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35歳バツイチオッサン、アーティファクト(美少女)と共に宇宙(ソラ)を放浪する   作者: エルリア


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185/255

185.無事に攻撃を避けきって

「左後方から敵母艦レーザー、それに加えて右からシーカーミサイル着弾まで三秒です」


「軽く言ってくれちゃって!」


「ミサイルは任せて、二秒で十分!」


左後方からのレーザーを左に避けるために無防備になった右側面へのミサイル、向こうからすれば完璧なタイミングだっただろうけど命中するはずのミサイルは直前になって軌道を変え、明後日の方向へ飛んで行ってしまった。


宇宙空間のいい所は上下左右にミサイルを誘導できること、ジャミングをかけてやればいくらシーカーミサイルと言えど標的を見失いただの筒と化すだろう。


それでも敵の攻撃は止まず、まるで宇宙空間に降る雨のように無数の攻撃が降り注いでいる。


「くそ、話と違うぞ!」


「その方がスリルがあるだろ?お前たちが暴れれば暴れるほど俺達は逃げやすくなる、せいぜい時間を稼いでくれ」


「餌を捨ててまで本命に喰いつくって話はどこに行ったんだ?」


「喰いついたさ、実際餌から離れただろ?」


「それはそうだが・・・」


「マスター、苦情はコロニーに戻ってからでもいいでしょう。今は逃げ切ることだけに集中してください」


「良いオペレーターがいると話が早くて助かる。その点うちのときたら・・・」


「良いんですよキャプテン、餌としてここに放っても」


「おー怖い怖い、という事だからもう少し時間を稼いでくれ」


声だけではあるけれど、向こうにも中々ユーモアもあるクルーがるみたいだ。


時間を稼げ=何か策があるという事を信じて、とりあえず今は逃げる事だけに専念しよう。


「という事らしい、悪いがもう少し付き合ってくれ」


「もとよりそのつもりです。先ほどからカイロス様の船に何ならかのエネルギー反応が起きています、もしかすると何かしでかすつもりなのではないでしょうか」


「何が起きているかはわからないのか?」


「正直初めて見る反応です」


「ま、向こうにも何か策があるってわかっただけでも良しとしよう」


盛大なため息を突いたところで再びロックオンアラートが鳴り響く。


メインモニターの映像が切り替わり、宙域地図に赤い点が無数に表示された。


「後方よりシーカーミサイルのおかわりよ、その数20!」


「大盤振る舞いだな」


「1本10万ヴェイルとすると、これだけで200万ヴェイルですから向こうも必死ですね」


「うーん、自分よりも高いミサイルを撃ち込むってどういう気分なんだろうな」


「絶対に殺す、とかじゃないの?まぁ当たってやんないけど」


確かに殺意マックスなのはわかる気がする。


それぐらいの勢いで200万ヴェイルものミサイルを撃ち込んで・・・そして避けられるんだからなんとも悲しい話だな。


「着弾まで後20秒」


「ジャミング準備かんりょ・・・あれ?なんで!?」


「どうしました?」


「急に出力が上がらなくなって、ちょっとなんでよ!」


後ろから迫る20本のミサイル、本来ならジャミングをかけてぶつけ合えば一瞬で終わるはずなのに、何やら不具合があるのか発動しないらしい。


うん、やばいな。


「着弾まで後10秒」


「ちょ、ちょっと待って!?なんで?ちゃんとシークエンスは完了してるのに、なんでエラー・・・え?ジャミングされてる?」


「ローラさん急速旋回!イブさんはフレアを発射、全部だ!」


「いっくわよ!」


逆噴射をかけない急速旋回はものすごいGがかかる。


体をキャプテンシートに押し付けながら少しでも時間を稼ぐべく行動を開始、フレアはあくまでもおまけなので引き付けられるとは考えていないが、一本でも誤作動してくれればそれで十分。


