるはずがまさかこんなことになるなんて敵ながら同情してしまうがすべて身から出た錆、俺達を敵に回したことを後悔すればいい。
さて、後は駄目押しをしてとどめを刺すか。
「お前ら調子にのって・・・」
「あぁ、よからぬことは考えないことだ。こう見えて宇宙軍の偉いさんに伝手があるし貴族にも知り合いがいる。俺に手を出せば多方面からの攻撃は間違いないだろう。もちろんこの人にも手を出すなよ、俺の大事な知り合いなんだ、あの船を含め手を出した瞬間生きていることを後悔させてやることもできる」
「あなた方の悪事については色々と証拠が集まってきています。これまでに何をしていたかよく考えたうえでどうするかの返答をお願いします」
黒服が前に出てこようとするもイブさんが後ろからそれを威圧、分が悪いと判断したのかそのまま後ろに下がってしまった。
これで試合終了だ。
「まぁ俺は優しいからな、とりあえず明日までは返事を待ってやるよ」
「なっ!」
まさか自分の決め台詞を言われると思っていなかったんだろう。
忘れもしないこのセリフ、俺が拉致された時にいた最後の一人は間違いなくコイツだ。
もちろん後ろを向いていたので確認はできないし、カメラにも映っていなかったので証拠はない。
だが、このセリフと反応は間違いないだろう。
確かあの時俺の情報は確認していても顔までは確認しなかったはず、部下からの報告だけで判断した結果がこれだ。
しかも俺が救助されて部下二人が捕まったという話は耳に入っているだろう、もしあの時俺の顔を確認していたら俺を見た瞬間に別の手段が取れただろうに。
「まさか・・・お前は」
「俺がどうしたって?あぁ、誘拐したやつがこんなところにいるから驚いているのか?」
「失礼する!」
これにて勝負あり。
さぁ今までの悪事がばれたわけだが、果たしてどう出てくるのやら。




