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35歳バツイチオッサン、アーティファクト(美少女)と共に宇宙(ソラ)を放浪する   作者: エルリア


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183.想定以上の相手が現れて

「多い多い多い!」


「そんなこと言ったってどうにもなりません、今は耐えてください」


宙賊四機に追いかけられるソルアレス、大慌ての俺とは対照的にローラさんは終始冷静だった。


「イブちゃん、十秒で逆噴射してから一気に左に曲がるから準備しておいて」


「了解です!」


「ということですのでマスターは衝撃に備えてください」


「テネスは?」


「今は向こうに集中しているようですね、7機を相手に大立ち回りを演じています。あの不規則な動きは無人機ならでは、まぁ問題はないでしょう」


メインモニターには七機の宙賊船に追いかけられながらも反撃する機会をうかがっている無人機の映像が映し出されていた。


流石に無駄口をたたいている余裕はないのかボディの方は椅子に座ったまま硬直状態、それでもアリスが問題ないというんだから何とかしてしまうんだろう。


ローラさんが言った通り逆噴射の後ソルアレスが一気に体制を変え、敵機を正面に見据えたタイミングでイブさんが攻撃を加える。


見事二機を撃墜、だが仲間が撃ち落とされてもなお奴らの動きが止まることはなかった。


一機落としてもまた一機がすぐ現れ追いかけっこが継続される。


ぶっちゃけ十機ぐらい落とせばさっさと逃げてくれるだろうと思っていたんだが思っている以上に好戦的でこちらが次第に追い込まれ始めていた。


さて、どうするよ。


「ナディア中佐より入電、メインモニター繋ぎます」


「随分としんどそうな顔じゃないか中佐殿」


「あら、貴方だって随分とグロッキーな感じよ?正直ここまで抵抗されるとは思ってなかったけど、大丈夫なの?」


「心配には及びません、弾薬が僅かに心もとない感じはありますがあと数時間は戦えるでしょう。その頃には向こうの被害も大きくなっているはず、流石に母艦が動くことはない・・・とふんでいます」


「それは私も同意見です。彼らには彼らの目的があるはず、ここで母艦を失うようなことはしないと思いますが自棄にならないとも言い切れません。まったく、何をしにここまで来たのでしょう」


そうか、ナディア中佐は最初からアトランティスの護衛に来ているから彼の件はしらないのか。


同じ宇宙軍でも管轄が違うと情報共有は頻繁に行わないみたいだし、これに関してはあまり公言しないほうがいいだろう。


ナディア中佐の事だ、突入が遅れたところに俺達がいたと知ったら絶対に勘ぐってくる。


「なんせよ羽虫を減らせばどうにかなるだろ」


「そうですわね、活躍を期待しますわ」


「その分の報酬もよろしくな」


あえて返事をせず軽く笑みを返してナディア中佐は通信を切った。


どうやら状況は想像以上によろしくないらしい。


あの中佐が泣き言は言わなくとも自信を無くすぐらいに戦況はよくない、実際宇宙軍のバトルシップは一隻また一隻と行動不能になっているし、中佐の乗艦している母艦にも何度か危ない場面があった。


戦力は明らかに向こうの方が上、数は正義だ。


「で、どうするよ」


「我々は傭兵です、残念ですが命を散らすまで戦う義理はありません。アトランティスの乗員を無事にナディア中佐の母艦へ移動させることを条件に船を放棄する、それぐらいの事をすればすんなり終了するのではないでしょうか。目下の問題はあの母艦が動くかどうか、せめてあの半分・・・いえ、三分の一の戦力でも味方になってくれたらよかったのですが」


「ルスク・ヴェガスにそんな殊勝な奴がいると思うか?」


「身分がわからない以上なんとも言えない、とだけお返ししておきます」


つまり誰もいないってことだな。


そう、俺達非傭兵。


いくら知り合いが乗船しているとしても命には代えられない。


もちろんそれを守る交渉をするのは宇宙軍だが、ここまでコケにされた宙賊がなんていうかなぁ。


考え事をしていると再び船が逆噴射による急ブレーキをかけ、体が思い切り前に動く。


重力制御を最大限に使ってこれ、ということは無い宙賊船は一体どうなってしまうのだろうか。


「これで、おわり!」


追いかけてきていた残り二隻をイブさんが撃破、これでやっと追いかけてくる宙賊がいなくなった。


つかの間の休息、全員が息を吐きコックピットの緊張が一気にほぐれていくのがわかる。


まぁ、いつ何時再びアラームが鳴るかはわからないけれど緊張し続けるよりかは何倍もマシだ。


「あぁぁぁぁ!やっといなくなった!か弱い女の子のお尻を追いかけてくるとかどんな変態よ!恥を知りなさい恥を!集団で私を追いかけまわしていったい何をするつもりだったのかしら!」


