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44.薔薇園6

 私はエリック様にした質問と同じ質問をローランにしてみた。

「ねぇ、ローラン。ローランの呪いを解く相手は、婚約者でないといけない決まりってあったりするの? 例えばだけど……私がエリック様と婚約しながらローランの呪いを解こうとしても、その場合は私はローランの婚約者じゃないから解けない、とかあるのかな?」


「リジーはエリック兄さんと婚約したいの?」


 例えがよくなかったか……。

 ローランはエリック様のところだけ切り取って反応した。


「そんなことは言ってないよ。それは、ただの例だから……。知りたいのは、婚約しないとローランの呪いが解けないのかってこと」


 ローランは少しの間逡巡して、そして言った。


「それでいうと、僕の呪いを解くのは一朝一夕ではできないらしいよ。一緒に生活を送って、少しずつ呪いの力を弱めていく必要があるみたいなんだ。だから、一緒に生活するには、婚約するしかないと思う」


「ふぅん。確かにそうだね」 


 エリック様のように、占い師が……とかいう理由じゃなくてよかった。

 それだとあまりにも根拠がない。


 一緒に生活することで呪いの力が弱まるのなら、ローランはあと3年あるから、それまでになんとか消えてくれる可能性はあるのかな。


 でも、エリック様はどうなるんだろう。あと1年しかないし、誰も一緒に生活していない。

 あ、でも、もし王宮の中で生活している人は全て一緒の生活だとカウントするなら、該当者はいっぱいいることになるか……。

 とはいえ、あと1年という期限は短い気がする。もし長期戦なのだったら、もう既に手遅れということはないだろうか。

 そう考えると、エリック様のほうが心配になった。


 私が黙っているのが気になったのか、ローランが後ろから私の顔を覗き込んできた。


「せっかくだし、アルフレッドのところへ一緒に行こうか。魔女の呪いの解き方を教えてくれたのはアルフレッドなんだ。もっと詳しく教えてくれるかもしれない。リジーは今、魔法を教えてもらってるんだったよね?」


 アルフレッド?……あぁ、魔導士様のことね。

 アルフレッドと言われても、最初分からなかった。


「うん、行きたい。けど、その前に、私お腹すいちゃった。昨日の昼食以来、何も食べていないでしょ? さっきからお腹が鳴ってるの」


「そうだね。それなら、先に食堂へ行こう」


 そして、二人で薔薇園を出る。

 出口には、事前に頼んでいた通り、1台の馬車が待機していた。


 ◇◇◇


 馬車で王宮に戻った私たちは、食堂で腹ごしらえを済ませると、まずは一度、私の部屋へ戻った。

 ローランも、一旦自分の部屋へ戻ると言う。

「リジー、僕が戻るまで絶対に部屋から出ないでね。絶対だよ」としつこく言い含めてから行ってしまった。


 1人になった私は、イザベルたちに声をかける。

「薔薇園から戻ったわ。今朝はいろいろありがとう。本当に助かった」


 ステイシーが言った。

「おかえり、リジー。薔薇園の建物は素敵だったわね。でも、それよりも、エリック王子殿下のほうが素敵だったけど」


 ステイシーの聞き捨てならない言葉に、聞き返す。


「ん?ステイシーは、エリック王子殿下が好みなの?」


 ステイシーは頬を赤らめながら、うっとりとした表情で言った。

「前から言ってるでしょ!本当に素敵だわ。あの建物にとても似合ってた!」


 イザベルも被せてくる。

「わかるわ。エリック王子殿下は、本当に素敵よね」


 え?!


 シモーヌまで言った。


「エリック王子殿下は、今まで女性と浮いた噂が一つもないのよ。あんなに素敵な王子様を捕まえるのはどこの令嬢かしら、と女官たちの間でいつも噂なんだから。もちろん、私だってお近づきになりたいわ」


 ほう。そうなんだ。

 私は、みんなの憧れのエリック様から婚約したいと言われたのか。うふふ。


 ん?でも待って。

 ローランだって美形なんだけど、ローランの人気はどうなんだろ?


 私は3人がエリック様のことばかり持ち上げるので、ローランのことも訊いてみた。


「えっと……、ローランは、あまり人気ないのかな?エリック様とはまた違った美形だとは思うんだけど……」


 イザベルが答える。

「ローラン王子殿下はリジーにぞっこんでしょ? 美形だとは思うけど、リジーの邪魔はしないわよ」


 シモーヌが少し言いづらそうに言った。


「そう、それに、もともとローラン王子殿下はアレクシア様と長年噂があったから、誰も狙ったりはしなかったわ。だから、本当に急にリジーと婚約してビックリしたもの!」


 出た!アレクシア様!!

 シモーヌが知っているなら教えてほしい!


「シモーヌ、アレクシア様の話で知っていることがあれば、何でもいいから教えて。エリック様やローランから聞いたところなんだけど、やっぱりどうしても気になってしまって……。アレクシア様って綺麗な方なの?」


 私が前のめりで訊いたので、シモーヌはやや後ずさりしながら答えた。


「リジー、気を悪くしないでね。ちょうど2年前、王宮の庭園で王族主催のガーデンパーティーが開かれたんだけど、その場で大勢の人の目の前で、アレクシア様がローラン王子殿下にキスしたのよ。子供同士のキスで可愛いわね、と参加者は皆、微笑ましく見ていたけど、私はとてもビックリしたわ。まだ私も女官になったばかりだったし、今も強烈に覚えているもの!」


「……」


「それから、アレクシア様はとても可愛い方よ。瞳がくりくりっと大きくて、お人形みたいだった。私がお会いしたのは、そのガーデンパーティーの一度きりだけど……」


 そうかー。やっぱり予想通りアレクシア様は可愛い女性なんだ。なんとなく、容姿は負けている気がしたけど。


 こうなると、私は魔法のスキルを磨くしかない。


 ローランやエリック様に私が認められているのは、魔法の能力だけなのだから。

 私のことを好きかどうか、なんてことを聞いて、一喜一憂していてはダメだ。

 無駄な嫉妬で立ち止まるのもダメだ。

 好き嫌いの感情を超えていくしかない!!


 私が魔法のスキルを磨いて、なんとか2人を助けることができれば、その先のことはまたそれから考えればいい。

 それでもし捨てられてしまったとしても、後悔はないはずだ。多分。


 まだ、どうやったら2人の呪いの刻印が消えるのか分かっていない。

 

 まずはその方法をなんとかして知らなくては。

ありがとうございました。

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