第12話 恐怖の片鱗
人工的な魔物の存在……今まで生きてきて聞いたことなど1度もない。そんな話題があれば強く印象に残るし。
でもどうやったら魔物なんて作れるのだろうか。見た目はともかく、動きや習性さえもドロンカゲそのものだった以上、なにかカラクリはあるだろう。それこそ魔法が関わっていそうだ。
「ねぇセン、なんで魔物増えてるの?」
「いや、俺に聞かれても……」
はっきり言ってまだ人工魔物が確定したわけでない。ただの一推測にしか過ぎない。可能性が俺の中で高いだけで。
ってか俺がなんでも知ってるみたいに思わないでくれ答えられなかった時の無能感すごいから。
「とりあえず、依頼達成はしたし外に出るか」
次の行き先も決めてないし、魔物の増加なんて俺たちごときで止められるはずもない。
魔物が増えていなさそうな方角に進むか……
「おい、あんちゃん」
「ん?あぁ腕相撲の人か。なんか用か?」
「次どこに行くか決めてんのか?決めてないんだったら、ガンザバーテ方面には行かない方がいい、絶対だ」
「ご丁寧にご忠告どうも、なにかあるんですか?」
「ドラゴンがいる。それも一匹じゃねぇ、今起きてる魔物増加と同じように数が尋常じゃねぇくらいに増えてやがんだ。いくらお前たちが強くても敵いやしねぇからおとなしくしとくんだな」
わーおドラゴン増えちゃってんだ……俺たちどころか大抵の奴らでも太刀打ち出来なくねそんなの。おとなしく忠告に従いますかね。
「そうさせてもら────」
「面白そうじゃない。次はそのガンザバーテとやらに行きましょう」
何言ってるのかしらこの子、相手ドラゴンだぞ?頭のネジぶっ飛んでんじゃねえの?
「てめぇ…人様がご親切に忠告してるってのに死にに行くつもりか?」
ほらほらそこかしこに包帯巻いてる既に満身創痍の人間を怒らせちゃダメだって。安静にしなくちゃなんだから
「旅に困難は付き物でしょ?そこ目指すに決まってるじゃない。それにドラゴンがいるってことは、そこに原因がある可能性は高いと思うわ」
「あのぅロゼリーさん、俺はまったり旅したいんですけどそこら辺どうなってます……?」
「そうだったのね知らなかったわ。次からそうしましょうか」
今変えるべきだと思うんだけどな…この若さで死ぬの嫌だぜ俺。
「死にてぇなら勝手にしろ。俺のご厚意を無下にしやがって」
「頼んでないもの、当然でしょ?」
これ以上喧嘩売るのはやめてッ
忠告してくれた人怒りで鼻息荒くなってきてるから、ブチギレる寸前だから
〜〜
ギルドの扉を開けて、外で待っていたステラとエウルと合流する。冒険者達の負の感情で重たくなっていた室内とは違い、空気がとても軽く感じる。
「どうでしたか?」
「依頼は無事達成出来たよ」
手元にある三万ルーナを見せびらかせながら達成報告を済ます。とりあえずブリセンドでの目的はこれで終わりだ。旅の資金は確保出来たし、後は行き先を決めるだけ……だけどもう決まったようなものだ。
「そして次の行き先は…ガンザバーテに決めた」
「ガンザバーテ……ってどんなとこなんだ?」
「さぁね。どんなとこかは知らないけど、聞いた話だと今はドラゴンがうじゃうじゃいるらしい」
それを聞いたエウルと「は?」と言わんばかりに眉を傾げている。普通はそーゆう反応するよね俺もそっち側だし。
「ドラゴンがいるなら別のところにするべきだろ頭悪いのかお前」
行き先を決めたのはロゼリーなのに、行き先を伝えた俺が責められているのは何故だろう。誤解をとかなければ。
「俺もそう言ったけどさ、この獣が困難な道行きたいとか駄々こねるから仕方なくなんだよね…恨むならこの獣人を恨め」
「お前かよ」とツッコまれつつエウルからのヘイトは見事ロゼリーに向けることに成功だ。筋違いで責められるのは些かモヤモヤするものでな。
「ドラゴンってそんなに強いんですか?」
ステラはドラゴンがなにか分かっていない様子で、エウルが何故行き先にどやどや言っているのか不思議に思っているようだった。
「俺たち四人がかりでもドラゴン一匹仕留められるかどうかだよ」
ドラゴンと対峙したことは無いが本で読んだことがある。ドラゴンは種類によって様々な魔力のブレスを吐き、数々の死線を乗り越えた剣士の一撃でなければ傷をつけることすらままならないと。
そんなのと正面からやりあえば無傷など到底不可能であろう。
ステラは考えに考え抜いたという感じで、ガンザバーテに行きましょうってちっちゃな拳を握って言いました。
え、まともなの俺とエウルだけ?
