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第1話 世界の始まり


「またいつか」


「おう」


 そう言って二人は別の道を歩き出した。母と妹を殺した魔王を倒すために。

 それは髪も体格も声も似ている双子の物語


「とりあえず道なりに進むか」


 双子の兄シン・シルヴァと別れた後、周りに草木が生い茂る道を進んでいる。

 魔王についての手がかりを探すためとはいえ、一人ってのは案外寂しいもんだ。それが心地いい時もあるが。


 俺が歩いている森はウルガブの森と呼ばれるところだ。

 モンスターが生息してはいるが、まだ浅いところだし出ては来ないだろう。


 そう思っていたんですけどね……


「囲まれたか……」


 俺を囲んだのはガブルフという四足歩行で銀色の毛並み、鋭い歯が特徴的なモンスターだ。

 集団行動で夜には凶暴化するという。


 遭遇するのが昼頃でよかった。

 ガブルフは夜こそ危険だが昼は初心者向けのモンスターだ。

 そして俺は集団戦向きの固有魔法を持っている。


「ハァ……」


 吐いた息とともに辺りは冷えガブルフの群れは凍りついた。こんなもんだろ。


 固有魔法といっても名前はついてないし、それを使った技名すらない。

 似た固有魔法はあれど同じものはない。

 継承していくような魔法はあるけど。


 そして俺の固有魔法は”︎︎ ︎︎ ︎︎"︎︎氷︎︎ ︎︎ ︎︎"︎︎だ。ただのね。

 といっても出来ることはかなり多い。

 相手を氷漬けにしたり、盾や剣を造形する、冷やすとか溶かして水にするとかね。

 汎用性は高いので結構気に入ってる。

 なにより、双子で違うっていうのがいい。


 固有魔法は1つとは限らない。

 実際俺もあと1つ持ってるし。

 基本的には︎︎ ︎︎ ︎︎"︎︎︎︎ ︎︎氷 ︎︎"︎︎を使うけどね。


 ガブルフを倒した後、素材を回収してまた森の中を歩いていく。


 そこからだいたい半日も歩けば日も暮れ、月明かりが葉の隙間から差し込んでくる。


「そろそろ寝るか」


 夜は基本的にモンスターは活発化するし森の中で寝るのは危険なんだけど氷のシェルターの中だし大丈夫だろう。

 この森にはガブルフぐらいしかいないし。


 そうして俺の意識は徐々に薄くなっていった。


 特に何事もなく夜が明けた。

 氷のシェルターには傷1つ付いていない。

 結構運が良かったのかもしれない。


 昨日と同じように森の中を進んでいく

 森も深くなってきて道中で何度かガブルフに襲われたが問題ない。

 この調子で森を抜けたいな……


 そしてまた夜である。

 特にすることもないし寝るか

 そう思っていた時、煙の匂いがした。

 遠くには光が見える。

 嫌な予感がしながらも発生源に向かって走り出した。


 煙の匂いが近づくにつれて濃くなっていく。

 きっと火事だ、俺の魔法なら消火できる。

 そう思いスピードを上げる。


 たどり着いた先で見たものは地獄だった。


 ひとつの村が火の海になっていた。

 男は切りつけられ血を吹き出し、女、こどもは手足を縛られ連れられている。


「金になりそうな奴は片っ端から捕まえてこい!!」


 男の声が響く。

 おそらく人身売買を生業にしている盗賊達がこの村を襲っているのだ。


 この村は獣人族の村だから。


 連れられている子らにガブルフのような尻尾と耳が生えていた。普段はとても美しいだろう。

 だが、毛並みはボサボサになり全身には火傷やぶたれて出来たアザがあちこちに見える。


 獣人族の戦士であろう者達は今も盗賊達と交戦中だ。

