208.とりあえず詳しい話を聞かせてもらって
警備の事情聴取も終わり、捕まえた男たちは警備に連行されていった。
身分であったりとかその辺はアリスにも調査してもらいながら向こうからも連絡を貰う約束になっている。
流石にハッキングして調べてますとは言えないので表向きは連絡待ちだが、こっちの方が早いのは間違いないだろう。
時間も時間なのでとりあえずソルアレスへと帰還。
助けてもらったお礼もあるのでミニマさんにも来てもらったが、イブさんが横にいる状態ではあるけれど今の所大人しい感じだ。
「やれやれ、ひどい目にあった」
「マスター、見たところ外傷はありませんが念のため医療ポッドに入ってください」
「大丈夫だと思うぞ?」
「急に首から下が動かなくなるとさすがの医療ポッドでも治療はできません、それともご自慢のモノが使えなくなる方がよろしいですか?」
「何が自慢なのかはわからないがとりあえず入ってくる」
「それがよろしいかと」
決してアリスに脅されたからじゃない、自分の体を維持するのも船長としての基本だからそうするだけだ。
サイズ的には普通だと思うがこの年で使えなくなるのは悲しいからな。
「それじゃあトウマさんが戻るまでお茶にしましょうか、ミニマさんもどうですか?」
「ええの?」
「アイツが助かったのは貴女のおかげなんだし、別にいいんじゃない?」
「でも・・・」
チラッとイブさんの方を見るミニマさん、その視線を感じたのかイブさんが静かに頷くと彼女の表情にパッと光がともった。
前はただのお客だったが今は命の恩人だからな、その人を無碍にするつもりはない。
とりあえずこっちは三人に任せつつアリスと共に医療用ポッドのある別室へ移動する。
「正体不明の男については何かわかったか?」
「監視カメラの映像が消されているので何とも言えませんが、おそらく光学迷彩的な物を使って逃げたのでしょう。倉庫内にもカメラは設置していませんでしたのでそういった証拠を残したくなかったのかと」
「引き続き調査を頼む。それと、彼女の身元ももう一度調査してくれ」
「と言いますと?」
「あんな人気のない場所に何故いたのか。いくら仕事をクビになって自棄になっていたとはいえ、あんな人気のない場所までくると思うか?何かを狙っていたそう考えるのが妥当だろ」
「確かに。では親世代も含めて再調査いたします」
「よろしく頼む」
服を脱ぎパンイチになってポッドの中へ、後は目を瞑って五分もすれば全身スキャンは終了だ。
目を瞑りながら今回の件について考える。
自分が誘拐された時点で信じられないことだがどうやらそれが仕組まれていた可能性が出てきた。
彼女は何者なのか、何故あそこにいたのか。
そもそも一緒にいた男は何者なのか。
疑問は尽きないけれどとりあえず今は静かに検査結果を待つとしよう。
終了を知らせるブザー音と共に目を開けると何故かアリスが真剣な面持ちで俺を見つめている。
「なんだよ」
「別になんも、機能は正常だなと思っただけです」
「お前なぁ」
「大事な事ですが?」
「だとしても許可ぐらいとれよ。次から金取るぞ?」
「いくらお支払いすればよろしいですか?」
「・・・やっぱり却下で」
ここで金を貰ってしまうと、今後それを理由に馬鹿らしいことをさせてくるのは間違いないのでここで甘い顔をしてはいけない。
上半身を起こして大きく伸びをしてからポッドから出て着替えを済ませる。
その間中ずっと監視されていたんだが・・・いったい何なんだ?
「それで、わかったか?」
「男たちの正体は判明しました。オルビタル・フロンティア・インダストリーに所属しているようです」
「は?」
「ですからオルビタル・フロンティア・インダストリーの社員で間違いありません。偽装するために出向という形で色々な場所を経由していますが、大本を辿るとそこにたどり着きます」
「ってことは、あの時懇切丁寧に対応してくれたのは全部仕組まれたってことなのか?」
「どうやらそうとも限らないようですよ。所属しているのは間違いないようですが直接の実務はしておらず主に汚れ仕事を請け負っていたようですね。まっとうな仕事をしていれば必要ありませんが、彼らのような部隊が存在するという事は・・・言わなくてもわかりますね?」
つまり真っ当な仕事だけじゃ食っていけない、もしくはあそこで話していたように強引な手法で契約を取ることで企業としての形を維持しているのだろう。
一言で言えばヤバい会社、ってことになる。
「最初に案内してくれた人のように綺麗な仕事をしている部署もあればそうじゃない所もあるってことか」
「多種多様なニーズに対応できると言えば聞こえはいいですが、やはり中途半端な規模感故にうまく事業が回っていないのでしょう。在庫管理も大変ですし、なにより人件費比率がおかしすぎます。どうやら日常的に解雇が行われているようですが、路頭に迷った職人をより安い値段で雇い入れるやり方で人員を確保している可能性が高いでしょう」
「つまりミニマさんもその被害にあったと?」
「可能性は否定できません」
「世知辛いなぁ」
大きな会社故に他の部署が何をやっているかを知らないなんて言うのはよくある話、昨日のあの女性は本当に真剣に自社商品を進めており、うまくいけば契約をと思っていたに違いない。
だが、その裏では汚い手段を使ってでも契約させようと動いている別部署があり、結局そこに俺を攫われてしまったと。
なんにせよオルビタル・フロンティア・インダストリーという会社で契約するのはよろしくなさそうだな。
「どうしますか?」
「どうとは?」
「今の事実を突きつけて格安でテラフォーミング契約を結ぶことも可能です。向こうの希望はマスターに契約を結ばせること、それならば尻の毛までむしるぐらいの勢いで値引きしてやりましょう。なんにせよ今回の件が明るみに出れば世間的にもかなり厳しい立場になるでしょうからなんとしてでももみ消したいはず、そこを利用しない手はありません」
「相変わらずやることがえぐいな」
「マスターに危害を加えたのです、当然の報いかと」
「とりあえずその件は保留にしておいてくれ、向こうの出方もあるしそれから考えても遅くはない。後はミニマさんの方はどうだ?親がつながっていたとかそういうのはありそうか?」
「それが、実の両親とは随分と小さい頃に死別しているようで施設で育ったという所までしかわかりませんでした。その過程でメカニックの道を目指しオルビタル・フロンティア・インダストリーには偶然内定路貰っただけで直接関係している痕跡は見当たりませんでした」
うーむ、何かあると思ったんだがどうやら俺の勘違いだったようだ。
じゃあなんであの時例の男のセリフに反応したのかについては本人に聞かないとわからないけれど、とりあえずあの黒服がオルビタル・フロンティア・インダストリーの関係者なら、残ったもう一人もまた同じ会社である可能性が高い。
後はそこから追及していくしかないだろうなぁ。
「今の所はここまでか。ありがとう、引き続き調査を続けてくれ」
「かしこまりました」
「失礼します、お二人とも香茶がはいりましたよ」
「わかった、すぐ行く」
ちょうどいいタイミングでローラさんが俺達を呼びに来てくれた。
ここで悩んでいても仕方がない、わからないのなら直接本人から聞けばいいだろう。
もちろん本人が答えてくれればの話だけど。
アリスに目配せして立ち上がりキッチンまでゆっくりと向かう。
前はこの時点ですごいことになっていたけれども、はてさて今日はどうだろうか。




