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35歳バツイチオッサン、アーティファクト(美少女)と共に宇宙(ソラ)を放浪する   作者: エルリア


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117.とある人に連絡して

 ゴミ捨て依頼の最中に遭遇したゴーストシップ、これがソルアレスなら撃墜だなんだと色々できたはずだけど、結局取り逃してしまった。


 追いかけようにも船が重すぎて追いかけることが出来ず、船の死角に入られたあと姿が見えなくなっていた。


 レーダーも効かず肉眼でも確認できないとなればもうお手上げ、まさか本物に出会うとは思っていなかったがある意味その恐ろしさを目の当たりにすることができた。


 アリスの仮説によるとゴーストシップそのものは悪さをするために出てきているわけじゃないようだが、あの技術が他の船に転用されるのは非常にまずい。


 そうなる前に急ぎ対策を・・・と色々と考えも今の仕事は待ってくれないので予定通り船内のゴミを焼却プラントへと運び込み、しっかりと仕事を終えてからノヴァドックへと帰還した。


「皆さんお帰りなさい!聞きましたよ、ゴーストシップに遭遇したそうですね」


「ん?なんでそれを知ってるんだ?」


「近くにいた船から聞いたんです、白鯨は目立ちますから」


「そういえば近くに何隻かいたしな、つまりあれを見た人がほかにいるのか」


「相変わらずレーダーにも映らなかったそうです。ほんと、どうなっているんでしょうね」


「さぁなぁ」


 輸送ギルドに到着して早々出迎えてくれたハリアさんがいきなりゴーストシップの話をしてきた時は驚いてしまったが、この手の情報はすぐに広がるので不思議ではない。


 それでも俺達の顔を見るなりねぎらいの言葉ではなくそっちの話ばかりしてくるのはちょっとなぁ・・・。


 この場でどういう仕組みかをバラすわけにはいかないのでとりあえず知らないふりをしつつ報酬をもらい、静かにホテルへと戻った。


 それなりの儲けになったし依頼が終わったら買い物の続きを楽しむという話だったのに全員のテンションは低いままだ。


「はぁ、まさかあんな船とはなぁ」


「レーダーに映らないってあんなに怖い物なんですね。仮にソルアレスだったとしても撃墜できるかどうか・・・」


「何もないところにいきなり現れるんだもの、操縦している方としてはたまったもんじゃないわよ。どの辺りを飛行しているかもレーダー任せにしてるところあるし、あんなのを使う宙賊が出てきたらたまったもんじゃないわね」


 実際に遭遇したうえでの感想がこれ、あのイブさんでさえ当てられるか不安な相手と戦う日が来たらと思うとゾッとしてしまう。


 もちろんいきなり宙賊にというわけではないだろうけど、世界的に大問題になるのは間違いない。


「アリス、もし仮にアレに対処するとしたらその単一化とやらを変えなきゃダメなんだろ?そんなことできるのか?」


「変えること自体は簡単です、ですが一般普及しているのと別の規格に合わせると今の規格に即した船を感知できなくなってしまいます。二つの規格で同時にスキャンできるようになれば問題はなくなるわけですが、いつ出てくるかもわからない相手のためにそこまでできるのかと聞かれると一般的には難しいでしょう」


「ふむ、つまり一般的にはできなくても()()()にはできると」


「期待していただきありがとうございます」


「で、実際どうなんだ?」


「もちろんできます。要はジャミングされない別規格のスキャンを当てればいいだけですので単一化される前、それこそ大昔の規格を持ち出せば何とか。もしくは単一化された規格に対するジャミングをジャミングしてやればいいんです」


 何やらややこしいが出来るのであれば安心だ。


 ジャミングのジャミングか、それなら規格を変えたりしなくてもいいので現実的かもしれない。


 もっとも、そういう対策ができるのも理屈がわかっているからであってヒントが無かったらそれも難しかっただろう。


「因みにそれを導入するとして、ソルアレスの修理はいつ終わるんだ?」


「予定ではあと一週間と聞いています」


「一週間か・・・それからすぐに自己進化システムを使うんだよな?」


「そうですね、一応綺麗に作ってはいただいてますがエンジンなどは工事に出す前に従来型に変更しましたので当初の形へと戻す必要があります。その際にジャミングジャマーを組み込めばゴーストシップを発見できるようになるはずです。それと一緒に例のブツも直すつもりですですが、船の一部と認識させるために少し手を加える必要はあるかと」


「それなんだが、本当にバレてないんだよな」


「コンテナの開封には細心の注意を払いましたので抜かりはありません。念のためコンテナの信号が消失するまで疑似信号を流し続けましたので向こうにバレることはないでしょう」


 そう、焼却プラントに諸々のゴミを捨てに行った俺達だが例のコンテナだけは廃棄しなかった。


 正確にはコンテナの中身だがそれだけを白鯨の中に残してコンテナを廃棄、アリスが細心の注意を払ってジャミングとハッキングをかけたのでゼルファス・インダストリーにはバレていないはずだ。


 アリスが持ち帰ると言い出した時は故障でもしたのかと思ってしまったが、彼女なりに色々と考えた結果らしい。


 それでもコンテナの中にしまわれていた試作機は完全にバラバラ、これをどうやって直すのかと思っていたのだがソルアレスの自己修復・自己進化システムを利用することで復元できるらしい。


 ほんと何でもありだな。


 ともかく、ソルアレスが戻ってくれば試作機の復元だけでなくアリスの言うジャミングジャマー的な物を搭載することもできる。


 なんにせよ修理が終わるまでは何もできないので引き続き仕事を続けるよりほかにない。


「中佐みたいに目を付けられるのだけは勘弁してくれよ」


「あれは不幸が重なっただけで本来であればバレるはずが・・・そうか、それですよマスター!」


「ん?」


「あのルークとかいう人がマスターに接近してまでゴーストシップの情報を流したかった先です。なるほど、いいところに目を付けましたね」


「すまん、わかるように説明してくれ」


 一人でテンションマックスになり一人で納得するアリス、俺も含めた三人は全く分からずその様子をただ見守ることしかできないでいた。


 頭がいい人は一人で悩んで一人で解決するからそうじゃない人には全く伝わらないんだよなぁ、困ったもんだ。


 結局その日は答えを教えてくれず、準備があるからとどこかに行ってしまい迎えた翌日。


 いつものように白鯨に乗り込んだ俺達だったが出発前にアリスがどこかに連絡を入れている。


「誰に連絡するのかいい加減教えてくれないか?」


「心配しなくてもすぐにわかります・・・っと、つながりました」


 オペレーターシートで何やら忙しそうにしていたアリスだが、通信がつながっただけなのに委託満足げな顔でこちらを振り向いた。


 はてさていったい誰に繋げたのやら・・・。


「おや?逃げだしたくせに直接私に連絡するなんて、一体どういうつもりですか?」


 白鯨のスピーカーから聞こえてきたのはまさかの人物。


 メインモニターが無くて本当によかった、じゃないとものすごい顔で睨まれていたことだろう。


 怒りのこもった声を聴きながらそんなくだらないことを考えてしまった。

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