 状況は把握したしすぐに加勢しよう。


 そうして素早く駆け出す。

 魔力による身体強化で俺の身体能力は約十パーセントほど上がっている。

 氷による剣を創り出し目の前にいる盗賊に縦に振りかざす。


 当然、戦い慣れしてる盗賊はこの攻撃を避ける。

 そして俺に横からの斬撃を喰らわせようとするが、遅い。

 既に創り出された氷のゴーレムによって殴られる。そして倒れる。

 氷って結構硬いからね。


「加勢に感謝する」


「たまたま通りすがっただけですよ」


 これで獣人族の方にも味方だと判断された。

 あとは盗賊の数を減らしつつ、火の消火をしよう。

 そう考えていた時、誰かが俺の頭上を通り目の前に着地した。


「ロゼリー!!なんで出てきたんだ!隠れてい ろと言ったはずだ!!」


「みんなが闘っているのに私だけ隠れてやり過

ごす訳にはいかないよ。お父さん!私も闘う」


 どうやら感謝を述べてくれた獣人の娘らしい。

 闘えるのだろうか。

 俺よりは歳下に見えるが。

 でも覚悟はあるように見えるし、なにより戦力が1人でも増えるのなら非常に助かる。


「ダメだ危険すぎる。お父さん達だけでなんと

かなるから大丈夫だ」


「彼には助けてもらうのに、私はなぜダメなの?歳だってほとんど違わないはずだよ…」


「ダメと言ったらダメだ。隠れてなさい」


「そんなこと言われても……もう、隠れるつも

りなんてないけどねッ」


 その言葉と共に少女は駆け出し、盗賊達に向かっていく。


 身体強化にしてはスピードが速い。俺よりも。

 獣人は人間よりも身体能力は遥かに上なのが関係しているのだろうか。

 それとも彼女の身体強化が優秀なのか、固有魔法によるものなのか……


 数を順調に減らしてはいるが、さすがは盗賊。

 一筋縄ではいかない。

 こちらも切り傷や火傷を負って消耗してきている。


 敵の親玉がまだ残っているのが唯一の不安要素だが、どうしたものか。

 親玉を倒すことが出来ればこの状態を大きくひっくり返すことができるだろう。

 それが出来ない。獣人族の戦士達が束になってかかってもそれをたった1人で軽く捌いている。


 人間がだ。


 それほどまでに親玉である彼が強いということを示している。

 迂闊に手を出せば負けるのはこっちだ。

 だから慎重になって周りのやつらを倒していくだけで精一杯だ。


「ウガァァァ」


 気付けば感謝を述べた獣人も背中を切りつけられて倒れている。

 これはかなり痛手だ。

 この人はこの村で1か2番目に強かったのではないだろうか。


 今こちらに残っている戦力は俺とロゼリーという娘と5人の獣人だ。

 非常に芳しくない状況である。


 そしてもう1つ悪いのがロゼリーが親玉に突っ込んで行っていること。

 大体の盗賊は片付けているしいいんだけどさ

 もうちょっと周りを考えて欲しいよね


「援護するぞ!」


「頼んだわ!」


 勢いよく駆け出すロゼリーに合わせる。

 彼女の戦闘中スタイルは殴る蹴るの武闘家スだ。

 それに対し相手は剣を持っている。

 つまり俺がとるべきサポートは相手の攻撃を防ぎつつ隙を作り出すこと。

 やってみますか。


「おいおい、俺とやんのかー?たった2人で?さっきまでの戦い見てなかったのか?お前らが俺に勝てるわけねぇだろ」


「そんなのやってみないとわからないでしょっ!」


 ロゼリーが大きく脚を振りかざす。右斜め上から来た蹴りをバックステップで親玉が避ける。すかさずロザリーの横腹目掛けて剣撃が飛ぶ。しかし、二人の間に氷のシールドを創りそれを防ぐ。


