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50.ガールズトーク

50話まできました!自分には長編は難しいかなと思っていたのですが、ここまで続けられてうれしいです。これもひとえに、読んでいただける方がいるということが励みになっているからです。本当にありがとうございます。

「うん、言われたなんてものじゃないわ。言われっぱなしだった……。身分も容姿も知識も劣っている私が、ローランの婚約者なんてあり得ないって。 あぁ、もう、本当に酷い目に遭った。……まぁ、向こうの言っていることは、確かにその通りよ。私は身分も容姿も知識も、すべて負けているわ。それは、認めるしかない。 アレクシア様はとても美人で、スタイルもよくて、胸だって、こーんなに大きかったし。それに、なんといっても侯爵令嬢だしね。1年間も外国に留学していただなんて、教育もしっかりされているでしょ。 妃教育に四苦八苦している私とは大違いよ……」


 私は、思いの丈を3人にぶつけた。

 私のことなんて何も知らないはずの令嬢に言われ放題だったのを、ただひたすら黙って耐えたのだ。

 2人の言うことは的を射ていたが、だからこそ余計に溜まっていた。

 やっと言いたいだけ言わせてもらえて、ようやくスッキリした。


 シモーヌが用意してくれたチョコレートを一口齧る。

 甘い!美味しい!!

 やっぱり嫌なことがあった後は、甘い物に限る!


「せっかく美味しいローストチキンを食べたのに、令嬢たちの登場で、それが台無しになっちゃった……。でも、この美味しいチョコレートのおかげで、復活したわ!」


 どん底まで落ちていた気分がすっかり回復した私は、3人にもチョコレートを勧める。美味しいものは、みんなで共有したい。


 3人もソファに座り、一緒にお茶を飲みながら、チョコレートを食べる。


 ステイシーがチョコレートを頬張りながら笑った。

「本当だ。このチョコレート、美味しいね。料理長特製だよ。また頼んでおこう! でも、リジーって、相変わらず単純ね。元気になってよかった!」


 イザベルが訊いてきた。

「実際のところ、ローラン王子殿下はリジーのことを庇ってくれたんじゃないの? そんな言われっぱなしのリジーを放っておかないと思うけど」


 チョコレートを口に放りながら考える。

 ローランはただ黙って聞いていただけのような……。


「うーん。私は、ローランが何を考えているのか、正直あんまり分からなかったんだよね。ただ黙って2人の話を聞いているだけだった。それに、その場にいるのが辛いから私だけ先に帰らせてって頼んでもダメだって言ったし」


 イザベルがティーカップにお茶を注ぎ足してくれた。

「ローラン王子殿下は、ただ黙ってただけ?」


 熱々のお茶を啜り、チョコレートを齧りながら、先ほどの食堂での様子を改めて思い出す。


「ローランは、ずーっと黙って聞いてたんだけど、最後、私の婚約者を侮辱するな、みたいなことは言ってくれたかも。バンってテーブルを叩いて急に怒り出したんだよね」


 私は先ほどのローランの様子を再現するべく、身振り手振りを交えて説明した。少し声音もローランに似せてみた。


「まぁ、素敵!」

 3人が顔を見合わせる。


 イザベルがにっこり微笑んで言った。

「よかったわね。リジー。何もかも負けているとか酷いことをアレクシア様に言われたかもしれないけど、ローラン王子殿下に愛されているリジーの圧勝よ!」


「え?そうなの?」


 私は、令嬢2人から言いたい放題言われて、ボコボコにされた記憶しか残っていない。

 こちらが何も言わないのをいいことに、言いたい放題言ってくれた……。

 それに対して、ローランはただ黙っていただけなのに、私の圧勝だなんて、私の完敗の間違いではないのか。


 ステイシーが言った。

「そうよ!ローラン王子殿下がずっと黙って聞いていたのは、何かきっと考えがあったはずだわ」


 何か考えがあった……?

 あの時は自分がその場にいるのが辛すぎて、そんなことは考えもしなかった。


「……何か考えがあったのかな……」


 私はローランに思いを馳せる。


 自分の気持ちばかりで、ローランの気持ちを思いやれなかった。

 だから、ローランの考えが分からない。


 そんな私を見て、シモーヌが言った。


「きっとローラン王子殿下は、アレクシア様たちに言いたいことを全て言わせるつもりだったんじゃない?」


 イザベルも同意する。

「そうよ。アレクシア様も言いたいことを全て言えればスッキリするじゃない? ローラン王子殿下はお優しいから、まずは聞いてあげたんだわ」


 ステイシーも被せてきた。

「言いたいことを聞いてもらえないと、消化不良になって、また突撃されちゃうからね。さっきは言い足りませんでしたーとか言って、ここに来られても困るわ」


 うん、確かに、みんなの言うとおりかも。

 ローランが黙っていたのは、そういう意味だったのか。

 確かに、今さっき、私も言いたいことを言わせてもらえて、スッキリしたところだ。


 シモーヌが言う。

「アレクシア様は外国に留学されていたんでしょ? 自分がいない間に好きな人が婚約していたと知って、相当ショックだったんじゃないかしら。だから、今日だって、帰国してすぐに食堂へ突撃したんでしょ? それに、アレクシア様とローラン王子殿下は幼馴染で相当仲良くされていたと聞いているし。 やはり、一度しっかりお話をする時間は必要だったと思うわ」


「そういうことなら、今日のアレクシア様とローランの会話じゃ足りないかもしれないわ。なんというか、ほぼアレクシア様側から一方通行で話してて、ローランはほとんど話さなかったから」


 今日の食堂の会話だけでは足りないから、もう一度改めて、ローランとアレクシア様の会話の機会があったほうがいいのかも。

 私がそう考えていると、ステイシーが言った。


「もう、今日で十分なんじゃない? だって、ローラン王子殿下は、リジーとしか婚約しない、みたいなことを仰った、って、さっきたまたま居合わせた女官から聞いたよ!」


 ステイシーの言葉を口火に、イザベルとシモーヌも参戦し、3人で勝手に盛り上がり出した。


「そうそう。ローラン王子殿下が、一夫多妻は放棄している、とはっきり仰ったって、私も聞いたわ!」


「妻は一人しか娶らないと仰ったんじゃなかった?」


「暗に、リジー以外は愛さない、と言ってるのよね。いいわねー。なんでリジーはそんなに愛されてるのかしらね」


「ほんと羨ましいわ。憧れる!」


「私もあんな素敵な王子様に、愛しているのはキミだけだ、とか言われてみたいー」


 ん?なんか勝手に話が変わってきている気もするけど。

 でも、そうか。ローランは私のことを庇ってくれてたんだ。

 自分のことで精一杯で全然気づかなかったけど、3人の話を聞いてよく分かった。

ありがとうございました。

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