212.向こうの出方を確認して
本日から新作を投稿しております
初のVRMMO物、よろしければお読みください
「来たで!」
事務所の窓から外を見て・・・いや、監視していたミニマさんが部屋の中にいる俺達に向かって声をかける。
別に来たからと言ってどういう事も出ないんだが、まぁ相手が相手だけに気を付けよう。
オルビタル・フロンティア・インダストリー。
このコロニーで言えば大企業の一つで様々なテラフォーミングに対応できるのが強み、職人の信頼も厚くプラスな話が多い一方、裏ではかなりの汚れ仕事をしているようで俺もその被害者という事になる。
そしてこのハンガーの購入もまたオルビタル・フロンティア・インダストリーの仕事、本来であれば1ヴェイルの価値もないような場所を5000万もの値段で売ろうっていうんだからかなりアコギだ。
テネスの入ったドローンで外の様子を確認すると、小太りの男が黒服の男を二人連れてこちらへ向かってくる。
黒服の男は服の上から分かるぐらいに筋肉隆々、いやあれは義体化しているのか。
いざとなったらあの二人が暴れる感じなのかもしれないけれど、生憎ここにはイブさんという強い味方がいるわけで。
残り一人ならアリスとテネスの二人が挑めばどうにかなるだろう。
あぁ見えてかなりの重量だからな、流石に二人同時は厳しいはず・・・。
「なにか?」
「何でもないぞ?」
「何か不快な視線を感じましたが?」
「気のせいだろ。それよりもこれからの事を確認しよう、あの見た目だと普通に金を返したところですぐに帰るとは思えないんだが、どう思う?」
「あんなん暴れます言うてるのと一緒やん」
「確かに、何かしらにつけて因縁をつけてきそうな感じがします」
ローラさんとアニスさんは俺と同意見のようだが、他の三人は違うようだ。
「いきなり暴れれば逆に不利になりますから、あぁいう手合いは脅すだけかと。もちろんこちらが何かすれば反撃はしてくるかもしれませんが大人しくしていれば大丈夫でしょう」
「どうせこの間捕まえた二人みたいに尻尾切り用でしょ?」
「なんにせよ何かあったら私が出ますから安心してください」
「そうならないことを祈るよ。まぁまずは金を返して、そこからは出たとこ勝負という事で」
「大丈夫なのか?」
「心配には及びません、マスターは大宙賊を相手に啖呵を切れる男ですから」
いや、だからどうなんだっていう感じではあるけれど出たとこ勝負で何とかするしかないだろう。
ドンドンと激しくノックされたかと思ったら、蹴破るような勢いで扉が開いた。
「今日が期限だ。借りた金用意できたか・・・って、なんだこの人数は」
扉が開き、黒服を連れて威張りながら入ってきた男だったが、俺達を見て一瞬だけたじろいだように見えたが、それにビビるわけでもなく冷静な目で俺達を順に見回していく。
汚れ事を色々してきただけあってこの程度でビビるような奴じゃないか。
「遠い知り合いだ、気にしないでくれ」
「てっきり返せないから仲間でも連れてきたかと思ったが、お前にそんな度胸なかったな」
「金なら用意した、それを受け取ってさっさと帰れ」
「こいつらにでも借りたのか?」
「どうでもいいだろ」
「まぁいい、こっちちは金さえもらえれば文句はない。おい、契約書出せ」
「はっ!」
オッサンが指示を出すと黒服が大きめのタブレットを取り出し、それを空中に投影する。
細かくて読めないが・・・どうやらアリスがハッキングして確認しているようだ。
横のテネスも少し上を見つめて何かを検索している様子、仮にあの契約書に怪しい点があっても二人がいれば大丈夫だろう。
「このハンガーを買うために貸した6000万ヴェイル、耳をそろえて支払ってもらおうか」
「6000万!?5000万の間違いだろ!?」
「何を馬鹿なこと言ってんだ、金を借りたら利子が付くのは当然の話だろ?今日で貸してから一カ月、月二割の利子をつけて6000万ヴェイルしっかり返してもらおうか」
当初からいきなり1000万もの上乗せ、アリスの方を見ると小さく横に首を振るあたり契約書に間違いはないんだろう。
「い、一体どこにそんなこと書かれていたんだ?」
「おいおい、年取って耄碌したのか?ここに書いてあるだろうが」
「こんなに小さく」
「小さくてもそれを読んでサインしたのはそっちだ。それともなにか?借りた金も返せないっていうんだったら、約束通りあのボロ船は俺達がいただいて・・・」
「わかった、6000万ヴェイル支払おう」
「なんだって?」
「利子を見落としていたのは俺だがそれぐらいなら問題ない、さっさと払うから端末をよこしてくれ」
まさか利子まで払うとは思ってなかったんだろう、初めて動揺した男だったがすぐに元に戻り首を動かして黒服に指示を出す。
後は金を転送してサインをするだけ・・・いや、待てよ?
こういう悪党が一つしか仕込んでいないとは思えない。
「ちょっとまて」
「なんだお前、邪魔するな」
「おっちゃん、サインする前にもう一度確認したほうがいいぞ。さっき見たのは最初の契約書かもしれないがそこに書かれているのが同じとは限らないからな」
「何を馬鹿なことを」
「アリス、照合してくれ」
「かしこまりました」
おっちゃんが持っていた契約書の控えと今回の物を確認する。
別にこれで問題ないのなら良し、もし問題があるのならこちらのチャンスだ。
「おかしいですね、こちらが所有している契約書と少し違います」
「というと?」
「譲渡後いかなる理由があってもオルビタル・フロンティア・インダストリーは関知しないとありますが、その後ろに『契約履行後一カ月以内であればオルビタル・フロンティア・インダストリーは本契約を破棄できる』という一文が追加されています。つまり、支払いをしても気に入らなければ購入を無かった事に出来るようです」
「と、いう事なんだがどういうことだ?」
やはり何か仕込んでいたか。
そのままサインをすれば代金を支払っても購入を無かった事にされ、より高い値段を吹っ掛けるつもりだったんだろう。
流石悪党、なんともせこいことをする。
「お前!余計な事するなと言ってあっただろ!」
「も、申し訳ありません!」
さぁどう出るのかなとおもったら、突然契約書を出していた黒服を後ろから蹴飛ばす男。
その後も執拗に蹴り続け、それを見たおっちゃんとミニマさんがビビってしまった。
こちらから止めると向こうの思うつぼ、ということで黒服には申し訳ないがそのまま蹴られ続けてもらって向こうの出方を待つことにした。
「本当に申し訳ない。こちらに手違いがあったようだ、許してほしい」
「許す許さないはともかく正しい契約書を出してくれればそれでいい」
「おい、正しい方を出せ」
「・・・・は、い」
口から血を流しながらも黒服は正しいと思われる契約書を提示、再びアリスに確認してもらい間違いがないことを確認する。
アリスが小さく頷くとおっちゃんが小さく息を吐いた。
「問題ないようだ」
「じゃあ先にサインをしろ」
「何を言ってるんだ?契約書に寄れば代金を支払う事で購入の意思を示したことになるんだろ、サインが先じゃ不履行になりかねない。先に代金だ」
「・・・そうだったな」
「送金しました、確認をお願いします」
「6000万ヴェイル入金されています」
「おっちゃん、サインを」
「わかった」
ここに来るまでに三つもトラップを仕掛けているとは中々やるじゃないか。
俺達がいなかったらまんまと引っかかっていただろうが残念ながら相手が悪かったと思ってもらおう。
さぁ、ここまではまだ折り返し地点。
本当の戦いはここからだ。