 その瞬間に頭上から氷のハンマーをお見舞いする。が、ハンマーは粉々に砕け散る。

 結構硬いはずなんだけど。


 ロゼリーは芸もなく殴る蹴るを繰り返して、その後隙を俺がカバーする。

 なるべく攻撃を継続する。


 このままだと相手も慣れてきて攻撃回数が増えてくる。

 そうなってしまえば俺達の敗北は明確だ。

 なにか不意になる一手を打たなければ。


「あぁもう鬱陶しいなぁ!」


 ロゼリーの腹に強烈な蹴りが入る。

 かなり吹っ飛ばされ、距離が空いてしまった。

 親玉がこっちを向いている。

 マズイな。


「特別に名乗ってやるよ。」


「興味無いで────


「俺の名はブエルゴだ!」


 言葉遮らないで欲しいな……

 名を名乗ると同時にこちらにものすごいスピードで近づいてくる。


 氷の剣でブエルゴの剣とせめぎ合う。

 一撃が重い。

 剣は破壊され頬を掠める。


 呼吸が苦しくなる。殴られた。

 みぞおちに入った。

 その場に座り込んでしまう。

 早く立たなきゃ、殺される。立て。立ってくれ俺の足。


 振り絞った力で地面の土をブエルゴに投げつける。


「ハァァァァァァッ!!」


 足で地面を抉りながらブエルゴが吹き飛ばされている。

 ロゼリーが殴ったのだ。

 頭から血を流しながら、今にも倒れそうな足取りで手を差し伸べてくる。


「……立てる?」


「あぁ。助かった」


 彼女は既に満身創痍。

 だから次で決めるしかないだろう。

 今攻撃を当てられたのはおそらく、奴の視界を土で塞いでいたからだ。


 奴の固有魔法は︎︎ ︎︎ ︎︎"︎︎︎︎ ︎︎目が良い ︎︎"︎︎とかだろう。

 だから何人もの獣人を相手にしても軽く捌き続けられたんだ。

 それを可能にする技力ももちろんあるが。


「次が最後の一手になる。わかってるな?」


「当然。全力の一撃をお見舞いしてやるわ」


 俺の戦闘スタイルを援護から近接に変える。

 氷の剣と鉄の剣が火花を散らす。

 上段、下段、左、下段と剣を防がれる。

 氷の兵士を創り、死角からの攻撃も試みる。


 ロゼリーは集中して力を溜めている。

 魔力の高まりを感じる。


 段々とブエルゴに焦りが見えて来た。

 予想以上に俺に手こずっていること、そしてロゼリーの一撃への恐れからくるものだろう。


 剣の重さは上がったがその分雑な行動が少し出てきている。

 それでも大きな隙となるほどのものは出てこない。さすがだ。


 気付けば周りの盗賊は片付けられ残るはブエルゴただ1人。火もほとんど消化され、縛られていた者達は解放されている。


 よかった──────。


 不意に足が滑り尻もちをついてしまった……

 血溜まりに足を取られたらしい。

 それを見たブエルゴはチャンスと言わんばかりにニヤけて、剣を大きく振りかざしてくる。


 思わず俺も口元が緩んでしまう。

 こんなに上手くいくとは思っていなかったから。


 振りかかる剣に合わせて、地面から氷柱を勢いよく伸ばし剣を弾く。

 それに伴い、剣は吹き飛び、ブエルゴの両手は上に上がり、大きな隙を生み出すことに成功した。


 当然、彼女がその隙を見逃す訳もなく、目にも追えないスピードでブエルゴの懐に潜り、

 全力の一撃を喰らわせることに成功した。


 その一撃はブエルゴを戦闘不能にし、地面を抉り、木々を揺らした。


「すごい一撃だな」


「あんたのおかげでね」


 盗賊達を退けることに成功し、多少の被害は出たものの、村の人々による迅速な対応で火は消え、村を守ることが出来た。


俺の一人旅は村を守ったところから始まった。

なんとなーく面白そうだなと思っていただけたら嬉しいです!!

これから話数を増やしていこうと思っているので

ブックマークや評価などよろしくお願いします!!

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