オバケから見た人間
生きてる人間って、ほんとに怖い。
信じられるか?
「心霊スポット」とか言って、閻魔大王様より恐ろしいホラーな連中が彷徨いてる廃墟とかに、平気で行くんだぜ。
それも、何の対策もしてない、ユウレイさえ見えないヤツらが。
せめてさぁ、塩持っていくとか、御守り身につけていくとか、九字を覚えていくとか、帰りにコンビニに寄るとか、ヤバイと思った時点で引き返すとか…
最低限の防衛しろよって思う。
ま、九字とか素人が切ったところで、逆効果でしかないんだけどね。
それでさ、行ったら案の定、取り憑かれたりして。
人格変わって病んだり、帰りに交通事故ったり、次々に不幸が舞い込んだり。
有名な話じゃん。
なのに、なんで前例から学ばないんだろうな。
……信じていないか、自分は大丈夫だと思ってるんだろうな。
マジで怖いよ、怖いもの知らずなフレッシュな若者の頭が。
今日も廃墟にやってきたパリピな若者連中を物陰からチラ見しつつ、ブツブツ呟いていたオレに、背後から声がかかる。
「何サボってんだテメェ、新入りのクセに生意気だな。
もう一回、とり殺されてぇんか? あぁん?」
「しっ、失礼しました! 今すぐ、指定の配置に戻ります!」
真っ白な顔で両眼球が抉れた先輩に、どやされてしまった。
先輩は、オレを指差してケタケタと不気味に笑う。
「テメェが来てからもう1年か。今でもハッキリ覚えてるぜ。
俺がちょっとビビらせたら泣きながら失禁して塩振り撒いて、九字切ろうとしたら首無しの姉御に逆ギレされて御守り黒焦げにされて、帰りに逃げ込んだコンビニの駐車場で運転ミスって事故で死んだんだよな!」
「もぅー、やめて下さいよセンパーイ。
2度と消えない黒歴史なんすからーっ」
そう言って無理やり笑った俺の身体は、顔と逆方向を向いている。
そう。
こうやって、超ブラックな職場で毎夜毎夜働かされて、盛大なブーメランを食らい続けることになるから。
666文字で書き上げたかった……