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6.失踪事件2

進展は遅いですが、、、ようやく少しずついろいろなことが動いていきます。遅くてすみません。。。

 どうして、目の前の黒猫がいきなり女の子に変わったのか、理屈がまったく分からないが、とにかく探していたエミリー殿下が目の前にいる。


 しばらく呆気に取られていたが、気を取り直して、エミリー殿下を抱き上げた。

「怪我とかは大丈夫かな?」

 パッとみた感じでは、特に怪我はなさそうだ。変な病気にかかっているわけでもなさそうだし、見た目は元気そうに見える。


 エミリー殿下はキョトンとしていたが、私たちの顔をじっと見て、突然大声で泣き出した。

「えーーーーーーん」


 廊下じゅうに響き渡る泣き声を聞きつけて、数人の衛兵と女官が駆け寄ってきた。そして、泣いている少女が探していたエミリー殿下だと気づき、皆口々に「エミリー王女殿下、ご無事でしたか?」と言っている。

 エミリー殿下は一言も発さず、ただ皆の呼びかけに答えるかのように泣き声が一段と大きくなった。


 その様子をただじっと見ていると、

「お前たちは誰だ?どうして王女殿下と一緒にいる?」

1人の衛兵に声をかけられた。

「私たちは女官見習いです。廊下を歩いていましたら、たまたま王女殿下とお会いしました」


 衛兵に答えていると、騒ぎを聞きつけたバルドー女官長が複数の女官を引き連れてこちらにやって来た。

「3人の教育を担当しているのは私です。この後は私に任せてください。後で陛下にもお伝えしておきます」


 バルドー女官長は衛兵にそう言って、私たちのほうに向き直ると、厳しい口調で告げた。

「あなたたちは、いますぐ馬の目部屋に戻って待機していなさい。私は王女殿下をお連れしてから、部屋に行きます。それまで大人しくしてるように。いいですね!」

「わかりました」

私たち3人は頭を下げてその場を離れ、馬の目部屋に向かう。


 最初は3人とも黙って歩いていたが、角を曲がって周囲に人の姿が見えなくなると、まずステイシーが口を開いた。

「リジー、あなた魔法使いなの?」

「まさか。魔法なんて使えないわよ」

私は首をブンブン振って否定する。いままで魔法なんて使えたことがない。


「そしたら、何をしたの?」

「わからないの・・・。ただ、黒猫の頭を撫でていただけだから・・・」

 訊かれたところで、私自身何が起こっているのか分からないのだから答えようがない。


「でも、まさか黒猫がエミリー殿下だなんて、誰も分からないわよね。もしかして、エミリー殿下は変身できるのかしら」

 イザベルはそう言って、首を傾げた。

「まさか。。。」私がそう言うと、ステイシーが被せてきた。

「そういえば、王族の皆さんは魔法が使える、って以前聞いたことがあるわ!」

「あー、それなら私も聞いたことがある」

「でも、黒猫に変身できる魔法なんて・・・。黒猫は忌み嫌われるから、あまり役に立ちそうにない魔法ね・・・」

「そうね。。。」


 結局、知識不足の私たちでは何が起こっているのか分からない。でも、馬の目部屋に着いた後もバルドー女官長が来るまで、あーだこーだとそれぞれが思いついた勝手な想像を披露しあった。


 どれくらい時間がたったのだろう。

 私たちもお喋りに夢中になっていたのであまり気にしていなかったが、バルドー女官長が部屋に戻ってきたときは窓の外が暗くなっていた。


 バルドー女官長は足早に私たちのところへやって来ると、いつもの厳しい口調のまま尋ねた。

「もう遅くなってしまったので、さっさと済ませましょう。どうやって貴女たちがエミリー王女殿下と出会ったのですか?」


「はい、女官長にもお伝えしましたとおり、王宮のお部屋を確認するため3人でぐるぐると廊下を歩いていました。そうしましたら、たまたま柱の陰に黒猫を見つけました。それで、その黒猫の頭を撫でていたところ、なぜか黒猫が王女殿下に変わったのです」

 そこまで私が話すと、バルドー女官長の顔色が変わった。


「なんですって?黒猫が王女殿下に変わった、とそう言いましたか?」

 物凄い勢いで言われて少し怯んだが、3人揃ってこくこくと首を縦に振る。

「そうです。信じられないかもしれませんが、黒猫が王女殿下に変わりました」

「…」


バルドー女官長は黙って少し考えた様子を見せた後、私たちの顔を順番に見ながら尋ねた。

「黒猫が王女殿下に変わるところを貴女たちのほかに見た人はいますか?」

「周りには誰もいなかったので、私達以外に見た人はいないと思います」

「それで、黒猫の頭を撫でたのは誰なんです?」

「リジーです」

 私が答える前に、イザベルとステイシーがほぼ同時に答えた。


「そうですか。では、イザベルとステイシーは結構です。今日はこれで帰りなさい。また明日ね。さようなら」

 バルドー女官長はイザベルとステイシーの2人が部屋を出るのを見届けた後、ゆっくりと1人残された私のほうに顔を向けた。


「リジー、あなたにはもう少し話を訊かせてもらいます。屋敷には私から連絡を入れますので、しばらくここで待ってなさい」


 ああ、もう夕食の時間だな。お腹すいたな・・・。私はいつ帰れるのかしら。お父様やお母様が心配しているだろうな。そんなことを思いながら、席を外したバルドー女官長の戻りを待つ。


 今度はバルドー女官長はすぐに戻ってきた。

「リジー、あなた魔法は使えるの?」

バルドー女官長に訊かれて、首を横に振る。

「いいえ、女官長。魔法なんて使えません」

「そう。それでは何が起こったのか、あなたにもわからないのね。いいわ。それなら、ついて来なさい」


 バルドー女官長は私の様子を見て、私が何も分かっていないことを察したようだ。きびきびとした動作で馬の目部屋を出て廊下を歩いていく。私も遅れまいと速足でついていく。


王宮の端にある塔の前まで歩くと、女官長は迷わず中に入り螺旋階段をぐるぐると登る。馬の目部屋を出てからずっと、バルドー女官長は一言も話さない。私も黙って、ひたすらついていく。そして3階まで階段を上がると、ようやくそこでバルドー女官長は足を止め、目の前のドアをノックした。


「失礼いたします。バルドーです。少しよろしいでしょうか」

「どうぞ」


 ドアが開き女官長はさっと部屋の中に入る。私も慌てて部屋に入る。部屋には、腰まである長髪に、眼鏡をかけ、神経質そうな顔をしてローブを着た男性が一人いた。格好は、前世で見ていたハリー〇ッターを彷彿とさせる。


 確か、この部屋は魔導士様の部屋だ。目の前にいる方は、おそらくこの国の魔導士様で間違いないだろう。

ありがとうございました。

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