204.詳しい説明を聞かせてもらって
いろんな意味できわどいその女性を先頭にオルビタル・フロンティア・インダストリー内を案内してもらう。
てっきり外側だけが大きいのかと思いきや、中もそれなりに作られていて社員数もそれなりに多そうな感じだ。
社内の雰囲気も良く決して外面だけで商売をしているという感じはしない。
「どうぞこちらへ」
「どうも」
案内されたのは小さめの会議室、てっきり応接室的な所でじっくり話をすると思ったのだが案外実務重視のようだ。
それでも露骨に谷間が見え、ミニのスカートからは黒タイツの太ももが見せながら資料を配る様は中々にそそられるものがある。
何故ここまで俺の好みに当てはまっているのかはわからないが・・・まさかアリスが情報を流したりしてないよな。
「私達が最後とは伺っておりますが時間もありますので早速始めたいと思います」
「お気遣いありがとうございます」
「改めまして、わたくし本日の案内をさせていただくキャサリンと申します。どうぞお見知りおきを。まずは弊社の概要から、というのがいつもの流れですがそこは割愛いたします。ご存じかと思いますが弊社が取り扱います機械は小規模から大規模まで様々な規模間で対応できるようになっております。昨今ではフルテラフォーミング出来るような惑星は少なく更には小規模案件も減少気味となっていて各社苦戦を強いられているようですが、弊社に至ってはその幅広いラインナップを十分に生かし、どのような惑星にも対応できるという自負があります。特に自信を持っておりますのはアフターフォローでして、納品後も末永くお付き合いいただけるよう万全の状態を維持すべく専属のメカニックを派遣いたします。もちろん費用は弊社が負担いたしますのでご安心ください」
ここまで詰まることなくスラスラと話し続けるキャサリンさん。
きらりと光るフォックス風のメガネが雰囲気に何ともぴったりな感じだ。
もちろん度なんて入れていないだろうけど他の営業マンと違って一発で顔を覚えることが出来た。
「専属のメカニックねぇ、派遣してくれるのは嬉しいが彼らへの待遇はどうすればいいんだ?」
「食事などをご準備いただければ後はこちらで作業を行いますのでご安心ください。彼らが休暇の際には別のメカニックを派遣いたしますし、不慮の事態でも最後までしっかりと面倒を見ますので皆様のご迷惑にはなりません。会社によっては売りっぱなしでメンテナンスが有料なんていう所もありますが、我々は職人を常に配置することでリアルタイムにメンテナンスを行えるという強みがございます」
「つまりそれぐらい職人を大事にしているってことだな?」
「仰る通りです。弊社の職人離職率はほぼゼロ、福利厚生も万全ですから」
「じゃあなんで彼女は解雇されたの?」
谷間の見えるブラウスのボタンがはちきれそうになるぐらいにドヤ顔で胸を張るキャサリンさんだったが、テネスの質問にピタリと動きが止まる。
それでも笑顔を絶やさないところが流石というかなんというか。
で、どう出てくるんだ?
「といいますと?」
「ミニマ=モンドール、この名前をご存じですか?」
「・・・なるほど、確かにそんな社員もいたようですね」
「福利厚生も万全で離職率がゼロと豪語する御社が何故彼女を解雇したんだ?」
「いくら腕があってもコミュニケーションに問題があれば結果として弊社のイメージダウンにつながります。我々の仕事は円滑にテラフォーミングを行いその環境を維持することですが、お客様との関係も大事にしていますので、それを損なうような社員は不要だと判断した次第です」
つまり企業イメージを損なうからやめてもらった、という事なんだろう。
それに関しては思い当たる節があるので何も言うまい。
初対面であんな感じになるんだから似たようなことをよそでやっていないとも限らない。
企業には企業のやり方があり、それに合わない人は解雇される。
俺も先代の息子のやり方に合わなかったから解雇されたわけで、でもそれは会社を守るために必要だったと今になって思えてくる。
もっとも、その会社がどうなったかは全く興味のない話だけどな。
「因みに彼女は何を担当していたんですか?」
「特定の機械を担当しないフリーのメカニックになります」
「フリー?」
「大型から小型のテラフォーミング機械をはじめ、各種輸送機器や輸送船なども操縦できます」
「ものすごく優秀な人材じゃないですか、それでも解雇しちゃうんでか?」
イブさんの質問も尤もだ。
特定の機器を担当しないってことは複数の機会に精通しているって事だし、搬送機器に限らず輸送船まで操縦できれば彼女一人で業務を完遂できる。
それだけのメカニックはなかなかいない、にも関わらず解雇されるってことはよっぽどの理由があるんだろう。
「先ほどの理由が全てです。どれだけ優秀でも弊社社員そして顧客様と有効なコミュニケーションが取れない以上、損失を出す前に解雇するのが妥当と判断致しました。具体的な内容に関しては守秘義務がありますのでお答えできません」
「なるほど、そこまで徹底しているわけか」
「すべてはお客様の為ですから」
「その考えには賛同いたします。顧客を喜ばせてこその企業、もちろんそこに利益が伴わないと困りますが、顧客がそれをもたらしてくれる以上喜ばせることにこそ意味が生まれます」
「流石、キャプテントウマのお付きの方は素晴らしい考えをお持ちのようですね」
「お褒めにあずかり光栄です」
ふむ、アリスに関しては見た目がヒューマノイドっぽくないからもしかすると普通のクルーだと思われているのかもしれない。
だが納得できない部分はある。
いくら企業のためとはいえ、その社員の人生についてはどう責任を取るのだろうか。
せめて解雇した社員の雇用先を探してやるとかそういう所までやってこそ気持ちよく使えると思うんだがなぁ。
「様々な規模感でも対応できるというのは俺達にとっても魅力だな。加えて、社員やメカニックを大事にしつつ顧客に対しても素晴らしい対応をしている。正直今までの企業の中で一番かもしれない」
「ありがとうございます」
「だが、今回ここに来たのはあくまでも情報収集の為だ。縁があれば御社を使わせてもらう日が来るかもしれないが、とりあえず今回は見送らせてもらおう。みんな、帰るぞ」
「ま、まってくださいキャプテントウマ!」
そもそも今日は話を聞くだけ、それは向こうにも通達しているのでそこまで慌てる必要はないと思うんだが・・・。
「何か?」
「せっかくご来社頂いたわけですし、弊社ラボもご覧になっていきませんか?普段は公開していませんが是非一度ご覧になってください。そうすればより弊社の良さをご理解いただけると思います」
「と、言ってるが?」
「いいのではないでしょうか。ここが最後ですしマスターが一番興味をもたれているのであればより深く知ることも重要です」
ふむ、ここまで似たような誘いを完璧に断って来たのにアリス的には問題ないのか。
ぶっちゃけ疲れてるので早々に引き上げたいところだが、どういう風にテラフォーミングしているのかという部分は非常に気になる。
横を見るとローラさんもイブさんも二人とも静かに頷いてくれた。
ならば断る理由もない。
「そこまで言うのなら見せてもらおうか、オルビタル・フロンティア・インダストリーの実力とやらを」
そういうと、ご自慢のメガネをくいっと持ち上げたキャサリンさんが本日二度目の営業スマイルを浮かべたのだった。




