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第10話 転生者

 

「おーい君たちー!」


 後ろから声が聞こえた。振り返ってみるとそこには町長が駆けつけていた。


「君たち怪我はないか?なにも盗まれてない か?」


「おい、僕は誰も殺してないし、なにも盗んじ

ゃいないぞ。そんなに疑うなよ」


「お前は黙っとれ!バカ息子が!毎回毎回冒険

者を襲いやがって、こんなことしても何にもな

らんぞ」


 なんだなんだ話が見えてこないぞ?

 町長の息子?こいつが?似てるようには見えないけどな。


「すみません冒険者さん。あとは私の方で何と かしておきますので…」


「お気になさらず。それよりお前、早く俺の石 化解いてくれ、自由になりたいんだが」


「それは出来ない。僕はこの力を制御できてる

わけじゃないしね。でも、同時に石化させてお けるのは1人までだから、魔物とかに使えば解

けるぞ」


「じゃあそこら辺にいるドロンカゲにでもやっ とけ。動けないの気持ち悪いんだ」


「それは悪かった、呪いなんだこの力」


 呪いか……あまりいい響きじゃないな。

 どうにか解決してやりたい。


 おっ、体が動く。他の奴に呪いを使ったみたいだな。結構辛かったんだよな動けなかったし。魔法も上手く使えないし。二度とごめんだわ。


「ほら、いくぞエウルディス」


「引っ張んなよ痛てぇな」


 町長は怒ってはいるが、どこか嬉しい気持ちが滲み出ているようだ。まあ息子に会えたんだ、その気持ちは当然だろう。


「冒険者さん達ももう夜になるので、うちで休 んでいってくだされ。いろいろ話したいことも

あるでしょうし」


「お気遣いありがとうございます。お言葉に甘

えさせていただきます」


 町長の家に行く道中、エウルディスは大人しく歩いていた。さっきまで殺しにかかってきていたとは思えないな。


 ステラも今回の事で、一皮剥けて頼もしくなったし、気持ちも落ち着いているように見える。

 なにか思うとこがあったのだろうか。


 ロゼリーも町に来てからのモヤモヤがスッキリした、と言わんばかりの顔をしている。よかったね。


「ささ、上がってください」


 この家に来るのは2回目だな。もう来ることはないと思っていたが、こんなにも早くまた訪れることになるとは。人生はわからない。


「まずは謝罪を。うちの息子が本当に申し訳ご ざいませんでした。許されることではないのは

わかっています。ですが許してやってほしい。

こうなったのも、理由があるはずなんです。」


「許す許さないは考えてないですよ。冒険者や

ってたら、襲われることなんて日常茶飯事です

よ。」


 冒険者が依頼先で死ぬのなんて当たり前だ。

 それが魔物によるものでも人によるものでも。

 だから、怒ったり、恨んだりなんてことは絶対にしない。


「ありがとう…ございます。」


 まあ、ロゼリーやステラが殺されていたら、許すことはなかったかもしれない。でも、殺されたわけじゃない。結果よければ全てよしだ。


「あ〜それでですね、町長さん。お願いがある ですけどいいですか?」


「もちろんでございます。お力になれるのであ

れば、なんでもお申し付けくだされ」


 そう言うと俺はステラのほうを見て頷いた。


「えっと、私はこれからエウルディスさんと一

緒に、旅に出たいです」


 ……え、言うのそれだけ!?

 なんで一緒に行きたいと思ったのかとか言う場面じゃないの?

