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35歳バツイチオッサン、アーティファクト(美少女)と共に宇宙(ソラ)を放浪する   作者: エルリア


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122.思わぬ人と一緒に仕事をして

本物のゴーストシップを見た翌日、俺達はいつものように輸送ギルドの仕事をこなしていた。


本物を見て大興奮のナディア中佐だったが、アリスのハッキングがうまくいかない現状を目の当たりにしかなりの衝撃を受けたらしい。


事が進む前になんとしてでも接続方法を発見したいところなのだが中々難しく接近時間はわずか数分、その後いつものように移動するのをただ見送ることしかできなかった。


まぁ時間はまだあるんだしいろいろと試してみよう、そんな感じでノヴァドッグへと引き換えしその日は俺達と同じホテルに宿泊した。


てっきりホテルで休むと思っていたナディア中佐だが、何を血迷ったのか仕事をしているところを見学したいと言い出し何故かアリスも気前よくそれを許可。


傭兵業ならともかく輸送の仕事を見て何が面白いのかと思いながらも断る理由もないので一緒に輸送ギルドへ、下手に紹介するとめんどくさいのでとりあえず仲間の一人という事にしてハリアさんからの仕事を引き受ける。


相変わらず仕事ができます!って感じの雰囲気を醸し出しているハリアさんだが、その日は珍しくパンツスーツ姿だった。


あの魅力的な膝が見られないのは非常に残念なのだが何かあったのかを聞くほど親しい間柄でもない。


「以上が今回の依頼内容となります。そこまで大きな荷物ではありませんが、かなりの精密機械ですので出来るだけ慎重にお願いいたします。そういえばあの船はもう返されたんですね」


「あぁ、船の修理が終わるまでっていう約束だったからな」


「素晴らしい船だっただけに残念です」


「あれを動かせるパイロットを探せばいいじゃないか」


「そう簡単に見つかるものじゃないですよ。あの年式の船はもう数えるほどしかありませんし、そもそもオートパイロットが主流になっている中で手動にこだわる人も少なくなりましたから」


用意したエドさんも白鯨を動かせることに驚いていたぐらいだ、まさか出来るとは思っていなかったんだろうけどそのおかげでいい仕事をたくさん回してもらえた。


とはいえわざわざあの年式の船を買うぐらいなら大型船を買った方が効率もよくなるのだが、生憎とそこに注力する予定はない。


依頼を引き受け、依頼主の待つハンガーへ移動。


厳重に梱包されたコンテナを積み込んで目的の船が待つ宙域へと移動する。


「なるほど、貴方達はこういう仕事をしているんですね」


「別に面白いもんでも無いだろ?ただ右から左に荷物を運ぶだけだし」


「その仕事が私たちの生活も軍の運営も支えてくれていますから、ありがたい話です」


「そりゃどうも。傭兵の仕事をしてもいいけど、ここは比較的安定しているからなぁ。ぶっちゃけ儲からないんだ」


護衛の仕事はいくらでもあるけれど、拘束時間が長い上に儲けは少ないので荷物を運ぶ方が何倍も儲かる。


特に俺達はハリアさんから仕事を回してもらっているので、通常よりも高い報酬で仕事を引き受けているから余計にそうなってしまうのだろう。


「あの戦績を考えると傭兵としての仕事がメインだと思っていましたけど、あの時の話は嘘じゃなかったたんですね」


「なんだ、信じてなかったのか?」


「宇宙軍のトップパイロットと肩を並べる撃墜数ですから、それがただの輸送業者だなんて誰が信じると思いますか?」


「んー、まぁ実際ここにいるからなぁ」


「イブさん、今からでも遅くありません私たちの所で働きませんか?お給料はここの二倍、いえ三倍は出しますが」


「すみません、私はトウマさん達と一緒に行くって決めているんです」


「残念、フラれてしまいました」


二割り増しとかなら値上げを検討しようと思ったがまさかの三倍、それでもイブさんは残ると言ってくれたので内心ホッとしている。


そんなやり取りがありながらも三時間ほど飛行すると予定宙域に留まっている輸送船を発見、向こうの指示に従って宇宙空間にコンテナを放出してその場を離れる。


後はむこうのクルーが何とかしてくれるのでこれにて仕事は終了だ。


簡単そうに見えるけれどソルアレスの優れた姿勢制御システムとローラさんの操縦技術があるからこそできる仕事、今度はローラさんまで引き抜かれるんじゃないだろうかとひやひやしたがどうやらそれはないらしい。


