表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/134

75.来客3

「まず、最初はお嬢ちゃんの生まれ持った宿命をみるよ」


 私の部屋のソファに向かい合って座ると、ハミアさんはどこからか大きな水晶玉を取り出し、それに手をかざした。

 私は黙って頷き、水晶玉を見つめる。

 特に、水晶玉からは何も見えない。


「あら、お嬢ちゃん。『一般人の皮をかぶった変わり者』とでも言えばいいのかしらね。あなた、実はけっこう個性的な人よ。自分はごくごく普通の人って顔してるんだけど、言うこともすることも、けっこうぶっ飛んでるのよね。しかもそれをさらっとやってのけちゃうから……案外周りの人には一目置かれてるかもよ。

 あと、常にお金持ちなのも、あなたの特徴。お金が入ってこなくて困るっていう経験を一生しないね」


 一般人の皮をかぶった変わり者……。

 私は転生しているから、この世界では相当な変わり者だろう。目の前のおばあさんには、15歳の皮をかぶった元アラフォーだということを見抜かれているのかもしれない。

 だとすると、ハミアさんはただの占い師ではないかもしれないな。本物なのかも。

 

 ハミアさんの最初の一言で、転生者だと見抜かれた気がして、私は襟を正した。

 

 ハミアさんが本物だとすると、常に金持ちといわれたのは嬉しい。前世ではお金に苦労したので、今世でお金に困らないのはよかった。落ちぶれたりはしないと保証してもらえた気分だ。


「次は、お嬢ちゃんの今の運命をみるね。今のお嬢ちゃんって、すごくフラットに物事を見れてるわ。先入観とか常識とか、本気で信用してないし、かといって否定もしてないのよね。あなた自身の目で見て、耳で聞いて感じたことを素直にとらえて咀嚼できてる、っていう、精神状態としては理想的なところにいるわ。つまり……いい運命に背中を押されてるってことね。お嬢ちゃんがもし何かを実行に移そうとしてるなら、チャンス到来って考えていいわよ」


 いい運命?チャンス到来?


 そう思っていると、ハミアさんは水晶玉から目を離し、私の方を向いてニヤリと笑った。


「私にはお嬢ちゃんが何をしようとしているのかは分からないからね」


 ハミアさんには、私の考えがすべてお見通しらしい。尋ねる前に言われてしまった。


 うーん。でも、私がやろうとしていることは、ずっと変わらず、ローランにかけられている魔女の呪いを解く事なんだけど、今ちょうど手詰まりになったところなんだけどな。


 あ、でもさっき薄緑色の石は手に入れたから、あれを研磨してもう一度付ければ、また連絡できるかも。

 そういう意味ではチャンス到来してると言えるのか。

 同じことをもう一度やればいいんだもんね。


 ハミアさんを見ると、ハミアさんは真剣な表情でじっと水晶玉を見つめている。


 えもいわれぬ緊張感に、考え事をやめて、ハミアさんの言葉を待つ。ごくりと唾を飲み込む音が響いた。


「お嬢ちゃん、好きな相手がいるんでしょ? その人との相性を見てやろうと思ってね」


 ハミアさんが淡々と言った。

 私はハミアさんの言葉を肯定も否定もしなかった。


「相性ですか?」

 

 ハミアさんも私の質問には答えない。

 ただじっと水晶玉を見ていたが、何かわかったのだろうか。顔を上げてにやりと笑った。


「あらー、お嬢ちゃんもお相手もどっちも異性への目がカラいわねえ。ほんと、ビックリするくらいカラい! 見た目がよくて、やさしくて、お金も持ってて、なんてこと、けっこう本気で言ってるんじゃない? もちろん普段は口に出したりしないんだろうけど。

 そんな2人だから、相性って言っても難しいのよ。お互いがお互いを好みだったら、もうそれはそれはアツアツになるだろうし、反対にそうでない場合はかなり難しいわね。だって妥協ができないんだもの。あなたたち」


 はぁ、そうですか……。

 私の異性を見る目、カラかったんですね……。そんなことを思ってなかったんですけど。

 なんとコメントしていいのか困る。

 これはイザベルやステイシーに伝えたら大受けされそうだ。


 結婚は親に従うとしか思っていなかったけど、ローランに出会ってしまったから、異性を見る目が鍛えられてしまったのは否めないな。

 そういう意味では、この占い結果も当たってるのかも。


 占いが当たっているとすると、ローランも異性を見る目がカラいのか……。ローランの兄弟全員美形だから、そりゃカラくもなるだろうなぁ。

 いやぁ、そうなると、私がローランのお眼鏡に適っているのかは怪しくなるわ。今は、呪いを解けるから買ってもらってるけど、その後がもうないかも。

 

 私が苦笑しているのを気にせず、ハミアさんはどんどん話す。

「さぁ、お待ちかね! 本題よ。あの人が今、あなたをどう思ってるか伝えるわね。本当のことを言うから……覚悟して聞きなさいよ」


 うわ、来た!

 ローランが今私をどう思っているのか?


 すごいわ、ハミアさん。私が聞きたい事をどんどん言ってくれる。

 やっぱり私の考えている事、分かっているんだろうな。


「実は今、あなたすごくノッてるんじゃない? 何事に対しても前向きで、どんどん知らない世界に足を踏み入れたい、もっと自分の可能性を突き詰めたい、っていう欲求が身体からあふれんばかり。違うかしら?


 どうやら最近、相手の人ってばお嬢ちゃんが気になってならないようなのよ。「どういう人なんだろう」「もっと話してみたいな」「何か接点は見つけられないかな」っていろいろ考えてるみたいだよ。


 もちろん慎重なお相手のことだから、そうおいそれと尻尾を出したりはしないわよ。むしろ表面上はもうしばらく知らん顔を続けそう。


 でも、ちゃんと覚えておいて。あの人の視線の先にはあなたがいるし、あなたの噂には聞き耳を立ててる。絶対に気を抜いたりしちゃダメよ!」


 私、ノッてるのかしら? いや、むしろ、落ちぶれているような気もするけど……。

 まぁ、魔法に対して前向きなことは確かだから、当たっているような当たっていないような?


 ローランが私のことを気にしてくれているのはよかった。

 私達2人はお互いを分かり合える前に、別れることになってしまったから、ローランが何を考えているのか分からない。

 気を抜いちゃダメというのがどういうことか分からないけど、私の噂に聞き耳を立てているというのは、注意しておこう。

ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