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35歳バツイチオッサン、アーティファクト(美少女)と共に宇宙(ソラ)を放浪する   作者: エルリア


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179.オークションで騒ぎが起きて

どうしたもんかと思いながらも、約束してしまったものは仕方がない。


さっきも言ったようにルスク・ヴェガス内ではお互いの素性は知らないことになっているので、もしバレたとしてもそれで通すしかないだろう。


仮に相手が宙賊の大物であれ約束を反故にするのはちょっと違う。


向こうは善意で話を持ち掛けてきたわけだし、こっちにもメリットのある取引をなかったことにするのはちょっとなぁ。


「ま、なるようになるだろう。さぁ、さっさと帰って・・・」


「ガサ入れだぁぁぁぁぁぁ!」


やることもやったしさぁ戻ろうと思ったその時だ、突然黒服の男が叫びながら入口から走ってくる。


その途端に窓に金属製のシェードが降ろされ入り口は強制的に封鎖、灯りが落ちたかと思ったらすぐに赤い非常灯へと切り替わった。


「アリス」


「少しお待ちください・・・なるほど、ガサ入れですね」


「いや、それは分かる」


「つまり中の宙賊を抑えようと警備が突入してきたってことよ」


「それって私達も捕まるという事ですか?」


「どうやら今回は素性の悪い方々を捕まえに宇宙軍が突入して来たようですね、ですので我々は特に問題はないでしょう。私達のような一般人の他に貴族などもいますから、一時的に拘束はされてもインプラントデータを見れば即釈放です。まぁ帰宅が1時間ほどずれ込む程度でしょうか」


そのぐらいで済むのなら別に問題はない。


どうやら目的は宙賊、ということはあの人も標的になるわけか。


オークション会場もメンツがあるのか中々の防御態勢、おそらく秘密の脱出路的な物があるからそこから逃げるに違いない。


連絡先は交換すれど別に助ける義理はないし、何事もなかったようにしておけばいいんだが・・・。


何だろうこのモヤモヤは。


宙賊はすぐに殺しても問題ない、そういう感覚で狩り続けていたくせにまともに話をした瞬間にこれとかおかしな話だ。


思案すること数秒、俺は一つの結論に達した。


「アリス、宇宙軍の突入は?」


「無線を傍受した感じですと五分後です」


「・・・十五分に出来るか?」


「ちょっとアンタ正気!?」


「無線をジャミング、更に工具を一時的に故障させればそれぐらいは」


「痕跡は残すなよ」


「もちろんです」


たとえ相手がだれであれ、好感を持った人間が困っているのは助けたい。


それにあのコロニーから出てこの旅を始めた時、自分の好きなようにするって決めたからな。


アリス達にはエントランスで待機してもらい、俺はそのまま会場へ。


パニックまではいかないけれども参加者があちこち入り乱れている。


「テネス」


「聞こえてるわ、全く困った主人を持つと大変よね」


「残念だがあきらめてくれ。脱出ルートは?」


「今使用しているところがあるけどそっちは宇宙軍が張ってるみたい、別ルートを案内するわ」


「了解、デバイスに送ってくれ」


主人第一主義のアリスはともかくテネスもなんだかんだ言いながら手伝ってくれるんだよなぁ。


デバイスにデータが送られてくるのを待ちながら、大騒ぎの会場からあの人を・・・デカいからすぐにわかった。


「カイロス!」


急に名前を呼ばれハッと顔を上げたその人は俺を見るなりニヤリと笑った。


「お前、俺が誰だかわかって戻ってきたのか?」


「ルスク・ヴェガス内ではどうでもいい話だろ。誘導に従って逃げたらアウトだ、別ルートがあるからそっちを使え」


「相手は?」


「宇宙軍だ、俺の仲間が十五分突入を遅らせる。それまでに逃げられるか?」


「それだけあれば十分だ」


ちょうどいいタイミングでテネスからルートが送られてきたので、履歴の残らないデータ移行を使い彼らの仲間に転送した。


お仲間も中々厳つい面々、この見た目で逃げ切れるのか?


