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夕暮れ

 僕、新海亮平が通う中学校には、いわゆる「不良」と呼ばれる奴等が何人かいる。といっても、クラスに一人いるかどうかのレベルなんだけど。

 不良と呼ばれてはいるが、学校での暴力沙汰は起こしていない。深夜に仲間と騒いでいたりして頻繁に補導されたり、進学が危うくなるほど出席率が低いっていう感じだ。髪色が派手な奴が多く、ピアスを開けていたりする。先生達が進学できないぞと脅しても、彼らはどこ吹く風で繁華街を遊び歩く。

 もちろん、そんな奴等と僕みたいな普通の生徒は関わることはない。というか、皆関わりたくなくて遠巻きに彼らを見ている。だから、不良の奴は不良の奴等とつるむことが多い。でも、一人だけ違う奴を僕は知っている。

 そいつは、僕と同じクラスでなんなら僕の隣の席にいる奴で水島明という。赤みがかった髪で目つきが鋭く、ピアスも開けている不良だが、顔が良いため女子に密かに人気だ。他の奴等とは関わらない一匹狼でそれがとてつもなくクールにに見えるらしい。学校にはあまり来ておらず、来ても授業は寝てばかりだけどテストではいつも上位に名前があがっている。万年塾通いの僕からしたら、不思議で仕方が無かった。

 対して僕は、どこにでもいそうな平々凡々な中学生だ。成績は中の上ぐらいで、気を抜いたら下まで真っ逆さま。運動もてんで駄目。クラスに埋もれているただの生徒だ。隣の水島明が僕のことを覚えているかも怪しいし、僕も彼とは今後関わることはないと思っていた。あの燃えるような夕焼けを目にするまでは。

 それは、夏休みが終わって文化祭がやってくる季節のことだった。その日、僕は他の生徒より遅く帰宅していた。先生から資料のホチキス留めを頼まれたからだ。部活も塾の予定もない僕には、断る口実がなかった。

「でも、こんなに遅くなるって思わないだろ・・・」

資料は一人でやるには多過ぎで、全部終わった頃には下校時刻を告げるチャイムが鳴り響いていた。

 外ではもう日がだいぶ傾き、太陽は黄色とオレンジの狭間で揺れ動いている。早く家に帰りたいと思った僕は、近道をしようと人通りのない路地裏を進む。

 ふと、違和感を感じて立ち止まる。路地裏のその先にある細い路地がとてつもなく気になるのだ。理由は分からない。試しに進んでみると、壁に行き当たる。行き止まりだ。じっと、壁を見つめるがただの壁に見える。いや、ただの壁に見えるだけなのだ。

 そっと手に触れようとすると、トンッと誰かに背中を押された。あらがうことは出来ず、僕は壁の中に吸い込まれる。

 振り向きざまにみた景色は、燃えるような夕焼けだった。

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