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59.相棒2

「ローラン王子殿下からの依頼で?……ローラン王子殿下は今どこにいるの?」

 私は思わずロジェに詰め寄る。


 ロジェはゆっくりと歩きながら話した。私とレオもロジェと並んで歩く。

 レオはもう勝手に走り出したりすることはなかった。私たちと同じ速度で歩いている。


「ローラン王子殿下はまだ戦地にいる」

「まだ戦争が続いているの?」

「戦争は終わった!」

「え?終わったの?……勝ったの?」

「当たり前だ! 魔導士様も一緒だからな」


 魔導士様も一緒だったんだ。

 とにかく、戦争が終わってよかった! 

 ローラン勝ったんだ!


「ねぇ、ローラン王子殿下は怪我していない?」

「ローラン王子殿下は無傷だ。魔導士様もされていない」

「よかったー」


 ローランが怪我していなくて本当によかった。魔導士様もよかった。


「ねぇ、ロジェはどうして私の居る場所が分かったの?」

「お前がしているその指輪だよ。その指輪で居場所が分かるんだ」


 あぁ、前にローランがそう言っていた。確か私もGPSみたいだと思った記憶がある。

 まだ一度も試したことが無かったけど、後で試してみよう。


「それで、どうやってここに来たの? 馬とか見当たらないけど……」

「魔法で来たに決まってるだろ! 馬なんて乗れないから」


 ロジェは少し苛立ちながら「何でそんなことも分からないのか」とブツブツ言っている。

 私はそれを聞かなかったことにして尋ねる。


「魔法で来たの?どうやって?」

「お前、本当に知らないのか? 魔法で念じたら行きたい場所へ行けるんだよ。行ける距離は魔力がモノをいうけどな!」

「へぇ、それはすごい!!」


 私が本気で驚いていると、ロジェは得意げに鼻を膨らませた。


「ということは、ロジェは王宮からここまで魔法で飛んできたの?」

「さすがに、王宮からここまでは無理だ。魔導士様なら出来ると思うけど……。さっきまで俺も魔導士様と一緒に戦地にいたんだ。戦地はここからそれほど遠くない。だから飛んでくることが出来た」

「そうだったの!? ロジェも戦ったの?」

「そうだ。魔導士様のお手伝いをした!」

「すごい!」


 私とロジェはほぼ同時期に魔法の勉強を始めたなのに、ロジェは戦争の手伝いが出来るくらい魔法が使えるようだ。

 ロジェは一日中、魔導士様と一緒にいて魔法の勉強をしているけど、私は一日数時間しかしていなかった。

 だから、こんなに差がついちゃったんだ。


 そんなことを考えていると、ふと以前の会話を思い出した。

 確かロジェは、最初ローランに連れられて魔導士様のところへ来たと言っていた。


「ねぇ、ロジェとローラン王子殿下ってどういう関係なの? 確か、ローラン王子殿下に連れられて魔導士様のところに来たと言っていたけど」


 その言葉に、ロジェはポツポツと語り出した。


「俺はローラン王子殿下に助けられたんだ。……俺には家族がいない。……あの時は、食べ物を探して王宮に迷い込んだんだ。そしたら衛兵に見つかって、たまたま地下に逃げ込んだら、どうなったのかはよく分からないんだが、ノーム様とお会いすることができたんだよ。そして、ノーム様の御加護を授かった。その後、地上に出てばったり出会ったのがローラン王子殿下だったんだ。ローラン王子殿下は、僕がノーム様の御加護を授かったことが分かったみたいだった。それで、魔導士様のところへ連れて行ってくれたんだ。そして、俺は弟子になった。その次の日にお前が来たんだけどな」


「そうだったんだ……」


「ローラン王子殿下は心根がお優しくて、どんな人のことも助けて下さる。素晴らしいお方だ」


 うん、それは知っている。

 以前、3人の王子様が病気で倒れた時も、ローランは何とかしようと私に協力を依頼してきた。

 ローランは困っている人がいたら助けようとする素晴らしい人だ。


「それで、ロジェが受けたローラン王子殿下からの依頼って何なの?」

「ああ、これを渡してくれって頼まれた」


 ロジェはコートの右ポケットをごそごそっと探って封筒を取り出し、渡してくれた。

 私はすぐに封筒の封を開ける。中にはローランの文字で書かれた便箋が1通入っていた。

 読みたいがロジェに見られるのは嫌だった。

 一人で読みたい。

 そう思ったので、便箋を封筒に戻し、大切にポケットにしまった。


「見て分かっただろ? ローラン王子殿下からお前宛の手紙だ。ローラン王子殿下は、今、戦争の大将として自由に動くことができない。さっき言ったように戦争は終わったけど、戦地での戦後処理が残っているんだ。魔導士様だって同じだ。ローラン王子殿下をサポートしている。だから、自由に動ける俺が頼まれたんだ」


「そうだったの……。ありがとう! ひとつ質問なんだけど、私が魔法で戦地に飛んでいくのはダメなのかな? どうしてもローラン王子殿下に一目会いたいんだけど……」


「ダメだ。戦地に女が来たらややこしいだろ。お前はしばらく、ここでおとなしく魔法の練習でもしていればいいんだ! あ、そうだ。魔導士様からもお前に本を預かっていたんだった……。やばい、忘れるとこだった……」


「本?」


 ロジェは今度はコートの左ポケットから1冊の分厚い本を取り出した。

 ロジェのコートのポケットはいろいろ入るようだ。


「これは魔法の本だ。よく読んで勉強しておけよ。お前は俺にだいぶ差をつけられているんだからな」

「ありがとう! ロジェ。しっかり読んで勉強するわ!」


 ロジェと話しながら歩いているといつの間にか、私の屋敷の前まできていた。

 レオもクゥンクゥンと言いだしている。


「ここがお前の家か。じゃ、俺はそろそろ魔導士様のところへ戻る。じゃあな」

「待って、ロジェ! せっかくだから家に入らない? 一緒にご飯を食べて行ってよ」


 私が帰ろうとするロジェを引き留めると、ロジェは首を横に振った。


「俺は早く魔導士様のところへ帰りたいから、こんなところで長居するわけにはいかない。俺は魔導士様のお役に立ちたいんだ!」


 そう言って、それ以上私の言うことは聞かず、何か呪文のようなものを呟くと煙のように目の前から消えた。一瞬の出来事だった。


「わ、ロジェ、凄い!!」


 目の前でロジェの魔法を見ると、私も早くロジェに追いつきたくなった。今貰ったばかりの魔法の本の1ページ目を開く。

 そこには次のように書いてあった。


『魔法とは、魔力を使って人間の能力を拡張することだ』

ありがとうございました。

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