 町長さん固まっちゃってるし…


「あの……いいですか?」


「ああ、すまない。予想外のお願いだったもん

で少々驚いてしまった。私としては構わない が、君達を襲った張本人と一緒に居るというの は、気が重たくなりませんか?」


「たぶん大丈夫です!」


 そんな元気に返事しても、町長さんの困惑を加速させるだけだってステラさん…


「お前は良くても、氷使いと獣女はどうなんだ よ?それを聞かなきゃ僕は一緒に行くことは出 来ないぞ」


 ごもっともな意見だ。

 自分達に襲いかかってきたやつと旅をするなんて、普通に考えてありえない。だからたった一人の意見だけでは、意向を決定することはできないのは当然だ。


 俺としては、戦力が増えるのはありがたいし、エウルディスが根っこから悪いやつだとも思えないので、居ても構わない。


 ロゼリーはどうだろうか。

 戦力については考えてないだろうし、殺されそうになったこともあるから、否定的な意見を出しそうだな。


「俺は構わないけど、ロゼリーはどうだ?」


「……そうね、私も構わないわ」


 これは意外な結果になった。まさかロゼリーも賛成側だとは。ステラと同じように、なにか思うところがあるのだろうか。


「じゃあ決まりですねエウルディスさん!私た ちと一緒に旅に出ましょう!」


 新しくエウルディスが加わることが決定した。

 戦闘面では少し頼らせてもらおう。


「もう夜も遅いですし、うちに泊まって行って ください」


「いや、遠慮しておきます。今日でここを発つ 予定だったので」


「そうですか…ではお気をつけて」


 俺の判断で断っても良かったのか分からなかったが、ロゼリーが頷いてくれていたので良かったのだろう。


 町長との二度目の別れを終え、俺たちは街を出て、ブリセンドへ戻ることにした。


「なあ、この旅の目標は何かあるのか?」


「あるけど……これは俺の勝手な目的だからお前たちを巻き込むつもりはないさ」


「でもみんなでやったほうが楽しいし、目的も達成しやすいんじゃないですか?」


「ステラ、やっぱなんか変わったよな。なんと いうか…明るくなった?」


「そうですか?」


 ステラはエウルディスとの戦いを経て、自信がついたように思える。

 そのほうがこれから旅をする仲間として心強いからありがたい。


「そうだな……」


 正直、魔王を倒すなんて勇者がやるべき事だ。俺は勇者ではなくただの旅人の身の人間。達成できるかも分からないし、巻き込んで生きて帰すことができる自信だってない。


「今はただあなたに付いていくわ。それがどんなに険しくても、間違っていても」


「ありがとうロゼリー。でも話しとかなきゃいけない事だから今話すよ」


これから旅を共にする仲間達にずっと黙って、自分の目的のためだけに行動していくのは良くないことだろう。


「俺は小さい頃に住んでた村が襲撃に遭ってな、そこで母と妹を殺されたんだ。そいつは自分のことを魔王バルギルディアって名乗っていた。俺はそいつを倒すために旅をしてるんだ」


自分で言葉にしていると母と妹の二人のことを思い出してしまって少し悲しい気持ちになってくる。

復讐は復讐しか生まない。だがそうだとしても俺は自分の手であいつを殺してやりたい。二人の命を奪ったあいつを。


「そうだったんですね……」


「ま、そんなに気を遣う必要はないさ。 人には色んな物語がある。たまたまそういう運命だっただけさ」


俺の話を聞いて表情を曇らせていたステラに言葉をかける。この話を聞いて魔王なんて無理自分は降りるみたいになっても構わないし、付いてきてくれるのであればとても嬉しい。


三者三様の反応をしていたが、三人共幻滅……なんてことはなくそれぞれが覚悟を決めて付いてくることに決まった。


「三人共ありがとうな。もう暗くなってからだいぶ経ったし、そろそろ寝るか」


 町長の家を発つ頃にはすでに外は暗くなっていたからな。そこから、だいぶ歩いたし寝てもいい頃だろう。

 というか眠いし。


 近くにあった木の近くで野宿することにした。


「交代で見張りをやろう。まずは俺からやる よ」


「いや、僕からやる。君たちには悪いことをし たからな」


「なんかそうやって急に丸くなられると、こっ ちがやりづらくなるからやめてくれない?」


「そうか?でも、僕としてはけじめをつけたい から、今回だけはやらせてくれないか?」


「好きにしろよ。じゃあ頼んだぜ」


 疲れていたし、見張りの申し出は非常にありがたい。

 でも、畏まられるとこちらとしてもやりづらい。これから旅をする仲間として、対等な関係でいたいものだ。


 エウルディスに見張りを任せ、俺達三人は寝ることにした────。



 ────ガサッ


「誰だ」


「私よ」


「なんだ、獣女か。僕には任せられなかったか

い?」


「ロゼリーって呼んでくれるかしら?まあ、任 せられないってのもあるけど、一つ、あなたに 確認したいことがあって」


「なんだ?」


「あなた、この世界の人間じゃないでしょ」


 静寂が響き渡る。

 予想外の質問だったのか、はたまた予想通りだったのか、エウルディスはしばらく考えるように沈黙した。


「なぜそう思った?」


 考え抜いて出た言葉は、根拠を確かめるための質問だった。

 否定ではなく質問。ロゼリーには自分がした質問の答えを得るのに十分な返答だった。


「まず一つは、私たちを襲った時に、殺さずに 倒そうとしてきたこと。そしてもう一つが、戦

っている時に『この世界でも』って発言してい

たこと。だからそう思ったわ」


「細かいところまで見てるな」


「はっきり答えなさい。どうなのよ」


 答えが合っていると分かっていても、人間は最後まで合っているのか、そんな疑問は残る。

 それを拭うためには、答えを知る必要がある。


「ああそうだよ。俺はこの世界の人間じゃな

い。転生者だ」

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次話をまちんしゃい

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