「ま、とりあえず旅に備えていろいろ物質買いに行くか」
〜〜
えー私は今ガンザバーテに向かう道にいます。普段は木々の少ない開けた道で、吹き抜ける風が気持ちいいのが特徴だ。なのに……ありえないくらいに魔物が多すぎる。いろんな魔物が大量発生しているとは聞いていたがここまでとは。
だが魔物の増加の呼応する形で、冒険者の数も多くなっている。中には統一された鎧を身に付けている姿もちらほら。
おそらくどこぞの騎士団とかその辺だろう。かなり連携のとれた動きで、魔物を処理していっている。あの数相手にしているというのに余裕を感じられるほどだ。感心感心。
「ちょっと!突っ立ってないで手伝ってよ!倒しても次から次へと出て来てキリがないんだから!」
「こっちも手伝ってくれ。僕の魔法は多勢向きじゃないんだ」
騎士団の統率のとれた動きに見惚れていると、ロゼリーとエウルからの支援要請が来た。よそ見をしすぎたせいで、俺たちの戦闘の全線は魔物の波に押し潰されそうだ。
申し訳ねぇと手でジェスチャーしつつ、すぐに範囲攻撃の準備に入る。準備と言っても、魔法を放つのに呪文や魔法陣は必要ないので、気持ちが八割だ。
迫り来る蟻型の魔物達に狙いを定め、自分の周りに氷の槍をどんどん生成していく。
槍と言うより氷柱に近い形だ。
その氷柱を魔物達に向かって放物線を描きながら飛ばす。降り注ぐ氷柱は容赦を知らず、慈悲なく魔物を沈めていく。
一撃で死ななかった魔物も中にはいたが、それは余すことなくロゼリー達が倒してくれたので良しとしよう。
「これ、ガンザバーテまでたどり着けるのかしら。途中で朽ちてる未来しか見えないんだけど」
「私が全部倒すので安心してください!」
ステラはロゼリーの呟いた不安に対して自信満々に答えてみせた。
「いくらステラでもこの数相手に一人じゃ、厳しいわよ」
「だからこその仲間だろ?助けあうんだよそういう時は」
一人でこの数相手はかなりの実力者でも困難に思えてくる。もっとも、めちゃくちゃ強いような人間に出会ったことがないので、想像の域は出ないけど。
その後も魔物を倒しては進んで倒しては進んでを繰り返していたが、期待していたほどガンザバーテに近づくことは出来なかったし、日も暮れてしまった。
「今日はここで寝るか」
見晴らしのよい平野でこの夜を過ごすことにした。見晴らしが良いので魔物に見つかりやすいが、こちらも視認して気付きやすいということで妥協した。
「ガンザバーテまで食料とか諸々持つか?」
「最悪魔物の肉食えばなんとかなるし心配すんな」
「え、あの蟻って食えんの?というか食えたとしても体が受け付けないんだけど」
「そんくらい我慢しろよ」
エウルとしょーもない話をして一日を終えた。
翌日、先日と同じようにガンザバーテを目指しつつ、道中の魔物を倒していった。ガンザバーテに近づくにつれて魔物の数は増えていくもんだと思っていたが、予想とは裏腹に魔物の数は少なくなっていった。
「こっち側はだいぶ少ないわね」
「そのほうがありがたいけどな」
近づくにつれて数が減少しているのはなんとも違和感を抱かずにはいられない。ロゼリーも違和感は多少なりともあるようで警戒を高めているようだった。
ドラゴンがいたというのを聞いたというのもあり、自然とドラゴンへの警戒を高めてしまう。
一体ならともかく、複数体となると一網打尽にされるだけだ。それは避けたい。
というか、魔物が多すぎてポーションやら食料やらが尽きかけてきているので、一体でも厳しいかもしれない。
そうならないように、俺はこの三人を守らなければならない。
まだ付き合いは水溜まりほどの浅さしかないが、それでもシンと別れてから、初めて出来た仲間だ。こんなところで失いたくない。
そう覚悟を決めてガンザバーテへの道を踏み進んで行くのだった。