「着弾まで七秒」


「くそ、一本だけか」


「ちょっと、アンタも手伝いなさいよ!死んじゃうわよ!」


「それならもうやってます、それでも誤作動が起きるとなると別の要因ですね。因みにミサイルへのジャミングを試みていますがこちらも不発、どうしましょうか」


「どうしましょうかじゃないっての!」


まさかの寿命まで後七・・・いや五秒。


アンティークでもあるアリスでもどうにかならないとなれば万事休すじゃなかろうか。


さっきまでなんともなかったのに急に動かなくなるから機械ってやつは・・・。


もうすぐ死ぬかもしれないっていうのに、意外に慌てないもんなんだなと思っていたその時だ。


「強烈なジャミング波を確認!全システム強制シャットアウト!」


「え!?ちょっとま・・・」


突然アリスが叫んだかと思ったら、瞬く間に船の全システムが落ちた。


なんならアリスやテネスまで動かなくなり、一瞬にして音が無くなってしまったような錯覚を覚える。


電源が切れたことで重力制御などもなくなり体がシートからふわりと浮き上がる、ローラさんが心配そうにこちらを振り向くが何が起きたのかさっぱりわからない。


宇宙空間で電源が落ちるという事は外の寒さから身を守るすべを失うという事、幸い船そのものが断熱構造になっているはずだけどそれでも冷えてくるのは確実だ。


いままで船のシステムを落としたのなんてノヴァドッグでの修繕の時ぐらいじゃないだろうか、そもそも航海中にするもんじゃないし強制的に落とすなんてよっぽどの事。


なんてことを考えていると、突然後ろから爆発音が聞こえたかと思ったらソルアレスが大きく揺れ、まるでシェイカーでかき回されているような感じで上下左右に体が振り回される。


ローラさんの悲鳴がコックピットに響くも姿勢制御や重力制御が消えてしまいどうにもならない。


さっきのミサイルが着弾したのかとも思ったのだが、それなら船全体が爆発しているはずなのでこんなことを考えている余裕はないはずだ。


何十秒か船ごと振り回された後、急にシステムが復旧しはじめコックピット内に光が戻ってきた。


それと同じくして重力制御系も復帰、アレだけ暴れまわっていた船もぴたりと動きを止めた。


「マスター大丈夫ですか?」


「大丈夫なわけないだろが!と怒るのは後にして、何が起きた」


「強力なジャミングを検知しましたのでシステム保護の為を強制シャットダウンを試みました。再起動をかけておりましたのでこうして復旧できた次第です、ミサイルは・・・どうやらジャミング波によってコントロールを失い自爆したようですね」


「ローラさん、イブさん、大丈夫か?」


「頭の中をかき回されたみたいで気持ち悪いけど何とかね」


「体中ぶつけましたけど大丈夫です。そうだ、テネスちゃんは?」


「うー、気持ち悪い。人間にはわからないでしょうけど私達の電源が切れるって死ぬのと同じ感覚なのよ、わかる?わからないわよね?」


「それだけ元気なら大丈夫そうだな。とりあえず船の点検と周囲の警戒を開始、あとは・・・」


「カイロス様より入電、メインモニターに出します」


やれやれ、忙しいなぁと思いながら顔を上げるとドヤ顔の彼がドアップで映し出されていた。


「どうだ、うちの最高傑作は」


「最高にクソだった」


いや、マジでクソだった。


なるほどすべての元凶はこの人だったか。


ブチギレそうになるのを気合で押さえるべく盛大にため息をついて怒りを外に逃がす。


「おいおい、ひどい言われようだな。ミサイルの群れから助けてやっただろ?」


「それに関してはうちだけでもなんとかなった、そっちのジャミングのせいでこっちのが使えなくて死を覚悟したけどな。っていうかそういうのを使うなら事前に通達してくれないか?」


「時間を稼げって言っただろ?」


「あれで伝わると思ってるのか?」


「キャプテン、だからちゃんと伝えた方がいいって言ったじゃないですか」


「おかしいな、お前んとこのオペレーターなら気づくと思ったんだが」


どうやら向こうのオペレーターの方が何倍も常識がある、いやまともなようだ。


船のシステムを全て落とさないと対処できないようなジャミング兵器とか、あまりにも危険すぎるだろ。


それを警告・・・いや、情報共有なしでぶっ放してくるとか下手したら船のシステム全部吹き飛んでた可能性もあるんだぞ?


まぁアリスのあの反応を見る限りある程度は予期していたと考えるべきなんだろうけど・・・。


「って言ってるが?」


「高エネルギー反応に関しては把握しておりましたのでジャミングも想定しておりました、しかしながらまさかこれほどのジャミング攻撃をしてくるとは。ですがそのおかげで敵母艦も航行不能になったようですから、無事にコロニーに戻れそうですよ」


「ポジティブすぎるだろ」


アレだけのジャミング攻撃を無警戒に受けたらそりゃ航行不能にもなるだろう。


向こうは俺達が回避するとわかってこの攻撃を使って来た。


恐らくさっきのが向こうの隠し玉、本来戦い合う俺達に見せてはいけない手の内を見せてくれたと考えることもできる。


とはいえ一歩間違えば俺達も行動不能になっていたわけで。


まったく、宙賊というのは何を考えているかわからない。


「ま、なんとかなったんだからいいじゃねぇか」


「うちのオペレーターが優秀で良かったよ」


「お前は優秀じゃないのか?」


「生憎と俺は凡人なんでね、優秀なクルーに恵まれているだけだ」


「そう思ってるうちはまだまだひよっこだな。自分がなんでそこに座ってるかよく考えたほうがいいぞ。じゃないと俺みたいにすぐ捨てるって言われるからな」


ケラケラと笑うカイロスさんを見て二度目の盛大なため息をついたのだった。

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