「気をつけてな」


「悪いが例の件はまた後日ってことにしてくれ、それと二重水晶だが時間稼ぎの礼として受け取ってくれ」


「いいのか?」


「次に銃を見せてもらう時にでも見せてもらうさ。じゃあな、傭兵野郎」


「じゃあな、宙賊」


どうやら相手も俺の正体を知っていたらしい、それでも普通に話しかけて来る所が嫌いじゃないんだよなぁ。


大混雑のオークション会場、係の誘導を無視してエントランスに戻るとアリス達がお行儀よくソファーに座って待っていた。


「お待たせ」


「案内出来ましたか?」


「あぁ、代わりに落札できなかった二重結晶水晶を譲ってくれるってさ」


「500万ヴェイル分の価値があるという事ですね」


「そういう事らしい。向こうも俺の正体に気づいていたみたいだ」


「マスターはご存じないかもしれませんけど、宙賊の中ではなかなかに有名人ですよ?」


「そうなのか?」


「ご本人の指揮する作戦には直接関係していませんが、撃墜数は中々のものですから」


それならば有名なのは俺よりもイブさんの方だと思うが、傭兵登録が俺になっているので必然的にそうなるんだろう。


宙賊からすれば嫌な相手、という事になるらしい。


いずれどこかで相まみえることもあるかもしれないが、その時はその時だ。


お互いにそれぞれの立場で戦い、その結果命を落とすことになっても仕方がない。


もちろん死ぬ気はさらさらないけどな。


「でもさ、本当に逃がしてよかったの?」


「俺がそうしたかったんだよ。それに欲しかったものも手に入ったし、問題ない」


「そりゃ500万ヴェイルは確かに大きいけど、あの宙賊を捕まえたら懸賞金1億よ?」


「「「一億!?」」」


「え、言ってなかったっけ?だからそれっぽっちで逃がしていいのかなって思ってたんだけど・・・あれ?私やっちゃった?」


いや、やっちゃったわけじゃないんだけど・・・マジか、彼一人で一億もの懸賞金がかけられてるのか。


知ったからと言って最後には逃がしていたと思うけど、これは絶対にナディア中佐には言えないよなぁ。


しばらくして外のシャッターが破られ、銃を持った兵士たちが突入してくる。


「動くな!」


「動く気はない、好きにしてくれ」


「参加者をエントランスで確保!全員突入!」


アリスの事前情報で俺達を探しているわけじゃないのは分かっているので、銃を突きつけられても動揺することなく静かに座り続ける。


それが向こうには不思議だったのか、銃を突きつけた兵士がゆっくりとこっちに近づいてきた。


「お前、なんでそんなに冷静なんだ?」


「撃つ気があったら脅さずに撃ってるだろ?それをしないってことは殺されないってことだ、それならば静かに座っているだけでいい」


「・・・名前は?」


「トウマだ、心配ならインプラントデータをみてくれ」


「おい!スキャナもってこい!」


イブさんもローラさんも落ち着いたもの、普通は騒ぎそうなもんだがうちのクルーはほんと肝が据わってるよなぁ。


まぁ、宙賊基地に乗り込んだりしているからかもしれないけれど、この程度でビビる人達じゃじゃなかったか。


その後、インプラントデータを確認され事態が収拾するまでその場に待機、アリスの言うように一時間ほどで無事釈放された。


テネス曰く彼らも無事に逃げおおせたらしい。


やれやれ、大変なことになってしまったけれど普通じゃ手に入らないものが手に入ったわけだしそれで良しとしよう。


後は落札品を貰うだけだが今回の一件でそれも少し遅れるらしい。


ルスク・ヴェガス、ここを離れるのはもう少し先になるかな。


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