「あら?このコンテナは出さないんですか?」


「あぁ、これは大丈夫だ」


「随分と大きいコンテナですね、名義は・・・例のシップメーカーですか」


「修繕を含めて色々と便宜を図ってもらったんでね、その残りみたいなもんだ」


ハンガーに残されたコンテナを見つけたナディア中佐、思わずドキッとしてしまったが必死に顔に出さないようにしてごまかしておく。


まさかこの中に例の無人機が入っているとは流石に言えない。


アリス曰く船そのものは直ったけれどもまだ準備ができていないそうなのでこいつが動くのはもう少し先になるだろう。


「これだけの船を作るんだからいい職人が多いんでしょう。はぁ、何で宇宙軍にはいい人材が来ないんでしょうか」


「待遇じゃないか?」


「これでも随分改善したんですよ?給与もそうですし、仕事もしないでふんぞり返っている使えない人も一掃しました。他の宇宙軍基地よりも働きやすいと思うんですけど」


「あとは宇宙軍自体のイメージだろうなぁ。もっと働きやすい環境っていうか雰囲気があれば人も増えると思うぞ」


「働きやすい宇宙軍ですか、我々の目指すところと矛盾はしていますが確かにそう変わるべきなのかもしれませんね」


怖いイメージがあるから人が集まらない、だが怖がられないと宙賊に舐められてしまう。


なんとも難しい問題だがその両方を目指すのがこの人の仕事、今回は舐められないようにするためにここにいるわけだしそっち方面で頑張ってもらわなければ。


「なんにせよ、宇宙軍のイメージアップの為にも今回のゴーストシップは何としてでも解決しなければなりません。先方は動き出しているんですよね?」


「傍受した内容によれば、ハッキングにより流出したゴーストシップの技術を使ってよからぬ連中が試作機を作ろうとしているのだとか」


「流出?横流しの間違いじゃないのか?」


「流出した技術を使ってそれに対処する兵器を製造、ノヴァドッグにいるすべての住民とそこに属するシップメーカーや輸送業者を全面的に守るという声明を出す・・・というのがルーク様の狙いのようです。裏で彼らがつながっていることは確実ですが、残念ながら確固たる証拠は出てきておりません」


俺達がゴーストシップの対処に手をこまねいている中でも状況は着実に変化、開発者の思惑とは違う方向へと動き出している。


単一化による弊害を啓発するはずが気づけばその技術が人を傷つけようとしている、それを知った彼ら慌てて止めようと動いたとしても、動き出した歯車はだれにも止められないだろう。


「せめて何か尻尾でも出してくれればいいんだが」


「その心配には及びません、宇宙軍がいればそのような連中一網打尽にしてご覧に入れましょう。専用の兵器など不要、そう知らしめるためにここに来たんですから」


「確かにそうなんだけど・・・アリス、マジで大丈夫なんだよな?」


「時間はまだあります、何とかなりますよ」


「軽いなぁ」


「緊張した新兵よりも落ち着いた熟練兵、案外そういう気楽な方がうまくいくものです」


まさかのナディア中佐までアリスの意見に賛同してしまった、そりゃ緊張しすぎるのはよくないかもしれないけど解決方法が見いだせないままで本当に大丈夫なんだろうか。


そんな俺の不安をよそに、ナディア中佐を含めた女性陣は何やら楽しそうに談笑を始めてしまった。


ノヴァドッグ全体を巻き込む騒動が始まるまであとわずか、果たして作戦はうまくいくんだろうか。

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