「お、テネスの方も片付いたか」


「おかげで弾倉は空っぽだけどね」


「補給するから戻ってこい、今ならこっちも追われてない」


「はぁ、ボディもボロボロだしルスク・ヴェガスに戻ったらピカピカに磨いてもらうんだから」


「それだけ頑張ったご褒美に、フルオプションでのメンテを頼んであげましょう」


「え!いいの!?」


「もちろんです」


座っていた椅子をクルリと回転させて目を輝かせてこちらを見てくるテネス。


ソルアレスならともかく大型ドローン程度のフルメンテナンスなんてルスク・ヴェガスだとしても100万ヴェイルかかることは無いだろう。


因みに先程の七機全部を落としたとしたら懸賞金はおよそ320万、三回やってもおつりが出る計算だが・・・アリスの事だから一回で終わらせるんだろうなぁ。


なんにせよそれで本人のモチベが上がるのならそれでよし。


っていうかそもそもAIにモチベがあるのか?


いくら違法とは言えその辺は・・・いや、これ以上は何も言うまい。


「俺は、帰ったら美味い飯を食ってふかふかのベッドで横になりたい」


「マスターそれは!?」


「ん?」


アリスが慌てた様子でこちらを振り返ったその時だ、コックピット内にアラームが鳴り響き即座にアリスが確認をする。


「宙賊機三機にロックオンされました。まったく、マスターがあんなこと言うから」


「俺のせいなのか?」


「戦場で食事の話はご法度ですよ。ホロムービーで見なかったんですか?」


「フラグ、立てちゃいましたね」


「別にそのつもりはなかったんだが」


言い訳をしても起きてしまったものは仕方がない、テネスにはステルスモードで待機してもらって様子を見てもらうとしよう。


俺達の方は燃料も段数もまだ余裕がある、このままこいつらを倒して・・・。


「ちょっと!母艦が動き出したわよ!」


「はぁ!?」


「目標は・・・どうやら私達みたいですね」


「みたいですねって、普通はナディア中佐の方だろうが」


「でも仲間を打ち落としたのは私達ですから。流石に今の戦力ではアレを落とすのは無理ですね、どうします逃げますか?」


「逃げるっていうか別の所に引っ張っていくというか・・・できるか?」


「母艦がどのような武装を有しているかにもよりますが、成功確率は3割程かと」


「ただ逃げるだけでは?」


「10割です」


つまり余計な事をしなければ確実に逃げられるってことだ。


いくらアンティークヒューマノイドでも複数の事をしながら母艦まで制御するのは流石に不可能。


ナディア中佐もそれは分かっているだろうから逃げるという選択肢しかないわけで。


はぁ、船長には今度詫びておくか。


「仕方がない、三機を撃墜後ルスク・ヴェガスまで撤退を・・・」


「ちょっと!新手が来たわよ!?」


「くそ、この忙しいって時に!」


テネスの声に反応してメインモニターを見ると宙賊機三機の後ろから複数の宙賊船が追いかけてきていることに気が付いた。


いや、正確には例のゴーストシップ用センサーにのみ反応している。


という事はこいつらもそれをもう使っているというわけで・・・まったく、情報の流出ってのはあっという間だな。


そんなことを考えていた次の瞬間、追加で追いかけてきたやつらが攻撃を開始し見事追いかけてきた三機を撃墜してしまった。


「はい?」


まさかの同士討ち。


いや、あれは確実に狙った落とし方だろう。


裏切り?


このタイミングで?


「マスター、緊急通信です。これは・・・」


アリスが返事をする前にメインモニターに相手の姿が表示された。


「よぉ!随分と楽しそうなことしてるじゃねぇか、俺も混ぜてくれるよな?」


「あんたは!」


モニターに映っていたのは、ガサ入れの時に手を貸したあの大男だった。

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