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第14話 配下


 ヤンキー戦隊との初戦闘に勝利し、めでたく情報源をゲットした俺は、さっそく不良界隈の情報を聞き出していた。


 しかし、案の定というか予想通りというか、ヤンキー戦隊はその辺の界隈にあまり詳しくなかった。というか、よくよく話を聞いてみると、詳しくないどころかそもそもヤンキーですら無いという事が分かった。


 なんでも元々5人は定時制の高校に通っており、学校までの暇つぶしとしてコンビニでたむろって居ただけだったのだと言う。


「その割には態度が悪かったと思うが?」


 俺のもっともな疑問にレッドは気まずそうな顔をして答える。


「高校デビューで髪染めたら段々態度までデカくなっちまって…。殴り合いなんてしたことないっすけど、ガキが相手ならいけると思って」


 この様である。


 他の面々も大体同じような理由で、結局のところコイツらは不良の雰囲気を楽しんでいただけの拗らせ5人組だった。


 この喧嘩にもってこいのロケーションは、地元でただ土地勘があってヤンキーといえばの場所をチョイスしただけだったのだと言う。


 見掛け倒しも見掛け倒し。


 つまり俺は喧嘩慣れしていないヤンキーでは無く、喧嘩なんてした事のないヤンキーもどきを相手にしてたって訳だ。


 喧嘩も強くない…情報も持ってない…今日の苦労は一体なんだったんだ。無駄足を踏んだだけじゃないか。


「はぁぁ…」


 溜め息をついても状況が好転しない事はよく分かっているが、吐かずには居られなかった。


 この事実に暫し落胆していると、俺の機嫌が斜めな事を敏感に察知したイエローが慌てて補足し始めた。


「あ、あの!俺らは喧嘩は強く無いですけど、役には立てると思います。土地勘もありますし、こう見えて俺ら結構実家太くて金もあるんで…だから、写真だけは…どうか、お願いします」


 どうやら早速担保の効果が出始めてくれたようだ。イエローに同意を示すようにブンブンとヘッドバンキングさせて頷くメンバー達。


「ふむ」


 俺は、落胆するのも程々にイエローの言ったことを改めて考えてみた。すると、思ったより状況が悪くない事にすぐに気がついた。


 いや、これは中々の当たりなのでは?


 軽く考えただけでも、情報を得る為の手駒として割り切れば中々の逸材だというのがよくわかった。


 情報がないのならば持って来させれば良いんだ。なにも情報を持ってる奴を探し当てる事にやっけになる必要は無かったんだ。


 俺とした事が…バカの相手をし過ぎて、思考まで引っ張られてどうする。


 腕っ節の件は問題ない。手を出すのはあくまで俺だ。むしろ半端に強いと俺の楽しみを奪われかねないから弱いのはこの際加点だ。


 そして、コイツらには土地勘もあり、金もあり、おまけに学校のない昼間はやる事がなく暇を持て余している。


 元より弱い事が判明した時点で喧嘩相手としては期待していなかった。おまけ程度で情報源としての役割を期待していたが、蓋を開けてみればこれ以上ないくらいの人材だ。


 そうと決まれば初めのお仕事は決まりだ。


「おいレッド、不良界隈の事は詳しくないんだよな?」


「はい」


「なら情報を探れ。喧嘩が強い奴、規模のでかい不良集団、たまり場…なんでも良い。俺が手を出しても警察やらが介入しなそうなのが好ましいが、ひとまずは何でもいいから持ってこい」


「分かりました」


 ひとまずはこれで様子見だな。コイツらがどれだけ役に立つかは正直分からんが、俺の元に写真がある限り、必死に動いてくれるはずだ。


 たとえ成果がイマイチでも、俺がなんの当てもなく探すよりはコイツらに任せた方が幾分マシというものだろう。吉報は引き続き鍛錬に当てて待つとしよう。


 その後、俺はレッドのスマホから自分のパソコン宛に担保の写真と共に他のメンバーのメールアドレスを送った。


「よし、これで情報共有は問題ないな!」


「「「「「…」」」」」


 俺のパソコンに写真が送信されたことでとうとう絶望したようだな。5人の表情が一層暗くなった。無理もない、これで本当に俺に生殺与奪を握られたのだからな。


 まぁ、起きてしまった事は仕方ない。物事は成るようになるものだ。こういう運命だと思って、精一杯働いてほしい。主に俺の為に。


「しかし、アレだな。ヤンキー戦隊ってのも相応しくない名前だったな」


 せめてもの心遣いでこの場に流れる暗い雰囲気を変えようと適当に出した話題だったが、口に出してみると結構的を得た発言だった。


 ヤンキー戦隊。こいつらの実情を知らない奴からしたらピッタリなネーミングだろうが、知った今となっては違和感がものすごい。なんせ、ヤンキーじゃないんだもんな。


 ヤンキーでもない奴にヤンキー戦隊なんて強そうな呼称は少々酷だな。俺の手駒となった事だし、不必要に絡まれて俺に回る情報が滞るのは好ましくない。


 まぁ、「オレ達はヤンキー戦隊!」なんて誰も名乗らないとは思うが、問題はそこじゃない。俺が気になるかどうかだ。


 それに今後コイツらとは情報を共有する事になるんだ。相応しくかつ呼びやすいチーム名くらいあった方が何かと便利というものだろう。多分。


 ここは一つ改名してあげるとしよう。

 元より俺が勝手に呼んでいた名前だったし、誰も認知していないが、再出発ということで景気付けには丁度良い。ちょっと長いし。


「ヤンキー戦隊改め、お前らはこれからカラーズと呼称しよう」


 我ながら安直だがこういうのはシンプルが1番だ。変に奇をてらうと後々黒歴史となる。そういうものだ。


「カラーズの諸君、精々俺の為に死力を尽くしてくれ。頑張りようによっては、担保も削除してやる」


 俺から出た削除という言葉に希望を見出したのか、途端に目を輝かせる面々。そして、大きな声で返事をした。


「「「「「頑張ります!」」」」」


 うん、やる気を出してくれて何よりだ。

 やっぱり、上に立つ者として配下のモチベーションくらいは用意してやらなきゃな。


 でも、これ、所詮口約束だからな。

 俺、覚えるのも得意だけど、都合良く忘れるのはもっと得意なんだよな。


 どうかな〜、今日の事は…。

 どこまで覚えていられるかな。

 きっと、手駒が出来たところまでは忘れないんだけどな。


 俺がポロっと気まぐれに溢した言葉を、未来の俺が覚えてられるかな。生まれた時からの記憶はしっかり覚えてるんだけどな。


 んー、あんまり自信ないな。

 うん、自信ない。


 仕方ないな、俺まだ小学生だし。









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前世がない純粋な小学生‥なら忘れてもしょうがないな!
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