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63.練習

 翌日は昼過ぎまで寝ていた。

 今朝未明に兄を見送った後「今から寝ます」と皆に宣言していたので、静かに寝かせてもらえた。

 おかげで熟睡できた。


「あー、よく寝た!」

 自分のタイミングで目覚めて大きく伸びをすると、側でアンが笑っていた。

「おはようございます。お目覚めですか?昨日はとても遅くまで頑張られてましたものね。完成したのですか?」


 その言葉で思い出した。

 そうだ、レオのぬいぐるみを作って、一緒に寝たのだけど……。あれ?ない?


 目につくところには見当たらなかったので布団をめくって探してみると、お腹を突き出して寝ているレオのぬいぐるみが見つかった。


「よかった。あったわ。壊れてなかった。アン、これが昨日作ったものよ」

 アンにレオのぬいぐるみを手渡すと「レオそっくりに、とても可愛くできていますね」と微笑んでくれた。


 アンに手伝ってもらって着替えた後は、食事をとるため食堂に移動する。

 レオのぬいぐるみは部屋に置いておいた。レオが嫉妬して噛みつかれる可能性だってある。せっかく作ったぬいぐるみが壊されては堪らない。


 皆と食事をとって少し会話を楽しんだ後は、レオを散歩に連れていく。

 私もレオも元気いっぱいなので、今日は丘までの道のりをジョギングしながら向かった。

 レオは常に私より少し先を走るが、勝手に離れていくことはない。私のペースを見ながら少し先を走ってくれるので、とても走りやすかった。

 田舎道をゆっくりしたペースでレオと走るのは、とても気分がいい。

 道すがら出会う牛や馬たちと挨拶を交わしながら、丘まで走った。


 丘で少し休憩する。

 今日はレオも私の隣りに座り、おとなしく休憩している。

「気持ちいいね」

 レオに話し掛けてみると「ワン」と返してくれるのが、「そうだね」と同意してくれているように思えた。


「レオがいてくれてよかった。レオのおかげで私寂しくないから。ありがとう」

 レオを抱き上げて、目を見ながらお礼を言う。

「クゥーン」と可愛い声を返してくれた。

 まるでレオは私の言うことがすべて分かっているみたい。

 思わず笑ってしまう。

 

「休憩終わり。じゃ、レオ戻ろうか。また走って帰るけどいい?」

 レオに聞いてみると、なんだかレオも走る体勢を整えているようにみえる。

「よし、じゃあ行くよ」

 そして、私とレオはもと来た道をジョギングしながら戻った。


 家に帰ると、アントンにレオをお願いして自分の部屋へ戻る。


「さぁ、やってみよう」

 自分に気合を入れ直して、魔法の本を開いた。


 今日やりたかったことはこれだ。

 レオのぬいぐるみを私の相棒にする魔法。

 まずは、魔法の本をしっかり読みこんでから、レオのぬいぐるみの右前足を魔法で動かしてみる。


 自作のレオのぬいぐるみをベッドの上に置き、私はソファに座って魔法の本のとおりに強く念じた。

 レオのぬいぐるみをじっと見つめて、一生懸命念じる。

「右前足、動いて」

 集中して念じた。


 でも、レオのぬいぐるみはびくともしない。

「あれ?動かない? おかしいな、書いているとおりにしているんだけど……」


 それから、何度か挑戦してみた。

 それでも動かないので、右前足は諦めて、右の後ろ足にしてみたり、右耳にしてみたり、動かす場所を変えて念じてみたが、どうやっても動かない。


 1時間程繰り返してみたが、全く思った反応とならず、すっかり気力を失くしてしまった。


「何がダメなのかな」

 ソファの上に寝転がった。

「うーん……」

 レオのぬいぐるみを手に持ってじっと見る。

 我ながらよく出来ている。ところどころいびつな感じになっているのも可愛い。


 その時、ふと閃いた。

「あ、そうだ!湖に行ってみようかな。ウンディーネ様に会えれば一番いいけど、会えなくても湖で練習すれば少しは効果が違うかもしれない」


 私はアントン達に「湖に行ってくる」と告げ、魔法の本とレオのぬいぐるみを持って馬に跨った。


 ◇◇◇


「うわー気持ちいい!」

 久しぶりに見た湖は、風がなく青が映えていた。見ると吸い込まれそうだ。

 馬を繋いで、湖畔に座る。


「相棒、ここがお気に入りの湖だよ」

 レオのぬいぐるみにも湖を見せる。


「じゃ、始めようかな」

 早速魔法の本を開いて、書いてある内容をもう一度確認した。

 さっきまで何度も繰り返し見たはずだが、間違いがあってはいけない。

「うん、合ってるな……。大丈夫」

 念入りに確認したら、魔法の本を閉じて木の陰に置いた。


 草の上にハンカチを敷いて、そこにレオのぬいぐるみを置く。

 そして、レオのぬいぐるみをしっかり見つめながら、右前足が動くように念じた。

「右前足、動け」


 でも、やはりびくともしない。


 うーん、おかしいな。もう一度……。


 また強く念じる。

 

 ダメだ、全く動かない。

 風も無いので、揺れることもない。


 動かしたい場所を変えながら、しばらく繰り返してみたが、それでも全然動かなかった。


 えー、どうして?

 思わず立ち上がり、気づいたら湖に向かって大声で叫んでいた。

「どうして、できないのーーー?」


 誰も反応しない。

 しーんと静まり返っている。


 辺りを見渡しても、誰もいない。


「ちゃんと本に書いているとおりにやっているんだけどな。何がダメなの?」

 もう一度内容を確認しようと、木陰に置いた魔法の本のところへ行った。


「あれ?」

 魔法の本を手に取ろうとして、本の上に見慣れない石が3つ乗っていることに気づいた。

「風もないのに、どこからこの石が?」


 小さい丸い石が3つ。少し扁平な形ではあるが、大きさはビー玉くらいだ。

 2つは黒い色をしていて、もう1つは透明感がある薄緑色をしていた。でも、どれも知っている石ではない。初めて見る石だ。

 特に気になるのは、この黒い石。こんな真っ黒な石は初めて見たな……。


「魔法の本の上に乗っていたということは、これを使えということなのかしら?」


 うーん、どう使ったらいいのかな?

 手のひらの上に、3つの石をのせて転がしてみる。


「これ、レオのぬいぐるみにくっつけてみればいいのかも?」

 早速レオのぬいぐるみを置いた場所へ石を持って行き、レオのぬいぐるみに合わせてみた。

ありがとうございました。

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